生命保険料控除とは?年末調整における基礎知識を紹介

生命保険料控除とは?年末調整における基礎知識を紹介

年末調整で生命保険料控除を申請すると、所得税や住民税の負担を軽減できます。生命保険料控除を受けたことで、本来の税額がすでに給与から天引きされている金額よりも少なくなると、差額を還付してもらえます。

この記事では、生命保険料控除の制度内容や控除額の計算方法、年末調整で申請をする方法などをわかりやすく解説します。

mokuji目次

  1. 年末調整における生命保険料控除とは?
    1. 生命保険料控除の対象者の条件
    2. 生命保険料控除制度の「新」「旧」の違い
  2. 生命保険料控除申請の計算方法
    1. 【旧制度のみ】生命保険料控除の計算方法
    2. 【新制度のみ】生命保険料控除の計算方法
    3. 【新旧制度両方】生命保険料控除の計算方法
  3. 生命保険料控除額をシミュレーションしよう!
    1. 新制度のみの場合
    2. 新旧制度の両方に加入している場合
  4. 年末調整における保険料控除制度のよくある質問
    1. 申請には何が必要?
    2. 保険料控除の申請を忘れたらどうなる?
    3. 控除証明書を紛失してしまったら?
    4. 住民税の保険料控除はどうする?
    5. 転職した場合の年末調整はどうする?
  5. 控除対象になる保険とならない保険の種類
    1. 新制度の一般生命保険料控除の対象契約
    2. 旧制度の一般生命保険料控除の対象契約
    3. 介護医療保険料控除の対象契約
    4. 個人年金保険料控除の対象契約
    5. 控除対象にならない保険
  6. 保険料控除制度を理解して損のない年末調整を!

年末調整における生命保険料控除とは?

年末調整における生命保険料控除とは?

生命保険料控除とは、1年間で支払った生命保険料に応じた一定金額を所得から控除できる制度のことです。扶養家族の人数など、個人の事情に応じた一定金額を所得から差し引くことができる所得控除の1種です。

会社員や公務員など給与所得を得ている人は「年末調整」の生命保険料控除を申請できます。年末調整は、1年間(1〜12月)の給与所得に対する所得税を計算し、給与から天引きされている分との過不足を精算する手続きです

年末調整で生命保険料控除とその他の所得控除を申請した結果、天引きされていた所得税が本来の税額よりも多いときは差額を還付してもらえます。還付金は、12月の給与とあわせて支払われるのが一般的です。

自営業やフリーランスなど年末調整の対象でない人は、確定申告で生命保険料控除を申告します

まずは、生命保険料控除の対象者の条件や基本的な制度内容をみていきましょう。

生命保険料控除の対象者の条件

生命保険料控除の対象となる人の要件は以下の通りです。
・本人に所得があり、所得税や住民税を納める義務のある人
・納税者本人が生命保険料控除の対象となる契約の保険料を支払っていること
生命保険料控除の対象となる契約について詳しくは「控除対象になる保険とならない保険の種類」をご覧ください。

生命保険料控除制度の「新」「旧」の違い

生命保険料控除には、新制度旧制度があります。それぞれの対象となる保険契約は、下記の通りです。
新制度:2012年(平成24年)1月1日以降に結んだ保険契約
旧制度:2011年(平成23年)12月31日以前に結んだ保険契約
新制度は「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」の3区分があります。それぞれの区分に該当する保険料は次の通りです。
・一般の生命保険料:死亡保険(例:定期保険・終身保険)
・学資保険などの保険料
・介護医療保険料:医療保険・がん保険・介護保険などの保険料
・個人年金保険料:個人年金保険の保険料
※所定の要件を満たして税制適格特約を付帯する必要がある
各区分の控除額は、所得税が最高4万円、住民税が最高2.8万円です。3区分合計の控除額は、所得税が最高12万円、住民税が7万円です

旧制度の区分は「一般生命保険料控除」「個人年金保険料控除」の2種類です。対象となる保険料は、次の通りです。
・一般生命保険料控除:死亡保険、医療保険、がん保険などの保険料
・個人年金保険料控除:個人年金保険
各区分の控除額は所得税が最高5万円、住民税が3.5万円です。合計の控除額は、所得税が最高10万円、住民税は最高7万円となります

