祖父母が孫のために学資保険を契約できる?加入時の注意点を解説

学資保険は祖父母でも加入できる?

孫の教育資金を準備するために、祖父母が学資保険への加入を検討しているという話をよく耳にします。
本記事では、祖父母が学資保険を契約する際の注意点や契約前に知っておくべき重要なポイントについて詳しく解説します。
ファイナンシャルプランナー/経済ジャーナリスト 酒井富士子

監修者 ファイナンシャルプランナー/経済ジャーナリスト 酒井富士子

金融メディア専門の編集プロダクション・株式会社回遊舎 代表取締役。日経ホーム出版社(現日経BP社)にて「日経ウーマン」「日経マネー」副編集長を歴任。

mokuji目次

  1. 祖父母でも孫のために学資保険を契約できる?
  2. 祖父母が学資保険に加入する際の注意点
    1. 年齢や健康状態によっては加入できない
    2. 同居関係が条件に含まれる場合がある
    3. 保険料が高くなる傾向にある
    4. 親権者の同意が必要
  3. 保険会社からお金を受け取る際の注意点
    1. 所得税と住民税の対象となる場合がある
    2. 贈与税がかかる場合がある
  4. 学資保険以外で教育資金を援助する方法
    1. 暦年贈与でお金を渡す
    2. 教育資金一括贈与の非課税制度を活用する
    3. 相続時精算課税制度を活用する
  5. 祖父母でも孫のために学資保険への加入は可能!

祖父母でも孫のために学資保険を契約できる?

学資保険は祖父母でも加入できる?

学資保険は一般的に、親が契約者となることの多いですが、祖父母でも契約できる可能性があります。

子育て中はなにかとお金がかかり、進学資金の貯蓄にまで手が回らないこともありますから、祖父母の援助は強力なサポートとなるでしょう。

なお、加入条件はそれぞれの学資保険ごとに異なります。
気になる保険があれば、要件を満たすかどうかチェックしておきましょう。

祖父母が学資保険に加入する際の注意点

祖父母が学資保険に加入する際の注意点

祖父母が孫のために学資保険を契約する際に気を付けたいポイントをご紹介します。
項目ごとに詳細をチェックしていきましょう。

年齢や健康状態によっては加入できない

学資保険は、年齢や健康状態によって契約できない場合があります。

契約できる年齢の上限は保険会社によってさまざまですが、多くの保険会社で50〜60代までとしています。
また、孫の年齢によっても契約者の年齢上限が異なることもあります。

健康状態についても契約時に申告する必要があり、持病などがあると加入できない可能性があります。

多くの学資保険には「保険料払込免除」の特約が付いています。
これは、契約者が死亡したり、所定の高度障害状態になったりして支払い不能となった場合に、それ以降の払込が免除され、かつ契約時に決めた祝い金や満期保険金は受け取れるという特約です。

一般的に、死亡や高度障害状態になる可能性は、高齢になるほど、健康状態が悪いほど高まります。
そのため、契約できる年齢や健康状態に制限が設けられています。

保険会社によっては、払込免除の特約を付けないなら、契約可能という場合もあります。
保険料払込免除特約を外せる学資保険もあり、その場合には健康状態の申告が不要のため、健康状態に不安があっても加入することができます。

同居関係が条件に含まれる場合がある

祖父母が契約者になる場合、保険会社によっては孫との同居を条件にしている場合があります。
そのような商品だと、孫と別居している場合には加入の検討すらできません。

二世帯住宅の場合は保険会社によって判断が分かれます。
建物内で互いに行き来でき、キッチンなど一部でも共有スペースがあれば同居とみなされるケースもあります。

せっかく魅力的な学資保険を見つけても、同居の条件があるために考え直さないといけないケースも出てくるでしょう。
孫との同居を条件にしている商品があるという点には注意が必要です。

