バリアフリー住宅とは?場所ごとの設計・間取りのポイントを解説

バリアフリー住宅とは?場所ごとの設計・間取りのポイント

人生100年時代、年を重ねても自分らしく生きるには、家づくりにも未来の視点が欠かせません。妊娠、出産、ケガ、家族構造などの変化にも柔軟に対応し、幅広い世代で快適な暮らしを継続するために、バリアフリー住宅を検討する人が増えています。
今回は、バリアフリー住宅を建てる際に意識すべき設計の考え方や、間取りのポイントについて解説します。

mokuji目次

  1. バリアフリー住宅とは、高齢者や障害者を含むすべての人が暮らしやすい住宅のこと
  2. バリアフリーとユニバーサルデザインの違い
  3. バリアフリー住宅で重視すべきポイント
    1. 段差をなくす
    2. 転倒を防ぐ
    3. 温度差を減らす
  4. バリアフリー住宅を設計する際の注意点
    1. 上下移動のない平屋にするか、1階だけで生活できる間取りにする
    2. 廊下を減らし、直線的な動線を設ける
    3. 過度にバリアフリーの設計を施さない
  5. 住宅内の各場所におけるバリアフリーの工夫
    1. トイレ:寝室の近くに広めに作る
    2. 浴室:高さと滑りにくさに配慮する
    3. 洗面所:座って使う用と、立って使う用を分けて設置する
    4. リビング・ダイニング:高さ調節できるテーブルを選ぶ
    5. 玄関:スロープを設置し、ドアは引き戸にする
    6. 廊下・階段:廊下や階段の幅は広めに取る
    7. キッチン:座ったまま調理できるキッチンを選ぶ
  6. バリアフリー住宅に使える補助金・助成金・減税制度
    1. 補助金・助成金制度
    2. 高齢者住宅改修費用助成制度
    3. 減税制度
  7. バリアフリー住宅で、家族が快適に暮らせる住まいづくりを

バリアフリー住宅とは、高齢者や障害者を含むすべての人が暮らしやすい住宅のこと

バリアフリー住宅とは、障害者や高齢者など誰もが日常生活にバリア(障壁)を感じることなく、安全で快適に暮らせる住まいのことです。
一般的に「バリア」には、大きく下記の4つの意味があります。
<高齢者や障害者が日常生活で直面する4つのバリア>
物理的なバリア
店舗の入り口の段差やスロープのない階段、車椅子ユーザーが使えないトイレなど、物理的に生活が制限されるもの

制度的なバリア
障害や年齢を理由とした雇用の制限、資格取得の制限など、制度的に活動を阻むもの

文化情報面のバリア
障害によって文字が読めない、テレビの情報を聞き取れないなど、得られる情報に制限があること

意識上のバリア
高齢者や障害者への偏見や無関心など、心の中で一線を引いて接すること
バリアフリー住宅は、「意識上のバリア」をなくし、相手の目線に立って「物理的なバリア」を取り除いた住宅です。

具体的には、高齢者や障害者のケガにつながるおそれのある段差や、浴室の滑りやすさなどを解消することなどがあります。
最近では、いっしょに暮らす家族にも目を向け、「家族みんなが暮らしやすい住宅」をバリアフリー住宅とする考え方も広まりました。

また、「若いときは気にならなかった間取りが年齢とともに使いにくくなった」「子供が生まれ、デザインより安全性を重視したくなった」といったライフステージの変化に伴う住宅への意識の変化に備え、最初からバリアフリーを意識した住宅を建てるケースも増えています。

バリアフリーとユニバーサルデザインの違い

バリアフリーと似た言葉に、「ユニバーサルデザイン」があります。

近年の施設づくり、家づくりで推奨されているユニバーサルデザインは、障害や年齢、性別、人種など、あらゆるセグメントにかかわらず、すべての人が利用しやすい都市または生活環境をあらかじめデザインするという考え方です。

バリアフリーはユニバーサルデザインの一種であり、特に高齢者や障害者に配慮した工夫の仕方であるという点で違いがあります。

バリアフリー住宅で重視すべきポイント

高齢者や障害者に配慮しつつ、共に暮らす家族にとっても住み心地のよい家を建てるには、いくつか意識しておきたい点があります。
ここでは、バリアフリー住宅で重視すべき3つのポイントについて解説します。

段差をなくす

バリアフリー住宅で重視すべき点として、家の外や室内の段差を極力なくすことが挙げられます。

例えば、門扉から玄関までの飛び石を施したアプローチ、玄関のたたきと室内との境目の上がり框(かまち)、部屋と部屋とのつなぎ目に小さな段差などがあると、高齢者や小さな子供がつまずき、転倒のリスクがあります。

