飲酒運転の自動車保険|事故の補償範囲と加害者・被害者への適用

飲酒運転の自動車保険|事故の補償範囲と加害者・被害者への適用

飲酒運転は絶対に避けるべき行為ですが、万が一事故が発生した場合の自動車保険の適用について正しく理解している方は多くありません。

この記事では、飲酒運転事故における自動車保険の適用原則や、加害者・被害者それぞれの立場での保険請求について詳しく解説します。

飲酒運転事故で使える保険と使えない保険の違い、車両保険の適用可否、被害者が受けられる補償内容、さらには保険適用外となる場合の重い罰則についても紹介します。

適切な保険知識を身につけることで、万が一の事態に備えた対策を講じることができます。

自動車保険の見直しを検討している方や、飲酒運転事故の補償範囲について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

mokuji目次

  1. 飲酒運転での事故|自動車保険適用の基本原則
  2. 【加害者向け】飲酒運転事故で使える保険と使えない保険
  3. 飲酒運転の車両保険は適用外?例外はあるのか
  4. 【被害者向け】飲酒運転事故に遭った際の保険請求
  5. 保険適用外にも注意!飲酒運転の重い罰則と周辺者の責任
  6. 万が一に備え、自動車保険の見直し・比較をしよう
トータルマネーコンサルタント/新井 智美

監修者トータルマネーコンサルタント/新井 智美

マネーコンサルタントとしての個人向け相談、NISA・iDeCoをはじめとした運用にまつわるセミナー講師のほか、金融メディアへの執筆および監修に携わっている。

飲酒運転での事故|自動車保険適用の基本原則

飲酒運転での事故|自動車保険適用の基本原則

飲酒運転による事故であっても、自動車保険の適用には「被害者救済」という基本原則があります。

そのため、事故の被害者に対しては、加害者が加入している自賠責保険や任意保険の対人賠償・対物賠償から、通常の事故と同様に保険金が支払われます。

これは被害者が適切な補償を受けられないという悲惨な状況を回避するためです。

一方で、飲酒運転をした加害者本人に対する補償は大きく異なります。

飲酒運転は保険約款の「免責事由」に該当するため、加害者自身の傷害や車両の損害に対する保険金は原則として支払われません

なお、この記事で解説する「飲酒運転」とは、呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15mg以上検出される「酒気帯び運転」と、アルコールの影響により正常な運転ができない「酒酔い運転」の両方を含みます。

【加害者向け】飲酒運転事故で使える保険と使えない保険

【加害者向け】飲酒運転事故で使える保険と使えない保険

飲酒運転事故の加害者となった場合、被害者への賠償責任に対しては「被害者救済」の観点から以下の保険が適用されます。
【適用される保険】
任意の対人賠償保険:被害者の死傷に対する損害賠償を補償し、自賠責保険の上限を超えた部分もカバー

任意の対物賠償保険:被害者の車両や建物などの物的損害に対する賠償を補償

自賠責保険:被害者救済を目的とした強制保険として、飲酒運転であっても確実に適用
一方、加害者自身の損害については免責事由に該当し、以下の任意保険が適用されません
【適用されない保険】
人身傷害保険:加害者本人のケガや治療費、休業損害は補償対象外

搭乗者傷害保険:加害者本人の傷害に対する定額補償は受けられない

車両保険:加害者の車両損害は原則として補償されない

無保険車傷害保険:加害者本人は保険適用外
特に飲酒運転による自損事故では、運転者本人は自動車保険や車両保険の補償対象外となり、車両修理費や医療費などがすべて自己負担となります。