生命保険料控除申請の計算方法

生命保険料控除申請の計算方法

生命保険料控除の控除額は、1年間で支払った保険料に応じて決まります。支払った保険料と同額が差し引かれるわけではない点に注意が必要です。

また、所得税と住民税、新制度と旧制度で控除額の計算方法は異なります。ここでは、生命保険料控除の計算方法をみていきましょう。

【旧制度のみ】生命保険料控除の計算方法

まずは、旧制度の計算方法をみていきましょう。

・所得税

年間払込保険料の総額

控除額

25,000円以下

年間払込保険料の全額

25,000円超
50,000円以下

年間払込保険料×1/2
+12,500円

50,000円超
100,000円以下

年間払込保険料×1/4
+25,000円

100,000円超

一律50,000円

・住民税

年間払込保険料の総額

控除額の計算方法

15,000円以下

年間払込保険料の全額

15,000円超
40,000円以下

年間払込保険料×1/2
+7,500円

40,000円超
70,000円以下

年間払込保険料×1/4
+17,500円

70,000円超

一律35,000円

旧制度の控除額は、1区分につき所得税が最高5万円住民税が最高3.5万円です。旧制度の控除区分は一般と個人年金の2つであるため、最大の控除額は所得税10万円住民税7万円となります。

【新制度のみ】生命保険料控除の計算方法

・所得税

年間払込保険料の総額

控除額

20,000円以下

年間払込保険料の全額

20,000円超
40,000円以下

年間払込保険料×1/2
+10,000円

40,000円超
80,000円以下

年間払込保険料×1/4
+20,000円

80,000円超

一律40,000円

・住民税

年間払込保険料の総額

控除額の計算方法

12,000円以下

年間払込保険料の全額

12,000円超
32,000円以下

年間払込保険料×1/2
+6,000円

32,000円超
56,000円以下

年間払込保険料×1/4
+14,000円

56,000円以下

一律28,000円

1区分あたりの控除額は、所得税が最高4万円住民税が最高2.8万円であり、旧制度よりも低く設定されています。しかし、新制度は一般、介護医療、個人年金の3区分があるため、最大の控除額は所得税12万円住民税7万円となります。

住民税の最大控除額については、2.8万円の3倍である8.4万円ではなく、7万円となる点に注意が必要です

【新旧制度両方】生命保険料控除の計算方法

一般生命保険料控除と個人年金保険料控除については、新制度と旧制度の両方を適用できる保険料を支払っている場合、以下のうちいずれか大きい金額を控除することができます
・新制度のみ適用(上限:所得税4万円・住民税2.8万円)
・旧制度のみ適用(上限:所得税5万円・住民税3.5万円)
・新制度と旧制度の両方を適用(上限:所得税4万円・住民税2.8万円)
区分ごとに、新制度と旧制度の控除額を計算して合計できるものの、1区分につき所得税4万円住民税2.8万円が上限となります。

旧制度のみで、所得税4万円超、住民税2.8万円超の控除が受けられる場合、新制度を併用しない方がより多くの控除を受けられます

新旧制度をあわせた生命保険料控除全体の控除限度額は、所得税で最大12万円住民税で最大7万円です。

生命保険料控除額をシミュレーションしよう!

生命保険料控除額をシミュレーションしよう!

では、生命保険料控除を受けられると所得からいくらが控除されるのでしょうか。新制度のみと新旧両方加入しているケースを想定し、控除される金額をシミュレーションします。

新制度のみの場合

新制度の生命保険料控除の対象となる生命保険に加入するケースで、控除額をシミュレーションしてみましょう。条件は、以下の通りです。
・一般生命保険料控除の年間払込保険料:3.6万円
・個人年金保険料控除の年間払込保険料:12万円
所得税を計算する際に所得から控除できる金額は、以下の通りです。

