スーツショップ満足度ランキング! 今春の1着、どこで買う?
そこで今回の「オリコン日本顧客満足度ランキング&アナリシス」では、AOKIや青山商事といった大手量販店が近年「別ブランド」として展開している「スーツショップ」の調査結果を紹介したい。
結論から言うと、トップになったのはAOKIが手掛ける「ORIHICA(オリヒカ)」の72.01点。全部で11ある評価項目のうち7項目で1位を獲得し、2015年の『紳士服専門店』1位に続いて、2年連続での満足度ランキング1位に輝いた。
しかし、上位4ブランドのポイント差は1.5未満と極めて小さい。各社が新年度から展開する施策によっては、次回2017年のランキング結果は様変わりする可能性も決して否定できない。本記事ではV2を達成したORIHICAの強みと、競争激しいスーツ市場の見通しをひもといていく。
今回のアンケート対象者は、過去2年以内にスーツショップで自分用のスーツや礼服を購入したか、または商品選びに関与し、家族などに購入してもらった(ただしオーダーメイドは含まない)18歳以上の1574人(有効回答者数)。8社が評価対象となった。なお今回からは、各社のメーン業態である「紳士服専門店」と「スーツショップ」を分割して調査している。
(注)オリコン日本顧客満足度ランキングは、データクリーニング(回収したデータから不正回答や異常値を排除)および調査対象者条件から外れたサンプルを除外した上で作成した。そのため、実際のランキング集計に使用したサンプルは「ランキング使用時」の数となっている。調査するにあたってワイシャツやカジュアル衣料など、スーツ以外の商品が主力のブランドは対象外とした。
AOKIが切り開いたカジュアル路線 「ORIHICA」に見る“脱・老舗感”
現在では紳士服の老舗AOKIが2003年に立ちあげた新ブランド「ORIHICA」、青山商事の「THE SUIT COMPANY(ザ・スーツカンパニー)」、コナカの「SUIT SELECT(スーツセレクト)」、さらにはるやま商事は「P.S.FA」を新たに立ち上げ、主力とは別業態のスーツショップで若年層を取り込む路線を突き進んでいる。
ORIHICAは、郊外のロードサイド店舗が多かったメーン業態と異なり、都市部の駅近(エキチカ)を中心に出店している。英国人クリエイティブ・ディレクター、サリーム・ダロンヴィル氏を起用してカジュアル要素を取り入れたテイストで若年層の支持を集めただけでなく、持ち味のブリティッシュスタイルがファッション感度の高い30歳代以上の男性にも好評だ。
また意外にも見逃せない強みとなっているのは、従来は添え物扱いだった小物類や、近年定着してきたオフィスカジュアルの提案が充実している点だろう。評価項目「商品の豊富さ」に関する今回の結果は、1位のORIHICAと0.23点の僅差で、2位にP.S.FAとTHE SUIT COMPANYが同点で続いている。裏を返せば、2位の両ブランドにとって攻める余地の大きいポイントと言えそうだ。
マーケティング戦略の岐路はどこに? 取りこぼせない女性ニーズの重要性
もちろん青山商事も負けてはいない。30〜40歳代の女性を狙った新ブランド「パリシマユキトリイ」を同時期に立ち上げ、THE SUIT COMPANYから独立した女性専門店「WHITE THE SUIT COMPANY(ホワイト・ザ・スーツカンパニー)」の展開を始めた。コナカも、就活向けやフレッシャーズ向け、ビジネス・キャリア向けまで幅広い年齢層を意識した女性向けブランド「MIRUM(ミラム)」を打ち出し、ニーズが拡大するレディース市場の取り込みに余念がない。
安倍晋三政権の成長戦略の柱の一つである「女性の活躍推進」を見るまでもなく、働く女性のハートをつかむマーケティング戦略の深化は最重要テーマの一つ。2017年、大手各社がしのぎを削り合う次の主戦場は「レディーススーツ」になるのかもしれない。
今後のスーツ市場に求められるオーダースーツの低価格帯の実現
ユーザーにとっては、空き時間を利用して自分の体型や好みにフィットした1着を手軽にオーダーでき、店側にとっても多くの在庫を用意する必要がなくなる点と、2着目以降の「囲い込み」につなげられる点は大きなメリットとなる。
業界を見渡せば、クールビズの定着や団塊世代の大量退職といった向かい風にさらされ、紳士服の市場規模はここ10年で3割減の約2100億円まで縮小した。大手各社は結婚式場や外食、靴修理といった「非アパレル事業」の多角化によって業績を支えようと懸命だ。
そうした市場環境の中で、今後もニーズの拡大を見込めるレディーススーツは、各社にとって取りこぼせないジャンルとしてますます重要度が高まっている。加えて、手軽なオーダーシステムを各社が本格展開し始めたことで、ユーザーが重視するショップ選びの基準は大きく変化していく可能性もありそうだ。
(四つ葉経済記者会ジャーナリスト 金川俊以)