犬の歯周病の原因・症状・治療法と自宅でできる予防策

犬の歯周病の原因・症状・治療法と自宅でできる予防策

犬の歯周病は、歯垢や歯石に含まれる細菌によって歯茎に炎症が起こる病気です。

口臭や歯茎の赤みや腫れなどから始まり、進行すると歯のぐらつきや脱落、顎の骨や全身への影響につながることもあります。

本記事では、犬の歯周病の原因・症状、歯肉炎と歯周炎の違い、動物病院での診断・治療方法を解説します。自宅でできる予防策やデンタルケア、ペット保険で補償されるかについても紹介しますので、愛犬の口臭や歯石が気になる方、日頃のケアを見直したい方は参考にしてください。
まさの森・動物病院 院長 安田賢

監修者まさの森・動物病院 院長 安田賢

日本獣医生命科学大学卒業。
幼少期より動物に興味を持ち、さまざまな動物の飼育経験を持つ。
2012年11月、石川県金沢市にまさの森・動物病院を開業。

※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。

mokuji目次

  1. 犬の歯周病とは?歯肉炎・歯周炎の違いと進行の仕組み
    1. 犬の歯周病の症状
    2. 歯肉炎・歯周炎それぞれの特徴と違い
    3. 歯垢・歯石が引き起こす進行のメカニズム
  2. 犬が歯周病になりやすい要因
    1. 小型犬・短頭種がリスクの高い理由
    2. 歯並びの異常・乳歯遺残によるリスク
  3. 動物病院での歯周病の診断方法
    1. 視診・触診による口腔内の確認
    2. 画像検査・歯周ポケット測定による確定診断
  4. 歯周病の治療方法:軽度から重度まで
    1. 軽度(ステージ1〜2)の治療内容
    2. 中程度〜重度(ステージ3〜4)の治療内容
    3. 無麻酔歯石除去が推奨されない理由
  5. 歯周病を放置した場合に起こる全身への影響
  6. 自宅でできる歯周病の予防とデンタルケアの方法
    1. 歯磨きトレーニングの進め方と頻度の目安
    2. デンタルケア製品の選び方と活用のポイント
    3. 自宅でできるセルフチェックの方法
    4. 動物病院での定期クリーニングの重要性
  7. 歯周病はペット保険で補償される?
  8. 犬の歯周病を早期に発見・予防して愛犬の健康を守ろう

犬の歯周病とは?歯肉炎・歯周炎の違いと進行の仕組み

犬の歯周病とは?歯肉炎・歯周炎の違いと進行の仕組み

犬の歯周病とは、歯垢や歯石に含まれる細菌によって、歯茎や歯を支える組織に炎症が起こる病気です。

初期段階では歯茎に炎症が起こる「歯肉炎」として現れ、進行すると歯槽骨など歯を支える組織にまで炎症が広がる「歯周炎」へと移行します。

歯周病の原因となる歯垢は、食べかすや唾液、細菌などが混ざって歯の表面に付着したものです。歯垢がたまると口腔内の細菌が増え、歯茎に炎症を引き起こします。さらに、歯垢は約3日で歯石に変化するといわれており、歯石になると歯ブラシでは取り除けません。
歯肉炎の段階であれば、適切な治療やデンタルケアによって改善が見込めます。一方で、歯周炎まで進行すると、歯を支える歯槽骨が破壊されることがあります。

一度失われた歯槽骨を元の状態に戻すことは難しいため、歯周病は早い段階で気づき、進行を防ぐことが大切です。

犬の歯周病の症状

犬の歯周病は、軽度のうちは見た目の変化が少なく、飼い主が気づきにくい場合があります。歯茎の赤みや腫れ、歯磨き中の出血、口臭などが見られる場合は、歯周病が進行している可能性があります。

