生命保険(死亡保険)に相続税はかかる?非課税枠の条件・計算方法を解説

生命保険(死亡保険)に相続税はかかる?非課税枠の条件・計算方法を解説

生命保険の死亡保険金には、税金が課せられることがあります。

死亡保険金が相続税の課税対象となるのは、生命保険の契約者(保険料を支払う人)と被保険者(保障の対象になる人)が同じ人物である場合です。

一方、死亡保険金を受け取っても、一定額までは相続税が非課税となる場合があります。
万が一に備えて生命保険に加入する際は、相続税が課税される条件や非課税枠について理解することが大切です。

この記事では、生命保険の死亡保険金が相続税の課税対象となるケースや課せられる税金の決まり方、非課税枠の計算方法などについて解説します。

mokuji目次

  1. 死亡保険金は相続税の対象になる?
    1. 死亡保険金に相続税が課税されるケース
    2. 死亡保険金に相続税が課税されないケース
  2. 生命保険金の相続税|非課税枠と基礎控除の仕組み
    1. 生命保険金の非課税枠とは?
    2. 相続税の基礎控除とは?
  3. 生命保険金にかかる相続税の計算方法
    1. @非課税限度額を差し引く
    2. A基礎控除額を差し引く
    3. B法定相続分をもとに相続税の総額を算出する
    4. C各相続人が納める税額を算出する
  4. 注意点|相続放棄や孫への相続の場合
    1. 相続放棄すると非課税枠は適用されない
    2. 孫が受取人の場合、相続税は2割加算
  5. 生命保険を選ぶ際は相続税や非課税枠をよく理解しよう

死亡保険金は相続税の対象になる?

死亡保険金は相続税の対象になる?

生命保険の死亡保険金を受け取る際、契約形態によっては相続税が課税されます。

死亡保険金が相続税の課税対象となるかどうかは、保険契約者(保険料負担者)・被保険者・受取人の組み合わせによって決まります。

死亡保険金に相続税が課税されるケース

死亡保険金に課税される税金の種類は、生命保険の契約形態によって決まります。
契約形態と課税される税金の種類は、下記をご覧ください。
5x4 Table
契約者と被保険者が同じ 契約者と受取人が同じ 契約者・被保険者・受取人が異なる
契約者
(保険料負担者)
AAA
被保険者ABB
受取人BAC
課税される税金相続税所得税・住民税贈与税
生命保険の契約者(保険料を支払う人)と被保険者(保障の対象となる人)が同一である場合、被保険死亡保険金は「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。
例えば、父親が生命保険の契約者かつ被保険者であり、母親や子どもが保険金受取人として指定されているとしましょう。

この場合、父親が亡くなった際に支払われる保険金はみなし相続財産とみなされ、相続税の課税対象となります。

死亡保険金に相続税が課税されないケース

死亡保険金に相続税が課税されないケースは、以下の通りです。

所得税・住民税、贈与税の課税対象となる場合

生命保険の契約者(保険料負担者)と受取人が同一である場合、死亡保険金は所得税住民税の課税対象です。

例えば、妻が契約者と受取人、夫が被保険者である場合、夫が亡くなったときに妻が受け取る死亡保険金は、所得税と住民税の課税対象となります。

また、契約者、被保険者、受取人がすべて異なる(例:契約者=夫、被保険者=妻、受取人=子ども)場合、死亡保険金は贈与税の課税対象となります。

非課税限度額以下の場合

生命保険の死亡保険金が相続税の非課税限度額を下回っている場合、相続税の課税対象になりません。

非課税限度額は「500万円×法定相続人の数」で算出されます。

例えば、亡くなった人に妻と3人の子どもがいた場合、法定相続人は4人となるため、死亡保険金の受取額が「500万円×4人=2,000万円」以内であれば、相続税は非課税となります。

基礎控除額以下の場合

相続税には基礎控除額が設けられており、遺産総額のうち「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」までは非課税となります。

例えば、配偶者と長男の2人が法定相続人である場合、基礎控除額は「3,000万円×2人=4,200万円」です。

この場合、死亡保険金から非課税枠を差し引いた部分と、預貯金や不動産など他の相続財産を合計した金額が基礎控除額4,200万円を下回っているのであれば、相続税は課税されず申告も不要です。

生命保険金の相続税|非課税枠と基礎控除の仕組み

生命保険金の相続税|非課税枠と基礎控除の仕組み

続いて、生命保険金の非課税枠や相続税の基礎控除額の計算方法を詳しくみていきましょう。

生命保険金の非課税枠とは?

