民事責任だけではない自転車事故の責任

  • 民事責任だけではない自転車事故の責任

 年間およそ11万件も起こっている自転車事故。なかでも、自転車と歩行者の衝突事故で自転車が加害者となってしまうケースが増加しています。誰でも気軽に利用できる自転車ですが、もし事故を起こしてしまったらどのような責任を問われるのでしょうか。今回は自転車事故における民事責任と刑事責任についてご説明いたします。
 自転車で車道を通行していて、接近してくる自動車を怖いと思った経験は誰でもあるでしょう。このように自転車利用者は、「交通弱者」であるという意識を持ちがちです。しかし、自転車は道路交通法上の「軽車両」に該当しますから、事故を起こすと加害者は「刑事責任」と「民事責任」の両方を負うことになります。

 たとえば、2011年に大阪地裁で、赤信号を無視し、自転車で国道を横断していて死亡事故を誘発した起男性に、「重過失致死罪」による実刑判決が下されています。このような「刑事責任」は未成年であっても免れることは出来ません。
 また刑事罰を受けると、仕事を止めざるを得なくなることや、医師や看護師、調理師などの免許が与えられず、付きたい仕事につけなくなってしまうこともあります。
 自転車と歩行者の事故や自転車同士の事故で相手を死傷させてしまうと、自転車利用者に過失があるときには刑法第211条「重過失傷害」が適用され、5年以下の懲役若しくは禁固又は50万円以下の罰金に処される可能性があります。

 起訴されるかどうかは、相手のケガの程度や過失の程度によって検察官が判断します。相手が軽傷であれば起訴されることはほとんどありません。また懲役・禁固・罰金のいずれになるか、実刑になるか執行猶予付きになるかは、裁判によって決定されます。信号無視や前方不注意、ひき逃げなど悪質な場合は、刑事罰を受ける可能性が高くなります。
 交通事故で相手を死傷させてしまうと、民法第719条の「不法行為責任」として治療費や休業補償、遺族補償、慰謝料などの損害賠償を負うことになります。近年、死亡事故や被害者に重篤な後遺症が残った自転車事故の民事訴訟では、自転車の運転手に1億円近い高額な賠償金を命じる判決が増えてきています。
 自転車事故後に示談が成立していると、刑事訴訟で被害者に有利な情状として扱われます。そのため、実刑判決ではなく執行猶予つきの判決になることがあります。したがって、被害者との間での示談交渉はとても大切です。

 自転車保険の中には、示談交渉代行サービスがついているものもありますので、民事訴訟での高額な損害賠償に備えるだけでなく、いざというときの刑事責任を軽くするためにも、保険への加入は有効でしょう。
ただし、「保険にさえ入っていれば事故を起こしても大丈夫」というわけではありませんので、自転車に乗るときは交通ルールを守って安全運転することがなによりも大切です。
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