iDeCo(イデコ)の審査が通らない?口座開設時の書類不備に注意

iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)加入時に気を付けたいことの一つが、「申し込みの流れ」。申し込みには2カ月程度かかることに加え、申込用紙も少し複雑だ。というのも、会社員と自営業者では申込用紙が異なり、また会社員や公務員は勤務先の記入書類があるなど、注意すべき点がいくつかあるのだ。書類不備によって、手続きにさらに時間がかかってしまうのは防ぎたいところ。そこでここでは、加入手続きの基本の流れと注意点について解説する。
市川雄一郎

監修者 市川雄一郎

保有資格:CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)

iDeCo口座開設までの基本の流れ

iDeCoに加入するためには、まずiDeCoの口座開設に申し込む必要がある。そこでここでは、まずは申し込みから口座開設までの流れを解説していく。提出が必要な書類や、確認のタイミング、受け取る書類について情報を整理しよう。

会社員や公務員は勤務先に記入してもらう「事業主の証明書」が必要など、iDeCo加入申込は職種によって対応が異なる部分があるので、自分が必要な対応について事前に大まかな流れを把握しておこう。

iDeCo口座開設申込の流れ

( )内には、対象者を記載

【会社員】
勤務先に企業年金の状況を確認

 ↓
【全員】 運営管理機関(金融機関)と運用する金融商品を検討
 
【全員】 加入を希望する運営管理機関(金融機関)から次の書類を取り寄せ、記入する。
「個人型年金加入申出書」
「預金口座振替依頼書兼自動払込利用申込書」
「加入者掛金配分設定届、確認書」
「事業主の証明書(第2号加入者に係る事業主の証明書)」(会社員、公務員のみ)
 
【会社員、公務員】 勤務先に「事業主の証明書」の記入を依頼
 
【会社員、公務員】 勤務先に記入してもらった「事業主の証明書」を受け取る
 
【全員】 運営管理機関に次の書類を提出する。運営管理機関によっては、オンラインで手続きできる場合もある。
「個人型年金加入申出書」
「預金口座振替依頼書兼自動払込利用申込書」
「加入者掛金配分設定届、確認書」
「本人確認書類」
「事業主の証明書(第2号加入者に係る事業主の証明書)」(会社員、公務員のみ)
 
【運営管理機関】 運営管理機関によって、国民年金基金連合会へ書類が提出される
 
【全員】「口座開設のお知らせ」(記録関連運営管理機関から)、「加入資格確認結果通知」(国民年金基金連合会から)が届くので、受け取る
 
【全員】口座開設完了! 掛け金の引き落としが開始

※必要書類や申込の流れは金融機関によって異なる場合があります。詳細は、各金融機関の公式サイトをご確認ください。
なお、この間に1カ月から2カ月ほど時間がかかるので、転職や退職の予定がある人は、タイミングに合わせて早めの準備が肝心だ。
 
また、会社員は企業型年金の加入状況によって、iDeCoに加入できるのかが変わってくる。2022年10月以降は、企業型確定拠出年金に加入していても、個人負担で掛け金を上乗せできるマッチング拠出をやっていなければiDeCoに加入することができるようになったので、その点も改めて確認しよう。
iDeCo(イデコ)に加入できない人の条件については、下記の記事をご覧ください。
iDeCo(イデコ)に加入できない人とは?対象外はどんなケース?

iDeCo(イデコ)の金融機関選びのポイントについては、下記の記事をご覧ください。
iDeCo(イデコ)のおすすめ金融機関は?3つの選び方のポイントで比較

申し込みで間違い多発の注意項目【全員共通】

スムーズにiDeCo口座開設の手続きを進めるためには、書類不備は避けたいところ。そこで、申込用紙を記入する際に、申込者全員共通で注意してもらいたい項目を解説していく。

1. 申込用紙の書式に注意

iDeCoの口座開設の申込用紙(個人型年金加入申出書)は、加入を希望する金融機関から取り寄せるが、この書類は国民年金の被保険者区分によって書式が異なっている。

このとき、あらかじめ国民年金の被保険者区分を申告して専用の用紙をもらう場合と、全ての被保険者区分の用紙がまとめて送られてくる場合がある。主要な受付金融機関では、資料請求の際に被保険者区分を申請して、専用の申出書を取り寄せる手順を採用しているが、まとめて送られてきた場合、自分の区分に合った用紙をしっかり確認しよう。用紙の一番上に「個人型年金加入申出書(第○号被保険者用)」と記載がある。