生命保険の契約者(保険料負担者)と被保険者が同一人物であり、かつ保険金受取人が相続人である場合、受け取った死亡保険金のうち非課税限度額を超える部分が相続税の課税対象となります。

一定金額まで相続税が課税対象外となるのは、死亡保険金には残された家族の生活を保障するという大切な目的があるためです。

非課税枠の限度額は?

非課税限度額は「500万円×法定相続人の数」です。法定相続人は、遺産を相続する権利を持つ人のことです。
民法では、法定相続人になれる人の範囲や順序が明確に定められています。

まず被相続人の配偶者は、常に法定相続人となります。配偶者以外については、以下の順序にしたがって法定相続人が決まります。
● 第1順位
被相続人の子ども(子が死亡している場合は孫やひ孫など)

● 第2順位
被相続人の直系尊属(父母、祖父母など)

● 第3順位
被相続人の兄弟姉妹(兄弟姉妹が死亡している場合は甥姪)
なお、非課税限度額を計算する際、法定相続人に含められる養子の数には制限があります。被相続人に実子がいない場合は2人まで、実子がいる場合は1人までとなります。

非課税枠を超える場合の計算方法

受け取った死亡保険金の合計金額が非課税限度額を超える場合、超過した部分が相続税の課税対象となります。

例えば、死亡保険金の受取額が合計2,000万円、生命保険の非課税限度額が1,000万円である場合、相続税の課税対象額は「2,000万円−1,000万円=1,000万円」です。

課税対象となる死亡保険金は、他の相続財産と合算されて相続税額が計算されます。

相続税の基礎控除とは?

相続税の基礎控除の仕組みを解説します。

基礎控除額と計算方法

基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」という計算式で求められます。

法定相続人の数え方は、生命保険の非課税限度額と同じです。

法定相続人に含められる養子の数も同様であり、被相続人に実子がいない場合は2人まで、実子がいる場合は1人までとなります。

相続財産の総額が基礎控除を超えた場合、原則として相続税の申告が必要です。

申告期限は、相続開始を知った日(通常は被相続人が亡くなった日)の翌日から10ヶ月以内です。

期限を過ぎても申告をしなかった場合や相続税よりも本来よりも少なく申告した場合などは、延滞税や加算税といったペナルティが課せられます。

基礎控除の適用範囲

相続税を計算する際は、基礎控除額を差し引く前に遺産の全体を把握する必要があります。相続税の課税対象となる財産の例は、以下の通りです。

財産区分

具体例

本来の相続財産

亡くなった人が保有する預貯金、不動産、有価証券、美術品、自動車など

みなし相続財産

死亡保険金や死亡退職金のうち非課税枠を超えた部分

生前に贈与された財産のうち相続税の課税対象になるもの

・相続開始前の3〜7年以内に被相続人から生前贈与された財産
・相続時精算課税制度を利用した贈与財産など

「相続時精算課税制度」は、60歳以上の親や祖父母などから18歳以上の子どもや孫などへ、年間110万円の基礎控除に加えて2,500万円までの財産を贈与税なしで渡せる制度です。

この制度で贈与された財産のうち、年間110万円を超える部分は相続財産に足し戻されて相続税の課税対象となります。

本来の相続財産やみなし相続財産、相続税の課税対象となる生前贈与財産などから、以下を差し引いた金額から基礎控除額を差し引きます。
● 仏具や墓地などの非課税財産
● 被相続人が残した借入金や未払金などの債務
● 相続人が負担した葬式費用
相続税を計算する際は、死亡保険金をはじめとした課税の対象となる財産がいくらあるのかを正確に把握することが大切です。

