子ども版NISAは受験費用に充当できない!? 引き出し年齢制限の落とし穴

 今年から始まった少額投資非課税制度「NISA(ニーサ)」。若年層の投資を促すために導入されたが、活発に利用しているのは50代以上のミドル・シルバー層で、政府が狙った20〜30代の利用は全体のわずか1割程度に限られている。そこでNISA(ニーサ)拡充策として、2016年にも導入かといわれているのが「子ども版NISA」だ。しかし、期待される一方で、気になるのは“18歳の誕生日まで資産を引き出せない”という条件がある。果たしてNISA(ニーサ)活性化の救世主となるのか? 導入に伴う懸念点ともいうべき、課題をみていこう。

引き出し年齢制限の「落とし穴」 〜出費が膨らむ“大学入学前に使えない”可能性

 「子ども版NISA」に関する概要は、現在以下のように検討されている。

(1)祖父母や両親が子ども名義で投資する場合、年間100万円以下であれば売却益や配当が非課税
(2)利用対象は0〜18歳。現行NISA(ニーサ)は現在20歳以上が対象だが、こちらも18歳に引き下げ2年間の空白を作らないようにする
(3)18歳までは原則として非課税では引き出せない


 ここで注目したい、現行のNISA(ニーサ)と一番違う点は「(3)引き出しに制限がかかっている」こと。NISA(ニーサ)の場合、5年間の対象期間内で、年間100万円の枠を超えなければ、投資のタイミングも、引き出しのタイミングも自由である。投資した銘柄が値上がりしたら、即売却して、元金+値上がり益を引き出すという使い方も投資家の判断で自由にできる。

 一方「子ども版NISA」は、本人が18歳になるまで原則引き出せない、という案で現在検討されている。小中学生が証券会社にある自分名義の株式を売却して、そのお金を引き出すという行動は想像しがたく、また18歳までは、実際に資金を提供している祖父母や親の管理下にあるのだから、引き出しができないというのは一見納得がいく。

 しかし、祖父母や親からNISA(ニーサ)口座を譲り受けた若者が、18歳になったときに、その口座を活用して投資をするのだろうか。それまでに投資の経験や知識もなく、いきなり口座だけもらったとしても、資金を引き出して別の用途に使ってしまうのが妥当だと考えるのは、実際に高校生の息子がいる、私(筆者)だけだろうか…? 18歳といえば、大学受験を控えた学生が多く、もし、祖父母が孫のために作ったNISA口座であれば、その資金を18歳から始まる受験費用や大学4年間の学費に利用したいと思うのは、親の立場からは至極まっとうな意見に思える。

 しかし、ここで受験費用に充当するという計画に歯止めをかけるのが、資産引き出しの年齢制限だ。「子ども版NISA」の使い勝手の“悪さ”ともいえるかもしれない。

 受験生の教育費が膨らむのは、18歳の誕生日からではない。高校2〜3年生ともなれば、参考書の購入や塾・予備校通い。入試試験も、1学部3万円前後の入試費用と、合わせれば数十万円単位での出費となる。もちろん、晴れて大学合格、下宿となれば、新生活の準備資金も必須だ。そういった資金ニーズに、子ども版NISAは対応できない可能性があり、「そもそも、子ども版NISAの目的は何なのか」という疑問にぶつかってしまう。

現状で便利なのは「教育資金贈与の非課税制度」か?

 使い勝手の良さで考えるならば、2013年4月から2015年12月までの時限制度で創設された「教育資金贈与の非課税制度」に軍配が上がるだろう。こちらは、祖父母などが教育資金口座を開設し、孫1人につき1500万円を限度に生前贈与ができるというもの。孫は30歳までの間であれば必要に応じて、口座を管理している金融機関から資産を引き出し、教育資金の支払いに充てることができる。これであれば、幼稚園であろうが、小中学生、高校生であろうが、必要に応じて資金を引き出せる。

表1:「子ども版NISA」と「教育資金贈与の非課税制度」の比較

項目

子ども版NISA

教育資金贈与の非課税制度

制度期間

未定

2013年4月〜2015年12月

保有口座

一人一口座

孫一人につき一口座

非課税枠

年間100万円

1500万円

非課税期間

5年間

30歳まで

利用対象者

日本在住の0〜18歳未満

30歳未満

資産の引き出し

原則、18歳までは引き出し不可

30歳までいつでも引き出し可能

非課税対象となる資産の使い道

制限なし

教育資金に限られる

※「子ども版NISA」の項目はすべて現在検討中のもの

 今の20〜30代の親世代にとっても、1人1000万円とも、2000万円ともいわれる子どもの教育資金は頭の痛い問題。実際に準備をできない親も多く、今や、私立大学に通う学生の4割が奨学金を利用しているという話もあり、大学を卒業する時点で、何百万円もの借金を抱えているのが現状だ。

 どちらの制度も「お金に余裕がある祖父母、両親が相続対策に使うもの」という印象が拭えないのでは、現行のNISA(ニーサ)同様に幅広い世代への浸透は見込めず、若い世代には縁遠い話になってしまう。「子ども版NISA」が導入されることで、祖父母世代全体から現役世代に対してお金が回り、これらの負担軽減へとうまく機能すればと期待したいところである。
(文/酒井富士子)
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【プロフィール】
さかい ふじこ/経済ジャーナリスト。(株)回遊舎代表取締役。 上智大学卒。日経ホーム出版社入社。 「日経ウーマン」「日経マネー」副編集長歴任後、リクルート入社。「あるじゃん」「赤すぐ」(赤ちゃんのためにすぐ使う本)副編集長を経て、2003年から経済ジャーナリストとして金融を中心に活動。近著に「0円からはじめるつもり貯金」「20代からはじめるお金をふやす100の常識」「職業訓練校 3倍まる得スキルアップ術」「ハローワーク 3倍まる得活用術」「J−REIT金メダル投資術」(株式会社秀和システム)など。
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