2017年10月01日 11時20分

新制度“つみたてNISA”2018年スタート 金融庁が推奨する理由とは?

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「つみたてNISA」新制度が始まる理由と特徴

 いよいよ、2018年1月から「つみたてNISA」がスタートとなる。「つみたてNISA」とは、その名の通り、積立投資で得た利益を非課税で受け取れる制度のことだ。しかし、通常の「NISA」(以下、現行NISA)や、未成年の名義で加入できる「ジュニアNISA」もあるのに、今回わざわざ新制度が始まるのはなぜなのだろうか。制度開始を前に、その理由と特徴を探ってみた。

■通常のNISAとの違いとは?

 つみたてNISAの一番大きな特徴は、長期積立を前提とした制度設計になっている点だ。2014年からスタートした現行NISAで投資できる金額上限は年間120万円、非課税期間は5年間であるのに対し、つみたてNISAは年間40万円、非課税期間は20年だ。購入できる商品も、現行NISAでは限度額内であれば、個別株でも投資信託でも好きな商品を選んで購入することができるのに対し、つみたてNISAでは金融庁が定めた基準を満たした投資信託とETFのみに限られる(図表1参照)。商品選定には、販売手数料がゼロ、保有中のコスト(信託報酬)も最大で1.5%以下などの厳しい条件が課される。

■現行NISAがあるにもかかわらず、なぜ新制度がスタートするのか

 2014年に現行NISAがスタートして以来、口座数は順調に増え続け、2016年12月時点では1069万の口座がある。一見、現行NISAは十分に普及したかのように思える。しかし、蓋を開けてみると、口座開設以降一度も買い付けを行っていない非稼動口座は多く、その数は約4割にのぼる。期待されたほど、投資にはお金が流れていないのが現状だ。

■金融庁が「長期・積立・分散投資」を推奨

 金融庁が公表している「長期・積立・分散投資」の効果を裏付けるデータをによると、1995年〜2015年の間に毎年同額を積み立てていった場合、定期預金のリターンが0.1 %であるのに対し、国内・先進国・新興国の株・債券に1/6ずつ投資した場合のリターンは4.0%の高水準をマークしたという。

 日本人の持つ約900兆円もの現預金が、このような長期・積立・分散投資に移行すれば、家計の金融資産の安定的な増加が見込める。結果的には経済全体の成長にもつながるというのが金融庁の思惑だ。

 また、現在の日本には、リスクが比較的高めのREIT(不動産投資信託)やハイ・イールド債で運用する投資信託が純資産残高(=投資信託の規模)上位を占めているといった別の問題もある。特に、販売会社に勧められるままに高リスクで手数料も高い商品を購入してしまう高齢者のケースが非常に多い。こういった悪弊を断ち切り、国民が正しい投資知識を得られるよう金融庁は長期積立投資の普及を進めており、今回のつみたてNISAもその一環だ。だからこそ、商品選定に厳しい要件を定めて、消費者がおよそ長期投資には向いていない高コストでリスキーな商品を選んでしまわないようにしている。その点からいえば、つみたてNISAは現行NISA以上に消費者に優しい制度となっている。

 なお、つみたてNISAが開始となる2018年からは、毎年開設する口座を現行NISAかつみたてNISAのどちらか一方を選ばなければならない。先述のように、両者には上限金額や購入できる商品、運用できる期間などに違いがある。開設する金融機関によっても商品ラインナップは変わるので、下調べが必要だ。10月からは申込が開始となり、すでに情報公開している金融会社も出始めている。来年からのスタートに乗り遅れないよう、私たちも準備を始めよう。

(永井志樹子)

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