生命保険金にかかる相続税の計算方法

生命保険金にかかる相続税の計算方法

生命保険の死亡保険金に課税される相続税は、以下の手順で計算します。
1 非課税限度額を差し引く
2 基礎控除額を差し引く
3 法定相続分をもとに相続税の総額を算出する
4 各相続人が納める税額を算出する
計算手順を1つずつみていきましょう。

@非課税限度額を差し引く

まずは、受け取った死亡保険金から非課税限度額を差し引きます。

例えば、死亡保険金の受取額が計4,000万円、法定相続人が配偶者、長男、長女の3人であるとしましょう。
この場合、非課税限度額と相続税の課税対象となる死亡保険金額は次の通りです。
● 非課税限度額
500万円×3人=1,500万円

● 課税対象となる死亡保険金額
4,000万円−1,500万円=2,500万円

A基礎控除額を差し引く

非課税限度額を差し引いたあとの死亡保険金額と他の相続財産の合計から、基礎控除額を差し引いて課税遺産総額を求めます。

各相続人が相続した財産の金額(課税価格)は以下の通りです。
5x4 Table
配偶者 長男 長女
相続財産1億2,000万円4,000万円4,000万円
死亡保険金
非課税枠の控除後
2,500万円--
債務・葬式費用-500万円--
課税価格1億4,000万円3,000万円3,000万円
遺産総額、相続税の基礎控除額、課税遺産総額の計算結果は次の通りです。
● 遺産総額
1億4,000万円+3,000万円+3,000万円=2億円

● 相続税の基礎控除額
3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円

● 課税遺産総額
2億円−4,800万円=1億5,200万円

B法定相続分をもとに相続税の総額を算出する

続いて、法定相続分にしたがって分割したと仮定し、相続税の総額を算出します。

法定相続分とは、民法で定められる各相続人の取り分の目安であり、以下のように定められています。

財産の配分方法

配偶者の割合

その他の相続人の割合

配偶者と子ども

1/2

1/2

配偶者と直系尊属

2/3

1/3

配偶者と兄弟姉妹

3/4

1/4

今回のケースにおける法定相続分は、配偶者1/2、子ども1/2です。子どもは長男と長女の2人であるため、法定相続分は各1/4となります。

法定相続分に応じた取得金額は以下の通りです。
● 配偶者
1億5,200万円×1/2=7,600万円

● 長男
1億5,200万円×1/4=3,800万円

● 長女
1億5,200万円×1/4=3,800万円
法定相続分に応じた取得金額を算出できたら、下記の速算式を用いて相続税の総額を算出します。
9x3 Table
法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下10%-
1,000万円超〜3,000万円以下15%50万円
3,000万円超〜5,000万円以下20%200万円
5,000万円超〜1億円以下30%700万円
1億円超〜2億円以下40%1,700万円
2億円超〜3億円以下45%2,700万円
3億円超〜6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円
※出典:国税庁「No.4155?相続税の税率

各相続人の取得金額に上記の速算式を当てはめて計算をすると、結果は以下の通りです。
● 配偶者
7,600万円×30%−700万円=1,580万円

● 長男
3,800万円×20%−200万円=560万円

● 長女
3,800万円×20%−200万円=560万円

● 相続税の総額
1,580万円+560万円+560万円=2,700万円
よって、相続税の総額は2,700万円と算出されました。

C各相続人が納める税額を算出する

最後に、各相続人が実際に取得した金額に応じて相続税額を按分し、実際に納める税額を求めます。
● 配偶者の納付税額
2,700万円×(1億4,000万円÷2億円)=1,890万円

● 長男の納付税額
2,700万円×(3,000万円÷2億円)=405万円

● 長女の納付税額
2,700万円×(3,000万円÷2億円)=405万円
被相続人の配偶者は「配偶者の税額軽減」という制度を適用することで、相続した財産が1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い金額まで相続税がかからなくなります。

今回のケースで配偶者の相続した財産は計1億6,000万円(生命保険4,000万円、その他の財産1億2,000万円)であるため、配偶者の税額軽減により相続税はかかりません。