歯周病の進行段階と主な症状は、以下のとおりです。
歯周病の進行段階と主な症状
ステージ 段階 主な症状
1 歯肉炎 歯茎のわずかな赤み・腫れ、ごく少量の出血
2 軽度歯周炎 歯茎の明らかな腫れ・出血、口臭の悪化、歯茎の後退
3 中程度歯周炎 口臭がさらに強くなる、歯のぐらつき
4 重度歯周炎 奥歯を含む歯のぐらつき・脱落、膿の排出、強い口臭

重度になると、口の中だけでなく、体全体に影響が及ぶこともあります。

たとえば、歯槽骨が破壊されて顎の骨が折れやすくなったり、歯の根元に膿がたまる根尖歯周膿瘍が起きたりする場合があります。また、膿が鼻のほうへ広がると慢性鼻炎のような症状が出ることもあります。
口腔内の細菌が血液に入り込むと、全身への細菌感染につながる可能性もあるため注意が必要です。

歯肉炎・歯周炎それぞれの特徴と違い

歯肉炎は、歯垢に含まれる細菌によって歯茎に炎症が起こった初期段階です。炎症の範囲が歯茎にとどまっているため、歯垢・歯石の除去や歯磨きなどのケアを適切に行うことで、治癒が見込めます。

一方、歯周炎は、炎症が歯茎だけでなく、歯槽骨や歯根膜など歯を支える周辺組織にまで広がった状態です。歯槽骨が破壊されると、歯がぐらついたり、抜け落ちたりすることがあります。

現在の獣医療では、破壊された骨を完全に元へ戻すことは難しいとされているため、歯周炎まで進行する前の対策が重要です。
歯肉炎・歯周炎の違い
項目 歯肉炎 歯周炎
炎症の範囲 歯茎のみ 歯茎+歯槽骨など周辺組織
完治の可否 治療により治癒が見込める 完治は極めて難しい
主な治療 歯垢・歯石除去 歯石除去・抜歯など

歯垢・歯石が引き起こす進行のメカニズム

歯周病は、歯の表面に歯垢が付着することから始まる病気です。

歯垢は細菌の塊であり、時間が経つと歯茎に炎症を起こします。

炎症が進むと、歯と歯茎の間にある歯周ポケットが深くなり、その中にさらに歯垢や細菌がたまりやすくなります。

歯垢の一部は、唾液に含まれるミネラルによって石灰化し、歯石になります。

歯石の表面はざらついているため、新たな歯垢が付着しやすい状態です。また、口腔内の細菌が増えると、揮発性硫黄化合物などの悪臭ガスが発生し、強い口臭の原因になることがあります。
高齢犬は、加齢に伴う唾液分泌量の減少や免疫力の低下などにより、口腔内の環境が乱れやすくなると考えられています。歯垢や歯石がたまりやすい状態が続くと、歯周病が進行しやすくなるため、若いうちから歯磨きや定期的な口腔チェックを習慣にしておくことが大切です。

犬が歯周病になりやすい要因

犬が歯周病になりやすい要因

犬の歯周病は、歯垢や歯石に含まれる細菌が増えることで起こります。歯磨きなどのケアが十分でない状態が続くと、歯の表面に歯垢がたまり、やがて歯石となって歯周病菌が増えやすい環境になります。

犬は人間と比べて歯垢が歯石に変わるまでの期間が短く、歯周病になりやすいとされています。なかでも小型犬や短頭種は、顎の大きさや歯並びの影響で歯垢・歯石がたまりやすく、歯周病のリスクが高くなる傾向があります。

また、不正咬合と呼ばれる噛み合わせの悪さや、乳歯遺残と呼ばれる乳歯が抜けずに残っている状態も、歯周病のリスクを高める要因です。歯と歯の間に汚れが残りやすくなるため、子犬のうちから口の中の状態を確認し、気になる点があれば早めに動物病院へ相談しましょう。

