自動車保険の解約返戻金とは?計算方法と手続きの流れを解説
解約返戻金の仕組みを正しく理解していないと、思わぬ損失を被る可能性があります。
この記事では、自動車保険の解約返戻金の基本的な仕組みから、一括払いと分割払いそれぞれの計算方法、解約時の等級への影響について詳しく解説します。
さらに、解約手続きの流れや注意点、税金の取り扱いまで幅広くカバーしています。
自動車保険の見直しや解約を検討している方、車の処分を予定している方は参考にしてみてください。
目次

監修者トータルマネーコンサルタント/新井 智美
マネーコンサルタントとしての個人向け相談、NISA・iDeCoをはじめとした運用にまつわるセミナー講師のほか、金融メディアへの執筆および監修に携わっている。
自動車保険の解約返戻金とは
原則として解約返戻金は年払いの場合に発生します。
なぜなら、月払いにしており、月の途中で解約したとしても、その月に支払った分の保険料が日割で返還されることはないからです。
解約時には、支払われた保険料から保険会社が定めた料率によって計算した保険料を差し引き、その残額が契約者に返金されます。
ただし、未経過期間分の保険料の全額が返ってくるわけではなく、保険会社が設定する短期率という係数を用いて算出されるため、実際の返戻金は期待する金額より少なくなることがあります。
保険期間中でも解約と切り替えが可能
しかし、自動車保険を解約する場合は、満期を待ってからのほうが手続きをスムーズに行えます。
特に等級の進み具合などを考慮すると、満期日に保険を切り替えたほうがよいケースが多いのが実情です。
満期日に乗り換えると、過去1年間に事故がなければ1等級上がった状態で乗り換えが可能です。
途中解約ではその時点での等級で乗り換えることはできますが、等級の判定日が契約開始から1年後になってしまいます。
切り替えを検討する際は、解約のタイミングを慎重に判断することが重要です。
解約金が戻ってくるタイミング
多くの保険会社では、解約手続きの書類に不備がない場合、約2〜3週間で指定した口座に振り込まれます。
返金方法は銀行振込が基本となっており、保険会社の営業店に直接出向いても、その場での現金返還は行われません。
返金が遅れるケースとしては、提出書類に不備がある場合や、契約している保険種目によって処理に時間を要する場合があります。
返金が予定より遅れている場合は、加入している代理店や保険会社に直接問い合わせることで、手続きの進捗状況を確認できます。
解約返戻金の計算方法
ただし、計算方法は保険料の支払い方法が「一括払い」か「分割払い」かによって大きく異なります。
一括払いの場合は短期率という係数を用いた計算が行われ、分割払いの場合は解約返戻金が発生しないのが一般的です。
一括払いの場合
短期率とは、契約期間中に保険契約を解約する際、返還する保険料を算出するために用いられる係数のことです。
計算式は「年間の保険料×(1−既経過期間に対する短期率)=解約返戻金」となります。
たとえば、年間保険料が6万円で経過期間が5か月の場合、短期率65%を適用すると、60,000円×(1−0.65)=21,000円が解約返戻金として戻ってきます。
ただし、短期率は保険会社によって異なるため、事前に確認することが重要です。
分割払いの場合
これは、自動車保険の保険料が日割り計算を行わないためです。
月払いでは解約までの保険料を支払えば済みますが、毎月の保険始期日と同様の日を1日でも超えてしまうと、翌月分の保険料も支払わなければなりません。
たとえば、保険始期日が10日の場合、毎月10日までに解約手続きを行わないと、追加で1か月分の保険料が発生します。
そのため、分割払いで解約を検討する際は、解約のタイミングを慎重に判断することが大切です。
保険期間中で解約した場合の等級について
等級を引き継ぐためには、解約と新契約のタイミングが重要です。
解約日の翌日から7日以内に新しい自動車保険を契約すると、以前と同じ等級を引き継ぐことができます。