長男と長女については、他に適用できる特例や税額控除がない場合、各405万円の相続税を納めます。

注意点|相続放棄や孫への相続の場合

注意点|相続放棄や孫への相続の場合

相続放棄をすると、生命保険の非課税枠は適用されなくなります。
また、孫を死亡保険金の受取人に指定すると2割加算が適用され、かえって税負担が重くなってしまいかねません。

相続放棄すると非課税枠は適用されない

相続放棄とは、相続人としての遺産を相続する権利を放棄する手続きのことです。

相続放棄をすると、預貯金や不動産、株式、亡くなった人が残した借入金などの遺産を一切相続しなくなります。

相続放棄をしても、生命保険の保険金受取人に指定されているのであれば、死亡保険金を受け取ることは可能です。

ただし「相続人」としての地位を失うため、生命保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)は適用されず、受け取った保険金の全額が相続税の課税対象となります。

非課税枠を計算する際に、相続放棄をした人物も法定相続人にカウントされますが、放棄をした人自身はその恩恵を受けられない点に注意が必要です。

孫が受取人の場合、相続税は2割加算

被相続人の配偶者や子ども以外の人物が遺産を相続すると、通常の相続税額に20%が上乗せされる「2割加算」が適用されます。

法定相続人ではない孫が、みなし相続財産である死亡保険金を受け取る場合も2割加算の対象です。

例えば、孫の相続税額が1,000万円の場合、2割加算により200万円が追加され、最終的な納税額は1,200万円となります。

また、孫が法定相続人ではないのであれば死亡保険金を受け取っても、生命保険金の非課税枠も適用されません。

これらの理由から、孫を保険金受取人に指定すると相続税の税負担が重くなる可能性があります。

生命保険を選ぶ際は相続税や非課税枠をよく理解しよう

生命保険の死亡保険金は、契約形態によって相続税・所得税・贈与税の課税対象となります。

契約者(保険料負担者)と被保険者が同じ人物である場合、死亡保険金は相続税の課税対象となりますが、保険金受取人が相続人であれば「500万円×法定相続人の数」まで非課税となります。

また、死亡保険金を含む遺産の総額が基礎控除「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を下回っているのであれば、相続税はかかりません。

生命保険に加入する際は、課税される税金の種類や税負担が発生するかどうかもよく確認したうえで契約内容を決めることが大切です。

オリコン顧客満足度ランキングでは、生命保険の加入者へのアンケート調査をもとに算出した「生命保険顧客満足度ランキング」を発表しています。

生命保険への加入を検討される際はこちらもぜひご参考いただき、自分に合ったよりよい選択肢を見つけてみてください。

※本記事では一般的な例をもとに情報をまとめています。各社の商品やプランによっては当てはまらないケースもあります。また、情報は公開日現在のものです。各種状況や法令情報等につきましては、公的機関等で最新情報をご確認ください。

生命保険オリコン顧客満足度ランキング

  • 1位

    72.0

    ライフネット生命

  • 2位

    71.5

    ソニー生命

    ※公式サイトへ遷移します。

  • 3位

    70.9

    アフラック

  • 3位

    70.9

    プルデンシャル生命

  • 5位

    69.8

    三井住友海上あいおい生命

  • 6位

    69.6

    チューリッヒ生命

  • 7位

    69.5

    メットライフ生命

  • 8位

    69.4

    アクサ生命

  • 9位

    69.3

    大樹生命

  • 9位

    69.3

    東京海上日動あんしん生命

  • 11位

    69.2

    ジブラルタ生命

  • 11位

    69.2

    はなさく生命

  • 13位

    69.1

    FWD生命

  • 13位

    69.1

    太陽生命

  • 15位

    68.7

    マニュライフ生命

  • 16位

    68.6

    日本生命

  • 16位

    68.6

    メディケア生命

  • 18位

    68.5

    オリックス生命

  • 18位

    68.5

    かんぽ生命

  • 18位

    68.5

    住友生命

  • 18位

    68.5

    SOMPOひまわり生命

  • 22位

    68.3

    明治安田

  • 23位

    68.1

    富国生命

  • 24位

    68.0

    ネオファースト生命

  • 25位

    67.9

    第一生命

  • 26位

    67.7

    SBI生命

  • 27位

    66.0

    朝日生命

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