小型犬・短頭種がリスクの高い理由

小型犬や短頭種は、顎の大きさや歯並びの影響によって、歯垢や歯石が蓄積しやすい傾向があります。

歯と歯の間が狭かったり、歯が重なって生えていたりすると、歯ブラシが届きにくく、汚れを十分に落とせない場合があるためです。

また、小型犬は歯を支える骨量が少ない部分があるため、歯周炎が進行すると歯がぐらついたり、抜けたりするリスクが高くなる可能性があります。見た目に大きな変化がなくても、歯茎の奥で炎症が進んでいることがあるため、日頃から口臭や歯茎の状態を確認することが大切です。

たとえば、パグやフレンチブルドッグなどの短頭種は、口の中の構造上、歯並びが複雑になりやすい犬種です。また、チワワなどの小型犬も、歯と顎のバランスの関係で歯垢がたまりやすい場合があります。
これらの犬種を飼っている場合は、若いうちから歯磨きに慣れさせ、定期的に動物病院で口腔内を確認してもらうとよいでしょう。

歯並びの異常・乳歯遺残によるリスク

不正咬合とは、噛み合わせが悪い状態のことです。

歯並びが乱れていると、歯ブラシが届きにくい場所ができたり、食べかすや歯垢が残りやすくなったりします。その結果、歯石がつきやすくなり、歯周病のリスクが高まることがあります。
乳歯遺残(にゅうしいざん)は、永久歯に生え替わる時期を過ぎても乳歯が抜けずに残っている状態です。

乳歯と永久歯が並んで生えていると、そのすき間に汚れがたまりやすくなります。歯垢や歯石が付着しやすい環境になるため、歯周病の原因になる場合があります。
子犬の歯は成長に伴って乳歯から永久歯へ生え替わりますが、歯並びの異常や乳歯遺残は飼い主だけでは判断しにくいこともあります。

生え替わりの時期に乳歯が残っている歯が重なって生えている噛み合わせに違和感があるといった場合は、早めに獣医師に相談しましょう。

動物病院での歯周病の診断方法

動物病院での歯周病の診断方法

犬の歯周病は、見た目だけで正確に判断することが難しい病気です。口の中を確認して歯肉の腫れや歯石の量を見ることも大切ですが、歯の根元や歯槽骨の状態までは肉眼で確認できません。

そのため、動物病院では視診や触診に加えて、必要に応じて歯科レントゲンやCTなどの画像検査、歯周ポケットの深さを測る検査を組み合わせて診断します。これらの検査により、外から見ただけではわからない歯根部分の異常や歯槽骨の破壊、骨折リスクなどを確認できます。

一見すると歯石が少なく、口の中に大きな問題がないように見える場合でも、画像検査で歯槽骨の吸収や歯根周囲の異常が見つかるケースもあります。

視診・触診による口腔内の確認

診察では、まず獣医師が犬の口の中を見て、歯肉の状態や歯石の量、歯のぐらつき、噛み合わせ、歯並びなどを確認します。歯茎の赤みや腫れ、出血の有無なども、歯周病の有無や進行度を推測する手がかりになります。

ただし、口の中を触られることを嫌がる犬は少なくありません。診察中に口を十分に開けられなかったり、奥歯や歯の裏側まで確認できなかったりする場合もあります。そのため、視診や触診だけでは歯周病の全体像を把握しきれないことがあります。
特に、歯の表面はきれいに見えても、歯周ポケットの奥や歯根部分で炎症が進んでいることがあります。視診・触診は診断の第一歩ではありますが、確定診断や治療方針の決定には、画像検査などを組み合わせることが重要です。

画像検査・歯周ポケット測定による確定診断

歯周病の進行度を詳しく確認するには、歯科レントゲンやCT検査が用いられます。

これらの検査では、肉眼では見えない歯の根元や歯槽骨の状態を確認でき、歯根部分の異常、歯槽骨の溶解、顎骨骨折のリスクなどを把握するのに役立ちます。
また、歯と歯茎の間にある歯周ポケットの深さを測ることで、歯周炎がどの程度進行しているかを評価できます。歯周ポケットが深いほど歯周病が進んでいる可能性があり、治療方針を決める際の重要な判断材料です。治療後の改善度を確認するためにも活用されます。