しかし、解約日の翌日より起算して8日目以降に契約すると、7等級以上の等級は継承できず、原則として6等級からのスタートとなってしまいます。
そのため、他社への乗り換えを検討する際は、等級を無駄にしないよう解約と新契約のタイミングを慎重に計画することが大切です。
解約のみの場合
「中断証明書」があれば、再度自動車保険に加入する際に、中断した契約の等級を引き継いで契約を再開できます。
「中断証明書」の発行は無料で行われ、他の保険会社で発行されたものでも利用可能です。
他社の自動車保険に切り替えた場合
満期日での乗り換えは、等級の進行という観点からも最も好ましいタイミングです。
なぜなら、保険期間の途中で解約して他社に乗り換えると、新しい契約の保険開始日から1年間同じ等級が引き継がれるため、満期日での乗り換えに比べて等級の進行が遅れてしまうからです。
1年間無事故であれば次年度に等級が1つ上がり割引率も高くなるため、等級アップのメリットを最大限に活用するには満期日に合わせた乗り換えが理想的です。
自動車保険を解約するデメリット
これらのデメリットを事前に把握しておかないと、思わぬ損失を被ることになりかねません。
主なデメリットとしては、等級の進行が遅れることや、支払った保険料が全額返金されないことが挙げられます。
解約を検討する際は、これらのデメリットを十分に理解した上で、本当に解約が必要かどうかを慎重に判断することが大切です。
特に保険料や等級に関する影響は、長期的な視点で考えると大きな経済的デメリットになる可能性があるため、満期まで待つことも選択肢として検討しましょう。
満期で解約するよりも等級アップが遅れる
自動車保険のノンフリート等級は、1年間の保険期間中に保険を使う事故を起こさなければ、次の契約で1等級上がる仕組みです。
しかし、満期日前に保険会社を切り替えた場合、等級を引き継いで乗り換えても、新しい契約の保険開始日から1年間同じ等級が継続されます。
たとえば現在15等級で満期日が来年の4月末だとすると、事故を起こさなければ来年5月には16等級に上がりますが、途中解約して乗り換えた場合、16等級に上がるのは次の更新のタイミング以降となり、結果として15等級の期間が長くなってしまいます。
保険料が全額返金されない
解約返戻金は日割り計算ではなく、短期率という係数を用いて算出されるため、実際に支払った金額よりも少なくなってしまいます。
たとえば、半年(6ヶ月超〜7ヶ月)で解約した場合、単純計算では半額が返金されると思われがちですが、短期率である70%が適用されると返金額は30%にとどまります。
※実際の短期率や計算方法は保険会社や契約内容によって異なるため、ご契約中の保険会社の短期率表をご確認ください
解約時に気を付けたいこと
これらの注意点を事前に把握しておかないと、等級のリセットや無保険状態による事故リスク、二重契約による無駄な保険料の支払いなど、さまざまな問題が生じる可能性があります。
解約手続きを進める前に、以下の点を必ず確認しておきましょう。
未加入期間は8日以上空けない
解約日の翌日から7日以内に新しい保険契約を開始すれば等級を引き継ぐことができますが、8日目以降になると7等級以上の等級は原則として引き継げず、6等級からの新規スタートとなってしまいます。
また、空白期間中は無保険状態となるため、万が一事故を起こしても補償を受けることができません。
そのため、他社への乗り換えを検討する際は、現在の保険の解約日と新しい保険の契約開始日を同日に設定し、空白期間を作らないよう細心の注意を払って手続きを進めることが重要です。
「中断証明書」の発行を覚えておく
中断証明書があれば、最長10年間は現在の等級を維持できます。
中断証明書の発行条件は保険会社によって異なりますが、一般的には7等級から20等級の契約で、車の廃車・譲渡・車検切れ・海外渡航などの理由がある場合に発行可能です。
発行には費用がかからず、解約日から5年以内であれば後から申請することも可能です。
