孫への生前贈与で非課税にするやり方は?教育資金の贈与の注意点も解説

孫への生前贈与で非課税にするやり方は?教育資金の贈与の注意点も解説

基本的に孫は法定相続人ではないため、孫に財産を残した場合は遺贈となり、相続税の2割加算の対象です。

相続税を支払うのは財産を受け取った孫ですので、できるだけ孫に迷惑をかけずに財産を残したいと考えるなら生前贈与を検討しましょう。

今回は孫に財産を残すには生前贈与がおすすめである理由を解説するとともに、孫への生前贈与を非課税にする方法についても紹介します。

mokuji目次

  1. 孫に財産を残すなら生前贈与を検討した方がいい理由
    1. 生前贈与加算の対象外になる
    2. 計画的に贈与を進められる
  2. 孫への生前贈与を非課税にするやり方
    1. 教育資金として贈与する
    2. 暦年贈与をする(年110万円以内)
    3. 相続時精算課税制度を利用する
    4. 贈与税の非課税制度を利用する
    5. 孫に生命保険をかけておく
  3. 教育資金の一括贈与制度の仕組み
    1. 対象範囲|入学金から留学費用まで
    2. 適用期間|2026年3月末まで延長
  4. 孫への教育資金の贈与における注意点
    1. 生前贈与加算の対象になる場合もある
    2. 孫が23歳以上だと教育資金の範囲が限定される
    3. 孫が未成年の場合は親権者との契約が必要
    4. 定期贈与と判断される場合は課税対象になる
  5. 贈与制度を活用して孫の未来を守る

孫に財産を残すなら生前贈与を検討した方がいい理由

孫に財産を残すなら生前贈与を検討する理由

相続が始まった際、法定相続人となるのは原則として亡くなった人の配偶者そして子どもです。

そして、子どもが亡くなった後に、その子ども(孫)が財産を相続することになり、相続のタイミングが2回発生することになります。

そのため、相続税額によっては孫に残せる財産が大きく減る可能性があります。

一方、生前贈与なら直接孫に財産を渡すため、課税される贈与税は1度となり、相続に比べて孫に残せる財産が大きく減る可能性を少なくできます。

できるだけ孫に財産を残したいと考えている場合は、相続で残す場合と贈与で残す場合の税額を計算し、どちらが残せる財産額が多いかを基準にして考えるとよいでしょう。

生前贈与加算の対象外になる

「生前贈与加算」とは、財産を残した人が亡くなる前の3年間に行われた贈与については相続税の対象となる仕組みで、

2024年以降に行われた贈与については亡くなる前の7年間が対象です。

つまり、贈与を受けて3年(2024年以降は7年)以内に贈与した人が亡くなった場合、その贈与額は相続財産の額に加算され、相続税額の計算対象となってしまうのです。

毎年100万円を受け取っていても、受け取ってから3年以内に贈与者が亡くなると、それまでに受け取った300万円が相続財産に加算されるため、支払う相続税が高くなってしまいます。

ただし、この生前贈与加算の対象となるのは相続もしくは遺贈によって財産を取得した人に対して適用されるため、基本的に法定相続人でない孫には適用されません。

しかし、孫が亡くなった人の養子となっていたり、孫よりも子ども(孫からみた親)が先に亡くなっている場合は法定相続人になるため適用されます。

さらに、亡くなった人の生命保険金などみなし相続財産を受け取っている場合も同様です。

また、以下に当てはまる贈与財産は生前贈与加算における相続財産の対象外になる点にも注意しておきましょう。
生前贈与加算における相続財産の対象外
〇配偶者控除額(贈与税の配偶者控除の適用を受けている場合)
〇住宅取得資金の非課税制度の適用を受けた額
〇教育資金一括贈与の非課税制度の適用を受けた額
〇結婚、子育て資金の一括贈与の非課税制度の適用を受けた額

計画的に贈与を進められる

人が亡くなったときと異なり、「贈与」はその人が生きている間に贈与する時期や額を決められます。

そのため、毎年基礎控除額である110万円を超えない額を生前贈与することで、相続時に一括財産を渡すよりも相続税の課税対象財産を少なくでき、相続税額の負担を抑えられます。

ただ、毎年同じ時期に100万円ずつ贈与を行っていると定期贈与と見なされ、基礎控除額以下でも贈与税の対象になる可能性がありますので、毎年贈与契約を締結してから贈与を行うか、贈与の時期や額をずらす工夫を行いましょう。

孫への生前贈与を非課税にするやり方

孫への生前贈与を非課税にするやり方

孫への生前贈与を非課税する方法には、以下のものがあります。
〇教育資金として贈与する
〇暦年贈与をする(年110万円以内)
〇相続時精算課税制度を利用する
〇贈与税の非課税制度を利用する
〇孫に生命保険をかけておく
それぞれの方法について、以下で詳しく説明します。

