学資保険にかかる税金は?課税ケースや計算方法、控除についても解説
この記事では、学資保険における税金の課税ケース、計算方法、そして適用される税控除について詳しく解説します。
学資保険で発生する税金の種類
発生する税金の種類は、「誰が保険料を支払い」「誰がお金を受け取るのか」によって違い、保険の契約者と受取人の関係がポイントです。
具体的には、「契約者(保険料を払う人)と受取人が同じ場合」「契約者(保険料を払う人)と受取人が違う場合」の2つのケースで、それぞれ発生する税金の種類が異なります。
契約者と受取人が同じ場合は所得税
親が学資保険の保険料を支払い、同じく親が「満期金」や「祝い金」を受け取るといったケースが一般的です。
契約者と受取人が違う場合は贈与税
これは例えば、親が学資保険の保険料を支払い、子供が「満期金」や「祝い金」を受け取るといったケースです。
「所得税」として税金が発生する3つのケース
契約者(保険料を払う人)とお金を受け取る人が同じ場合に発生する可能性がある所得税ですが、お金の受け取り方によって税金のかかり方が異なります。
ここからは、受け取りパターンごとの違いをチェックしていきましょう。
満期金を一括で受け取る場合
その際に発生するのが、「一時所得にかかる所得税」です。
「一時所得にかかる所得税」は、これまで支払った保険料の総額に50万円を足し、それを超えている受取金額分に対してのみ発生します。
保険料の支払金額…250万円
満期学資金として受け取った金額…310万円
差額…60万円(特別控除額…50万円、一時所得金…10万円)
課税対象…5万円(一時所得金の半分)
つまり、一時所得金が10万円だった場合、その半分の5万円に対して所得税がかかるということになります。
→所得税額の具体的な計算方法はこちら(ページ下部に移動)
祝い金を一括で受け取る場合
祝い金にかかる税金についても、満期学資金の時と同じく「一時所得に対する所得税」が発生します。
つまり、これまで支払った保険料+50万円を超えた分の祝い金が「一時所得」扱いとなり、「所得税」が発生するといった仕組みです。
また、その際に課税対象となるのは、「50万円を超えた金額の半分」という点も同様です。
保険料の支払金額:50万円
祝い金として受け取った金額:110万円
差額…60万円(特別控除額…50万円、一時所得金…10万円)
課税対象…5万円(一時所得金の半分)
祝い金を進級等に合わせて毎年受け取る場合
雑所得に対しては控除がありませんので、雑所得で得た金額がそのまま課税対象です。
なお、雑所得を算出するには、下記のような計算が必要になります。
1年で受け取った金額 ー 1年で受け取った金額×(支払う保険料の総額÷受け取り総額の見込み)
例)
・1年で受け取った金額…50万
・保険料の支払予定総額…270万円
・学資保険から受け取る予定の総額…300万円
→50万− 50万×(270万÷300万)=雑所得
雑所得…5万円
「贈与税」として税金が発生するケース
ただし、贈与税が発生するのは、贈与額が基礎控除額である110万円を超えた場合です。
贈与額とは、1月1日〜12月31日までの1年間で受け渡したすべての財産の合計を指します。
例えば、親から子供に1年間で学資保険の受取金50万円を渡していた場合、基礎控除額の110万円を超えていないため課税の対象にはなりません。
しかし、それ以外の贈与として70万円を渡していた場合は、贈与額の合計が120万円となり、基礎控除額である110万円を超えるため贈与税が発生します。
・学資保険から受け取った50万円を子供に贈与
・それ以外に70万円を子供に贈与
=合計120万円
・1年間で受け取った贈与額の合計:120万円
・贈与税の基礎控除額:110万円
=差額10万円
→基礎控除額110万円を超えている10万円分に贈与税がかかる
学資保険にかかる税金の計算方法
所得税額の計算方法
その所得に対し、金額に応じた所得税率をかけた後、金額に応じた控除額を引く仕組みです。
ここでは、学資保険からの受取金として「5万円の一時所得」があり、「500万円のその他所得」があった場合にかかる所得税を計算してみます。
※「一時所得」ではなく、「雑所得」であった場合も同様の計算方法です。
■所得税の計算方法
所得の合計金額×所得税率ー控除額
所得の合計…505万円(一時所得5万円+その他の所得500万円)
=505万円×所得税率ー控除額
■所得505万円にかかる税率と控除額(下記図参照)
・所得税の税率…20%
・所得税の控除額…427,500円
■所得税の計算
・505万円×20%ー427,500円
・所得税=582,500円
■所得税の計算方法
所得の合計金額×所得税率ー控除額
所得の合計…500万円(一時所得0円+その他の所得500万円)
=500万円×所得税率ー控除額
■所得500万円にかかる税率と控除額(下記図参照)
・所得税の税率…20%
・所得税の控除額…427,500円
■所得税額の算出
・500万円×20%ー427,500円
・所得税=572,500円
