犬の脱毛・毛が抜ける原因は?皮膚が見えるのは病気?症状別の対処法を解説

犬の脱毛・毛が抜ける原因は?皮膚が見えるのは病気?症状別の対処法を解説

犬の抜け毛や脱毛は自然な場合もあれば、病気のサインであることもあります。

本記事では「正常な抜け毛」と「危険な脱毛」の見分け方をわかりやすく解説し、症状別の対処法や自宅でできるケア方法を紹介します。

ぜひ愛犬の様子を確認する際の参考にしてください。
まさの森・動物病院 院長 安田賢

監修者まさの森・動物病院 院長 安田賢

日本獣医生命科学大学卒業。
幼少期より動物に興味を持ち、さまざまな動物の飼育経験を持つ。
2012年11月、石川県金沢市にまさの森・動物病院を開業。

※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。

mokuji目次

  1. まずはセルフチェック!心配ない抜け毛との見分け方
    1. 季節の変わり目「換毛期」
    2. 犬種や部位によって毛が少ない場合がある
    3. 加齢(老化)による自然な変化
  2. 【症状・部位別】早めの受診を! 病気が隠れている可能性のある脱毛と考えられる病気一覧
    1. 「かゆみ」や「赤み」を伴う脱毛
    2. 皮膚に異常がある脱毛(フケ、かさぶた、黒ずみなど)
    3. 「左右対称」に毛が抜ける・薄くなる脱毛
    4. 特定の部位に起こる脱毛(円形脱毛、鼻、耳、尻尾など)
    5. ストレスや精神的な要因による脱毛
  3. 自宅でできる!愛犬の皮膚と被毛の健康を保つためのケア方法
    1. 栄養バランスの取れた食事
  4. 住環境を清潔に保つ
    1. 定期的なブラッシングとシャンプー
  5. 愛犬のもしもの病気に備える、ペット保険という選択肢

まずはセルフチェック!心配ない抜け毛との見分け方

まずはセルフチェック!心配ない抜け毛との見分け方

愛犬の毛が抜けていると「病気かもしれない」と不安になりますよね。しかし、犬の抜け毛のすべてが病気によるものではありません。基本的に、犬の毛が抜けるのは自然な現象であり、換毛期や加齢に伴う代謝機能の低下などの生理的なものも多く存在します。

まずは以下のチェックリストで、愛犬の状態を確認してみましょう

これらすべての項目に当てはまる場合、病気の可能性は低いと考えられます。ただし、複数当てはまらない場合や、他の症状がある場合は、次の章で解説する病気のサインかもしれません。
【抜け毛チェックリスト】
1. 全体的に毛が抜けるが、皮膚は見えていない
2. かゆがったり、痛がったりする様子はない
3. 皮膚に赤み、フケ、かさぶたなどがない
4. 食欲や元気はいつもと変わらない
5. 特定の季節(春・秋)に抜け毛が増えている

季節の変わり目「換毛期」

換毛期は、犬の被毛が季節に応じて大規模に入れ替わる期間を指します。この現象は、季節ごとの気温変化に身体を順応させるために起こり、一般的には春季と秋季に発生します。

犬の被毛タイプは犬種により異なり、「ダブルコート(2重構造)」と「シングルコート(1重構造)」の2つに大別されます。

換毛期が顕著に現れるのは主にダブルコートの犬種で、柴犬やゴールデンレトリバーなどが該当します。

ダブルコートの犬は、表層の硬い毛(オーバーコート・上毛)と、その下の柔らかい毛(アンダーコート・下毛)という2層の被毛構造を備えています。

換毛期で被毛が入れ替わるのは主にアンダーコート部分です。
暑い季節に適した「夏毛」と寒い季節に適した「冬毛」が、それぞれの季節に合わせて生え替わることで、体温の調整機能を果たしています。

換毛期には大量の毛が抜けるため不安になるかもしれませんが、犬の体に起こる自然な現象なので心配する必要はありません

犬種や部位によって毛が少ない場合がある

脱毛ではなく、犬種や体の部位によって元々被毛が少ないケースがあります。

たとえば、チャイニーズ・クレステッド・ドッグなど一部の犬種は「ヘアレスドッグ」と呼ばれ、生まれつき毛が少ない、あるいは特定部位にしか毛が生えないのが正常です。
また、耳や鼻の周り、関節部分、腹部などは多くの犬種で被毛が薄い傾向があります。こうした部位の「毛の少なさ」は病気ではないため、皮膚に赤みやかゆみなどの症状がなければ心配は不要です。

