特定の金融機関だけが発行できる「金融債」とは

 「金融債」とは特定の金融機関(銀行、金庫など)が発行できる債券のこと。現在発行ができる機関は8つに限られているが、そのうち7つの金融機関は新規発行をすでに終了している。新たに金融債を発行している金融機関は1つのみと、金融債自体の発行残高は縮小傾向にある。
 国債や外債などに比べてなじみの薄い債権といえる「金融債」だが、今回はその種類や概要をおさえ、「預金保険制度」適用によるメリットやデメリットをみていこう。

「金融債」ってどんな債券?

 「金融債」とは、特別法に基づき特定の金融機関が資金調達のために発行する債券のこと。金融債は社債と同様民間企業が発行する「民間債」であるが、普通社債が株式会社の発行するものであるのに対して、金融債は特定の銀行や金庫が発行するものである。金融債を発行できる金融機関は限定されており、現在金融債を発行できる金融機関は8つ。発行する金融機関の種類によって「銀行債」と「特殊金融債」に分かれる。

【銀行債】
 銀行債とは長期信用銀行法や外国為替銀行法(1998年に廃止)の対象となる銀行に発行が認められている金融債のこと。現在、銀行債の新規発行はいずれも終了している。
⇒発行できる金融機関
みずほ銀行/みずほコーポレート銀行/新生銀行/あおぞら銀行/三菱東京UFJ銀行(以上5つ)

【特殊金融債】
 特殊金融債とは農林中央金庫法や商工組合中央金庫法、信用金庫法の対象となる系統金融機関に発行が認められている金融債のこと。現在、新規発行を行っているのは「信金中央金庫」のみ。
⇒発行できる金融機関
農林中央金庫/商工組合中央金庫/信金中央金庫(以上3つ)

 上記の金融機関のうち、現在も発行しているのは信金中央金庫のみとなり、ほか7つの金融機関は金融債の新規発行を終了している。戦後から長きにわたり、金融機関にとって金融債は長期資金を得るための唯一の手段だった。しかし、1999年以降の金融自由化の進展とともに資金調達の手段は多様化。このため近年では金融債の発行残高は大きく減少し、1994年には80兆円近くにのぼった金融債の発行残高は、2003年には30兆円を切るまでに縮小した。

<表1>金融債の概要

売買

いつ買える

毎月発行

どこで買える

各商品を発行している金融機関
(現在、新規発行しているのは信金中央金庫のみ)

いくらから買える

額面1万円〜

売買時チェックポイント

発行体の信用度(格付をチェックする)

売買コスト

購入時:なし 
売却時:売却手数料

途中解約(中途売却)

1年目以降は可能だが手数料がかかる

保有

保有期間

・利付金融債:5年
・割引金融債:1年

保有コスト

なし

利率

商品により異なる

性格

使い勝手

金融機関が破たんした場合に損が出る可能性あり

リスク

途中売却、発行体破たんの場合に元本割れの可能性あり

リターン

利子の受け取り、途中売却の売却益

利益が出る条件

満期まで待つ

損が出る可能性

途中売却、発行体破たんの場合は可能性あり

こんな人が買い

満期まで待てる人

金融債の種類

 金融債の種類は【利付金融債】と【割引金融債】の2種類のみ。発行方法は発行者が事前に発行条件を決めて個人投資家向けに販売する「募集発行」と、発行総額を事前に決めずに法人向けに売り出す「売出発行」となっている。

【利付金融債(利付債)】
 利付金融債とは半年ごとに利子が支払われる金融債のことで、発行方法は個人向けの募集発行と法人向けの売出発行がある。償還期間(満期)は募集発行債が1〜5年、売出発行債が5年で、ともに1万円から購入可能。

【割引金融債(割引債)】
 割引金融債とは利子の支払いがない代わりに利子相当額を割り引いて発行される金融債のこと。発行方法は個人向けの売出発行のみ。割引金融債の償還期間は一般的に1年で、額面1万円から購入可能である。

 各金融債には発行銀行がわかるように、例えば新生銀行の発行する債券の場合は、「リッチョー(利付債)」、「ワリチョー(割引債)」など愛称が付けられていた(表2)。

<表2>各銀行が発行する金融債の種類とその愛称

発行金融機関名

利付金融債

割引金融債

みずほ銀行
みずほコーポレート銀行

リッキー

ワリコー

新生銀行

リッチョー

ワリチョー

あおぞら銀行

リッシン

ワリシン

東京三菱UFJ銀行

リットー

ワリトー

農林中央金庫

リツノー

ワリノー

商工組合中央金庫

リッショー

ワリショー

信金中央金庫

リツレン(※)

取り扱いなし

※現在、新規発行しているのは信金中央金庫発行の『リツレン』のみ

金融債の仕組みとメリット・デメリット 〜知っておきたい「預金保険制度」

 金融債の仕組みは基本的に国債や普通社債と同様で、半年毎に利子を受け取り、満期になったら金融債の購入時に支払った元本が償還されるというものである。この仕組みは定期預金ともよく似ているが、途中解約ができないうえ、原則1年間は中途売却も不可。さらに普通社債と同様、金融機関の信用度が金融債の安全性と収益性に反映される点がデメリットといえる。

 一方、金融債の大きな特長としては、「預金保険制度」の適用対象であることが挙げられる。個人向けの金融債は「保護預り契約」の対象であり、2001年4月以降に「預金保険制度」の適用対象となった。

 同制度は、万が一金融機関が破たんした場合、預金者の預金や金融債などを保護するための保険制度のこと。預金保険料を払うのは金融機関のため、預金者が保険料を支払う必要はなく、預金や対象となる金融債には自動的に預金保険がかかる。

 ただし、「預金保険制度」の適用対象となっている場合でも、保護対象となるのは預金者1人当たり元本1000万円までと破たん日までの利息等に限るので要注意。それ以上は、金融機関の財産の状況に応じて支払われることになる。この仕組みを「ペイオフ」と呼ぶ(定期預金も同様の扱いとなる)。

 また、法人向けの金融債の場合は「保護預り契約」の対象外のため「預金保険制度」も対象外。そのため、金融債は投資額以下しか戻らない場合がある。
※今回の特集内で紹介している情報やデータは2014年1月現在のものです。変更される場合もありますので、ご注意ください。
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