ドル建て保険とは?メリット・デメリットや選び方をわかりやすく解説

ドル建て保険とは?メリット・デメリットや選び方をわかりやすく解説

日米の金利差が開いていることなどを理由に、円安が進行しています。将来の日本円の価値を危惧して、ドル建て保険の加入を検討される方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、ドル建て保険の特性、メリットとデメリット、さらに円安時と円高時の影響を詳しく解説します。また、どのような人にドル建て保険が適しているのかと、適切な選び方も紹介しますので、参考にしてくださいね。
ファイナンシャルプランナー/経済ジャーナリスト 酒井富士子

監修者 ファイナンシャルプランナー/経済ジャーナリスト 酒井富士子

金融メディア専門の編集プロダクション・株式会社回遊舎 代表取締役。日経ホーム出版社(現日経BP社)にて「日経ウーマン」「日経マネー」副編集長を歴任。

mokuji目次

  1. ドル建て保険とは?
    1. ドル建て保険の基本概念
    2. 円建て保険とドル建て保険の違い
  2. ドル建て保険のメリット
    1. 高い予定利率
    2. 為替差益が期待できる
    3. 税金対策になる
  3. ドル建て保険のデメリット
    1. 為替リスクの影響
    2. 各種手数料がかかる
  4. 円安時と円高時のドル建て保険の影響
    1. 円安時の保険料と保険金
    2. 円高時の保険料と保険金
  5. ドル建て保険が適している人の特徴
    1. 資産規模が大きく、リスク分散したい方
    2. ドルを保有するメリットがある方
  6. ドル建て保険の選び方
    1. 保険商品の種類と特性
    2. 為替リスクを考慮した選択
  7. 基礎知識をおさえて、自分に合った商品選択を

ドル建て保険とは?

ドル建て保険とは?

まずは、ドル建て保険の概要を説明します。

ドル建て保険の基本概念

ドル建て保険とは、保険料の支払いから保険金の受け取りまですべてドルで設定されている保険のことです。

保険会社はお客様から集めた保険料を運用します。米ドルは金利が高いので、保険会社としても利益を得やすいです。そのため、予定利率と言われる運用による利益を予測して保険料を一定の利率で割り引く「割引率」が高くなります。予定利率が高いことにより、保険料が安くなる点が特徴です。

また、金利が高い米ドルでの運用は利益を還元しやすいので、払い込んだ保険料より大きな保険金を受け取ることができるのも特徴です。そのため、保障だけを目的にするのではなく、貯蓄や投資を目的にドル建て保険を選ぶ人もいます。

円建て保険とドル建て保険の違い

ドル建て保険は、為替変動の影響を受けるため、高リスク高リターンの性質を持っています。例えば、保険金として受け取る金額が10万ドルとしましょう。受取時の為替相場が1ドル=90円なら10万ドルは900万円、1ドル=150円なら1,500万円と、日本円としての価値は大きく変わります。

また、平準払い(月払い・年払い)の場合、為替により支払う保険料が毎回異なります。円安が進むと、毎回の支払い負担が大きくなり、家計を圧迫してしまう可能性もあるでしょう。

ドル建て保険のメリット

ドル建て保険のメリット

ここからは、ドル建て保険のメリットを解説していきます。

高い予定利率

米ドルは金利が高い通貨であるため、運用で得られるリターンも高い傾向にあります。保険会社は、どのくらいの利回りで運用できるのかを予測して保険料を設定するので、大きな運用収益を見込めるドル建て保険は予定利率(利益を予測して保険料を一定の利率で割り引く「割引率」)が高く設定され、結果的に保険料は安くなります。

一方、日本は低金利政策が続き、日本円の金利は低いため、予定利率も低いです。そのため、ドル建てで運用するほうが、円建て保険に比べて少ない保険料の支払いで済むのは魅力と言えるでしょう。