まずは犬種や部位の特徴を踏まえた上で、異常かどうかを見極めましょう。

加齢(老化)による自然な変化

加齢に伴い身体の代謝機能が落ちることで、毛の生え変わりや皮膚の新陳代謝の周期が遅くなることがあります。それに伴い、薄毛になったり、被毛の色が淡くなったりすることがあります。

中高齢になると代謝機能が徐々に落ちることで栄養バランスが崩れると、毛艶の悪化や被毛のゴワつき、皮膚がフケっぽくなるなど、被毛や皮膚状態に変化が見られるようになります。

さらにシニア期になると毛包や皮膚の機能が低下し、毛が細くなって薄毛になったり、白毛が増えたりすることもよく見られます。
これらは自然な老化現象の1つで、病気ではありません。ただし、急激な変化や皮膚の異常、かゆみなど他の症状を伴っている場合は、動物病院での診察をおすすめします。

【症状・部位別】早めの受診を! 病気が隠れている可能性のある脱毛と考えられる病気一覧

【症状・部位別】早めの受診を!病気が隠れている可能性のある脱毛と考えられる病気一覧

ここからは、動物病院での診察が必要な脱毛について解説します。

脱毛とともに以下で紹介するような症状が認められた場合は、皮膚などに何らかのトラブルが起きている可能性があります。

皮膚の病気は放置すると二次感染を起こして治りにくくなってしまうこともあるので、早めに動物病院に連れて行きましょう。

愛犬の症状を観察する際は、脱毛だけでなく、皮膚の状態(赤み、黒ずみ、フケ、かさぶたなど)や、他の症状(かゆみ、元気の有無、食欲など)を併せて確認することが重要です。

症状や脱毛パターンによって疑われる病気が異なるため、次の各項目で愛犬の状態と照らし合わせてみましょう。
なおここで紹介する内容は、あくまで飼い主が異変に気づくためのヒントです。自己判断せず、必ず獣医師の診断を受けるようにしましょう。

「かゆみ」や「赤み」を伴う脱毛

強いかゆみは犬にとって大きな苦痛であり、掻き壊しによる二次感染のリスクもあるため、早めの受診が必要です。

考えられる主な病気として、以下のものが挙げられます。
「かゆみ」や「赤み」を伴う脱毛で考えられる主な病気

考えられる主な病気

症状

アレルギー性皮膚炎(アトピー、食物アレルギー)

特定の食べ物やハウスダストなどが原因。アトピー性皮膚炎の場合は足や顔に症状が表れやすく、食物アレルギーでは目や口の周りなど全身の広い範囲で脱毛や赤みが見られる。多くの場合、強いかゆみを伴う

膿皮症(のうひしょう)

皮膚の常在菌が異常増殖し、赤いブツブツや膿疱、円形の脱毛、かさぶた、フケが見られる

ノミ・ダニなどの外部寄生虫(疥癬、ニキビダニ症など)

激しいかゆみを伴うことが多い。ノミアレルギー性皮膚炎では腰部と下半身に症状が表れやすく、ニキビダニ症では局所または広い範囲で脱毛が見られる

膚糸状菌症

カビ(真菌)の一種。感染した被毛が弱ることで境界が明瞭な脱毛が認められるのが特徴。円形に毛が抜け、フケや赤みを伴う。人にもうつる可能性があるため注意が必要

皮膚に異常がある脱毛(フケ、かさぶた、黒ずみなど)

フケやかさぶた、黒ずみなど、皮膚に異常が見られる場合は、皮膚や体内で何らかの問題が起きているサインです。

皮膚の常在菌である細菌や酵母の増加により皮膚に炎症が起こると、かゆみ行動が見られることがあります。この物理刺激に伴い、被毛が薄毛になったり脱毛が見られたりすることがあります。

また栄養バランスの偏りによって被毛の光沢(毛艶)の低下や折れやすさ、脱毛、皮膚の乾燥やベタつきといった変化が起こることがあります。皮膚の色素沈着がホルモン異常や慢性的な炎症の結果として生じることもあります。

考えられる主な病気として、以下のものが挙げられます。
皮膚に異常がある脱毛(フケ、かさぶた、黒ずみなど)で考えられる主な病気

考えられる主な病気

症状

脂漏症(しろうしょう)

