ツーバイフォー工法とは?構造やメリット・デメリットを解説
工法は設計の自由度やコスト、建築期間などに大きく関わるため、家づくりの際は工法の特徴を理解して選択することが重要です。今回は、ツーバイフォー工法の構造やメリット・デメリットについて、木造軸組工法との違いも含めて解説します。
目次
ツーバイフォー(2×4)工法は、床や壁を面で支える木造住宅の工法
床や壁などを面で支える構造で、使用する木材の多くが2×4インチであることが、その名前の由来とされています。
気候条件が厳しく、材料や職人も乏しい1830年代の北米で生まれ、日本には明治時代に原型となる「バルーン・フレーミング工法」が伝わりました。戦後、住宅メーカーによる住宅供給が始まったことを契機に、1974年に「枠組壁工法」として技術基準が定められたのです。
ツーバイフォー工法は規格材を使うため、高度で専門的な職人技がなくても、均一な仕上がりを実現することができます。
職人の技術に依存せず一定の質を担保できるツーバイフォー工法は、住宅の量的充足が求められる時代に即した工法として一気に広まりました。
札幌時計台が現存することからもわかるように、日本の気候風土に適応した建物を建てやすいこと、耐震性に優れていることも普及の一因であると考えられます。
ツーバイフォー工法の基本的な構造
ツーバイフォー工法で家を建てる場合、主に「2×4材」と呼ばれる38mm×89mmの角材を釘で固定して枠組みを作ります。部位によっては2×6材、2×8材といったサイズの規格材を使うことも少なくありません。
この枠組みに、耐力壁を作るのに使われる合板などの構造用面材を合わせて「ダイヤフラム」と呼ばれるパネルにし、床、壁、天井の6つの面を一体化させて、頑丈な6面体構造を完成させます。
このように、ツーバイフォー工法は6面で住宅を支え、地震の際には揺れを住宅全体に分散することで、建物の倒壊を未然に防ぐことができる工法といえます。
木造軸組工法(在来工法)とツーバイフォー工法の違い
木造軸組工法は日本に古くからある木造建築の工法で、現在も日本の木造住宅はこの木造軸組工法で建てられているものがほとんどです。
「面」で住宅を構成するツーバイフォー工法に対して、横に渡す梁と縦に伸ばす柱の「線」で住宅を構成します。
木造軸組工法では、柱や梁と土台を接続する際に、釘などの金物は使いません。柱の一部を長方形にくり抜き、くり抜いた穴よりも先端を細くした梁をはめ込んで全体を組み上げていきます。
職人技なくしては成り立たない緻密な作業で、現場監督の力量も仕上がりに影響します。
手間と時間を要する分、ツーバイフォー工法に比べて工期が長く、費用も高めであることが一般的です。ただし、間取りの自由度は高く、家族構成が変わった際などのリノベーションも柔軟に行えます。
■木造軸組工法(在来工法)とツーバイフォー工法の違い
木造軸組工法(在来工法) | ツーバイフォー工法 | |
使用する角材 | 12cm×12cm(4寸角) | 2×4インチを基本とし、場所によって2×6インチや2×8インチを使用 |
施工方法 | 現場で施工 | 工場でパネルを作り、現場で組み立てる |
住宅の支え方 | 線 | 面 |
工期 | 比較的長め | 比較的短め |
設計上の制限 | 少な目で自由度が高い | 在来工法より自由度が低い |
品質 | ハウスメーカー、職人の熟練度などによってばらつきが出やすい | 品質のムラが出にくい |
リフォーム | しやすい | 壁自体が強度部材で制限がある |
ツーバイフォー工法のメリット
ここでは、大きく5つのメリットをご紹介します。
耐震性に優れている
ツーバイフォー工法は壁、床、天井の6面からなる箱型の構造であるため、地震の縦揺れ・横揺れのエネルギーを建物全体で分散して受け止め、ねじれや変形を抑えて自重を支えます。
実際、直下型で突き上げるような揺れだった阪神・淡路大震災をはじめ、広範囲が揺れて大津波が発生した東日本大震災、震度7の大地震が2度も襲った熊本地震のいずれにおいても、ツーバイフォー住宅は被害が少なく、耐震性の高さを証明しました。
東日本大震災において震度6弱以上を記録した地域のツーバイフォー住宅2万772戸に対し、一般社団法人日本ツーバイフォー建築協会が実施した調査(※)では、約98%(津波被害を除く)が「当面は補修しなくても居住できる」と答えています。
とはいえ、木造軸組工法の耐震性がツーバイフォー工法に劣るというわけではありません。
1995年に発生した阪神・淡路大震災では、木造軸組工法で建てられた多くの住宅が倒壊しましたが、2000年の建築基準法改正で木造軸組工法の耐震性は大きく向上しました。
固定用の金物の見直しや耐力壁の配置によって、地震のダメージを確実に低減できるようになったため、現在の木造軸組工法とツーバイフォー工法の耐震性に大きな差はありません。
※参照:一般社団法人日本ツーバイフォー建築協会「ツーバイフォー住宅の被害程度と被害発生理由調査結果 東日本大震災(平成23年3月11日)」