犬の場合、口の中を長時間開けた状態で精密に検査することは難しいため、歯科レントゲンやCT検査、歯周ポケット測定は全身麻酔下で行われることがあります。

歯周病の治療方法:軽度から重度まで

歯周病の治療方法:軽度から重度まで

犬の歯周病治療の基本は、スケーリングと呼ばれる歯石除去です。

歯垢や歯石を取り除き、歯周病菌が増えやすい環境を改善することで、炎症の進行を抑えます。治療では、歯の表面だけでなく、歯肉の下に隠れている歯石や汚れまで除去することが大切です。

ただし、歯周病の進行度によって必要な処置は異なります。軽度であれば歯石除去や歯磨き指導を中心に行いますが、中程度から重度になると、抜歯や歯周外科処置が必要になる場合があります。
なお、これらの治療は、犬が動かない状態で安全かつ丁寧に処置する必要があるため、基本的に全身麻酔下で行われます。

歯周病によって壊れた歯槽骨を元の状態に戻すことは難しいため、治療では「いかに歯を残しながら、痛みや感染の原因を取り除くか」が重要になります。

軽度(ステージ1〜2)の治療内容

ステージ1の歯肉炎の段階では、歯茎に赤みや腫れが見られるものの、歯を支える組織への大きな影響はまだ少ない段階です。

この時期であれば、毎日の歯磨きを継続し、歯磨きの方法やケア用品の選び方について獣医師の指導を受けることで、改善が見込める場合があります。

歯石の付着や歯肉炎の程度によっては、歯周病の進行を抑える目的で、麻酔下での歯石除去が提案されることもあります。歯石は歯ブラシでは取り除けないため、動物病院で専用の器具を使って除去する必要があります。
ステージ2の軽度歯周炎では、歯茎の炎症が進み、歯肉縁下と呼ばれる歯茎の内側にも歯石がたまりやすくなります。

この段階では、麻酔下でスケーリングし、見えにくい部分の歯石まで丁寧に取り除きます。早い段階で治療を受けることで、歯周病のさらなる進行を防ぎやすくします。

中程度〜重度(ステージ3〜4)の治療内容

ステージ3〜4まで進行すると、歯槽骨の破壊が進み、歯がぐらついたり、強い口臭や膿が見られたりすることがあります。歯を支える組織が大きく損なわれている場合は、歯を残すことが難しく、抜歯が選択されることが多いです。

ただし、すべての歯をすぐに抜くとは限りません。歯科レントゲンなどで歯根や歯槽骨の状態を確認し、残せる歯と抜歯が必要な歯を見極めたうえで、できるだけ最小限の抜歯にとどめる方針が取られることもあります。

近年では、歯茎や歯槽骨などの組織の回復を促す「再生療法」が行われることもあります。従来なら抜歯が検討されるような重度の歯周病でも、状態によっては歯を残せる可能性がありますが、対応できる動物病院が限られるのが現状です。
なお、抜歯が必要になった場合でも、現在のペットフードは歯が少なくても食べやすい形状のものが多くあります。抜歯後の食事について不安がある場合は、フードの種類や与え方について獣医師に確認しておくと安心です。

無麻酔歯石除去が推奨されない理由

無麻酔歯石除去は、犬に麻酔をかけずに歯の表面の歯石を取る方法です。しかし、歯周病の原因は表面の歯石だけでなく、歯周ポケット内にたまった歯垢や細菌にもあります。無麻酔では歯周ポケットの奥まで清掃することはできません。