皮膚がベタついたり、逆にカサカサしてフケが多くなったりする。独特の匂いを伴うこともある。シーズーやヨークシャーテリアなどで多く、二次感染を伴ってかゆみが出るケースが多い

皮膚の色素沈着

ホルモンの異常や慢性的な皮膚炎の結果、皮膚が黒ずんでくることがある

また、皮膚のバリア機能が悪くなることで皮膚の常在菌が異常に増えてしまい、二次感染を起こすこともあります。偏食傾向の犬や完全手作り食の犬では栄養不足に陥ることがあるので注意が必要です。

「左右対称」に毛が抜ける・薄くなる脱毛

体の左右対称に、かゆみを伴わずに脱毛が広がる場合は、ホルモンが関係する内分泌疾患の可能性が高いと考えられます。

ホルモンは体のさまざまなはたらきを調節する化学物質であり、皮膚においては肌の新陳代謝や被毛の生え変わりに関係しています。

考えられる主な病気として、以下のものが挙げられます。
「左右対称」に毛が抜ける・薄くなる脱毛で考えられる主な病気

考えられる主な病気

症状

甲状腺機能低下症

元気消失、悲しげな顔つき、体重増加、皮膚にたるみが出ることが多い。6歳前後の中高齢から発症する傾向にあり、胴体やしっぽに左右対称性の脱毛や薄毛が見られる。かゆみは二次感染を伴わない限りは少ない

副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)

多飲多尿、食欲増進、お腹が膨れるなどの症状を伴う。主に胴体に対称性の脱毛が見られる。中高齢の犬でよく見られ、放っておくと全身の毛が薄くなってしまうことがある

特定の部位に起こる脱毛(円形脱毛、鼻、耳、尻尾など)

全身ではなく、体の一部にだけ脱毛が見られるケースもあります。

考えられる主な病気として、以下のものが挙げられます。
特定の部位に起こる脱毛(円形脱毛、鼻、耳、尻尾など)で考えられる主な病気

考えられる主な病気

円形脱毛(10円はげ)

ストレスや免疫の異常、皮膚糸状菌症など

鼻、目の周りの脱毛

アレルギーや自己免疫疾患、日光過敏症など

耳の脱毛

耳介辺縁皮膚症、疥癬、アレルギーなど

尻尾の脱毛

甲状腺機能低下症(ラットテイル)やストレスで尻尾を噛むなど

ストレスや精神的な要因による脱毛

犬も人間と同じようにストレスや不安、痛みを感じます

強いストレスや不快感を紛らわすために足先などを執拗に舐めたり咬んだりする「過剰グルーミング」を行い、その結果、脱毛が起こることがあります。

この行動は軽度であれば一過性の場合もありますが、脱毛が見られるほど続く場合は、ストレスの蓄積や精神的な問題が背景にある可能性が高く、動物病院での相談が必要です。
ストレスの原因としては、引越しや家族構成の変化といった環境の変化、運動不足、スキンシップ不足などが考えられます。

飼い主が愛犬の行動をよく観察し、思い当たる要因を1つずつ取り除くことで改善が期待できますが、重度の場合は精神安定剤や抗不安薬が処方されるケースもあります。自己判断せず、早めの受診を心がけましょう

自宅でできる!愛犬の皮膚と被毛の健康を保つためのケア方法

自宅でできる!愛犬の皮膚と被毛の健康を保つためのケア方法

病気による脱毛を予防し、愛犬の皮膚と被毛の健康を保つためには、日々のケアが大切です。地肌が見えるまでの脱毛を起こしてしまうと、原因によりますが被毛が元に戻るまでに時間を要します。

ここでは、犬の被毛ケアにより被毛状態をよりよく保つ方法をご紹介します。被毛ケアを日常に取り入れると、いつもより皮膚や被毛を見ることになり、皮膚トラブルや体調の変化に気づくきっかけになります。

ただし、これらのケアはあくまで健康な皮膚を維持するためのものであり、すでに病気が疑われる場合の治療に代わるものではありません。脱毛や皮膚の異常が見られる場合は、まずは動物病院を受診してください。

