『Pokemon GO』最大の経済効果は一体なに?

 スマートフォン向けゲームアプリ『Pokemon GO』が日本に上陸して2ヶ月が経とうしている。同アプリは、米ナイアンティック社とポケモン社が共同開発したもの。スマホの全地球測位システム(GPS)を活用して、現実世界のいろいろな場所を歩き回ってポケモンを探し、ゲットするゲームだ。

 7月6日にオーストラリアとニュージランド、アメリカで配信が始まり、日本には7月22日に上陸。世界累計ダウンロード数は推定1億を突破、「配信から最初の1ヶ月のダウンロード数が最多」「売上高1億ドル達成が過去最速」などの項目でギネス世界記録にも認定され、日本国内でも“社会現象”といえるほどの話題を集めている。今回は、この『Pokemon GO』が生み出す“本当の経済効果”について、森永卓郎氏が独自の視点でわかりやすく解説する。

■Topics
>>最大の効果は“キャラクターの人気復活” 新たなアプローチで再ブレイクを果たした

>>集客手段としても非常に有効な仕組み 経済効果は「リニア新幹線並み」

最大の効果は“キャラクターの人気復活” 新たなアプローチで再ブレイクを果たした

 まず金額面の経済効果ですが、メーカーとしての売上は1ヶ月で1億米ドルだったかな。日本円にすると100億円くらいです。1億人がダウンロードしたとすると、ひとりあたりたった100円程度しか使っていないので、大儲けというほどではないといえます。

  • 【画像】『Pokemon GO』ロゴ

 米ナイアンティックを部分的に所有し、ポケモン社の株式も保有している任天堂の株価でみると、アプリのリリース当初は急騰して、1ヶ月で時価総額が2兆円ほど増えました。ただ、その後、任天堂の取り分は少ないということでドーンと落ちたのですが、このゲームについてはそういった観点で見るべきではないと思っています。もっと長期的に見ないと、そのすごさはわからないのです。

 具体的にお話ししましょう。ポケモンが初めて世の中に登場したのは20年前です。ゲームやテレビアニメ、映画などでヒットを飛ばし、海外でも評価を受け、全世界における累計市場規模は4.8兆円以上にもなりました。ですが、20年前に夢中になっていた“ゲームボーイ世代”は大人になり、ゲームから遠ざかるとともに、彼らにとってのポケモン人気は上がりにくくなってしまったんです。普通のキャラクターが辿る運命ですね。ところが、今回新たに“アプリ”というアプローチをしたことにより、すっかり人気が復活した。ゲームボーイ世代が親になり、子どもと一緒にアプリを楽しんでキャラクターを共有することで、永遠の命が吹き込まれたんですよ。

 そうしたキャラクターは、本当に数が少ない。ウルトラマンや仮面ライダー、ガンダム、ミッキーマウス、ハローキティ、ドラえもん……10もないと思います。ポケモンは今回、再ブレイクを果たしたことで、これらに並んで世代を超えて愛される存在になるわけです。究極は、ディズニーランドならぬ「ポケモンランド」の開園でしょうね(笑)。

集客手段としても非常に有効な仕組み 経済効果は「リニア新幹線並み」

 任天堂の岩田聡氏という天才プログラマーが、同社の社長に抜てきされてから、「ゲームの未来はスマホと融合させるしかない」とずっと言っていました。しかし、なかなかおもしろいゲームが出なかった。『Pokemon GO』も、最初はゲームマニアから酷評されていたんですよ。だけど、実際はとてもよくできたゲームでした。これだけの人を動かしているのですから、リニア新幹線を東京から名古屋まで建設するくらいの効果、金額にして10兆円を超える効果が出てくると思いますよ。

  • 【画像】スマートフォン

 つまり、これから幅広く波及していくということ。今は主にプレーヤーが課金するゲームメーカーが儲かっていますが、『Pokemon GO』は集客の手段としても使われています。例えば、マクドナルドが国内の約2900店を「ジム」や「ポケストップ」に設定。7月の既存店売上高が前年同月比26.6%、8月は同15.9%伸びました。これは「スポンサード・ロケーション」と呼ばれるもので、今回でいうとゲームメーカーが提携企業からスポンサー料を受け取れる仕組みです。

 海外では、自分の施設でポケモンを捕まえるとポイントを付与する、といった特典に利用しているところもあるようです。個人的には今後、地域おこしに利用されて、地方限定ポケモンなんかがたくさん現れるといいなと思っています。
(2016/9/30)
■Profile/森永 卓郎(もりなが たくろう)
1957年7月12日生まれ、東京都出身。東京大学経済学部卒業。日本専売公社、日本経済研究センター、経済企画庁総合計画局などを経て、1991年から株式会社三和総合研究所(現:三菱東京UFJリサーチ&コンサルティング)の主席研究員を経て、現在は獨協大学教授。専門分野はマクロ経済学、計量経済学、労働経済、教育計画。