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1000円 〜 | 5% | 0円 |
195万円 〜 | 10% | 9万7500円 |
330万円 〜 | 20% | 42万7500円 |
695万円 〜 | 23% | 63万6000円 |
900万円 〜 | 33% | 153万6000円 |
1800万円 〜 | 40% | 279万6000円 |
4000万円〜 | 45% | 479万6000円 |
※課税される所得金額は、1,000円未満の端数金額を切り捨てた後の金額です。
贈与税額の計算方法
・一般贈与…贈与した年の1月1日時点で、お金を贈与した者が18歳未満
・特別贈与…贈与した年の1月1日時点で、お金を贈与した者が18歳以上
※成人年齢の引き下げにより、令和4年3月31日以前の贈与については「18歳」ではなく「20歳」となります。
実際に贈与額として合計120万円を受け渡していた場合にかかる贈与税を計算してみましょう。
■贈与税の計算方法
(1年間に贈与した金額‐基礎控除額110万円)×贈与税率ー控除額
=(120万‐110万)×贈与税率ー控除額
=10万円×贈与税率ー控除額
■10万円にかかる贈与税の税率と控除額(下記図参照)
・税率…10%
・控除額…0円
■所得税の計算
10万円×10%-0円
贈与税額=1万円
「一般贈与」 |
|
|
200万円以下 | 10% | 0円 |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1000万円以下 | 40% | 125万円 |
1500万円以下 | 45% | 175万円 |
3000万円以下 | 50% | 250万円 |
3000万円超 | 55% | 400万円 |
「特別贈与」 |
|
|
200万円以下 | 10% | 0円 |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1000万円以下 | 30% | 90万円 |
1500万円以下 | 40% | 190万円 |
3000万円以下 | 45% | 265万円 |
4500万円以下 | 50% | 415万円 |
4500万円超 | 55% | 640万円 |
学資保険で税金が発生しないケース
税金が発生しないケースについて詳しく見てみましょう。
学資保険に所得税が発生しない場合
「満期学資金」または「進学祝い金」を一括で受け取ったとしても、受け取った金額が支払った保険料の総額と比べ50万円以下だった場合は、所得税の課税対象にはなりません。
なお、進学に合わせて学資金を毎年受け取る場合は「雑所得」扱いとなります。
雑所得には特別控除の仕組みがありませんが、一定要件を満たす給与所得者で、雑所得の金額が20万円以下の場合、確定申告は不要です。
参照:国税庁「給与所得者で確定申告が必要な人」
参照:公益財団法人生命保険文化センター「保険金や年金を受け取っても所得税の申告が不要な場合とは?」
贈与税が発生しない場合
学資保険の受取金やその他の金額も含め、1年間の贈与額が110万円以下の場合は贈与税は発生しません。
学資保険で適用される生命保険料控除
※生命保険料控除は、「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」の3種類があり、学資保険は「一般生命保険料控除」の対象となります。
控除額は払い込んだ保険料の総額によって異なりますが、税制優遇措置を活用することで所得税と住民税が控除され、教育費用の準備において経済的な負担を軽減することが可能です。
なお、生命保険料控除は、保険料を支払った年が対象となります。未払いの場合は対象外となりますのでご注意ください。
控除額について
年間の支払保険料等 | 控除額 |
2万円以下 | 支払保険料等の全額 |
2万円〜4万円以下 | 支払保険料等×1/2+1万円 |
4万円〜8万円以下 | 支払保険料等×1/4+2万円 |
8万円超 | 一律4万円 |
生命保険料控除を受ける方法
給与所得者にあたる会社員の方は、年末調整で申請します。
一般的に9月〜10月頃に保険会社から送られてくる「生命保険料控除証明書」を元に、会社から配布される「給与所得者の保険料控除申告書」に必要事項を記入します。年末調整が受けられなかった場合は、確定申告が必要です。
自営業者などの場合は、確定申告で申請を行います。
保険会社から送られてくる「生命保険料控除証明書」を元に、申告書の生命保険料控除の欄に金額を記入し、証明書を添付し提出しましょう。
学資保険にかかる税金もしっかりと理解しよう
教育費用を安全かつ確実に準備するための重要な手段である学資保険ですが、学資金を受け取る際には、翌年の所得税等が増加する可能性があるため、学資保険に加入する際は税金の仕組みについてもしっかりと理解しておくことが大切です。
オリコン顧客満足度ランキングでは、学資保険の加入者へのアンケート調査をもとに算出した「学資保険 顧客満足度ランキング」を発表しています。
こちらもぜひご参考いただき、自分に合ったより良い商品を見つけてみてください。