栄養バランスの取れた食事

犬の皮膚や被毛は体に占める割合が大きく、新陳代謝には、タンパク質や脂質、ビタミン、微量ミネラルと十分な栄養素が必要になります。

これらの栄養素が不足すると、被毛の光沢(毛艶)の低下、被毛が折れやすくなったり抜け毛やフケが増加したりといった変化が見られることがあります。
年齢ステージに応じた食事を選び、良質なたんぱく質や皮膚バリア機能を高めるオメガ脂肪酸などが含まれたご飯を選ぶことがおすすめです。偏食傾向の犬や完全手作り食の犬では栄養不足に陥ることがあるので注意が必要です。

皮膚の健康維持に配慮したドッグフードサプリメントの活用も、選択肢の1つとして検討してみましょう。

住環境を清潔に保つ

愛犬が生活している環境を清潔に保つことは、皮膚や被毛の健康を守るために重要です。不衛生な環境は、細菌や真菌、外部寄生虫が繁殖しやすくなり、皮膚トラブルの原因となります。

愛犬の寝床やブランケットをこまめに洗濯し、清潔な状態を保ちましょう。床や家具に付着した抜け毛やホコリは定期的に掃除することで、アレルゲンの蓄積を防ぐことができます。

また、食器や水入れも毎日洗浄し、細菌の繁殖を防ぎましょう。
また、換毛期には大量の毛が抜けるため、こまめなブラッシングとともに生活空間の掃除を徹底することが大切です。抜け毛が体についていると二次的な感染症を引き起こす原因になるので、定期的なケアを心がけましょう。

飼育環境を清潔に保つことで、皮膚病の予防や再発防止につながります。

定期的なブラッシングとシャンプー

定期的なブラッシングは基本的な被毛ケアの1つです。

不要な被毛や毛の汚れだけでなく、毛に付着する寄生虫も取り除く効果があります。

また、皮膚を適度に刺激して新陳代謝を促すことで、発毛促進も期待できます。被毛ケアをすることでスキンシップにもなり、皮膚トラブルや体調の変化に気づく機会につながります。
シャンプーは、皮膚や被毛を清潔に保ち、不要な被毛を取り除く効果があります。犬の皮膚に合った低刺激性のシャンプーを選び、洗いすぎに注意しましょう。頻度としては月1〜2回程度が目安ですが、かかりつけ獣医師の指示が別途ある場合はそちらに従ってください。

犬種によっては乾きにくい場合がありますが、水分が残ったままだと皮膚炎やにおい、被毛の痛みの原因となります。シャンプー後に根本までしっかり乾かすことが、愛犬の皮膚と被毛の健康につながります。

またシャンプー後は乾燥しやすいので、場合によっては保湿を併用しましょう。

自宅でのシャンプーが難しい場合や、毛が伸び過ぎた長毛種の犬は、皮膚や被毛状態の悪化を招くことがあります。

ペットサロンなどトリミング施設でカットやシャンプーをお願いして、自宅での皮膚ケアや管理を楽にするのもおすすめです。

愛犬のもしもの病気に備える、ペット保険という選択肢

愛犬の抜け毛や脱毛は、換毛期や加齢といった自然な現象である場合もあれば、アレルギーやホルモン異常、感染症などの病気のサインである場合もあります。皮膚の赤みやかゆみ、左右対称の脱毛など、気になる症状がある場合は早めに動物病院を受診することが大切です。

皮膚疾患の中には、放置すると皮膚の状態が悪化したり、二次的な感染が起こって治療が複雑になったりするケースもあります。多くの場合、原因の治療と並行して感染のコントロールを行う必要があり、治療期間や費用が長引くケースも少なくありません。

日頃から栄養バランスの取れた食事や定期的なブラッシング、住環境の清潔を心がけることで、皮膚トラブルの予防につながります。しかし、しかし、万が一病気になった場合、診察・検査・治療に加えて、二次的な治療や長期的な通院が必要になることもあります。

こうした「もしも」に備えて、ペット保険の加入を検討するのも1つの方法です。「ペット保険 オリコン顧客満足度ランキング」では、補償内容や保険料、口コミなどを比較できるので、愛犬に合った保険選びの参考になります。
まさの森・動物病院 院長 安田賢

監修者まさの森・動物病院 院長 安田賢

日本獣医生命科学大学卒業。
幼少期より動物に興味を持ち、さまざまな動物の飼育経験を持つ。
2012年11月、石川県金沢市にまさの森・動物病院を開業。
・獣医がん学会
・日本エキゾチックペット学会
・鳥類臨床研究会(鳥類臨床研究会認定医)
・爬虫類・両生類の臨床と病理のための研究会
 ●まさの森・動物病院

※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。

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