2011年02月23日 14時30分
【アカデミー賞注目作品】ネット社会の“今”を描いたニュースな映画『ソーシャル・ネットワーク』
主人公の大学生マーク・ザッカーバーグを演じたジェシー・ アイゼンバーグはアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた（写真右から2番目）
現地時間2月27日（日本時間28日）に開催される『第83回アカデミー賞』授賞式。作品賞、監督賞、主演男優賞など8部門にノミネートされているデヴィッド・フィンチャー監督の『ソーシャル・ネットワーク』（公開中）は、『アカデミー賞』の前哨戦といわれるゴールデン・グローブ賞で作品賞・監督賞ほか最多4部門の受賞を含め、2月22日現在、47の映画賞・映画祭で131冠を達成し、映画史に残る作品の一つであることは間違いない。
同作は、昨年7月にユーザー数5億人を突破し、世界最大のソーシャル・ネットワーク・サービス（SNS）となった“フェイスブック”がどのようにして誕生し、成長していったのか、その後の2つの裁判の事実と創作を織り交ぜて描いた人青春ドラマ。
ハーバード大学に通う大学生のマーク・ザッカーバーグ（ジェシー・アイゼンバーグ）は高校時代から腕利きのハッカーだったが、その“オタク”ぶりが災いして、人付き合いに関しては奥手だった。ある夜、ネット上に身近な友人の情報交換ができる“大学の社交場”を作ることを思いつく。裕福な寮メイト、エドゥアルド（アンドリュー・ガーフィールド）にサーバーを借りる最初の資金を提供してもらい、“フェイスブック”をスタートさせる。
そのサービスは爆発的な人気を得るが、同じような時期に学内男女のネット上の出会いの場“ハーバードコネクション”を企画していた双子のウィンクルボス兄弟が、アイデアの盗用だと訴えてきた。一方で、共同創業者のエドゥアルドは「そろそろ利益を上げるべきだ」と提案するが、マークは「画面に広告が出たらクールじゃない」と反対、二人の関係はギクシャクし始める。
そんな折り、マークは音楽データ交換ソフト“ナップスター”創設者の青年実業家ショーン・パーカー（ジャスティン・ティンバーレイク）に出会い、アドバイスを受けるようになる。蚊帳の外に弾き出されてしまうエドゥアルドは創業者としての権利を主張し、マークを告訴した。2つの訴訟に巻き込まれてしまったマーク。その間にもサイトは世界各地で規模拡大を続けていた…。
正しいのは自分で、自分の記憶こそがこの件に関する真実だという語り手のマーク。彼にアイデアを盗用されたとするウィンクルボス兄弟、彼に裏切られたという創業時の共同経営者エドゥアルド。物語は、対立する三者が宣誓供述の場で顔をつき合わせながら当時を振り返る形で語られていく。巧みにフラッシュバックを使い、2つの時間軸を行きつ戻りつ進行させる立体的な構成で、真実はひとつではなく、互いに絡み合っている“3つの真実”を均等に扱い、最後は物語に対する判断を観客に委ねる。
マークはほかのどの登場人物もやらなかったことをやってみせた。それは、金のため？ 名誉のため？ 女子学生にモテたいため？ 映画では、彼が周囲の人に対してどんな行動をとったか、そこであった出来事を描くだけで、マークの内面はほとんど描かれない。だがフィンチャー監督は「彼の原動力は、正当に評価されていないという怒り」と見る。それは人間なら誰しも感じることであり、とくに現代の若者の多くが共感できる点かもしれない。
「マークがやっていることは映画が監督することとかわりない。何かを成長させ、さらに良いものにする。それがこの映画の主題でもある。そのために他の人を気づけなければならないのであれば、そうする。それが責任というものだ。他の人たちが祝杯をあげているときに、彼は夜中まで働かなければならないことを意味する。彼は望みをかなえた。でも、彼は孤独なんだ」と、フィンチャー監督は語っている。
実在のマークは昨年9月、米経済誌『フォーブス』が発表した米国長者番付で、アップルの創設者スティーヴ・ジョブスCEO（推定資産61億ドル、42位）を上回る推定資産69億ドルで35位にランクインし、大きなニュースとなった。昨年11月には米雑誌『タイム』の「今年の人（Person of the Year）」にも選出された。
彼が“フェイスブック”を立ち上げたのはハーバード大学在籍中の2004年2月。まさに時の人の、ほんの6年ほど前の出来事を、映画というエンターテインメントに昇華させたスピード感が、世界を一瞬にしてつなぐ現代のネット社会を映しだしているというか、実に今っぽい。果たして『ソーシャル・ネットワーク』はオスカーを獲得できるのか──。
【第83回米アカデミー賞】ノミネート発表<(11/01/26)
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