また、車椅子やベビーカーでは、スムーズに移動することができません。

赤ちゃんが生まれたときや、病気やケガなどで思うように体が動かなくなった場合に備える意味でも、段差は極力なくしておきましょう。

あわせて、通路や間口はできるだけ広く取っておくこと扉は車椅子でも出入りしやすい引き戸にすることが望ましいといえます。

転倒を防ぐ

転倒のリスクをできる限りなくすことも、バリアフリー住宅で重視すべき点です。

特に高齢者の場合、年齢とともに骨がもろくなっているため、ちょっとした転倒が骨折につながりかねません。

中でも、室内での転倒で大腿骨を骨折する例は多く、脳卒中、認知症に次いで、寝たきりになる原因の上位に位置しています。

転倒のリスクを軽減するには、手すりの設置が有効です。

特に転倒しやすい廊下や浴室、トイレ、玄関などに手すりを設置するといいでしょう。

玄関のたたきには、高齢者や障害者がスムーズに座れる高さの椅子を設置し、靴の着脱の際の負担を軽減するのも手です。

温度差を減らす

家の中において各部屋の温度差をできるだけ減らすことも、バリアフリー住宅で重視すべき点として挙げられます。

特に冬場は、室内で温度差がある場合、高齢者が暖かい場所から寒い場所に移動したときに体に負荷がかかり、ヒートショックを引き起こすリスクが高まります。

ヒートショックとは、急激な温度変化により、血圧が急上昇して心臓や血管に大きな負担がかかることです。
ヒートショックは脳梗塞や心筋梗塞の原因のひとつでもあり、予防が必要です。

脱衣所や浴室、トイレなど、冷えやすい場所の窓に内窓を設置して気密性と断熱性を高めたり、暖房を設置したりして温度差の解消を図りましょう。

バリアフリー住宅を設計する際の注意点

バリアフリー住宅では、前述した3つのポイントを考慮することが欠かせません。
では、実際にバリアフリー住宅を設計する際には、どのような点に気をつければいいのでしょうか。

ここでは、バリアフリー住宅を設計する際の注意点について解説します。

上下移動のない平屋にするか、1階だけで生活できる間取りにする

バリアフリー住宅を建てる際には、階段のない平屋にするか、高齢者や障害者の生活が1階で完結する間取りにすることで、住まいの中の大きな段差である階段をなくすことができます。

現代の戸建ては2階建て、3階建てが主流ですが、敷地面積が許すのであれば平屋を検討するのも一案です。

ただし、介護者と要介護者の物理的な距離が近すぎると、介護者の生活が介護一色になって負担が増すことも考えられます。

要介護者に何かあればすぐに駆け付けられる距離感は保ちつつ、プライバシーを保てるよう、生活空間を区切るのがおすすめです。

介護度にもよりますが、2階建ての場合は1階に要介護者、2階に介護者というように住み分けをしてもいいでしょう。

関連記事
家を建てるなら平屋か二階建てどちらがいい?メリットや費用を解説

廊下を減らし、直線的な動線を設ける

要介護者が望まない介護を受けることは、自立度を低下させます。

そのため、バリアフリー住宅を設計する際には、高齢者や障害者が自分の体と向き合い、できるだけ自分自身の力で目的の場所へ移動できるよう、可能な限り動線を単純化するといいでしょう。

例えば、リビングから寝室へ行く場合に、「ドアを開けて廊下に出て、またドアを開ける」といった複数の動作が発生すると、どこかで介助の手が必要になります。

これを、リビングから隣の部屋を抜けて寝室にたどり着けるように直線的な動線にすることで、要介護者が一人でスムーズに移動することが可能です。

過度にバリアフリーの設計を施さない

「現時点で要介護者はいないけど、将来のために備えて」などと、最初から過度なバリアフリー設計を施す必要はありません。

例えば、玄関アプローチの段差や出入口の幅など、リフォームに時間と費用がかかるものは、最初から設計に組み入れておいたほうがいいですが、不要な手すりや補助ベンチなどは、要介護者がいない状況では邪魔になることもあります。

また、あまりにも生活のすべてをサポートしすぎると、要介護者の自立性が著しく低下し、介護者の生活にも影響を及ぼしかねません。

リスクは極力減らしつつ、要介護者が「自分でする」「みずから動く」余地も残しておくことが大切です。

住宅内の各場所におけるバリアフリーの工夫

住宅内の各場所におけるバリアフリーの工夫

バリアフリー住宅を建てる際には、全体の設計と同時に、各場所における工夫が必要です。ここでは、トイレや浴室、洗面所といった場所ごとにバリアフリーの工夫をご紹介します。

