決め手は価格ではなかった! 格安航空会社ランキング

※記事は2016年4月5日にダイヤモンド・オンライン(外部リンク)に掲載されたものです。
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 今年のゴールデンウィークは、5月2日(月)と6日(金)に休暇を取れば、怒とうの10連休。この大型連休を控え、航空業界にとってはいよいよ本格商戦の幕開けというところだろう。「爆買い」に象徴される訪日外国人観光客の急増と比べると、国内の旅行需要は今ひとつさえないが、それだけに各社は、日並びが絶好な大型連休の客足を取り込もうと、販売合戦に汗を流している。

 一方、ユーザーの立場からすれば、少しでも移動にかかる料金を安く抑えて、旅先での出費に回したいのが本音だ。昨年4月には成田空港に専用ターミナルがオープンするなど、ここ数年で存在感が高まってきたLCC(格安航空会社)を利用する人も多いだろう。

 では、より良い空の旅を過ごすためには、どのLCCを選べばよいのだろうか。LCC各社の満足度調査を国内線と国際線に分けて行った「オリコン日本顧客満足度ランキング」を見ていこう。
 国内線では日中合弁の「Spring Japan(春秋航空日本)」が全7項目で1位を獲得し、堂々のトップ。続いて、ANAホールディングス傘下の「peach」、日本航空系の「ジェットスター・ジャパン」、ANA系「バニラエア」の順となった。また国際線では、接戦の末に「バニラエア」が首位となり、「peach」、韓国「チェジュ航空」などが続いた。

 今回のアンケート対象者は、過去1年以内にLCCを利用した20歳以上の国内在住者で、国内線は766人、国際線は1208人の回答を得た。評価対象のエアラインは、事前調査で一定の人数が社名を挙げた国内線4社と国際線15社。「購入手続きのしやすさ」「座席の快適さ」「機内環境・設備」など7項目に関する質問を行い、それぞれの満足度を100点満点で評価してもらうとともに、「特に重視する項目」も尋ねた。多くのユーザーが重視する項目で評価が高い場合は、ポイントに反映する仕組みになっている。
 LCCのユーザーは、どの項目を重視しているのか。評価結果から紐解こう。

 意外にも、圧倒的に重視度が高かったのは「購入手続きのしやすさ」で、LCCの“最大の売り”といえる「コストパフォーマンス」をダブルスコアで上回った。運航の定時性や遅延・欠航時の対応といった「会社の信頼性」が「コストパフォーマンス」の次に高く、そのほか「空港スタッフ」や「客室乗務員」などはあまり重視されていないことがわかった。

 こうした評価の傾向は、国際線もほぼ同様。コストパフォーマンスの重視度があまり高くない理由は、競争の結果、「安くて当然」というユーザーのイメージに見合った運賃設定を各社が実現しているためだろう。

 実際にアンケート回答者の声を拾ってみよう。バニラエアは今回、国内線のコストパフォーマンス項目で4位と振るわなかったが、それでも「大手より安価に利用できた」(40代男性)、「価格が安く何度も往復できる」(30代女性)といった満足の声が多い。同様に、国際線で同項目6位だったジェットスター航空も「ケアンズまでビジネスでも3万円くらいだったのは魅力」(40代女性)、「安いキャンペーンが利用できた」(60代男性)など悪くない評価だった。

 国土交通省が昨年3月に公表したレポートによると、首都圏発着の国内線の最安運賃は、幹線でフルサービスキャリアが平均1万6550円なのに対し、LCCは同5965円で1万円以上の開きがある。同じく地方路線では2万4396円だが、LCCは6652円となり、その差は実に1万8000円近い。「大手と比べて十分に安い」というユーザーの評価は、LCC全般に対して定着しているといえそうだ。
 ただ、LCCはコスト削減のため、予約・購入手続きはサイト上で行うのが基本。サイトの使い勝手が悪く、予約が完了しているかどうか確認できなかったり、問い合わせ窓口へもつながりにくかったりすれば、ユーザーのストレスは一気に上昇する。
 最近では、peachで昨年6月と10月にシステム障害が発生し、欠航・遅延や予約無効といった事態で約5800人に影響したトラブル事例もある。バニラエアも12月にサイトの不具合から第三者の予約状況が閲覧できる状態になっていたと発表している。航空会社にとって「安全運航」が一番の前提なのは言うまでもないが、LCCの場合はシステム回りを含めた「購入手続きのしやすさ」が“急所”かつ差別化のカギといえるだろう。

 一方で、7項目のうち重視度が最も低かったのは「客室乗務員」。コスト同様に、「ある程度良くて当然」というイメージが普及しているのが如実にわかる結果だ。
 今回、国内線部門でトップに輝いたのは、前述の「Spring Japan」。2014年8月に就航し、成田と広島、佐賀を結ぶ2路線を運航している。ユーザー評価は全項目で1位を占めた。ただ、競合各社と比べ路線数が少ないだけに、「圧勝」とまで評するのは早計かもしれない。

 国際線部門では、「コストパフォーマンス」など5項目で1位を獲得したバニラエアが首位となった。バニラエアは成田に次ぐ第2の拠点として台湾を活用する構えで、4月27日に関西・台北線を新設し、一晩に日台間2往復の態勢となる。東南アジア方面に乗り継ぐ選択肢がより広がりそうだ。

 一方、両部門で手堅く2位をマークしたのは「peach」だ。日本初のLCCとして登場したpeachは、空港施設利用料の安い関空を拠点にするなど徹底したコストカットを進め、LCCとしては日本勢4社で唯一の黒字化を果たした。昨年8月には東京都心からの利便性が高い羽田発着の台北線が就航しており、路線展開、ユーザー評価ともに充実ぶりを示す結果となった。

 とはいえ、上位各社への評価はばらつきが小さいため、次回調査では順位が大きく変わる可能性も否定できない。アジア諸国を見渡せば、乱立するLCCが激しい競争を展開し、訪日需要を当て込んで日本への乗り入れをうかがうなど“戦国時代”の様相を呈している。足元では、原油安による燃油サーチャージの引き下げなど、旅行需要への追い風も吹き始めた。伸び盛りのLCCがどう羽ばたいていくのか、今後の展開に注目だ。
オリコン日本顧客満足度ランキングの調査方法について

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