為替差益が期待できる

米ドルで運用するドル建て保険は、米ドルの金利が高いこともあり、円建て保険に比べるとリターンが大きく設定されています。それに加えて、保険料を支払った時期に比べて為替が円安に動くと、為替差益で得する可能性があります。

為替差益とは、為替レートの変動によって生じる利益のことです。例えば、1米ドル100円で10万ドル(1,000万円)を購入したとしましょう。しばらくして1米ドル150円になれば、10万ドル=1,500万円となり、単純計算すると500万円の利益が出たことになります。

つまり、円高の時期にドル建て保険に加入して、円安になったタイミングで保険金の支払いが行われれば、大きく得する可能性もあります。

税金対策になる

ドル建て保険を含め、民間の生命保険に加入している契約者(保険料負担者)本人が支払った保険料に関しては、生命保険料控除の対象になります。年末調整や確定申告で申請することにより、所得税・住民税の負担が軽くなることがメリットです。上述の通り、ドル建て保険は資産運用として保有する面もありますので、運用しながらも税金対策できるのは魅力と言えます。

生命保険料控除について詳しく知りたい方は、下記の記事をご参照ください。
生命保険料控除の計算方法とそのしくみをわかりやすく解説

ドル建て保険のデメリット

ドル建て保険のデメリット

ドル建て保険には、デメリットもあります。ここでは、ドル建て保険のデメリットについて解説していきます。

為替リスクの影響

ドル建て保険のデメリットは、為替の変動により、為替差損が生じる可能性があることです。保険料の支払い時より大きく円高に動いた場合には、元本割れのリスクがあります。

為替は経済の専門家であっても予測が難しいのが実情です。円安に振れれば得することもありますが、元本割れのリスクを排除したいのであれば、ドル建て保険の加入は避けた方が良いでしょう。

各種手数料がかかる

ドル建て保険に限りませんが、保険は運用手数料がかかります。ただし、ドル建て保険の運用手数料は、円建て保険の運用手数料に比べると割高です。

また、一定期間は解約控除費用(早期解約のペナルティのようなもの)がかかるので、契約してすぐに解約すると、大きく元本割れしてしまいます。

それに加えて、ドル建て保険の場合は、保険料の支払い時は日本円から米ドルへ、保険料の受け取り時には米ドルから日本円へ変える為替手数料もかかります。

円安時と円高時のドル建て保険の影響

円安時と円高時のドル建て保険の影響

ここでは、円安・円高がドル建て保険にどう影響を及ぼすか説明していきます。

円安とは、外国通貨に対して日本円の価値が下がることです。例えば、1米ドル100円であれば100円で1米ドルに交換できますが、円の価値が下がり、1米ドル150円になると150円支払わなければ1米ドルに交換できないことになります。

円高とは、外国通貨に対して日本円の価値が上がることです。1米ドル100円から1米ドル80円に円高が進行すると、80円で1米ドルに交換できるようになります。

ここでは、円安・円高がドル建て保険にどう影響するか解説していきます。

円安時の保険料と保険金

円安時は、ドル建て保険の保険料が高くなります。例えば、月払いで保険料を支払う場合、当初想定していたよりどんどん保険料が高くなり、捻出が難しくなる可能性もあるでしょう。

それに対して、保険金の実質価値は増加します。保険料を支払った時より円安が進行すると、為替差益の恩恵を受けることができます。

円高時の保険料と保険金

円高時は、保険料が安くなる一方、受け取る保険金の円換算額が減少し、期待していたリターンが得られない場合があります。円高のタイミングで保険料を払い込み、円安のタイミングで保険金を受け取ることができれば、為替差益を得ることができます。

しかし、保険料を支払った時より保険金を受取るタイミングで大きく円高に動いた場合には、元本割れのリスクも生じます。

ドル建て保険が適している人の特徴

ドル建て保険が適している人の特徴

ここでは、ドル建て保険が適している人の特徴を紹介します。

資産規模が大きく、リスク分散したい方

資産規模が大きい方は、さまざまな資産にリスク分散して資産を守る必要があります。為替は読みにくいですが、インフレ・円安を考えると日本円だけ保有するのもリスクがあると言えるでしょう。資産を減らさないためにも、一部資産をドル建ての保険にしてリスク分散するという考え方も一つです。

