長期平準定期保険とは?仕組みと経理処理をわかりやすく解説

長期平準定期保険とは?仕組みと経理処理をわかりやすく解説

長期平準定期保険とは、保険料が契約期間中ずっと同じ(平準)金額を保ち、なおかつ契約期間が超長期(満了期は90歳以上に設定されたものが多く、保険会社によっては99歳、100歳という商品もみられます)におよぶ生命保険です。小さな保険料で大きな保障が得られるという定期保険特有の長所に加え、保険料の一部を損金算入でき、税負担を将来に繰り延べる効果が見込める点も特徴です。
金子賢司

監修者 ファイナンシャルプランナー 金子賢司

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東証一部上場企業(現在は東証スタンダード)で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。

以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。

・CFP® 資格(資格番号:90260739)
・日本FP(ファイナンシャルプランナー協会)幹事

mokuji目次

  1. 長期平準定期保険とは?基本的な仕組みをわかりやすく解説
    1. 長期平準定期保険の定義と「105ルール」
    2. 解約返戻金の推移と積立の仕組み
  2. 長期平準定期保険の特徴
    1. 法人向けの契約形態(キーマン保険としての性格)
    2. 低解約返戻金型・非喫煙者割引
  3. 長期平準定期保険のメリット
    1. 長期・高額の死亡保障を割安な保険料で確保できる
    2. 解約返戻金を退職金・緊急資金として活用できる
    3. 払済終身保険への変更が可能
  4. 長期平準定期保険の経理処理(2019年税制改正後)
    1. 2019年税制改正(法人税基本通達9-3-5)の概要
    2. 最高解約返戻率に応じた4区分の損金算入ルール
    3. 2019年改正前の経理処理ルール(改正前契約への適用)
    4. 課税の繰延と出口戦略の重要性
  5. 長期平準定期保険のデメリット・注意点
    1. 短期解約では元本割れになる
    2. 税制改正により節税効果は大幅に縮小した
  6. 長期平準定期保険と逓増定期保険の違い
    1. 死亡保険金額の変動(平準vs逓増)
    2. 解約返戻金のピーク時期と活用目的の違い
  7. 長期平準定期保険への理解を深めて、自社に合った活用法を選ぼう

長期平準定期保険とは?基本的な仕組みをわかりやすく解説

長期平準定期保険とは?基本的な仕組みをわかりやすく解説

長期平準定期保険は、保険期間が満了まで超長期にわたる法人向けの定期保険です。満期は90歳から100歳ごろに設定される商品が多く、死亡保険金額も保険料も契約期間を通じて変動しません。

掛け捨て型のため満期保険金はありませんが、保険料が平準化(一定に保たれている状態)されているため、保険期間が長いぶん解約返戻金が積み立てられ、退職金の原資などに活用できる点が特徴です。

長期平準定期保険の定義と「105ルール」

長期平準定期保険は、法人が契約者と保険金の受取人になり、経営者や役員を被保険者とする定期保険の一種です。かつての税務上の取扱いでは、保険期間が満了する時の被保険者の年齢が70歳を超え、なおかつ加入時の年齢に保険期間の2倍を加えた数が105を超えるものを「長期平準定期保険」と定めていました。この計算式が「105ルール」と呼ばれています。

満期は90歳から100歳ごろに設定される商品が多く、加入から満期まで死亡保険金額と保険料が変わらないため、長期の保障を一定の負担で確保しやすい点がメリットです。

ただし、この105ルールを定めていた通達は2019年の税制改正で廃止されており、現在の新規契約(2019年7月8日以後の契約)の経理処理は、105ルールではなく最高解約返戻率」という別の基準で判定されます。経理処理の詳しい内容は、後半の章で取り上げます。

解約返戻金の推移と積立の仕組み

長期平準定期保険は満期保険金のない掛け捨て型ですが、契約内容や最高解約返戻率などに応じて、支払う保険料の一部は税務・会計上「前払保険料」として資産に計上されていきます。