保険料が高くなる傾向にある

学資保険の保険料は契約者の年齢によって変わるため、契約者である祖父母の年齢が高いと保険料も高くなる可能性があります。

保険料が高すぎて支払いに支障が出そうな場合には、「祝い金」や「満期保険金」を低くするなどの調整が必要となるでしょう。

また、割安な支払い方法を利用するのも一案です。
保険料の支払い方法は「月払い」が一般的ですが、まとめて支払うことで保険料が割引されます。

割引率の高い順に「一時払い」「全期前納」「年払い」「半年払い」の方法があります。
いずれも、月払いよりもまとまった保険料を支払うため保険料が割引され、それに伴い「返戻率」も高まります。
「一時払い」
もっとも割引率の高い支払い方法です。契約者は全期間分の保険料を一度に支払います。
保険会社は、受け取ったお金を満期までの長期間運用することが可能となります。そのため、運用利益が期待でき保険料を安くできるというわけです。
ただし、「一時払い」にはデメリットが2つあります。払込免除特約が無効になる可能性があることと、生命保険料控除が1年間しか受けられないことです。
一時払いを利用する際は、これらのデメリットも含め、総合的な判断が必要です。

「全期前納」
一時払いと同じく、契約者は最初に全期間分の保険料を保険会社に渡します。
ただし、保険期間中の保険料を全て払い込んでいるわけではありません。一旦、保険会社に預けている状態となり、そこから毎月保険料として充当される仕組みです。

そのほか、1年分や半年分の保険料をまとめて支払う「年払い」や「半年払い」という方法もあります。

親権者の同意が必要

祖父母が契約者になる場合、孫の親権者(一般的には父母)の同意が必要になります。
多くの場合、申込書類の「親権者同意欄」に自署する形式を取っています。

そのため、父母に内緒で孫のために学資保険に加入するということはできません。

保険会社からお金を受け取る際の注意点

保険会社からお金を受け取る際の注意点

学資保険を契約した保険会社からお金を受け取る際には、税金が発生するケースがあります。
それぞれの注意点をチェックしていきましょう。

関連記事
学資保険にかかる税金は?課税ケースや計算方法、控除についても解説

所得税と住民税の対象となる場合がある

学資保険の満期保険金や祝い金は、契約者と受取人が同一の場合、所得税と住民税の対象です。

なお、満期保険金や祝い金の受け取り方によって所得の種類が異なり、算出方法も異なります。
満期保険金のように一括で受け取る場合は「一時所得」、大学進学時から4〜5年間など、年金のように1年ごとに学資年金(祝い金)を受け取る場合は「雑所得」となります。

それぞれの所得金額の算出方法を確認していきましょう。
一時所得の計算式
(満期保険金の総額−支払った保険料総額−特別控除額50万円)= 一時所得

この計算式からわかるように、一時所得には50万円の特別控除があり、受け取った保険金総額から支払った保険料総額を引いた金額が50万円以内であれば課税されません。

例えば、満期保険金が300万円、支払った保険料総額が260万円であれば、上記計算式で求められる一時所得はマイナス10万円となります。この場合、課税対象となる一時所得金額は0円とみなされ課税されません。

もし、受け取った保険金総額から支払った保険料総額を引いた金額が特別控除に収まらない場合には課税されます。

なお、一時所得は、その所得金額の2分の1の金額が他の所得の金額と合計して総所得金額を求めた後、納める税額が計算されます。

例えば、満期保険金が300万円、支払った保険料総額が240万円であれば、上記計算式で求められる一時所得は10万円です。その2分の1にあたる5万円のみが課税対象となります。
雑所得の計算式

その年に受け取った保険金総額−受け取った保険金に対応した支払い保険料総額 = 雑所得

先程の一時所得とは違い、雑所得には特別控除がありません。

その年に受け取った保険金総額と、受け取った保険金に対応した保険料との差額がそのまま雑所得の金額となります。雑所得は、他の所得の金額と合計して総所得金額を求めた後、納める税額が計算されます。