しかも、見た目だけがきれいになるため、飼い主が安心している間に、歯茎の奥で歯周病が重症化してしまうリスクがあります。無麻酔では歯周ポケットの奥まで十分に清掃することが難しく、根本的な治療につながらない場合があります。
★監修・安田先生
無麻酔の最大の問題は、表面だけが白くなることで飼い主様が「治った」と安心し、歯茎の奥で歯周病がさらに悪化する(隠れ歯周病の進行)点にあります。

リスクや負担を考えると、歯石除去程度に全身麻酔をしたくない飼い主様の気持ちはよく分かりますし、人間の歯科治療を基準にしてしまいがちですが、そこはご理解いただいた方が、僕らとしても嬉しいです。
また、犬が意識のある状態で口の中を処置されるため、恐怖や不安、強いストレスを感じることがあります。

処置中に犬が動くと、歯や歯茎、口の中を傷つける可能性があり、歯石片や水を誤って飲み込むことで誤嚥性肺炎につながるリスクも考えられます。口腔内の傷から細菌が血液に入り、菌血症を起こす可能性もあります。

さらに、画像検査を行わずに歯石除去をすると、歯根や歯槽骨の状態を確認できないまま処置することになります。重度の歯周病で顎の骨が薄くなっている場合、無理な処置によって顎骨骨折を引き起こすおそれもあります。
麻酔リスクが心配な場合でも、無麻酔処置に頼るのではなく、まずは麻酔リスクの原因となっている病気や全身状態を確認し、必要に応じて治療を行うことが大切です。

歯周病を放置した場合に起こる全身への影響

歯周病を放置した場合に起こる全身への影響

歯周病が進行すると、歯茎の炎症や歯のぐらつきにとどまらず、歯を支える歯槽骨が破壊されたり、細菌が血液に入り込んで全身に影響を及ぼす可能性があります。

初期のうちは口臭や歯茎の赤みなど軽い症状に見えることもありますが、進行すると痛みで食事がしにくくなったり、顔が腫れたり、くしゃみや鼻水が増えたりする場合があります。さらに重度になると、命に関わる状態につながることもあるため、早めの発見と治療が大切です。

歯周病を放置した場合に起こりうる主な合併症は、以下のとおりです。
歯周病を放置した場合に起こりうる主な合併症

合併症

概要

顎骨骨折

歯槽骨が破壊され骨が薄くなることで顎が骨折。小型犬は特にリスクが高い

根尖歯周膿瘍

歯根に膿がたまり、頬の腫れや排膿が生じる

慢性鼻炎・口腔鼻腔瘻

膿が鼻に広がり、くしゃみ・鼻水・慢性鼻炎を引き起こす

目の下の腫れ・眼周囲への炎症

奥歯の感染が目の下に広がる可能性がある

心臓・腎臓・肝臓への影響

心臓・腎臓・肝臓などに影響を及ぼす可能性がある

重篤な全身感染

口腔内の細菌が血液中に入り込み、重篤な場合は全身状態の悪化につながる可能性がある

歯周病は、犬が普段どおり食事をしているように見えても、実際には口の中で進行している場合があります。口臭が強い、歯茎が腫れている、硬いフードを食べにくそうにしているなどの変化がある場合は、自己判断せず、動物病院で相談しましょう。

自宅でできる歯周病の予防とデンタルケアの方法

自宅でできる歯周病の予防とデンタルケアの方法

犬の歯周病は、毎日のデンタルケアによって予防や進行の抑制が期待できる病気です。特に歯垢は時間が経つと歯石になり、歯ブラシでは取り除けなくなるため、歯垢の段階で落とすことが大切です。

とはいえ、いきなり歯ブラシで磨こうとすると、犬が嫌がってしまうことがあります。まずは口元に触られることに慣れさせるところから始め、少しずつ歯ブラシや歯磨きの動作に慣らしていきましょう。

また、歯ブラシだけでなく、デンタルジェルやデンタルガム、歯磨きシート、液体デンタルケアなどのデンタル製品を組み合わせることも方法のひとつです。
犬の性格や口の状態に合ったケアを続けて行い、口腔内を清潔に保つことを意識しましょう。

