日本の国家資格には「貸金業務取扱主任者(かしきんぎょうむとりあつかいしゅにんしゃ)」というものがあります。消費者金融や金融機関が対象となる資格ですが、同じく金融業であるクレジットカード会社も関係する資格です。ここでは、クレジットカード会社への従事を考えている方、貸金業務取扱主任者の資格取得を考えている方に向けて、情報をまとめました。
貸金業務取扱主任者とは
貸金業務取扱主任者は、消費者法に乗っ取った国家資格で、日本貸金業協会が試験を実施しています。受検資格に制限はなく、希望すれば誰でも受けられるようになっています。
貸金業を行う場合、従業員50人につき1名、貸金業務取扱主任者に選任することが義務付けられています。貸金業務取扱主任者は、貸金を行う現場においてのコンプライアンスオフィサーを担う役職です。具体的には、健全な職場としての関係を築き、顧客の個人情報保護や犯罪の防止、違法行為の排除、反社会的勢力の関係根絶、業務に関する透明性の確保が求められます。従業員は主任者の意図に沿って指導に従わなければならない義務があります。
貸金業務取扱主任者の歴史
貸金業務取扱主任者の歴史は浅く、2003年の貸金業規制に関する法が改正されたことをきっかけに貸金業務取扱主任者の設置が義務付けられるようになりました。この資格は元々研修によって取得できる民間資格でしたが、2010年の法改正により国家資格となりました。これに関しては、当時流行した「ヤミ金融」問題が背景にあります。ほとんど貸金業法に関する知識を持たない、あるいは端から違法業務を行うつもりの人間が無登録で金貸しの商売を始め、次第に悪徳化していくのが社会問題となり、このように大幅な法改正に至ったのです。
試験について
貸金業務取扱主任者の国家試験は、受検者に制限がありません。出題数50問のマークシート式筆記試験で、制限時間は2時間です。試験は貸金業法、また関係する法令、金融庁の定める総合的な監督指針、民事法、刑事法に関すること、家計診断、財務会計に関することなどが問題にあります。50問中およそ30問以上の正解で合格できます。毎年1回11月に、全国のおよそ17都市で試験が実施されます。
受験には8500円の受験料が必要です。登録後は3年ごとの更新が必要です。試験勉強に関してはインターネット上で過去問や通信講座を受けることができるほか、試験対策に関する本も複数出版されています。数ヶ月間みっちり勉強すれば取得はさほど難しくはないようです。
クレジットカード会社で働くなら
他の個人情報取扱主任者制度やクレジット債権管理士、クレカウンセラーなどの資格に比べれば、クレジットカード会社で働くにあたって貸金業務取扱主任者の優先度は低いかもしれません。しかし会社のなかで高い役職を目指すのであれば、金融業に関する幅広い知識、基礎を築いておくのは非常に重要といえるでしょう。特にプライバシー保護や顧客との信頼関係の構築においては非常に重要な役割をもつ資格ですので、勉強して損はないかもしれません。