ドルを保有するメリットがある方

ドル建て保険は、円建て保険に比べると大きなリターンを受取れる設計になっています。為替変動のリスクがありますが、ドルを保有するメリットがある方にとっては、元本にプラスしてリターン分を得られるので得をします。例えば、将来海外移住や長期の旅行を考える人、子供に海外留学をさせたい人にとってはメリットがあると言えるでしょう。

ドル建て保険の選び方

ドル建て保険の選び方

ここからは、ドル建て保険の選び方を解説していきます。

保険商品の種類と特性

ドル建て保険の種類は、主に終身保険、養老保険、個人年金保険の3種類です。これらは、日本円建てでも取り扱いがありますが、ドル建て払いの場合は、保険料の支払い・保険料の受け取りがドルになります。

終身保険

被保険者が死亡した時や高度障害状態になった時に
保険金が支払われる保険。

養老保険

死亡保障と貯蓄性の両方を兼ね備えた保険。
被保険者が死亡した場合は死亡保険金、満期を迎えた
場合は満期保険金を受け取ることができる。

個人年金保険

公的年金にプラスして自分で年金を用意するための保険。

各保険商品の特性を理解し、自身のニーズに合った保険を選ぶことが重要です。

また、保険の支払い方法として、一時払いと平準払い(月払いや年払い)があります。資金的に余裕がある方は、円高のタイミングで一時払いのドル建て保険に加入して、円安のタイミングで保険料を受取ると、為替差益の恩恵を多く受けることができるでしょう。

なお、終身保険についてより詳しく知りたい方は、下記の記事をご参照ください。
終身保険とは?メリット・デメリットや他の保険との違いを解説


生命保険の仕組みについて詳しく知りたい方は、こちらをご参照ください。
生命保険とは? 仕組みや種類をわかりやすく解説

為替リスクを考慮した選択

ドル建て保険を選ぶ際には、為替リスクを理解した上で適切なタイミングや契約プランを選択する必要があります。
実は、ドル建て保険のリスクを理解しないまま加入して、困っている人も増えています。
例えば、円安なタイミングに一時払いで保険の契約をすると、保険金の支払い時に円高になったら損してしまう可能性があります。また、月払いのドル建て保険の場合、円安が進行すると保険料の負担が増えて、支払いが厳しくなるでしょう。
為替がどのように動くかは想像しにくいので、このようなリスクがあることはしっかり理解しておきましょう。

基礎知識をおさえて、自分に合った商品選択を

基礎知識をおさえて、自分に合った商品選択を

ドル建て保険は、米ドルの金利の高さから、円建て保険に比べるとリターンが大きくなります。

しかし、為替影響を受けやすく、保険料の支払い時より保険金の受け取りのタイミングで大きく円高に動けば、元本割れするリスクもあります。

その点を理解した上で、リスク分散のためにさまざまな資産を保有したい人は、加入の検討をすると良いでしょう。

オリコン顧客満足度ランキングでは、「生命保険 顧客満足度ランキング」を発表しています。こちらもぜひ参考にしてみてくださいね。
生命保険 顧客満足度ランキング
ファイナンシャルプランナー/経済ジャーナリスト 酒井富士子

監修者 ファイナンシャルプランナー/経済ジャーナリスト 酒井富士子

金融メディア専門の編集プロダクション・株式会社回遊舎 代表取締役。
日経ホーム出版社(現日経BP社)にて「日経ウーマン」「日経マネー」副編集長を歴任。
リクルートの「赤すぐ」副編集長を経て、2003年から現職。「お金のことを誰よりもわかりやすく発信」をモットーに、暮らしに役立つ最新情報を解説する。

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