解約返戻金は契約後しばらく増え続け、保険期間の途中でピークを迎えたあと、満期に向けて減っていきます。満期保険金がないため、満期まで保有すると解約返戻金は最終的にほとんど残りません。

こうした特徴から、満期まで持ち続けるのではなく、解約返戻金がピークに近づいた時期に解約して、退職金などの原資に充てるのが一般的な活用方法です。

長期平準定期保険の特徴

長期平準定期保険の特徴

長期平準定期保険は、経営者や役員を被保険者とする法人向けの保険です。事業に欠かせない人物に万一のことがあった場合のリスクに備えられるほか、保険料を割安にする特則が用意された商品もあります。

ここでは、契約形態と保険料に関する商品タイプや保険料率という2つの特徴を取り上げます。

法人向けの契約形態(キーマン保険としての性格)

長期平準定期保険は、法人が契約者と保険金の受取人になり、経営者や役員を被保険者とする「法人契約」が基本の形です。

経営者や役員など、事業の運営に欠かせない人物は「キーマン」と呼ばれます。キーマンが亡くなると、取引先の信用低下による売上の減少や、経営者が負っていた連帯保証債務の相続など、企業にさまざまな影響が及ぶおそれがあります。長期平準定期保険は、こうした企業のリスクに備える「キーマン保険(経営者保険)」として活用されてきました。

低解約返戻金型・非喫煙者割引

長期平準定期保険には、保険料を抑えられる商品タイプや保険料率を付けられる商品があります。

代表的なものが「低解約返戻金型」です。これは、加入から一定期間の解約返戻金を低く抑える代わりに、保険料を割安にしたタイプです。

また、たばこを吸わない人の保険料を割り引く「非喫煙者料率」や、健康状態が一定の基準を満たす人の保険料を割安にする「健康体料率」を用意した商品もあります。

これらを利用できれば、同じ保障をより低い負担で準備しやすくなります。

長期平準定期保険のメリット

長期平準定期保険のメリット

長期平準定期保険には、主に次のようなメリットがあります。
それぞれの内容を順に見ていきましょう。

長期・高額の死亡保障を割安な保険料で確保できる

5年・10年ごとのように更新するタイプの定期保険は、更新のたびに保険料が再計算され、通常は年齢が上がるにつれて保険料も高くなります。一方、長期平準定期保険は加入時から満期まで保険料が一定に保たれるため、更新による値上がりを気にせず高額の死亡保障を維持できます。

保険料も保険金額も契約期間中は変わらないため、将来の負担を見通しやすく、長期的な事業計画や資金計画を立てやすい点もメリットです。

解約返戻金を退職金・緊急資金として活用できる

解約返戻金がピークに近づく時期に合わせて解約すれば、その返戻金を経営者や役員の退職金の原資に充てられます。そのため、退職のタイミングと解約の時期を調整することで、まとまった資金を計画的に準備することが可能です。

また、契約者貸付制度が利用できる商品であれば、解約せずに急な事業資金を調達することもできます。この制度は、解約返戻金の一定の範囲内で保険会社からお金を借りられる仕組みです。

保障を続けたまま緊急資金に対応できる点がメリットといえるでしょう。ただし、借入には保険会社所定の利息がかかります。

払済終身保険への変更が可能

長期平準定期保険には、途中で保険料の払込みを止めて「払済保険」に変更できる商品があります。払済保険とは、保険料の払込みを中止し、その時点の解約返戻金をもとに、保障額を抑えた保険へ切り替える方法です。

払済保険に変更したあとも死亡保障は続くため、退職後は個人の保障として役立てられます。商品によっては払済終身保険へ変更でき、一生涯の保障に切り替えられるものもあります。

ただし、解約返戻金が少ない場合や保険の種類によっては変更できないこともあるため、事前に契約内容の確認が必要です。

長期平準定期保険の経理処理(2019年税制改正後)

長期平準定期保険の経理処理(2019年税制改正後)