控除額

一般生命保険料控除

3.6万円 × 1/2 + 1万円 = 2.8万円

個人年金保険料控除

年間払込保険料が8万円を超えているため、控除額は4万円

合計

2.8万円+ 4万円 = 6.8万円

設定した条件では、所得税を計算する際に6.8万円が所得から控除されます。

続いて、住民税の計算時に所得から控除される金額を計算します。

控除額

一般生命保険料控除

3.6万円 × 1/4 + 1.4万円 = 2.3万円

個人年金保険料控除

年間払込保険料が5.6万円を超えているため、控除額は2.8万円

合計

2.3万円+ 2.8万円 = 5.1万円

住民税を計算する際は、所得から5.1万円が控除されます。

新旧制度の両方に加入している場合

続いて、新制度と旧制度の両方に加入しているケースを想定して控除額をシミュレーションしてみましょう。1年間に払い込んだ保険料は、下記の通りです。
・一般生命保険料控除の年間払込保険料:(新制度)6万円、(旧制度)12万円
・介護医療保険料控除の年間払込保険料:(新制度)3.6万円
・個人年金保険料控除の年間払込保険料:(旧制度)12万円のみ
まず、所得税から控除される金額を計算すると、以下の通りとなります。
新制度 旧制度
一般 (6万円 × 1/4)+2万円
= 3.5万円
年間払込保険料が10万円超のため5万円
旧制度のみの適用で5万円(A)
介護医療 (3.6万円 × 1/2)+1万円
= 2.8万円(B)
-
個人年金 - 年間払込保険料が10万円超のため5万円(C)
合計 (A)+(B)+(C)が12万円を超えるため、
控除額は12万円
計算の結果、所得税から控除される金額は3区分合計で12万円と算出されました。続いて、住民税から控除される金額を計算してみましょう。
新制度 旧制度
一般 年間払込保険料が5.6万円超のため2.8万円 年間払込保険料が6万円超のため3.5万円
旧制度のみの適用で3.5万円(A)
介護医療 (3.6万円 × 25%)+1.4万円= 2.3万円(B) -
個人年金 - 年間払込保険料が7万円超のため3.5万円(C)
合計 (A)+(B)+(C)が7万円を超えるため、
控除額は7万円
住民税を計算する際は、控除額の上限である7万円が所得から控除される結果となりました。

年末調整における保険料控除制度のよくある質問

年末調整における保険料控除制度のよくある質問

続いて、生命保険料控除についてのよくある質問とそれに対する回答をご紹介いたします。

申請には何が必要?

年末調整で生命保険料控除を申告する場合、原則として「給与所得者の保険料控除申告書」の生命保険料控除額の欄に必要事項を記入して提出します。

また、加入している生命保険会社や損害保険会社から送付される「生命保険料控除証明書」の原本を添付するのが基本となります。

給与所得者の保険料控除申告書は、年末調整の時期が近づくと勤務先から渡されるのが一般的です。生命保険控除証明書は、毎年10月ごろに加入先の保険会社から郵送されます

保険料の払込時期が10月以降である場合、生命保険会社から「生命保険料控除申告予定額のお知らせ」が届きます。生命保険料控除証明書が発行されるのは、保険料の払い込みが確認されたあとです。

年末調整の時期に生命保険料控除証明書が発行されておらず、勤務先に提出できない場合は、翌年1月末までに証明書を提出することを条件として、生命保険料控除を受けることができます。

保険料控除の申請を忘れたらどうなる?

年末調整の期限までに生命保険料控除を申請しなかった場合、本来よりも所得税や住民税を多く納めることになります

年末調整での申請を失念してしまった場合は、確定申告をすることで生命保険料控除を受けられます

確定申告をする際は、確定申告書を作成し生命保険料控除証明書の原本を添付して所轄の税務署に提出しましょう。確定申告の期間は、翌年の2月16日〜3月15日のあいだです

控除証明書を紛失してしまったら?

控除証明書を紛失したときは、加入先の生命保険会社や損害保険会社に再発行を依頼しましょう。多くの保険会社では、インターネットや電話、窓口で控除証明書の再発行を依頼できます。

また、保険会社によっては、スマートフォンやパソコンなどから加入者自身で生命保険料控除証明書の電子発行をすることも可能です。

取得した電子データを、国税庁の「QRコード付証明書等作成システム」で印刷可能な形式(QRコード付PDFファイル)に変換して印刷すると、年末調整や確定申告での手続きに使用できます。

住民税の保険料控除はどうする?

年末調整や確定申告で生命保険料控除を申請すると、住民税の税額を計算する際にも控除が適用されるようになるため、個別に手続きをする必要はありません。

転職した場合の年末調整はどうする?

1年の途中で転職をした場合は、新しい勤務先で年末調整をします。その際、前の職場で発行された給与所得の源泉徴収票が必要です。

年内に再就職をしなかった場合は年末調整が受けられないため、生命保険料控除を受けるためには、自身で確定申告をする必要があります

控除対象になる保険とならない保険の種類

控除対象になる保険とならない保険の種類

最後に、控除の対象になる保険契約と、ならない保険契約を詳しくみていきましょう。

新制度の一般生命保険料控除の対象契約

新制度の一般生命保険料控除の対象となるのは、2012年1月1日以降に加入した以下の保険契約のうち、生存または死亡によって保険金・給付金が支払われるものです。
・生命保険会社や外国生命保険会社と結んだ契約
・旧簡易生命保険
・農協と結んだ生命共済契約など
・確定給付企業年金や適格退職年金の契約
保険金・給付金を受け取る人は、保険料を払っている本人かその配偶者、その他の親族であることが条件です。

