知識ゼロでもわかる「経済用語」 “ゼロ金利政策”を病院に例えて解説!

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アメリカの「ゼロ金利政策」の事例を基に“経済用語”を紹介

 日々、新聞やニュースで目にする経済用語。社会人として当然知っているべきものだが、ちゃんと理解している人は意外に少ない。そこで、「いまさら聞けない」という経済用語を時事ネタに絡め、わかりやすい例えを交えて3つ解説していく。

 今回は世界中が注目している、アメリカのゼロ金利政策の解除について解説する。中央銀行に相当するFRB(連邦準備制度理事会)は、金融政策を決定するFOMC(連邦公開市場委員会)を9月16日と17日の両日にわたって開催したが、焦点となっていたゼロ金利政策を解除して、FF金利を引き上げるという金融引き締め策への転換は見送りとなった。

 「退院はもう少し先にしましょう…」というのがFRBの結論だった。アメリカ経済は2008年9月のリーマンショックとこれに続く金融危機で瀕死の重傷を負う。病院に担ぎ込まれてきたアメリカ経済に対して、FRBが行った治療がゼロ金利政策と量的金融緩和策だった。

 「ゼロ金利策」はFF金利を事実上ゼロにするというもの。FF金利とは、「Federal Fund Rate」の略で、FRBがコントロールしている金融活動の大元となる金利。FF金利が下がれば、金融機関の貸出金利も低下し、企業がお金を借りやすくなって経済の活性化が期待できる。一方で、引き上げれば景気の過熱や物価上昇を抑える効果がある。

 FRBは大けがを負ったアメリカ経済に対して、FF金利を立て続けに引き下げて、ついには事実上ゼロとした。これがゼロ金利政策で、入院してきたアメリカ経済に、マネーという食事を無償で提供することで、体力を回復させようとしたのだ。

 だが、アメリカ経済の受けた傷は極めて深く、ゼロ金利政策でも経済は好転しなかった。マネーというご馳走を無償で目の前に並べてみたものの、アメリカ経済には資金需要という「食欲」がなく、体力の回復は進まなかったのだ。

 そこで打ち出されたのが量的金融緩和策だった。これは、FRBが大量のマネーを金融機関を通じて経済に強制的に注入するというもの。アメリカ経済に点滴の管を取り付けて、マネーという栄養素を無理やり送り込むという究極の方法だった。

 ゼロ金利政策も量的金融緩和策も、デフレ対策として日本銀行がもともと打ち出したもの。日本では効果が乏しく、日本経済の病状改善は思うように進んでいないが、アメリカ経済は昨年来、失業率の下など景気回復が見られるようになってきた。そこでFRBはゼロ金利政策と量的金融緩和策を終了して、アメリカ経済を「退院」させる準備を始めたのだ。

 当然、ゼロ金利政策と量的金融緩和策は緊急措置であり、いつまでも続けるべきものではない。安易に継続すれば、大量に供給されたマネーが「カネ余り」現象を生み、株式市場や不動産市場に送り込まれて、実態とかい離した価格上昇、いわゆる「バブル」を生み出す恐れがある。元気になったにもかかわらず、入院を続けているアメリカ経済は、体力を持て余して、病室内でバブルという「宴会」を始めていたのだ。

 こうしたことからFRBは昨年10月に量的緩和金融策を終了させ、点滴の管を外した。さらに、ゼロ金利政策も終了させて、FF金利の引き上げという金融引き締め策を実行し、アメリカ経済を「退院」させようとしているわけだ。

 だが、ゼロ金利政策の解除については、「アメリカ経済は病み上がりだから、無理をさせると、また倒れてしまう」と心配する声が根強く、具体的な時期が取りざたされるたびに、これを心配して株価が下落してきた。

 また、ゼロ金利政策が解除されるとマネーの供給量が減少し、新興国に投資されていたマネーがアメリカ本国に戻ってくる可能性が出て来る。これが新興国の通貨や株式の暴落を引き起こして、世界経済が混乱するとの指摘もある。アメリカ経済が「退院」する結果、世界経済全体が不安定化し、これが回りまわってアメリカ経済にも悪影響を及ぼし、「再入院」を余儀なくされかねないというのだ。

 こうしたことから、ゼロ金利政策の解除のタイミングは慎重に議論されてきたが、アメリカ経済回復に確信をもったFRBは、9月のFOMCでゼロ金利政策の解除に踏み切るとの見方が広がっていた。ところが、その直前で中国の経済成長鈍化と、これに伴う世界同時株安が発生してしまう。突然の「嵐」の襲来に、「今退院させるのは危険だ」として、FRBはゼロ金利政策の継続を決定したのだった。

 今回は「退院」が見送られたが、FRBは早ければ10月、遅くても来年初めにはゼロ金利政策の解除に踏み切るとの見方が有力だ。世界経済の大きな転換点とされるアメリカのゼロ金利政策の解除。アメリカ経済が「退院」するのは何時なのか? 世界中がその同国を見守っている。

記事/玉手 義朗
1958年生まれ。外資系金融機関での外為ディーラーを経て、現在はテレビ局勤務。著書に『円相場の内幕』(集英社)、『経済入門』(ダイヤモンド社)がある。

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