2015年10月02日 08時10分

祖父母の援助が非課税に! 「教育資金」特別措置の内容と注意点を紹介

祖父母などから援助を受ける「教育資金一括贈与の特例措置」の制度について紹介する [拡大する]

祖父母などから援助を受ける「教育資金一括贈与の特例措置」の制度について紹介する

 子どもが成長するにつれ、塾通いや進学費用など何かと出費は増えるもの。こうした子どもの教育にかかる出費増に、もし祖父母からの援助があれば、大きな助けになるのではないだろうか。もちろん、各家庭によって事情は異なるが、特別措置で非課税になるケースがあるので、紹介していく。

 祖父母などからの援助において、平成25年4月1日から始まった「教育資金一括贈与の特例措置」という制度を知ってもらいたい。注目を集めている理由としては、同制度で祖父母が孫などへ贈与を行った場合、1500万円までの一括贈与をしても非課税となるからだ。

 これなら教育費の捻出に頭を悩ませる子育て中の世帯にとっても、節税しながら子・孫世代へ財産を残したい祖父母にとっても、うまく使えばメリットは大きい。だが、注意すべき点もあるので、ここでよく理解してもらいたい。

■教育資金一括贈与の特例措置とは?

 この教育資金一括贈与の正式名称は「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」。平成25年4月1日から平成31年3月31日までの間に、祖父母などが、30歳未満の孫などへ、教育資金にあてるためのお金を贈与した場合、1500万円までは贈与を受けた人に贈与税がかからないというものだ。

 この制度を利用するには、信託銀行などで扱う対応商品へ信託したり、銀行の対応口座へ預けたりすることになる。仕組みを簡単に説明すると、まず祖父母が教育資金として贈与した金銭を専用の口座に入金し、その通帳を孫が受け取る。そして、教育資金が必要なときに、孫がその口座から教育資金の払い出しをする、といったイメージだ。ただし、払い出しができるのは、教育資金に限られるので、払い出しの際には、金融機関に領収書などを提出する必要があり、そこで内容の確認がされる。

 ここでいう教育資金というのは、学校などに支払う費用と学校以外の学習塾などに支払われる費用のこと。学校などに支払う費用は、幼稚園や学校の入学金や授業料、保育所の費用なども含まれる。学校以外に支払われる費用は、学習塾や習い事などの授業料、月謝など。ほかにも、教育に関わる費用、たとえば通学定期代や留学渡航費なども教育資金として認められる(ただし、学校以外に支払われる費用は500万円までとされている)。

 ただ、“教育”に関係ある支出がすべて教育資金に該当するとは限らない。たとえば、塾で使うテキストを一般書店で購入した場合、野球のグローブを専門店で購入した場合などは対象とならない。何が対象で何が対象外かは、制度の利用前に確認しておいた方がいいだろう。

■金融機関選びから慎重に

 この制度を実際に利用するにあたっては、複数の金融機関で対応商品を比較検討することをオススメしたい。選んだ金融機関とは長い付き合いになること、払い出し手続きなどが煩雑であることを考えれば、少しでも使い勝手のよい金融機関を選んだ方がいい。

 たとえば、払い出し方法一つとっても、事前払いができて、領収書の後日提出が可能、事前払いはできず領収書がなければ払い出し不可能、といった違いがある。入学金などの立替払いを避けたいのなら、事前払いができる金融機関の方が使いやすいだろう。こうした点は契約前にチェックしておいた方がよい。この制度の利用は、孫1人あたり、契約は1金融機関1営業所とされているので、贈与する側もされる側も、納得できる金融機関を選ぶのがいいだろう。

■贈与後の使い残しは“課税”に!

 また、この制度を利用するにあたって、気を付けるべき点は、“贈与の金額”。孫などが、贈与された口座の中のお金を30歳までに使い切れば、すべて非課税となるが、使い残してしまうと贈与税の課税対象となってしまう。余っても祖父母に戻すことはできないのだ。

 贈与時の孫の年齢、将来の進学予定、選ぶ学校が私立中心か公立中心か、といったことで、その後にかかる教育費は異なるもの。教育資金として使い切れるだけの額を試算して、贈与額をその範囲にとどめなければ、せっかくの一括贈与が損になることもあるので、注意が必要だ。

■親族間のもめごとの原因にならないように…

 制度以外にも気を付けておいた方がいいことがある。それは、受け取る側の兄弟同士や孫同士での不公平感に配慮しなければならない点だ。

 たとえば、子どもがいる兄弟の家庭には教育費の贈与があり、子どもがいない兄弟の家庭には贈与がない、といったことになれば、兄弟間での不公平感が生じやすい。贈与が相続税対策になったとしても、将来の遺産分割ではもめる原因になりかねない。

 また、まとまった金額の贈与をしたことで、祖父母が「お金を出したのだから口も出す」と、孫の教育に過干渉になることも考えられる。祖父母の性格にもよるが、贈与した金銭の“使いみち”となる孫の進路選択に関して、意見をされることがあるかもしれない。このようなことも、贈与を受ける前に考えておいた方がいいだろう。

 祖父母の資産額についても気を付けておきたい。贈与後に祖父母世帯の生活資金が足りなくなってしまった、では洒落にならない。老後の世帯では、余裕があるように見えても、急に介護が必要になって出費増ということもある。老いた祖父母の生活を第一に考え、無理のない範囲で贈与を受けることが重要だ。

 教育資金一括贈与の制度はメリットが大きいが、上手に活用するには、さまざまな側面から三世代で慎重に検討することが重要だ。そして、もしありがたく贈与を受けることになったら、やはり忘れてはいけないのは「感謝」の気持ち。贈与を受けたときだけでなく、孫の成長の節目ごとに、祖父母に感謝の気持ちを伝えることを忘れずに。

(記事/川口沙織)

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