旧制度の一般生命保険料控除の対象契約

旧制度の一般生命保険料控除の対象となるのは、2011年12月31日以前に契約した以下の保険契約です。
1.生命保険会社と結んだ契約のうち生存または死亡によって保険金・給付金が支払われるもの
2.昔の簡易生命保険の契約
3.農協と結んだ生命共済の契約、またはそれた類似する共済の契約
4.生命保険会社や損害保険会社と結んだ契約で、病気やけがなどが原因で保険金が支払われるもののうち、医療費の支払いを理由に保険金が支払われるもの
5.確定給付企業年金や適格退職年金の契約
旧制度では、病気やけがなどが原因で保険金が支払われる保険契約についても、一般生命保険料控除の対象となります。

一方、保険金・給付金の受取人、保険料を払っている本人、その配偶者、その他の親族が条件であることは同じです。

介護医療保険料控除の対象契約

介護医療保険料控除の対象となるのは、2012年1月1日以降に契約した以下の保険契約です。
1.生命保険会社や損害保険会社と結んだ契約で、病気やけがなどが原因で保険金が支払われるもののうち、医療費の支払いを理由に保険金が支払われるもの

2.病気やけがなどが原因で保険金が支払われる旧簡易生命保険や生命共済の契約のうち、医療費の支払いを理由に保険金が支払われるもの
介護医療保険料控除についても、保険契約の給付金・保険金を受け取る人が、保険料を支払う本人かその配偶者、その他の親族であることが条件となります。

個人年金保険料控除の対象契約

新制度の個人保険料控除の対象となるのは、年金(退職年金を除く)が給付される保険契約を結び、以下の1〜3に該当する場合です。
1.年金を受け取る人が保険料を払っている本人かその配偶者であること
2.保険料の払込期間が10年であること
3.年金の受取が開始される年齢が60歳以上であり、かつ受取期間が10年以上または終身であること
なお、実際に個人年金保険料控除を受けるためには、上記の要件を満たし、年金受取人と被保険者が同一にして「税制適格特約」を付帯する必要があります。税制適格特約を付帯しない場合の個人年金保険は、一般生命保険料控除の対象となります。

控除対象にならない保険

以下の保険料や掛金を支払っても、生命保険料控除の対象にはなりません
・保険期間が5年未満である貯蓄型保険や貯蓄共済
・外国の保険会社と外国で結んだ契約
・信用保険契約、傷害保険契約、財形貯蓄契約、財形住宅貯蓄契約、財形年金貯蓄契約

保険料控除制度を理解して損のない年末調整を!

生命保険料控除の控除額は、新制度と旧制度で異なります。新制度の控除額は、所得税が最大12万円、住民税が最大7万円です。旧制度では、所得税が最大10万円、住民税が最大7万円となります。

生命保険料控除を受けるためには申請が必要です。会社員や公務員などは、生命保険料控除を受けられるのであれば、忘れずに年末調整で申請をしましょう。

申請の際には、保険会社から送付される生命保険料控除証明書を添付します。もし年末調整での申請を忘れた場合、控除を受けるためには確定申告が必要です。

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生命保険オリコン顧客満足度ランキング

  • 1位

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    ライフネット生命

  • 2位

    71.5

    ソニー生命

    ※公式サイトへ遷移します。

  • 3位

    70.9

    アフラック

  • 3位

    70.9

    プルデンシャル生命

  • 5位

    69.8

    三井住友海上あいおい生命

  • 6位

    69.6

    チューリッヒ生命

  • 7位

    69.5

    メットライフ生命

  • 8位

    69.4

    アクサ生命

  • 9位

    69.3

    大樹生命

  • 9位

    69.3

    東京海上日動あんしん生命

  • 11位

    69.2

    ジブラルタ生命

  • 11位

    69.2

    はなさく生命

  • 13位

    69.1

    FWD生命

  • 13位

    69.1

    太陽生命

  • 15位

    68.7

    マニュライフ生命

  • 16位

    68.6

    日本生命

  • 16位

    68.6

    メディケア生命

  • 18位

    68.5

    オリックス生命

  • 18位

    68.5

    かんぽ生命

  • 18位

    68.5

    住友生命

  • 18位

    68.5

    SOMPOひまわり生命

  • 22位

    68.3

    明治安田

  • 23位

    68.1

    富国生命

  • 24位

    68.0

    ネオファースト生命

  • 25位

    67.9

    第一生命

  • 26位

    67.7

    SBI生命

  • 27位

    66.0

    朝日生命

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