自動車保険にはさまざまな特約があります。特約とは、保険の主契約だけではカバーできない損害の補償や、契約者にとって補償が不十分だと思われる範囲を、手厚くカバーするための上乗せ的な契約です。特約には、主契約に手頃な保険料を上乗せすることで補償を充実させたり、あるいは補償の範囲を限定することによって保険料の割引きされるものがあります。
ここでは、車を運転する人を自分と家族だけに限定することで保険料が割引きされる「運転者家族限定特約」の概要と、特約を使う際の注意点について説明します。
運転者家族限定特約とは
運転者家族限定特約は、ほとんどの保険会社の自動車保険に付帯できる特約です。単に「家族限定特約」と省略される場合もありますが、ドライバーを限定する特約であることから、保険会社によっては「運転者限定特約(家族限定)」などと表記されることもあります。
一般的な自動車保険の場合、保険は人ではなく車に対して契約が結ばれます。このため、記名被保険者以外が車を運転していても、事故の際には補償が受けられます。
運転者家族限定特約は「車をおもに運転する本人(記名被保険者)とその配偶者、家族だけが運転していたときの損害のみを補償の対象とする」特約です。ドライバーを限定しますが、その分、保険料は割引かれます。しかし、この特約をつけてしまうと、例えば「車を知人に貸して事故を起こした」といった場合は、補償の範囲に入らなくなりますのでご注意ください。
一見、リスクを伴う特約のように感じますが、もし知人に車を貸さなければいけない状況になっても、知人の自動車保険に他車運転特約が適用されるようなら問題ないですし、自動車保険に加入していない人は、短期の1日自動車保険に加入してもらえばいいのです。そう考えれば、運転者家族限定特約を付加しても問題はほとんどないでしょう。
ですが、運転者家族限定特約の割引率は約1%と、それほど保険料が安くなるわけではありません。保険料にもよりますが、一般的には年間で数百円〜1000円台くらいの効果しかありません。家族以外も運転する可能性がある人は、無理にこの特約にこだわる必要はないかもしれません。なお、家族が配偶者しかいない場合は、「運転者本人・配偶者限定特約」をつければ、割引率が一気に約7%まで跳ね上がります。こちらなら、それなりの効果があるのではないでしょうか。
「家族」の定義と適用範囲
自動車保険でいう「家族」は「記名被保険者(契約者本人の場合が一般的)とその配偶者、記名被保険者またはその配偶者の同居の親族、記名被保険者またはその配偶者の別居の未婚の子」と定められています。わかりやすく書き直すと「配偶者、同居の子ども(年齢条件が適用されます)、別居で未婚の子ども(年齢条件はなし)」が、おもな対象になるということです。
「同居の親族」とは、一つの建物に同居している親族で、配偶者、6親等以内の血族、3親等以内の姻族をいいます。6親等以内の血族というと親・祖父母・曾祖父母・叔伯父母・兄弟姉妹・いとこ・はとこ・甥姪・子・孫・曾孫…と、非常に範囲が広くなります。親戚が同居している大家族などは、ほとんどのケースで適用できるでしょう。
運転者家族限定特約では、このような家族の定義を巡って誤解が生じがちです。例えば「結婚したが同居している長男」は家族に該当しますが、「結婚して別居した長男」は家族に該当しません。また、「一人暮らしをしている未婚の次男」は、同居していなくても家族に該当します。「同居」か「別居」、「婚姻」か「未婚」などで条件が変化しますので、勘違いするケースが多いのです。
注意したいのは、「当然家族だ」と思い込んでいる(契約者も当人もそう認識している)相手が、日常的に契約者の車を運転している状態です。例えば、結婚して別居している子どもが「親の運転者家族限定特約で補償されている」と思って、親の車で事故を起こしたとしましょう。この場合、親の自動車保険は適用されませんから、自賠責保険で賄えない部分の賠償を、すべて個人負担しなくてはならなくなります。このような状況で、万一人身事故でも起こしたらたいへんなことになります。現在、家族限定特約をつけている方は、車を運転する可能性のある人が対象になっているかどうかを確認したほうがいいでしょう。
その他の運転者限定特約
運転者限定特約には家族型のほかにも、保険会社によってさまざまな特約があります。
・運転者本人限定特約(本人のみ)
・運転者本人・配偶者限定特約(本人と配偶者のみ)
・家族内記名運転者限定特約(家族のうち、特定の人だけを補償対象に加える)
・家族外運転者特約(家族以外の特定の人を補償対象に加える)
運転者限定特約は、範囲を狭めるほど保険料を安くすることができますから、車の利用に支障がない限り、できるだけ範囲を狭くするといいでしょう。
運転者家族限定特約の注意点
運転者家族限定特約は、その性質上「限定者以外の人の運転による事故は一切補償されない」という制約があります。「時々いとこが車を借りに来る」「同居している婚約者が車を運転する」などのケースがあるのなら、注意が必要です。このような場合は、事故の際はその人が加入する自動車保険で補償してもらうか、家族外運転者特約(家族以外の特定の人をドライバーに加え、補償の対象とする)をつけたほうがいいでしょう。
なお、自動車保険には運転者限定とは別に「運転者年齢条件」があります。家族であっても、運転者年齢条件で定められる年齢以下の人が事故を起こした場合は、補償の対象となりません。家族限定特約をつけるなら、加入時に「車を運転する可能性がある最も若い人」に年齢条件を合わせておきましょう。
ドライバーの範囲は、保険会社によって細かな違いがあります。ここでは一般的な説明をしていますので、詳細に関しては必ず加入している保険会社のWebサイト等でご確認ください。
※2017年5月、損害保険料率算出機構は「家族限定」の料率算出を廃止しました。これにより、今後各保険会社での取扱いにも影響が出る可能性があります。