将来的に再び車を購入する可能性がある場合は、新規契約の6等級からスタートするよりも、中断証明書を利用して以前の等級を引き継いだ方が保険料を大幅に節約できるため、必ず発行しておくことをおすすめします。
満期でも解約手続きが必要かを確認
特に「自動継続特約」が付帯されている場合は、満期を迎えても自動的に契約が更新されるため、更新しない旨を事前に保険会社に連絡しなければなりません。
解約手続きを怠ると、新しい保険と現在の保険が重複契約となり、片方の契約が無効になるなど、手続きが複雑になる可能性があります。
また、二重契約の状態では無駄な保険料を支払うことになるため、乗り換えを検討する際は、現在の契約が自動継続かどうかを保険証券で確認し、必要であれば保険会社や代理店に直接問い合わせて、適切な手続き方法を確認することが大切です。
自動車保険の解約手続きの流れと必要なもの
1. 契約者本人が保険会社または代理店に電話で解約の意向を連絡
2. 保険会社から解約申込書などの必要書類が郵送される
3. 書類に必要事項を記入し、保険証券と一緒に返送
4. 書類に不備がなければ解約手続き完了
■インターネットによる解約手続きの流れ
1. 保険会社のWebサイトにログイン
2. マイページから解約手続きを選択
3. 画面の指示に従って必要事項を入力
4. 手続き完了
■解約時に必要な情報・書類
・ 保険証券
・ 証券番号
・ 契約者名・住所・生年月日
・ 車両の登録番号(ナンバー)
・ 解約希望日
・ 解約理由
・ 中断証明書の発行希望の有無
車の処分に伴う途中解約の手続きとタイミング
車を売却する場合は買取業者への引き渡し日に合わせて解約日を設定し、廃車の場合は解体業者への引き渡し完了後に解約手続きを行います。
解約返戻金は一括払いの場合に短期率による計算で返還されますが、月割計算ではないため想定より少なくなる可能性があります。
重要なのは、車の引き渡しが完了するまでは事故のリスクがあるため、保険の補償を維持しておくことです。
引き渡し日ぎりぎりまで運転する可能性がある場合は、「先付け解約制度」を利用して事前に解約日を設定しておくと、手続き忘れを防げます。
「先付け解約制度」とは、保険の解約日を自由に決められる制度で、業者に引き渡す日を解約日に設定しておくことでスムーズに手続きが完了します。
計画的な解約により、無駄な保険料の支払いを避けながら、必要な補償を確保することが大切です。
自動車保険の解約返戻金にかかる税金
解約返戻金は、すでに支払った保険料のうち未経過期間分を短期率で計算して返還されるものであり、利益が発生するものではないためです。
ただし、保険会社によっては特殊な商品設計をしている場合があり、支払った保険料を上回る返戻金が発生する可能性も考えられます。
そのような場合には一時所得として課税対象となる可能性があるため、心配な場合は税務署や税理士に相談することをおすすめします。
自動車保険の解約は慎重に判断しよう
解約時には等級の引き継ぎや空白期間に注意し、必要に応じて中断証明書を発行することが重要です。
また、解約手続きは契約者本人が行う必要があり、車の処分タイミングに合わせた計画的な手続きが求められます。
解約を検討する際は、デメリットを十分に理解した上で、満期での乗り換えも含めて慎重に判断しましょう。

監修者トータルマネーコンサルタント/新井 智美
マネーコンサルタントとしての個人向け相談、NISA・iDeCoをはじめとした運用にまつわるセミナー講師のほか、金融メディアへの執筆および監修に携わっている。
現在年間200本以上の執筆・監修をこなしており、これまでの執筆・監修実績は3,000本を超える。
(保有資格)
・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
・CFP®
・DC(確定拠出年金)プランナー
・住宅ローンアドバイザー
・証券外務員
公式サイト:https://marron-financial.com/