自動車保険の等級制度とは 割引率が上下する仕組み
等級とはどういうものか
ちなみに、ノンフリート等級別料率制度は、自動車保険のノンフリート契約(車1台単位の契約)に適用される等級制度のことなので、厳密には「等級別料率制度=ノンフリート等級制度」ではない。しかし、契約者が所有・使用している車が10台以上でフリート契約、10台未満の場合にノンフリート契約が適用されるため、個人向けの一般的な自動車保険は、ほぼノンフリート契約となる。このため、一般個人向けの自動車保険に関する解説では「ノンフリート」を省略し、単に「等級別料率制度」または「等級制度」などと呼ばれることが多い。
【図表】等級別割増引率(継続契約の場合)
等級
無事故
事故有
1等級
+64%
+64%
2等級
+28%
+28%
3等級
+12%
+12%
4等級
−2%
−2%
5等級
−13%
−13%
6等級
−19%
−19%
7等級
−30%
−20%
8等級
−40%
−21%
9等級
−43%
−22%
10等級
−45%
−23%
11等級
−47%
−25%
12等級
−48%
−27%
13等級
−49%
−29%
14等級
−50%
−31%
15等級
−51%
−33%
16等級
−52%
−36%
17等級
−53%
−38%
18等級
−54%
−40%
19等級
−55%
−42%
20等級
−63%
−44%
等級がアップ・ダウンするしくみ
契約期間における事故歴によって、次年度の保険料の割引率や割増率が決定。多くは1年ごとの更新だが、その期間に事故を起こすことがなければ、翌年度に1等級アップし、より高い割引率を得られるので保険料は安くなる。一方で、事故を起こして保険を使用すると、翌年度は原則3等級ダウンし、割増率が適用され保険料は高くなる。
※一定の条件を満たす場合に、7等級からスタートするケースもある。
■事故の有無によって割引率は異なる
等級が同じでも7等級からは、保険料負担を公平にするため前年に事故を起こした「有事故」なのか、または事故を起こしてない「無事故」なのかによって、適用される割引率が区分けされ、同じ等級であっても有事故の方が無事故に比べて割引率が低くなる。この有事故契約者の場合は3年間、事故を起こさなければ無事故契約者と同じ割引率となる。
■20等級で無事故なら翌年の保険料は…
20等級になり無事故であった場合、次年度の等級は20等級のまま。なお、ノンフリート等級が20等級であり、保険期間中に保険事故(ノーカウント事故を除く)が発生しなかったなど決められた条件を満たす場合、「長期優良割引(保険会社によって名称は異なる)」といって割引が適用される保険会社がある。一方、長期優良割引が廃止となった保険会社もあるので、加入している保険会社に確認してみよう。
■制度改定で事故を起こした人の割引率が低く
等級制度は2012年4月に改定され、「事故有係数」が導入された。以前は、事故を起こしても無事故でも等級が同じであれば、基本的に同じ割引・割増率だったが、改定により事故を起こした人には「事故有係数」が適用され、無事故の人の割引率より低くなることになった。
たとえば、13等級のドライバーが事故を起こした場合、翌年は3等級ダウンして10等級になり、割引率は23%となる。ところが、9等級のドライバーが無事故で1等級上がって同じ10等級になった場合、割引率は45%と、その差は22%にも及ぶのだ。
【一例】同じ10等級でも…
事故で等級ダウン 13→10等級 割引率23%
無事故で等級アップ 9→10等級 割引率45%
ただし、これは事故を起こして保険を使用した場合に限る。事故を起こしても免責の範囲内だったり、免責金額を超えても保険を使わずに自己負担で対応した人には、事故有係数は適用されない。
事故例:事故の種類によって下がる等級が変わる
どのような事故によって等級が下がるのか、それぞれの事故例をあげてみる。
【3等級ダウン事故〜保険を使う事故1件につき3等級下がる事故の例〜】
・他人にケガをさせ対人賠償保険金が支払われる事故
・他人の車と接触し、対物賠償保険金が支払われる事故
・車を家の駐車場でぶつけて車両保険金が支払われる事故
たとえば現在の契約が11等級で保険金を使う事故が1件あった場合は、次年度の等級は8等級になる。
【1等級ダウン事故〜保険を使う事故1件につき1等級下がる事故の例〜】
・車が盗難にあって車両保険金が支払われる事故
・台風、洪水など水災に遭い、その被害で車が壊れ車両保険金が支払わる事故
・落書きやいたずらによる車の修理に車両保険金が支払われる事故
たとえば現在の契約が11等級で保険金を使う事故が1件あった場合は、次年度の等級は10等級になる。
【ノーカウント事故〜保険を使う事故があっても等級が下がらない事故の例〜】
・自動車事故で同乗者がケガをして搭乗者傷害保険金が支払われる事故
・原動機付自転車で他人にケガをさせてしまい、ファミリーバイク特約の保険金が支払われる事故
・家族が自転車で他人にぶつかりケガをさせてしまい、個人賠償責任特約の保険金が支払われる事故
ノーカウント事故のみで他に等級が下がる事故を起こしていなければ、次年度の等級は1等級上がる。たとえば現在の契約が11等級であれば次年度の等級は12等級になる。
【図表】事故を起こした場合の等級変動例
―
無事故係数適用
事故有係数適用
1年目
18等級(事故発生)
―
2年目
―
15等級
3年目
―
16等級
4年目
―
17等級
5年目
18等級
―
(例2)18等級で1等級ダウンする事故を起こした場合の等級変化
無事故係数適用
事故有係数適用
1年目
18等級(事故発生)
―
2年目
―
17等級
3年目
18等級
―
(例3)18等級で3等級ダウンする事故を起こし、翌年さらに3等級ダウンする事故を起こした場合の等級変化
無事故係数適用
事故有係数適用
1年目
18等級(事故発生)
―
2年目
―
15等級(事故発生)
3年目
―
12等級
4年目
―
13等級
5年目
―
14等級
6年目
―
15等級
7年目
―
16等級
8年目
17等級
―
等級は引き継げる?
このため、自動車保険では「等級の引き継ぎ」を行えるのが一般的だ。保険会社間で等級を引き継ぐ場合、各保険会社と一部の共済組合とのあいだで、前の保険契約に関する情報を交換するネットワーク(自動車保険の等級情報交換制度)があり、異なる保険会社間でも等級が引き継がれるようになっている。そのため、ユーザーは安心して保険の切り替えを検討できるのだ。逆に、事故で等級が大きくダウンした場合も、ほかの保険会社で6等級からやり直すことはできないようになっている。
なお、保険会社を変更しても等級を引き継げるが、等級アップのタイミングには注意を払う必要がある。等級は1年間無事故ならひとつ上がるが、そのタイミングは満期日となっている。契約期間の途中で保険会社を変更してしまうと等級アップは行われないので、保険会社を切り替える際は満期日で行ったほうが有利になるので覚えておこう。
なお、切り替える保険会社によっては、「保険期間通算特則」という制度で前保険契約期間と合算して無事故期間として取り扱ってくれる場合もある。そのような制度がないか、変更前に確認してみるといいだろう。
また、等級の引き継ぎは保険会社間だけでなく契約車両の入れ替えや、家族間でも引き継ぐことができる。自動車保険料を安くするためには、こうした等級のルールや仕組みを把握しておこう。
自動車保険を使わない方がお得なケースがある?
等級は、自動車保険料に大きく影響する。無事故で等級が高いほど保険料はおさえられるので、ぜひ安全運転を心がけ、身を守りながら保険料の節約にもつなげてほしい。