長期平準定期保険で払い込んだ保険料は、その全額をそのまま費用(損金)として処理できるわけではありません。

経理処理のルールは2019年(令和元年)の税制改正で見直され、現在は「最高解約返戻率」に応じて損金にできる割合が決まる仕組みになっています。

ここでは、改正の概要から具体的な区分、注意点までを解説します。

2019年税制改正(法人税基本通達9-3-5)の概要

2019年6月28日、国税庁は法人向けの定期保険や第三分野保険(医療保険やがん保険など)の保険料について、損金算入のルールを定めた通達を改正しました。この新しいルールは、2019年7月8日以後に契約した保険に適用されます。

そもそも「損金算入」とは、法人税を計算するときに、支払った費用を収益から差し引く処理のことです。損金にできる金額が増えるほど、その年の課税対象となる利益は少なくなります。

改正前は長期平準定期保険だけを対象とした個別の通達がありましたが、これは廃止され、定期保険と第三分野保険の取扱いが一つのルールに統一されました。

最高解約返戻率に応じた4区分の損金算入ルール

改正後は、保険期間を通じて解約返戻率が最も高くなる時点の割合(最高解約返戻率)に応じて、経理処理が4つの区分に分かれます。区分ごとに、資産として計上する割合や期間などが異なる点がポイントです。

最高解約返戻率が50%以下であれば、支払った保険料は期間の経過に応じて損金に算入でき、原則として全額を損金にできます。一方、最高解約返戻率が高い区分ほど前払保険料の性格が強いと考えられ、資産に計上する割合が高くなり、その年に損金にできる割合は少なくなります。
最高解約返戻率 資産計上期間 資産計上額(年間保険料に対する割合) 取崩期間
50%以下 なし なし(全額損金) なし
50%超〜70%以下 保険期間の当初40% 年間保険料の40% 保険期間の75%経過後〜保険期間終了まで(均等取崩)
70%超〜85%以下 保険期間の当初40% 年間保険料の60% 保険期間の75%経過後〜保険期間終了まで(均等取崩)
85%超 保険期間開始〜最高解約返戻率となる期間(原則) 年間保険料×最高解約返戻率×90%(当初10年間)、11年目以降は×70% 解約返戻金が最高となる期間の翌期〜保険期間終了まで(均等取崩)

参考:国税庁|No.5364-2?定期保険及び第三分野保険の保険料(保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合)の取扱い(令和元年7月8日以後契約分)

「資産計上」とは、支払った保険料を費用ではなく資産として計上し、後の期間に費用へ振り替えていく処理です。資産に計上した額は、表の「取崩期間」に入ると、期間の経過に応じて取り崩して損金に算入していきます。

2019年改正前の経理処理ルール(改正前契約への適用)

2019年7月8日より前に契約した長期平準定期保険には、改正前の古いルールが引き続き適用されます。

改正前のルールでは、保険期間の前半60%にあたる期間について、支払った保険料の2分の1を資産に計上し、残りの2分の1を損金に算入する取扱いでした。後半40%の期間に入ると、支払保険料の全額を損金にしつつ、前半で資産計上してきた金額を取り崩して損金に加えていきます。

自社の契約がいつ結ばれたものかによって、適用されるルールが変わります。加入の時期を確認しておくことが大切です。

課税の繰延と出口戦略の重要性

損金算入による節税の効果は、永久に続くものではありません。前の区分で見たとおり、資産に計上した保険料は取崩期間に入ると損金へ振り替わるため、保険期間の全体を通してみると、損金にできる保険料の総額は変わらないからです。

つまり、長期平準定期保険による節税は、税金を将来に先送りする「課税の繰延」にとどまります。トータルで見た税負担そのものが消えるわけではありません。

そこで意識したいのが「出口戦略」です。一般に、解約返戻金を受け取る事業年度に、あわせて役員退職金などの費用を計上できれば、受け取った資金と費用を相殺して税負担を抑えやすくなります。解約の時期をあらかじめ設計しておくことが、この保険を活用するうえで欠かせないポイントといえるでしょう。

