せっかく飲むのなら、体によい水を。
「そもそも人間は半分以上が水分。水は体内に約60兆個ある細胞や血液内に存在し、意外なことに、骨の3分の1も水が含まれています。このことからも、水が人間にとっていかに大切な存在かが分かるでしょう。
そして成人は、毎日約2.5リットルの水分を汗や排泄物、呼吸として体外に排出し、失った水分を補いながら生きているのです。日本の水道水を飲んでも、たしかに問題はありません。でも、せっかく取り入れるのなら、体によい水を取り入れたほうが“得”ですよね。家庭レベルでもその考えが浸透したのだと思います」
飲んだ水が体の一部になると考えれば、水への意識が高まるのは当然ですね。では、体にとっていい水とは?
「科学的には証明されていませんが、雪解け水には細胞を若返らせる不思議な力があります。それと同様に、煮沸消毒などをされていない、いわゆる“天然の水”には、細胞を若返らせる力があります。
また、人間は本来弱アルカリ性ですが、疲労がたまると酸性に傾き、代謝も鈍ってしまいます。これを正常な状態にととのえる“アルカリ性の水”もいいでしょう。さらに、私たちの生活には活性酸素があふれており、それが多くの不調の原因ともいわれています。“アルカリイオン水”や“水素水”など、体内の活性酸素を減らしてくれる水も積極的にとるといいでしょう」
これは水選びのポイントになりそうです。
のどが渇いたと感じる前にこまめに飲む。
体にとっていい水は、年齢や体調には関係ないのでしょうか。
「体調と関係するのは水の成分です。その代表的なものが、カルシウムとマグネシウムの含有量をもとに計算した“硬度”。硬度1000mg/L以上の“超硬水”は、カルシウム、マグネシウム、サルフェートが多く含まれ、利尿作用や血液中の老廃物を体外に排出する作用があり、“スリムウォーター”とも呼ばれます。
欧米ではダイエット時に飲む水として一般的。糖尿病などの成人病がある人や、肥満気味の人におすすめですが、飲み慣れない人が飲むと便通がよくなりすぎて下痢を起こすこともあるので注意してください。メタボリックシンドローム予防なら、習慣的に硬度301〜999mg/Lの“硬水”を飲むといいでしょう。
イライラしてしまう人は、カルシウムを多く含む“硬水”や“海洋深層水”を飲むと気持ちが落ち着くはず。日本の水は、硬度100mg/L以下の“軟水”。ミネラル含有量は少ないですが、赤ちゃんにあげるミルクなどには最適です。
一方、デスクワークなどで疲れがたまっている人には、炭酸ガスが入った“炭酸水”がおすすめ。炭酸ガスが体内にたまった乳酸を消し、むくみや肩こりにも効果があるとされています。関節痛がある人は、ケイ素が多く含まれる水を飲むといいですよ」
水の成分に注目することで、体調を改善することもできるんですね。
【体調別 おすすめの水】
メタボリックシンドローム予防したい人 | 硬度301〜999mg/Lの“硬水” |
イライラしてしまう人 | カルシウムを多く含む“硬水”や“海洋深層水” |
デスクワークなどで疲れがたまっている人 | 炭酸ガスが入った“炭酸水” |
関節痛がある人 | ケイ素が多く含まれる水 |
では、水は多く飲めば飲むほど体にいいのでしょうか。
「人間が日常的に失っていく2.5Lの水は、食事や純粋な水として補給していく必要があります。夏場は普段より多く汗をかくので、2L程度は、ミネラルウォーターなど体にいい水を選んで飲むといいですね。ただし、それ以上に無理をして飲む必要はありませんし、逆に健康を害することにもなります。
たとえば、熱中症予防としてのこまめな水分補給は大切ですが、熱中症になってからの水分補給は体内の塩分濃度がさらに薄まってしまうので危険。必ずスポーツドリンクなど、塩分を含む水分をとりましょう。水を飲まないほうがいい場合もあることを覚えておいてください。
また、500mL以上の一気飲みもおすすめしません。体に負担をかけてしまうので、15分以上おいてから飲みましょう。理想的にはコップ一杯程度の水を、のどが渇いたと感じる前にこまめに飲むこと。汗をかく入浴の前後と、長時間水分補給ができなくなる就寝前、血液が水分を失いドロドロになっている、起き抜けの一杯は欠かさないようにしましょう。これを続けることが、健康な体作りのカギです」
藤田先生のお話を聞いて、日常的に飲んでいる水が、私たちの健康と深く関係していることがわかりました。せっかく飲むなら、「なんとなく」パッケージで選んだり、「あまり考えず」水道水ですませたりせず、自分に合った水を選びたいもの。藤田先生いわく「体に合った水は、その人の口にも合う」のだそう。自分だけのスペシャルな一杯を見つけるためにも、この夏、いろいろな水を試してみてはいかがでしょうか。