ちなみに、基本的には自営業や農業従事者は第1号会社員や公務員は第2号第2号被保険者の配偶者は第3号に区分される。

 なお、会社員や公務員は「個人型年金加入申出書」と一緒に「事業主の証明書」も送られてくるため、勤め先に記入を依頼しよう。

2. 記入漏れ多発の4項目に注意

申込用紙を記入するとき、特に注意が必要な4つのポイントは次の通り。今回は会社員など「第2号被保険者用」の「個人型年金加入申出書」(申込書)を例に見てみよう。

(1)被保険者区分
使用する申込用紙に記載されている被保険者区分が、自分に該当するかどうか確認しよう。

(2)基礎年金番号
会社員で年金手帳を勤め先に提出している場合は、番号は事前に調べておこう。

(3)掛金引落口座情報
掛け金の引き落としに、ネット銀行や一部の金融機関は指定できない。詳細は同封されている「手続き案内」に書かれているので確認しよう。

(4)毎月の掛金額
申し込み時に掛金額を設定しなければ口座を開設できないため、必ず記入しよう。記入欄が目立たない箇所にあるせいか、意外と書き漏れが多いようだ。

記入後は全ての記入欄を見直し、確認してから提出しよう。

申し込みで間違い多発の注意項目【会社員、公務員】

会社員、公務員(国民年金の「第2号被保険者」に該当する人)は、そのほかの申請者と比べて用意する書類やチェック事項も多いので、より注意も必要だ。ここでは会社員や公務員がiDeCo口座開設する際に提出する書類について、ミスが発生しやすい2つのポイントを紹介する。

1. 申込用紙の区分は「第2号被保険者」

加入の際、提出する書類の中でも特に記入ミスが多いのが「個人型年金加入申出書」(申込書)だ。この書類は国民年金の被保険者区分によって書式が異なるのだが、会社員であれば「第2号被保険者」と記載してある用紙を使う。

書類が届いたら、まず初めに用紙の区分が間違っていないかどうかを確認しよう。

2. 勤務先に記入してもらう書類は、提出前に自分でも確認

会社員と公務員の場合、「個人型年金加入申出書」(申込書)に加えて、勤務先に記入してもらう「事業所登録申請書兼第2号加入者に係る事業主の証明書」(事業主の証明書)がある。

公務員も勤め先に書いてもらう書類があるが、会社員のものよりも簡素で不備が比較的少ないことから、ここでは会社員の「事業主の証明書」で説明していく。

この「事業主の証明書」は、必ず勤め先に記入を依頼しなくてはならないため、提出から返却までの期間も、加入までのロスタイムとして念頭に入れておこう。

大企業であれば、すでにiDeCoに加入している従業員の前例があって、「事業主の証明書」に関する記入不備は少ないが、小規模の企業に勤めている人は注意が必要な場合がある。

会社によっては、担当者が初めてこの書類を目にするケースもあり、勤め先が記入した「事業主の証明書」が間違っていることもあり得る。つい「勤め先に書いてもらった書類がまさか間違っていることはないだろう」と思いがちだが、受付金融機関に提出後、記入漏れやミスが発覚することも実際にあるという。

「事業主の証明書」も、返送する前に必ず自分の目で確かめよう。特に以下の4点について、注意ポイントをまとめた。

(1)申出者の情報
「事業主の証明書」は勤め先が記入する用紙だが、この記入欄のみ加入者本人が記入する。

(2)押印欄
該当箇所は2カ所あるが、複写の2枚目以降も押印されているかを確認しよう。

(3)連合会への「事業所登録」の有無等
不明な場合は「わからない」にチェックが入っていても問題ない。

(4)申出者の掛金納付方法
実績がないなどの理由で、「事業主払込(=給料天引き)」を受け付けてもらえない場合は、「個人払込」でも問題ない。

口座開設までは約2カ月、書類不備を防いでスムーズな手続きを

無事に申込用紙を提出しても、すぐに積み立てをスタートできるわけではない。口座開設までは、およそ1〜2カ月かかるといわれている。これは、iDeCoを取りまとめている国民年金基金連合会で、希望者一人一人の条件確認を行っているためだ。

そのため、転職や退職を予定している人は、特に余裕をもって手続きを進めていきたい。受付窓口の金融機関で不備が見つかれば数日で連絡が来るが、国民年金基金連合会での審査で不備があった場合、返送や再提出のやりとりで余分に時間がかかってしまうからだ。

そのような事態にならないためにも、提出前にはしっかりと確認を取って、漏れやミスを防ぎたいところ。申込用紙を提出してから審査完了の知らせが届くまでの期間も考慮して、加入を決めたら早めに取り掛かろう。
ネット証券の口座開設については下記の記事をご覧ください。
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市川雄一郎

監修者 市川雄一郎

生活者目線の自由なトークが持ち味。物腰やわらかで明快な講義は、全国に多数のファンがいる。グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP(R)。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。1969年生まれ。グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、金融機関の職員や顧客に対する講義や講演も行う。「日本経済新聞」「日経ヴェリタス」「朝日新聞」「東洋経済」「週刊ダイヤモンド」などへの原稿執筆・コメント提供のほか、ラジオ日経などのメディア出演も多数。主な著書に『投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え』(日本経済新聞出版)がある。
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