例えば、その年に受け取った祝い金の総額が100万円、受け取った金額に対応した支払い保険料総額が90万円の場合、雑所得は10万円となります。
一概にどちらの受け取り方法が税金面で有利というのは言い切れないので、納める税額も考慮して学資保険選びをする必要があります。
参照:国税庁「タックスアンサーNo.1490 一時所得
参照:国税庁「タックスアンサーNo.1500 雑所得

贈与税がかかる場合がある

学資保険の契約者と受取人が異なる場合、贈与税の対象となります。

例えば、契約者が祖父母で、保険金の受取人が父母や孫というような場合には贈与税が課されます。

贈与税は、個人から財産を受け取ったときに、受け取った人が支払う税金です。
1月1日から12月31日までの1年間に受け取った財産の額を合計し、そこから基礎控除額110万円を差し引いてから算出します。
つまり、年間の贈与が110万円以下であれば贈与税はかかりません。

学資保険の保険金を受け取る際、贈与税がかかるかどうかは受け取り方法も大きく影響します。
大学入学などに合わせて満期保険金を一括で受け取る契約であれば、基礎控除の年間110万円を超えてしまうこともあるでしょう。

贈与税の負担を避けるためには、中学・高校・大学などに進学するタイミングに合わせて分割で祝い金をもらう契約や、大学進学時から4〜5年にわたり学資年金を受け取る契約にするなどの対策が有効です。

学資保険以外で教育資金を援助する方法

学資保険以外で教育資金を援助する方法

最後に、学資保険に加入する以外の教育資金を援助する3つの方法と、それぞれの注意点について解説していきます。

関連記事
学資保険の代わりにNISAの利用はあり?メリット・デメリットを解説

暦年贈与でお金を渡す

まず1つ目が、暦年贈与を行う方法です。

先述の通り、贈与税には年間110万円の基礎控除があります。
基礎控除に収まる金額であれば、贈与税の負担なしに祖父母から孫への資金援助が可能です。
その場合、贈与税の申告も納税も不要で、資金の使い道も制限されません。

注意点:定期贈与とみなされる場合がある

暦年贈与には注意点もあります。

まず、定期贈与とみなされないように注意しなければならないという点です。
定期贈与とは、例えば「1000万円を10回に分けて贈与する」というように、あらかじめ金額が決まっている贈与を分割して行うことです。

定期贈与は、贈与した財産の総額に贈与税がかかります。
そのため、年間の贈与額は110万円以下でも、総額が1000万円であれば、1000万円に対し贈与税がかかってしまいます。

定期贈与と見なされないためには、あらかじめ贈与の総額は決まっていなかったと証明するためにも、毎年の贈与ごとに贈与契約書を作成するなどの対策が有効です。

注意点:祖父母死亡時に相続税の対象となる可能性がある

もうひとつの注意点は、親(祖父母の子)への贈与は、祖父母死亡時に相続税の対象になる可能性がある点です。

相続税には、相続人(相続で財産をもらう人)が相続開始前7年以内(※)に被相続人から受けた贈与は、相続財産に戻して相続税を計算する「生前贈与加算」というルールがあります。年間の贈与が110万円以下であっても適用されます。
※2024年の贈与から、相続税への加算対象期が段階的に引き上げられ、亡くなる前3年から2031年には7年に延長されます。

ただし、ここで注目したいのが、このルールが適用されるのは、相続人への贈与である点です。

通常、祖父母が亡くなった時の相続人の第1順位は、その子供たち=孫の親ということになります。つまり、親が存命であれば、孫は相続人に含まれないのです。
そのため、孫へ暦年贈与された財産は、生前贈与加算のルールが適用されず相続財産から切り離されます。

孫の教育資金を援助する際には、親に資金を渡して管理してもらおうと考えるかもしれません。

しかし、祖父母から親への贈与は、相続開始前7年以内であれば相続税の対象となってしまいます。
一方で、孫への贈与なら、年間110万円以内であれば贈与税も相続税もかからずに資金援助することが可能なのです。

