2007年11月15日 14時00分
昭和の名建築に光を当てる、九段下テラス
画家・大西信之さんが描いた九段下ビル
同ビル1階に住居を構える画家の大西信之さんが、廃墟同然に10年以上放置されていた3階部分の入居者を探していたところ、場所企画・デザイン事務所『領域探査デザイン』が8月から12月末までの期限付きで借り受け、作品発表の場として提供する。
「今後、賃貸物件としての再生が可能かどうか、検証が目的。古い建物が、有効に利用されることにつながれば」と、『領域探査デザイン』の新藤典子さんは話す。
11月18日(日)までは、写真家・奥村浩司を中心とするフォトグラファー・チーム、Forward Strokeによる、九段下ビル築80年の廃墟美を切り取った写真展を開催中。12月15日(土)、16日(日)には村本すみれのダンスプロジェクト『MOKK(モック)』の公演が決定している。
九段下ビルは、鉄筋コンクリート3階建て。関東大震災復興事業の一環として助成会社の超低利融資を受け、被災した商家が共同で建てたもので、1階2階が住居付き店舗の棟割式、3階は賃貸住宅。完成は1927年。同潤会アパートとほぼ同時期だ。
今日まで生き残ることができたのは、バブル崩壊で開発計画が宙に浮いたこと、縦割の所有権で賃貸を含むなど個々の所有形態が複雑なことが関係しているが、近い将来に取り壊しは免れないだろう。
「九段下ビルは建築史上、その重要性についてあまり取り上げられて来なかった。しかし、昭和の名建築が惜しまれながら解体されていく中、九段下ビルの最後の場面に関わることも面白いのではないかと思っている」と新藤さんは話している。