歯磨きトレーニングの進め方と頻度の目安

歯磨きは、犬が嫌がらない範囲で段階的に進めることが大切です。ごほうびや声かけを使いながら、「口を触られるとよいことがある」と覚えてもらうと、歯磨きへの抵抗を減らしやすくなります。

歯磨きトレーニングは、以下のような流れで進めるとよいでしょう。
<歯磨きトレーニングの流れ>
1. 口元にやさしく触れる
2. 指で歯や歯茎に軽く触れる
3. 歯ブラシを見せてにおいを嗅がせる
4. 歯ブラシを歯に当てるだけにする
5. 短時間のブラッシングから始める
歯磨きの頻度は毎日が理想ですが、難しい場合でも最低3日に1回以上を目安に行うとよいとされています。犬の歯垢は短期間で歯石に変わりやすいため、できるだけこまめに歯垢を落とすことが大切です。

子犬の場合は、家に迎えたら(生後2〜3か月頃から)すぐに口に触る練習を始め、永久歯が生えそろう生後6か月ごろまでに歯ブラシに慣れさせておくのが理想です。
★監修:安田先生
生後6か月を過ぎてから歯磨きを始めようとしても、警戒心が強くなっているため、多くの犬が歯ブラシを嫌がって挫折します。

乳歯の時期(生後2〜3か月)の「何でも受け入れやすい社会化期」から口に触る・歯ブラシを当てる練習を始めておくことが、将来も継続的に歯磨きができる「習慣」を作る上でとても大切です。
また、犬用の歯磨き粉やペーストを使うと、歯磨きを楽しい時間として受け入れやすくなる場合があります。人間用の歯磨き粉は犬に適さない成分を含むことがあるため、必ず犬用の製品を使用しましょう。

デンタルケア製品の選び方と活用のポイント

犬のデンタルケア製品には、歯ブラシのほかにもさまざまな種類があります。歯磨きが苦手な犬の場合は、いきなり歯ブラシを使うのではなく、取り入れやすいケア用品から始めるのもよいでしょう。

主な犬のデンタルケア製品には、以下のようなものがあります。
<主な犬のデンタルケア製品>
■歯ブラシ
■デンタルジェル
■デンタルガム
■歯磨きシート
■液体デンタルケア
■デンタルケア用のおもちゃ
デンタルガムやおもちゃを選ぶ際は、硬さに注意が必要です。硬すぎるものを噛むと、歯が欠けたり折れたりする原因になることがあります。

目安としては、犬の歯で跡がつく程度の硬さのものを選ぶとよいでしょう。骨やひづめなど極端に硬いものは、犬の歯に負担をかける可能性があります。

また、海外製品などでは、VOHC(米国獣医口腔衛生協議会)の認定マークがあるかどうかも、製品を選ぶ際の参考になります。VOHCは、歯垢や歯石のコントロールに役立つと認められた製品に認定マークを付与しています。

自宅でできるセルフチェックの方法

歯周病を早く見つけるには、日頃から愛犬の口の中や食べ方を確認しておくことが大切です。歯周病は初期症状が目立ちにくいこともありますが、口臭や歯茎の変化など、飼い主が気づけるサインもあります。

自宅では、以下のような項目をチェックしてみましょう。
<自宅でできるセルフチェック>
■口臭が強くなっていないか
■歯茎が赤く腫れていないか
■歯磨き中や食事中に出血していないか
■歯垢や歯石が付着していないか
■くしゃみや鼻水が増えていないか
■歯がぐらついていないか
■頬や目の下が腫れていないか
■硬いフードを食べにくそうにしていないか
■口元を触られるのを嫌がるようになっていないか
これらの変化が複数見られる場合は、歯周病が進行している可能性があります。特に、頬や目の下の腫れ、膿の排出、強い痛みが疑われる様子がある場合は、早めに動物病院を受診しましょう。

