2015年10月25日 10時00分

知識ゼロでもわかる【経済用語】 「格下げ」などを“ミシュラン”に例えて紹介

経済用語を「ミシュラン」に例えて解説! “フォルクスワーゲン”はどのランク? [拡大する]

経済用語を「ミシュラン」に例えて解説! “フォルクスワーゲン”はどのランク?

 日々、新聞やニュースで目にする経済用語。社会人として当然知っているべきものだが、ちゃんと理解している人は意外に少ないのではないだろうか。そんな「いまさら聞けない」という経済用語を時事ネタに絡め、わかりやすい例えを交えて3つ解説する。

 今回は、フォルクスワーゲンの排ガス不正の問題を踏まえ、「信用格付け会社」、「信用格付け」、「格下げ」を取り上げる。

 アメリカの信用格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は12日、ドイツの自動車大手フォルクスワーゲン(以下、VW)の信用格付けを「A」から「Aマイナス」に1段階格下げすると発表した。VWが不適切なソフト使用によって、排ガス試験を逃れていた問題が発覚したためだ。

 信用格付けはミシュランのレストランガイドのようなものだ。投資先というレストランを探している投資家に、「どこで食べれば安心なのか?」という情報を提供するもので、国が発行する国債や企業が発行する社債などの債券を対象としている。債券は売買可能な借用証書であり、最大のリスクは発行元が破綻して紙くずになる「デフォルト」だ。レストランで食中毒になるのがデフォルトであり、信用格付け会社は債券の発行者の財政状況を様々な角度から分析して食中毒のリスクを査定、安全度を信用格付けとして公表しているのである。

 信用格付けの結果もミシュランのレストランガイドに似ている。S&Pの場合、最上級の「AAA」から「AA」、「A」と星の数が少なくなり、「BBB」、「BB」、「B」、「CCC」、「CC」、「C」、と信用力は低下し、最も低い「D」は資金回収がほとんど望めない「紙くず」という評価となる(「AA」から「CCC」までにはさらに「+」と「−」が付けられて細分化されている)。「AAA」ならデフォルトという「食中毒」の心配はほとんどないが、「CCC」の場合には食中毒になる可能性が高く、「D」の場合には「食べたら死ぬぞ!」と、極めて高い危険性があることを示しているわけだ。

 信用格付けは、とりわけ格下げされた場合の影響が大きくなる。投資家の中には「投資対象はA以上」などと条件を課している場合が少なくない。格下げの結果、この条件を割り込んだ場合には、投資家が一斉に売却に走ることから価格が暴落してしまう。ミシュランのレストランガイドを見たお客が「この店は危ないぞ!」と一斉に逃げ出してしまう結果、レストランが潰れてしまう恐れも出てくるのだ。

 S&PはVWの信用格付けについて、さらに2段階の格下げもあり得るとしている。高い信用格付けを得て、大人気だったフォルクスワーゲンというレストランだが、さらなる格下げが行われれば、一気に経営危機に陥る可能性も否定できない。

「三つ星レストランが一つ星になった。もう行くのは止めよう…」。信用格付けは世界中の投資家が注目する投資ガイドであり、発行者というレストランの命運を左右することもあるのである。

記事/玉手 義朗
1958年生まれ。外資系金融機関での外為ディーラーを経て、現在はテレビ局勤務。著書に『円相場の内幕』(集英社)、『経済入門』(ダイヤモンド社)がある。

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