教育資金として贈与する

2026年3月31日までの間に直系尊属(親、祖父母など)から教育資金に使うために贈与を受けた場合、一定の要件を満たすことで1,500万円まで非課税になります。

要件は、贈与を受ける人の年齢が30歳未満であることや、贈与を受ける年の合計所得金額が1,000万円以下であることが挙げられるほか、金融機関にて教育資金口座を開設することが求められます。

また、用途によっては非課税限度額が500万円になっている点にも注意してください。

この制度を利用するには、金融機関にて「金融資金口座」の開設を行い、さらに、金融資金非課税申告書を口座を開設した金融機関を通して贈与を受ける人の納税地を管轄している税務署に提出しなければなりません。

また、口座に入っているお金を教育資金のために引き出した場合は、なんの用途に使ったかが分かる領収書を金融機関に提出する必要があります。

>>詳細はページ下部にて解説します

暦年贈与をする(年110万円以内)

暦年贈与とは

1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた際、その金額から110万円の基礎控除を超えた額に対して贈与税が課税される仕組みです。
1年間に受け取った贈与額は受け取った人を基準にして計算します。

そのため、両親から100万円ずつ受け取った場合は合計200万円受け取ったことになりますので、200万円から110万円を差し引いた90万円に対して贈与税がかかります。

贈与税率は、一般税率と特例税率に分かれており、贈与を受ける人の年齢が18歳以上なら一般税率よりも税率が低く設定されている特例税率が適用されますので、孫の年齢も考慮しながら複数年に分けて110万円以下の贈与を行うようにしましょう。

相続時精算課税制度を利用する

相続時精算課税制度とは

原則として60歳以上の祖父母もしくは父母などから18歳以上の子どももしくは孫に対する贈与について選択できる制度です。
この制度を利用することにより、2,500万円までを非課税で受け取れます。

2,500万円を超えた部分については、一律20%の税金がかかりますので注意してください。

なお、2024年1月1日以降の贈与からは基礎控除額(110万円)が差し引かれます。

そして、相続時精算課税制度を利用して受け取った金額は、贈与した人が亡くなったときに相続財産に加算されます。

なお、この制度を利用するためには、最初の贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの間に贈与を受ける人の住所地を管轄する税務署に相続時精算課税選択届出書を提出しなければなりません。

また、1度相続時精算課税制度を選択すると、暦年贈与には戻れない点にも注意しておきましょう。

贈与税の非課税制度を利用する

贈与税には、住宅を取得する際や結婚・子育て資金に利用する際の贈与に対し、「非課税制度」が用意されています。
住宅取得等資金の贈与に関する非課税措置とは

2026年の12月31日までに直系尊属(父母や祖父母など)から自分が住むための家を購入もしくは建築するために必要な資金を受け取った際について、要件を満たすことで一定金額までが非課税になる制度です。
非課税額は質の高い住宅なら1,000万円一般住宅なら500万円です。

質の高い住宅と認められるためには、一定の基準を満たさなければなりません。

また、贈与を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下でなければならないといった決まりもあります。

この制度は購入や建築だけなく、リフォームの際にも適用されます。
結婚・子育て資金の贈与に関する非課税措置とは

2025年3月31日までに贈与を受ける人(18歳以上50歳未満)が結婚や子育てにかかる費用に充てるために直系尊属から受け取った金額について1,000万円までが非課税になるというものです。
ただし、結婚にかかる費用については300万円が上限です。

利用にあたっては、合計所得金額の用件を満たさなければならないほか、金融機関にて結婚・子育て資金口座を開設し、同時に「結婚・子育て資金非課税申告書」を、贈与を受ける人の住所地を管轄する税務署に対し、金融機関を通して提出しなければなりません。

孫に生命保険をかけておく

孫を被保険者および受取人とし、祖父母が契約者となって生命保険をかけておくことで、祖父母が亡くなった時点での解約返戻金相当額が相続税額を計算する際の評価額になります。

そのため、相続税額を抑えながら孫に生命保険金を残せます。
仮に毎年払う保険料額が90万円で保険金額900万円、10年満期の生命保険に加入し、8年目に契約者である祖父母が亡くなった場合、孫は残り2年間の保険料(180万円)を支払う必要があるものの、満期時には900万円を受け取れ、さらに相続税の課税も免れます。

ただし、解約返戻金がない、もしくはあったとしても定額の生命保険を選ばなければならない点や、満期を向かえた際に祖父母が生きている場合は、孫が受け取った保険金は贈与税の対象となりますので注意してください。
孫にかける保険の種類の1つに学資保険があります。

オリコン顧客満足度ランキングでは、学資保険の加入者へのアンケート調査をもとに算出した「学資保険 顧客満足度ランキング」を発表していますので、こちらもぜひご参考にしてください。

教育資金の一括贈与制度の仕組み

教育資金の一括贈与制度の仕組み

孫への生前贈与で一番利用しやすいのは、教育資金の一括贈与制度です。
教育資金の一括贈与制度とは

2026年3月31日までに、直系尊属(父母や祖父母など)から30歳未満の人が教育資金にあてるために受け取った金額については最大1,500万円まで非課税になるというものです。
この制度を利用するには、金融機関にて教育資金口座を開設し、さらに金融機関を通して「教育資金非課税申告書」を贈与を受ける人の住所地を管轄する税務署に提出する必要があります。

