治療費・修理費・慰謝料……交通事故「損害賠償」請求までの流れと注意点

  • 【イラスト】追突事故

 2013年の交通事故の発生件数は約63万件。負傷者数は約78万人にのぼりました。いずれも減少傾向にあるものの、前年からの減少幅は小さくなっており、65歳以上の高齢者の死者数は12年ぶりに増加するなど、依然として深刻な状態です。

 誰の身にも降りかかる可能性がある交通事故ですが、もし自分が事故に遭ってしまった場合、どのような対処が適切かを分かっている人は、多くはないのかもしれません。被害者になったとき、加害者に対してどのようなアクションを起こせばいいのか? 自分が受けた損害に対して、加害者からどのように埋め合わせしてもらうのか? 交通事故における「損害賠償」請求までの流れと、注意点をみていきましょう。
 一般に事故の被害者になった場合、受けた損害や被害に応じて、加害者に損害賠償を請求することが可能です。これを“損害賠償請求”といい、民法においても「不法行為によって他人に損害を与えた人は、その損害を賠償する責任を負う」(第709条)と定められています。ただし、交通事故の損害賠償では、民法に優先して“自動車損害賠償保障法(自賠法)”が適用されます。自賠法は、交通事故の被害者保護を目的として創設されたもの。自賠法を遂行するために、すべての自動車に加入が義務付けられているのが自賠責保険です。

 交通事故の被害者が“損害”として賠償請求できるのは、事故と関連性のあるもののみ。大きく分けて「経済的な損害」と「精神的な損害」の2つです。
【経済的な損害とは?】
ケガの治療費や通院費、休業損害、自動車の修理費など。万が一、被害者が死亡した場合や後遺障害を負った場合は、葬儀費や逸失利益などもあてはまります。

【精神的な損害とは?】
事故によって生じた精神的・肉体的苦痛を指し、これらに対する損害賠償金のことを慰謝料といいます。慰謝料は、被害の程度に応じて、傷害慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料の3つに分類されます。
 交通事故の損害賠償請求は、加害者が加入している損害保険会社に直接請求する方法(被害者の直接請求)と、加害者が被害者に損害賠償金を支払ったあとに保険金を保険会社に請求する方法(加害者請求)の2種類があります。
交通事故の損害賠償額が決まるまでの流れ(被害者の直接請求の場合)
1:交通事故証明書や医師の診断書などを加害側の保険会社に提出

 被害者の直接請求で、相手の自賠責保険に請求する場合、まず交通事故証明書や医師の診断書といった必要書類を保険会社に提出します。

2:保険会社が自賠責損害調査事務所へ調査を依頼

 保険会社は請求書類に不備がないか確認の上、損害保険料率算出機構の「自賠責損害調査事務所」へ調査を依頼します。
 自賠責損害調査事務所では、請求書類に基づき、事故発生状況・支払いの的確性(例:自賠責保険の対象となる事故か、傷害と事故との因果関係はあるか)・発生した損害の額などを公正かつ中立な立場で調査します。

3:調査結果に基づき、支払い額が決定

 調査結果に基づいて、保険会社は支払い額を決定し、被害者(請求者)に支払うという流れになります。加害者が任意自動車保険に加入している場合は、任意保険会社が自賠責保険請求分も含めて一括して手続きを行うケースも多くあります。
 治療費や慰謝料などの損害賠償を請求できるのはもちろん被害者本人ですが、万が一、本人が死亡してしまった場合は、配偶者や子、父母、兄弟姉妹などの法定相続人が請求権をもちます。配偶者・子・父母は、被害者の損害賠償請求とは別に、それぞれ自分自身の慰謝料を請求することも可能です。請求する相手は当然ながら、事故の加害者。ただ加害者が未成年の場合は、その親が賠償責任を負います。また、会社の従業員が業務で運転中に加害者となった場合は、雇い主が賠償責任を負います。

 交通事故の損害賠償のうち、人的な損害については、まずは先述の通り加害者が加入している自賠責保険から支払われます。ところが、自賠責保険では、“支払い基準”が法律に基づいてあらかじめ決められており、たとえば、傷害による損害を例にとると、被害者1名につき支払い限度額は120万円、入院1日につき4100円、慰謝料は入院・通院問わず1日につき4200円となっています。自賠責保険の支払い限度額を超えた損害や、自賠責保険では補償されない物的損害(自動車や建物の損害)などをカバーしているのが、任意自動車保険。いざというときのために、自分に合った補償内容で契約しておきましょう。
損害賠償を請求する際の注意点
・被害者が死亡してしまった場合は、法定相続人が請求権をもつ
・人的な被害については、まずは加害者が加入している自賠責保険から支払われる
・自賠責保険で補償されない損害は、任意保険でカバー可能
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