トイレ:寝室の近くに広めに作る

高齢になると、夜間にトイレにいく頻度が高くなります。

介護者が寝ている時間帯でも安全にトイレと寝室を行き来できるよう、トイレは寝室のそばにつくりましょう。

また、トイレの入り口は段差をなくして引き戸にし、開口部や内部のスペースを広めに取ることも重要です。

そうすることで、車椅子のままトイレに入り、便座まで楽に移動することができます。

浴室:高さと滑りにくさに配慮する

浴室は、滑って転ぶ危険性が非常に高い場所です。湯船に入る際の転倒を防ぐため、浴槽はまたぎやすい浅めの形状にしましょう。床の材質も、滑りにくいものを選ぶと安心です。

また、介護者が要介護者を支えて入れるように、出入口は引き戸にして開口部を広く取っておくことをおすすめします。

洗面所:座って使う用と、立って使う用を分けて設置する

足腰の弱い高齢者や子供、または車椅子ユーザーにとって、洗面台は低めで、座ったまま使える高さが理想的です。

ただし、健康な大人には低すぎて使いにくいと感じる可能性があります。家族みんながストレスなく使えるよう、座った状態で使える低めの洗面台と、立って使う人のための洗面台をそれぞれ設置しましょう。

リビング・ダイニング:高さ調節できるテーブルを選ぶ

リビング・ダイニングは、家族が一堂に会することが多い場所です。

特に食事の際には、テーブルの高さに配慮が必要です。
車椅子に座ったまま食事ができるように、高さ調整できるテーブルを選ぶことで、家族みんなが快適に食事できます。

また、現代の住宅では、リビングとダイニング、キッチンがつながったLDKの間取りが一般的ですが、各スペースの段差をなくしたり、床材を滑りにくくしたりすることで、LDKの動線をバリアフリーにすることが可能です。

玄関:スロープを設置し、ドアは引き戸にする

家の門扉から玄関へと続くアプローチや、玄関から室内に入る際の上がり框には、高齢者や障害者が転倒するリスクがあります。

段差の多いアプローチや玄関を、車椅子や杖で乗り越えるのは困難です。

門扉から玄関までの地面はフラットにして、段差にはゆるやかなスロープをつけておくことで、高齢者や障害者だけでなく、妊婦や幼児でも安全に移動できます。

廊下・階段:廊下や階段の幅は広めに取る

廊下・階段は幅を広めに取り、余裕を持って居室やトイレ、浴室などへ移動できるようにしましょう。

体の状況にもよりますが、比較的自立度が高ければ手すりをつけることで自重を支えて移動できます。

万が一に備えて、廊下・階段共に、床は滑りにくい素材を選んでおくことが重要です。

キッチン:座ったまま調理できるキッチンを選ぶ

キッチンは、調理台やシンク、食器棚の高さに配慮が必要です。

車椅子のままや座った状態で利用することを考え、できるだけスペースを広めに取り、全体的に低めの設計にしましょう。

年齢を重ね、立ったままで長時間作業するのが負担になった場合にも、低めのキッチンは重宝します。

バリアフリー住宅に使える補助金・助成金・減税制度

バリアフリー住宅に使える補助金・助成金・減税制度

高齢化が進む中、高齢者や障害者が自分らしく暮らすための環境整備は重要な課題です。

総務省統計局の2018年時点の住宅・土地統計調査によれば、高齢者が住む住宅で何らかのバリアフリー設備を導入している住宅の割合は42.4%となっており、その中では手すりの設置が多くを占めています。

政府は、高齢者の住まいに対し、2030年までに一定のバリアフリー化を図ることを目標に掲げており、そのための補助金や助成金などを用意しています。

ここでは、バリアフリー住宅に使える補助金・助成金・減税制度について見ていきましょう。

補助金・助成金制度

バリアフリー住宅を建てたり、リフォームしたりする際に利用できる補助金・助成金制度は、下記のとおりです。

戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業

省エネと、太陽光発電などで再生可能エネルギーを作り出す「創エネ」を両立し、エネルギー収支がゼロになることを目指した住宅を「ZEH(ゼッチ)」といいます。

住宅の性能・設備に応じて、新築時や新築建売住宅を購入する際に補助金を利用することができます。

2024年度の補助額は、1戸あたり定額55万円です。

参照:ZEH Web(一般社団法人 環境共創イニシアチブ)「ZEH補助金」

LCCM住宅整備推進事業

CO2をはじめとした温室効果ガスの排出を2050年までに実質ゼロにする「2050年カーボンニュートラル」の実現に向け、脱炭素化住宅「LCCM住宅」を建てる場合に補助を受けることができます。