教育資金一括贈与の非課税制度を活用する

2つ目が、教育資金の一括贈与の非課税制度です。

これは、30歳未満の子や孫などが、直系尊属(祖父母なと?)からの贈与を受ける際、受け取る人1人当たり最大1500万円まで贈与税が非課税となる制度です。

利用する際は、金融機関で手続きを行います。
贈与者は「教育資金非課税申告書」を金融機関に提出し、子や孫名義の教育資金口座に入金します。

子や孫は教育資金の領収書や請求書を提出することで、贈与税非課税でお金を引き出すことができます。子や孫が未成年の場合、親などの保護者が手続きを行います。

対象となる教育資金は、基本的に学校に支払う費用です。
入試受験料や入学金、授業料や学用品の購入費、修学旅行代などが該当します。

なお、学校以外の習い事などへの支払は、1500万円のうち、最大500万円まで非課税で引き出すことが可能です。

注意点:残高に気を付ける

受け取った子や孫が30歳に到達した時点で残高があれば、その残高は贈与税の対象となります。

また、契約が終わる前に贈与者が死亡し、その時点で残高があれば、相続税の対象となります(※)
※受け取った子や孫が23歳未満である場合や、学校などに在学中の場合は除きます。

利用する際は、祖父母や孫の年齢を考慮し、使い切れる金額を贈与することが重要です。

相続時精算課税制度を活用する

3つ目は、相続時精算課税制度の活用です。

60歳以上の直系尊属(祖父母なと?)から、18歳以上の子や孫などへ財産を贈与する際、2500万円までであれば贈与税がかからない一方で、生前の贈与額は、課税されなかった2500万円も含めて相続時に相続財産に加算されるという制度です。

贈与時の税負担を減らし、相続時にまとめて税金の精算する仕組みといえます。

2024年の贈与からは一部ルールが変更となり、これまでよりも活用しやすい制度となりました。
基礎控除として年110万円を差し引けるようになったのです。
しかも、「生前贈与加算」のルールが適用される暦年課税とは異なり、基礎控除内であれば相続人への贈与でも相続財産へは戻されません。

相続時非課税制度は、贈与時の価額で相続税が計算されます。そのため、相続時に価格が上がっていそうな株式や不動産などの財産を贈与するのに有効な制度といえます。

さらに、年間110万円までは非課税で贈与できるうえ、暦年贈与とは違い、相続人である親(祖父母の子)への贈与であっても相続財産に戻されることもありません。
この枠を利用して、孫の代わりに親へ教育資金を渡す際に活用する方法が考えられます。

この制度を利用する際は、贈与のあった翌年2月1日から3月15日までの間に「相続時精算課税選択届出書」を提出します。

注意点:「相続時精算課税制度」を選択後は暦年贈与に戻れない

相続時精算課税制度を選択すると、その贈与者からの贈与は暦年贈与には戻れません。

また、受け取る側の年齢は18歳以上と決まっているため、生まれてすぐの孫や、未就学、小中学生などの孫は対象外となります。

活用方法としては、孫ではなく、親(祖父母の子)への財産贈与の際に利用すると効果的なケースがあるでしょう。

相続時精算課税制度は、一度選択すると暦年贈与には戻れませんから、利用の際は慎重に検討する必要があります。

相続に強い税理士などへの相談したうえで、孫には暦年贈与、親には相続時精算課税制度、と制度を使い分けることで少ない税負担で教育資金を援助できる可能性があります。

祖父母でも孫のために学資保険への加入は可能!

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ファイナンシャルプランナー/経済ジャーナリスト 酒井富士子

監修者 ファイナンシャルプランナー/経済ジャーナリスト 酒井富士子

金融メディア専門の編集プロダクション・株式会社回遊舎 代表取締役。
日経ホーム出版社(現日経BP社)にて「日経ウーマン」「日経マネー」副編集長を歴任。
リクルートの「赤すぐ」副編集長を経て、2003年から現職。「お金のことを誰よりもわかりやすく発信」をモットーに、暮らしに役立つ最新情報を解説する。

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