動物病院での定期クリーニングの重要性

自宅での歯磨きは、歯周病予防の基本です。しかし、歯ブラシで磨けるのは主に歯の表面であり、歯周ポケットの奥にたまった汚れや歯石までは十分に取り除けないことがあります。

歯周ポケット内の清掃や、歯肉縁下の歯石除去には、動物病院での専門的なクリーニングが必要です。

犬の場合、口の中を安全に処置するため、全身麻酔下で行われることが一般的です。歯科レントゲンなどで歯根や歯槽骨の状態を確認しながら処置することで、見た目ではわからない異常の発見にもつながります。
特に高齢犬は、歯周病が進行してから治療を行うと、麻酔リスクや処置の負担が大きくなる場合があります。そのため、若いうちから定期的に口腔内を診てもらい、必要に応じてクリーニングを受けることが大切です。

歯周病はペット保険で補償される?

歯周病はペット保険で補償される?

ペット保険の中には、犬の歯周病の治療費を補償しているものがあります。ただし、補償の有無や条件は、保険会社や商品、加入しているプランによって異なります。

一般的に、歯周病や歯肉炎などの治療を目的とした診療であれば、補償対象になる商品もあります。

たとえば、歯周病の治療の一環として抜歯や投薬、検査などを受けた場合は、補償される可能性があります。

一方で、健康な状態で行う歯石除去や予防目的のデンタルケア、定期クリーニングなどは、補償対象外となる場合が一般的です。

また、加入前から歯周病の症状があった場合や、待機期間中に発症した場合は、補償されない可能性もあるため注意が必要です。
ペット保険を選ぶ際は、以下の点を確認しましょう。
<ペット保険を選ぶ際に確認しておきたい点>
■歯周病・歯肉炎が補償対象に含まれているか
■歯科治療全般が補償対象か、一部のみ対象か
■歯石除去は治療目的の場合のみ補償されるのか
■予防目的のクリーニングは対象外か
■抜歯・投薬・検査費用が補償されるか
■既往症や待機期間中の発症がどのように扱われるか
歯周病は、進行すると治療費が高額になることもあります。愛犬の歯のトラブルに備えたい場合は、保険料だけでなく、歯科治療の補償範囲や対象外となる処置も確認したうえで、ペット保険を比較検討しましょう。

犬の歯周病を早期に発見・予防して愛犬の健康を守ろう

犬の歯周病は、歯垢や歯石に含まれる細菌によって、歯茎や歯を支える組織に炎症が起こる病気です。初期の歯肉炎であれば治癒が見込める場合がありますが、歯周炎まで進行すると歯槽骨が破壊され、元の状態に戻すことが難しくなります。

また、歯周病は進行すると抜歯や外科処置が必要になり、治療費が高額になる場合もあるため、ペット保険への加入がおすすめですが、選ぶ際には、歯周病や歯科治療が補償されるペット保険を選ぶことが大切です。なお、予防目的の歯石取りやクリーニングは対象外となることがほとんどですので、加入前に補償範囲を確認しておきましょう。

なお、オリコンでは、日本最大級の規模で調査を行い、毎年「ペット保険 オリコン顧客満足度ランキング」を発表しています。保険料はもちろん、ペットの種類別や精算方法別など、さまざまな視点でランキングをご確認いただけます。ペット保険を選ぶ際は、ぜひ参考にしてください。
まさの森・動物病院 院長 安田賢

監修者まさの森・動物病院 院長 安田賢

日本獣医生命科学大学卒業。
幼少期より動物に興味を持ち、さまざまな動物の飼育経験を持つ。
2012年11月、石川県金沢市にまさの森・動物病院を開業。
・獣医がん学会
・日本エキゾチックペット学会
・鳥類臨床研究会(鳥類臨床研究会認定医)
・爬虫類・両生類の臨床と病理のための研究会
 ●まさの森・動物病院

※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。

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