耐火性が高い
一般的に木材は燃えやすいため、木造住宅は火災に弱いと思っている方も多いのではないでしょうか。
しかし、ツーバイフォー住宅で使われるような厚みや太さがある木材であれば、火がついても容易に内部まで燃え広がることはありません。
よって、設置した柱や梁の強度を保ち、骨組みを守ることが可能です。
また、ツーバイフォー工法では、ファイヤーストップ構造と呼ばれる仕組みを採用していることも耐火性を底上げしています。ファイヤーストップ構造とは、火の通り道となる天井、壁、床などに「ファイヤーストップ材」を取り付けて空気の流れをカットし、火が上階へ燃え広がるのを防ぐ構造のことです。
さらに、ツーバイフォー工法では、天井や壁の内側に結晶水を含む石膏ボードを貼り付けます。
石膏ボードに炎が当たると約20分にわたって水蒸気が放出され、火が構造材に燃え移るまでの時間を遅らせてくれるのです。
そのため、近隣で火災が発生し、外壁の温度が上がった場合でも、ツーバイフォー住宅は被害を免れることも珍しくありません。
工期が短い
木造軸組工法はすべての作業を現場で行いますが、ツーバイフォー工法はパネルの製造まで工場で済ませ、現場では組み立てのみを行います。
組み立ての仕方も釘打ちで、作業はマニュアル化されているため、作業者による仕上がりやスピードの差もほぼありません。
天候に工期が左右されることも少なく、予定どおりに引き渡しを迎えられるケースがほとんどです。
ツーバイフォー工法と木造軸組工法の一般的な工期の目安は、下記のとおりになります。
ツーバイフォー工法の工期の目安
100〜120日
木造軸組工法の工期の目安
120〜140日
気密性と断熱性に優れている
ツーバイフォー工法では、構造体に熱伝導率が低い木材を使用しています。
また、断熱材を充填した構造材を使って6面を構成しているため、外気温の影響を受けにくく、室内の空気を逃しません。
冷暖房効率が良く、光熱費を削減しながら夏は涼しく、冬は暖かい環境を保つことができます。
そもそも木造住宅は、国産の木材を使うことによって、ほかの工法より材料の輸送時や建築時に排出されるCO2を抑制できる建築方法です。
CO2排出量実質ゼロに向けた「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」にも寄与するとして、国も木材の利用を進めてきました。
ツーバイフォー工法で建てられた住宅であれば、建てるときも建てた後も、高い省エネ性で環境に貢献できます。
遮音性が高い
ツーバイフォー工法で建てた住宅の壁面は、断熱材や石膏ボードなどで多層構造になっており、気密性の高さが特徴です。気密性が高いと、空気だけでなく音が漏れ出るのも防ぐことができます。
また、外の音を壁が吸収してくれるため、外部の騒音に悩まされることも少ないでしょう。
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ツーバイフォー工法のデメリット
外観のデザインや間取りに制約がある
規格化されたパネルを組み立てて作るツーバイフォー工法は、箱型を積み重ねた形が基本です。
外観のデザイン性を重視してゆるやかにカーブさせたり、変形地にフィットする形にしたりする施工は、かなり難度が高くなります。
狭小地や変形地が多い地域においては、箱型を組み合わせたツーバイフォー工法では思いどおりの家づくりができない可能性があるでしょう。
また、リフォームの際にも制限があります。
ツーバイフォー工法は、柱ではなく壁で家全体を支えているため、壁をなくして部屋を広くするなどのリフォームは困難です。
壁に変化を加えると、構造の耐震性・安全性に影響を及ぼすことになりかねません。
家族構成の変化などによる間取り変更の自由度が低いことも、事前に把握しておくことが大切です。
構造体でコストを削減できない
木造軸組工法では、建築基準法の範囲内で材料を変更し、全体のコストを抑えることができます。
しかし、ツーバイフォー工法の場合、構造体に使用できる部材は、建築基準法で定められた6種類の枠組壁工法構造用製材のみです。
日本農林規格(JAS)や日本工業規格(JIS)に適合する部材、あるいは国土交通大臣が認定する輸入の規格材以外は使用することができません。
部位によっても、材料や部品の種類と等級が決められています。
耐震性や構造の安定性といった建物の安全性が、目に見える形で担保されているともいえますが、コストカットの方法として構造体を変えることができないことは覚えておく必要があります。
木造住宅はツーバイフォー工法と木造軸組工法を十分に比較して、建てたい家を実現しよう
工法によって、家づくりにかかるコストや建築期間、設計・デザインの自由度、職人の技術の影響度などが変わるため、工法ごとの特徴を理解して後悔のない家づくりに役立てましょう。
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