また、口座にあるお金を教育資金のために利用するにあたり、領収書を期限までに金融機関に提出しなければなりません。

ここでは、教育資金の一括贈与制度について詳しく解説します。

対象範囲|入学金から留学費用まで

一口に教育資金といっても、「学校などに直接支払う費用」と「学校など以外の人に直接支払う費用」に分けられます。

また、学校など以外の人に直接支払う費用についての非課税枠は500万円が上限ですので、注意しておきましょう。

学校などに支払う費用そして学校など以外の人に支払う費用の対象範囲は以下のとおりです。

カテゴリー

対象範囲

学校などに直接支払う費用

・入学金
・授業料
・入園料
・保育料
・施設整備費
・入学試験料
・学校で必要な学用品購入費用
・給食費
・修学旅行費
など

学校など以外に直接支払う費用

・学習塾など、教育に関する知識を習得するために支払う費用
・スポーツや芸術に関する技能を習得するために支払う費用
・学習塾や習いごとに必要な物品の購入費用
・通学定期代
・留学の際に必要な渡航費など、学校などに直接払わない費用

教育資金の範囲について不明な点がある場合は、文部科学省の公式サイトで確認してください。
また、贈与を受ける人の年齢によっては非課税にならないものもあります。

適用期間|2026年3月末まで延長

教育資金の一括贈与制度の適用期限は2026年3月31日までです。

しかし、以前は2023年3月31日だったものが延長されたこともあり、2024年12月に行われる税制改正にて延長や内容の見直しが行われる可能性は否定できません。

また、贈与を受ける人の要件も変わる可能性がありますので、今後の税制改正の内容をしっかりと確認するようにしましょう。

孫への教育資金の贈与における注意点

孫への教育資金の贈与における注意点

教育資金の一括贈与制度の利用にあたっては、以下の点に注意しておく必要があります。
〇生前贈与加算の対象になる場合もある
〇孫が23歳以上だと教育資金の範囲が限定される
〇孫が未成年の場合は親権者との契約が必要
〇定期贈与と判断される場合は課税対象になる
それぞれの内容について以下で詳しく説明します。

生前贈与加算の対象になる場合もある

教育資金の一括贈与制度の適用を受けているうちに贈与者である直系尊属(祖父母や父母など)が亡くなった場合、口座に残っている残額は相続によって取得したと見なされます。

2024年からは生前贈与加算の対象となる期間が3年から7年に延長されたため、特に注意が必要です。

特に大学を卒業するなど、教育資金が必要なくなる頃には、口座にはできるだけ残額が残らないように計画的に入金するなどの工夫を行っておきましょう。

孫が23歳以上だと教育資金の範囲が限定される

孫が23歳以上になると、非課税になる範囲が以下に限定されます。
〇学校などに直接支払う費用
〇学校などに関連して必要となる費用(留学の際の渡航費用)
〇学校など以外に直接支払う費用のうち、教育訓練給付金の支給対象となる講座の受講費用
そのため、孫の年齢をよく確認してから口座にお金を入金するようにしましょう。

孫が未成年の場合は親権者との契約が必要

孫が18歳未満つまり未成年の場合、祖父母から孫に教育資金の贈与を行う際には親権者つまり孫の親と贈与契約を結ぶ必要があります。

贈与契約書には、贈与者と受贈者の名前のほか、贈与財産の使途や金額などを記載し、贈与日や贈与方法なども記載しなければなりません。

孫の親権者ということは、祖父母からみたら自分の子どもです。

特にそこまでする必要がないと思われるかもしれませんが、関係者全員が制度を利用していることを認識するためにも契約書をきちんと交わしておきましょう。

定期贈与と判断される場合は課税対象になる

毎年100万円など同じ額を贈与している場合、暦年課税の非課税枠を利用した定期贈与とみなされる可能性があります。

仮に1,500万円を孫に遺したいと思い、毎年100万円を15年間贈与し続けた場合などです。

暦年課税の非課税枠を利用して贈与するなら、毎年贈与契約書を作成し、また贈与する日や額を年によって変えるなど工夫しておきましょう。

贈与制度を活用して孫の未来を守る

孫に財産を残したいと考え、生前贈与を行う人もいるでしょう。

その場合は、生前贈与加算の対象にならないかどうか、また暦年課税の非課税枠の利用に注意しておきましょう。特に毎年贈与を行いたいと考えている場合は、定期贈与とみなされないような工夫が必要です。

孫に財産を非課税で贈与できる制度を活用しながら、贈与した金額を有意義に使ってもらうことを考えましょう。

また、孫に財産を残す方法として学資保険の活用も有効です。

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※本記事では一般的な例をもとに情報をまとめています。各社の商品やプランによっては当てはまらないケースもあります。また、情報は公開日現在のものです。各種状況や法令情報等につきましては、公的機関等で最新情報をご確認ください。

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