世界の「自動車保険」事情(2)アジア諸国と日本、異なる「補償対象」と「加入目的」

  • 【画像】中国の街並み

 日本には、強制保険として「自賠責保険」が用意されています。自賠責保険は、事故の被害者保護を目的として創設されたもので、人身事故時しか適用になりません。このことから日本の自動車保険は、被害者などの“人”のために加入するものという認識があることがうかがえますよね。ところが、日本以外のアジアでは、事情は少し異なります。
 世界で最も人口が多い中国。かつて日本が高度経済成長の波に乗って、自動車の保有台数を伸ばしたように、中国の自動車マーケットも拡大の一途をたどっています。

 その一方で、交通事故の増加が社会問題となっており、事故リスクをカバーする保険制度の導入が課題となっていました。そこで、2006年に日本の自賠責保険にあたる「自動車交通事故責任強制保険」(交強険)を導入。中国では、この交強険と、任意保険である「自動車第三者責任保険」、車両保険に相当する「自動車車両損失保険」があり、これらへの加入は損保契約の約8割を占めるほど広がっています。

 中国の任意保険にも、日本のノンフリート等級制度のような保険料の割増引制度が採用されています。ところが、中国では、保険はドライバー(被保険者)に付保されるのではなく、自動車に付保されるもの。そのため、日本とは違い、保険の契約以後に車を買い換えると、割増引率は引き継がれません。既契約の解約と、新規契約の手続きなどが必要になってくるのです。

 また、中国には、日本のような強制保険と任意保険の保険金一括請求制度がありません。そのため、契約者は手続きの利便性を考えて、強制保険と任意保険を同じ損保で契約するのが通例です。一方、日本の保険金請求では、任意保険を契約している損保が自賠責保険の補償分も含めて支払うのが一般的。自賠責保険と任意保険を契約する損保が異なっても、不都合は生じない仕組みになっています。
日本と中国の自動車保険の違い
中国の自動車保険は、ドライバー(被保険者)ではなく自動車に付保される
中国では、車両入替や損保乗り換え時に保険料の割増引率を引き継ぐことができない
日本と違い、中国には保険金一括請求制度がないため、強制保険と任意保険の契約損保は統一するのが通例
 日本の自動車保険の補償のなかには、車両そのものの損害もありますが、メインは第三者への賠償。しかし海外に目を転じると、その加入目的がまったく逆になっている国も存在します。

 自動車保険制度が未発達の国が多い東南アジアでは、「車両損害の補償」つまり「車両保険への加入」が第一の目的で、第三者への賠償責任補償は浸透していない国があります。たとえば東南アジア最大の人口を誇るインドネシアには、強制保険の対人賠償保険と任意保険がありますが、任意保険の加入目的は「車両損害の補償」と考えるドライバーが大多数。自動車を購入した際のローンやリース代などをカバーするために車両保険を付帯する人は多いものの、事故で相手にケガをさせてしまった場合に適用する第三者賠償責任に関する補償への加入については、契約者全体の半数程度に留まっているそうです。

 実はこういった例は東南アジアに限った話だけではなく、世界を見渡すと少なくありません。“人”に対する補償を第一に考えるからこそ、日本の自動車保険は幅広いのかもしれませんね。
日本と東南アジア諸国の自動車保険の違い
東南アジア諸国の加入目的は「車両損害の補償」つまり「車両保険への加入」
インドネシアでは、第三者賠償責任に関する補償への加入は契約者全体の半数程度

※掲載内容は2014年8月時点の情報です
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