設計費と建設工事等における補助対象工事の掛かり増し費用の合計額の2分の1が補助対象費用となります。

2024年度における補助限度額は、1戸あたり140万円までです。
参照:一般社団法人 環境共生まちづくり協会「LCCM住宅整備推進事業」

関連記事
LCCM住宅とは?メリット・デメリットや認定基準、補助金を解説

高齢者住宅改修費用助成制度

高齢者住宅改修費用助成制度とは、高齢者が住む住宅の改修費用を助成する制度のことです。

在宅介護を重視し、高齢者の自立を支援する観点から、段差の解消や手すりの設置などの住宅改修を、給付の対象としています。

介護保険制度の補助制度であるため、利用する高齢者が介護認定を受けていることが必要です。

支給限度基準額は20万円となっており、最大でその9割となる18万円の補助が受けられます。

減税制度

2022年度の税制改正による、バリアフリー住宅へのリフォーム時に利用できる減税制度は、下記のとおりです。

住宅ローン減税

10年以上の償還期間がある住宅ローンを利用して、所有している居住用家屋の増改築工事を行った場合、一定の要件を満たせば住宅ローン減税が適用されます。

毎年の住宅ローン残高(限度額2,000万円)の0.7%に相当する額を最大10年間、所得税から控除することが可能です(リフォーム後の居住開始年が2022〜2025年の場合)。

参照:国税庁「特定増改築等住宅借入金等特別控除」

所得税または固定資産税の減税

居住している築10年以上の住宅に対してバリアフリー改修工事をした場合、一定の条件を満たせば、所得税の控除または固定資産税の減額を受けることが可能です。

所得税は、一定のバリアフリー改修を行った場合、対象工事限度額200万円の範囲内で、最大20万円が控除されます。

一方、固定資産税は、2026年3月31日までに改修工事が完了していることで、翌年度分の固定資産税が3分の1減額されます。

参照:東京都主税局「高齢者等居住改修住宅等の減額」

バリアフリー住宅で、家族が快適に暮らせる住まいづくりを

さまざまなライフステージを迎え、家族みんなが快適に暮らせる住まいをつくるには、バリアフリーの視点が欠かせません。バリアフリー住宅を建てるなら、実績と経験が豊富なハウスメーカーを探し、未来に向けた住まいづくりを始めましょう。

オリコンでは、日本最大級の規模で調査を行い、毎年「ハウスメーカー 注文住宅 満足度ランキング」を発表しています。デザインや金額の納得感、モデルハウス、営業担当者の対応など、さまざまな視点でのランキングを確認できますので、ハウスメーカー選びの参考にしてください。

ハウスメーカー オリコン顧客満足度ランキング

ハウスメーカー 注文住宅オリコン顧客満足度ランキング

  • 1位

    80.8

    スウェーデンハウス

  • 2位

    78.3

    積水ハウス

  • 3位

    78.2

    ヘーベルハウス

  • 4位

    78.1

    住友林業

  • 5位

    77.1

    一条工務店

  • 6位

    76.8

    パナソニック ホームズ

  • 6位

    76.8

    三井ホーム

  • 8位

    76.4

    セキスイハイム

  • 9位

    76.2

    大和ハウス

  • 10位

    75.9

    ミサワホーム

  • 11位

    75.6

    トヨタホーム

  • 12位

    75.0

    イシンホーム

  • 13位

    74.8

    アイ工務店

  • 13位

    74.8

    住友不動産

  • 15位

    74.4

    クレバリーホーム

  • 16位

    73.1

    アキュラホーム

  • 17位

    73.0

    住宅情報館

  • 17位

    73.0

    富士住建

  • 17位

    73.0

    ユニバーサルホーム

  • 20位

    72.9

    イシカワ

  • 21位

    72.7

    アイフルホーム

  • 22位

    72.6

    桧家住宅

  • 23位

    71.9

    タマホーム

  • 23位

    71.9

    日本ハウスホールディングス

  • 25位

    71.2

    ヤマダホームズ

  • 26位

    70.1

    秀光ビルド

  • 27位

    69.3

    アイダ設計

  • 28位

    67.9

    オープンハウス・アーキテクト

オリコン日本顧客満足度ランキングの調査方法について

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