長期平準定期保険のデメリット・注意点

長期平準定期保険のデメリット・注意点

メリットの一方で、長期平準定期保険には注意すべき点もあります。
契約前に押さえておきたいのは、主に次の2点です。
それぞれ詳しく見ていきます。

短期解約では元本割れになる

長期平準定期保険は、契約してから間もない時期は解約返戻金が低く抑えられています。そのため、加入して短期間で解約すると、受け取れる解約返戻金が払い込んだ保険料の総額を下回り、元本割れになる可能性があります。

この保険は、長く加入し続けることを前提に設計された商品です。加入する際は、少なくとも解約返戻率がピークを迎える時期まで契約を続けられるよう、資金計画に無理がないかを確認しておくことが大切です。

税制改正により節税効果は大幅に縮小した

2019年の税制改正の前は、解約返戻率が高い商品でも、支払った保険料の2分の1を損金にできるタイプが「節税保険」として広く販売されていました。しかし改正後は、最高解約返戻率が85%を超える商品では資産に計上する割合が高くなり、その年に損金にできる割合が減りました。

前述のとおり、損金算入による効果はあくまで「課税の繰延」にとどまり、税負担そのものをなくす恒久的な節税にはなりません。改正後は、かつてのような節税だけを目的とした活用は難しくなったといえます。

長期平準定期保険と逓増定期保険の違い

長期平準定期保険と逓増定期保険の違い

長期平準定期保険と混同されやすい保険に「逓増定期保険」があります。どちらも法人向けの定期保険ですが、死亡保険金額の変化や解約返戻金のピーク時期に違いがあります。主な違いを表にまとめました。
比較項目 長期平準定期保険 逓増定期保険
死亡保険金額 保険期間中一定(平準) 保険期間の経過とともに増加(最大5倍)
解約返戻金のピーク時期 比較的ゆるやかにおとずれ、返戻率が高い時期が長く続く 加入後比較的早期(短め)
主な活用対象 退職時期が未確定・長期的な備えが必要な経営者 退職時期が明確な経営者
経理処理の根拠通達 法人税基本通達9-3-5・9-3-5の2(2019年改正後) 同左(改正により個別通達は廃止され、共通ルールに統一)

死亡保険金額の変動(平準vs逓増)

長期平準定期保険は、その名のとおり保険期間中の死亡保険金額が一定(平準)に保たれます。加入直後でも満期の直前でも、受け取れる死亡保険金額は変わりません。

一方、逓増定期保険は、保険期間が進むにつれて死亡保険金額が増えていく保険です。かつての税務上の取扱いでは、保険金額が当初の5倍まで増加するものと定められていました。保険金額が一定か、時間の経過とともに増えるかという点が、両者の根本的な違いで、それに伴って解約返戻金のピーク時期や活用方法に差があります。

解約返戻金のピーク時期と活用目的の違い

解約返戻金がピークを迎える時期にも違いがあります。長期平準定期保険は、ピークが比較的遅い時期に訪れ、その状態が長く続きやすい傾向があります。そのため、退職の時期がはっきり決まっていない経営者でも、解約のタイミングを合わせやすい保険といえるでしょう。

これに対して逓増定期保険は、解約返戻金のピークが比較的早い時期に訪れやすい傾向があります。退職の時期が明確に決まっている場合には、そのタイミングに合わせて活用しやすい保険です。

長期平準定期保険への理解を深めて、自社に合った活用法を選ぼう

長期平準定期保険は、経営者や役員の万一に備えながら、退職金の準備にも活用できる法人向けの保険です。ただし、2019年の税制改正によって経理処理のルールが見直され、かつてのような節税を主な目的とした活用は難しくなっています。仕組みやメリット、デメリット、逓増定期保険との違いを踏まえたうえで、自社の経営状況や退職の時期、税務の方針に合った活用法を検討することが大切です。

経理処理は複雑で、区分の判定を誤ると税務上のトラブルにつながるおそれもあります。加入や見直しを検討する際は、税理士や保険の専門家に相談すると安心です。

保険会社選びでは、オリコン顧客満足度ランキングも参考になります。
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