また、飲酒運転を理由に自動車保険の契約更新を拒否される可能性もあります。

飲酒運転の車両保険は適用外?例外はあるのか

飲酒運転の車両保険は適用外?例外はあるのか

車両保険は、飲酒運転による事故で自分の車両が損害を受けた場合、原則として保険金が支払われません

これは飲酒運転が保険約款の免責事由に該当するためです。

運転者自身の重大な過失によって発生した損害は、保険制度の趣旨から補償対象外とされています。

ただし、保険約款によっては例外的なケースも存在します。

保険契約で定められた特定の者(記名被保険者や配偶者など)以外の運転者が飲酒運転事故を起こした場合、車両保険から保険金が支払われることがあります。

例えば、友人が無断で車を運転して飲酒運転事故を起こした場合などが該当します。

しかし、このような例外的なケースで保険金が支払われた場合でも、保険会社は支払った保険金の全額を実際の飲酒運転者に対して求償(請求)します

つまり、最終的には飲酒運転をした当事者が経済的負担を負うことになり、当事者は保険による救済を実質的に受けられないのが現実です。

【被害者向け】飲酒運転事故に遭った際の保険請求

【被害者向け】飲酒運転事故に遭った際の保険請求

飲酒運転事故の被害者になった場合、通常の交通事故と同様に十分な補償を受けることができます

加害者が加入している自賠責保険や任意保険の対人賠償・対物賠償から保険金を受け取れるため、適切な損害賠償を受けることが可能です。

さらに、被害者自身が加入している自動車保険も制限なく使用できます。

ケガをした場合は人身傷害保険や搭乗者傷害保険から治療費や休業損害の補償を受けられ、車両が損害を受けた場合は車両保険から修理費や買替費用が支払われます。

万が一、加害者が無保険だったり、補償金額が不十分だったりする場合には、自身の無保険車傷害保険が利用できます

これにより、加害者の保険で賄いきれない部分についても適切な補償を受けられます。

飲酒運転事故では加害者の保険適用が制限されますが、被害者救済の観点から被害者の損害に対する補償は確実に保証されており、事故の被害を受けて補償も受けられないという悲惨な状況は回避できる仕組みになっています。

保険適用外にも注意!飲酒運転の重い罰則と周辺者の責任

保険適用外にも注意!飲酒運転の重い罰則と周辺者の責任

飲酒運転には非常に厳しい行政処分が科せられます。

酒気帯び運転は呼気1リットル中のアルコール濃度0.15mg以上で、濃度0.15mg以上0.25mg未満では13点の違反点数(90日間の免許停止)、0.25mg以上では25点(免許取消・2年間の欠格期間)となります。

酒酔い運転は濃度に関係なく正常な運転ができない状態で、35点の違反点数(免許取消・3年間の欠格期間)が科せられます。
飲酒運転の違反区分別の基準と行政処分

違反区分

アルコール濃度

行政処分

酒気帯び運転

0.15mg以上0.25mg未満

違反点数13点
90日間の免許停止

酒気帯び運転

0.25mg以上

違反点数25点
免許取消(2年間の欠格期間)

酒酔い運転

濃度に関係なく正常な運転ができない状態

違反点数35点
免許取消(3年間の欠格期間)

参考:警視庁|飲酒運転の罰則等
また、下表のとおり飲酒運転の刑事罰も非常に重く、運転者だけでなく周辺者にも責任が及びます。
飲酒運転に関わる刑事罰

対象者

酒酔い運転の場合

酒気帯び運転の場合

運転者本人

5年以下の懲役または100万円以下の罰金

3年以下の懲役または50万円以下の罰金

車両を提供した者

5年以下の懲役または100万円以下の罰金

3年以下の懲役または50万円以下の罰金

酒類を提供した者・同乗した者

3年以下の懲役または50万円以下の罰金

2年以下の懲役または30万円以下の罰金

参考:警視庁|飲酒運転の罰則等
さらに、飲酒運転でケガをした加害者本人の治療には健康保険も使えず、医療費が全額自己負担となる可能性が高いため、経済的負担は極めて重くなります。

なぜなら、健康保険法にて、「自己の故意の犯罪行為や故意に給付事由を生じさせた時、保険給付は行わない(第116条)」と明記されているためです。

万が一に備え、自動車保険の見直し・比較をしよう

飲酒運転は絶対に避けるべき行為ですが、万が一の事故に備えて自動車保険の内容を適切に理解し、見直しをしておくことが重要です。

本記事で解説したように、飲酒運転事故では加害者本人への補償が大幅に制限される一方、被害者救済の観点から被害者への補償は確実に支払われます。

特に被害者となった場合に備えて、人身傷害保険や車両保険、無保険車傷害保険などの補償内容を十分に検討しておくことをおすすめします。

また、対人・対物賠償保険は無制限で加入し、万が一加害者となった場合でも被害者への適切な補償ができるよう準備しておくことが大切です。

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トータルマネーコンサルタント/新井 智美

監修者トータルマネーコンサルタント/新井 智美

マネーコンサルタントとしての個人向け相談、NISA・iDeCoをはじめとした運用にまつわるセミナー講師のほか、金融メディアへの執筆および監修に携わっている。
現在年間200本以上の執筆・監修をこなしており、これまでの執筆・監修実績は3,000本を超える。

(保有資格)
・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
・CFP®
・DC(確定拠出年金)プランナー
・住宅ローンアドバイザー
・証券外務員

公式サイト:https://marron-financial.com/

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