火災保険料の相場はいくらくらい?安くするポイントも紹介

住まいと生活を守るために、火災保険は不可欠なものです。火事が発生すると、建物の再建や修復、家財の購入などで、多額の費用がかかります。火災保険に入っていれば、いざというときの経済的負担を大きくやわらげてくれます。ですが、保険料の相場を知らずに契約してしまうと、高くついてしまうことも。そこで、この記事では、条件別に保険料相場を紹介していきます。保険料を安く抑えるポイントも解説していますので、参考にしてください。すでに火災保険に入っている方は、相場と比べて高いのか安いのか比較し、更新時にご活用ください。
ファイナンシャルプランナー/経済ジャーナリスト 酒井富士子

監修者 ファイナンシャルプランナー/経済ジャーナリスト 酒井富士子

金融メディア専門の編集プロダクション・株式会社回遊舎 代表取締役。日経ホーム出版社(現日経BP社)にて「日経ウーマン」「日経マネー」副編集長を歴任。

火災保険料の相場

火災保険料の最新相場をまとめるため、3社から様々な条件での見積もりを入手しました。この見積もりを元に、火災保険料の相場をみていきます。(保険期間を5年間として見積もりを取り、1年あたりの保険料を表示しています。ここに掲載した保険料はあくまで目安です。保険料は条件によって異なるため、実際に加入を検討されるときは、ご自身に合った条件で見積もりを取るようにしてください)

条件別に火災保険料の相場をチェック

まず、火災保険料に大きな影響があるのは「地震保険」の有無です。地震保険は、地震や噴火、津波、それらを原因とする火災などによって生じた建物と家財の損害を補償するものです。意外と知られていないのですが、地震を原因とする火災は、火災保険だけでは補償されません。契約時に地震保険のオプションを付ける必要があります。地震保険の補償金額は、火災保険の保険金額の30〜50%の範囲内で設定できます(建物は5000万円、家財は1000万円が上限)。地震保険は単体では加入できず、常に火災保険に付帯する形で加入することになっています

(2023年9月現在)
地震保険を付けると、保険料はぐっと高額になります。たとえば、A社で[戸建て]、[最低限の補償]、[地震保険なし]なら、年間の保険料は1万1000円です。ところが、[地震保険あり]にすると10万8000円と、10倍に跳ね上がります。10倍というのは極端なケースですが、他の保険会社でも、[地震保険あり]と[地震保険なし]の間には、それなりに大きな額の差が生じています。

実は、地震保険の保険料はどの保険会社でも同じです。見積もりの表で[地震保険あり]の保険料から[地震保険なし]の保険料を引き算すると、[戸建て]で9万6000円か9万7000円、[マンション]で4万8000円か4万9000円と、3社ともおよそ同額になっています。なぜなら、地震保険は、国が政策的に設けた保険制度で、加入条件が同じならどの保険会社でも同じ保険料になるように決まっているからです。

地震保険の保険料は、建物の所在地、構造、免震・耐震性能などによって異なります。また、地震保険料は税控除の対象です(火災保険料は税控除の対象ではありません)。確定申告や年末調整のときに、その年に支払った地震保険料を、所得税は5万円、住民税は2万5000円を上限に控除できます。

さて、[地震保険あり]の場合の、1年あたりの保険料相場をみていきましょう。[戸建て]で[最低限の補償]だと10万8000〜12万8000円、[水災への補償あり]だと14万9000〜19万円、[さまざまなリスクに備える]だと15万5000〜22万3000円になります。[マンション]では、[最低限の補償]が5万4000〜5万7000円、[水災への補償あり]が6万9000〜7万円、[さまざまなリスクに備える]が7万4000〜8万7000円です。[地震保険あり]は[地震保険なし]に比べて高額になりますが、火災保険だけでは地震による火災が補償されないことを考えると、地震保険への加入は検討に値するのではないでしょうか。

次に、[地震保険なし]の相場をみていきます。[戸建て]で[最低限の補償]だと、1万1000〜3万1000円と、3倍近い幅があります。[水災への補償あり]では5万2000〜9万3000円と、やはり幅は大きく、しかも[最低限の補償]では最安値だったA社がもっとも高額になっています。
[さまざまなリスクに備える]では5万9000〜12万6000円となり、最安値のB社と最高値のA社で倍も違っています。やはり、複数の保険会社から見積もりを取ることは重要だとわかります。ただし、B社は「汚損・破損の補償なし」、C社は「家財の基本・破損等の支払い限度額が30万円」と、補償内容に違いがあります。保険料だけでなく、いざというときの補償内容を把握することも、見積もりを比較するときには忘れないようにしてください。

[マンション]をみてみると、[最低限の補償]で5,000〜8,000円、[水災への補償あり]では2万〜2万2000円、[さまざまなリスクに備える]では2万5000〜3万9000円です。建物全体が保険の対象である[戸建て]に比べると、[マンション]は専有部分のみが対象なので、保険料は半額以下になっています。保険会社による保険料の違いも[戸建て]に比べると小さく、3社の保険料の違いはそれほど大きくありません。

【独自調査】ユーザーの保険料相場は?

ここからは、オリコン顧客満足度(R)調査で得られた、実際のユーザーのアンケート結果で保険料相場を確認してみましょう。まずは地震保険の有無についてユーザーの傾向をみていきます。
【戸建て、マンション居住者の回答結果(地震保険ありなし)】※1

地震保険の有無について、戸建て、マンション居住者の回答結果

上記グラフを見ると、地震保険ありと回答している人が戸建て居住者、マンション居住者共に全体の8割以上となっています。あくまでオリコン顧客満足度(R)調査で得られた回答の傾向となりますが、それだけ地震保険に加入している人が多いといえるのではないでしょうか。
※1 過去3年以内に火災保険に加入し(賃貸居住者は対象外)、かつ火災保険へ加入する際に選定に関与した25〜84歳のサービス利用者が対象。ここでは、保険料の設問に対して回答のあった計2,876人のデータを掲載。なお、調査期間は2023年9月25日〜10月4日。
上記の結果から、多くの人が地震保険に加入している傾向があるようですので、地震保険ありを前提として、条件別に傾向をみていきます。
【地震保険あり・戸建て・5年一括払いの場合】※2

地震保険あり・戸建て・5年一括払いの場合

戸建て居住者で、地震保険に加入し、支払い方法が5年一括払いの場合、保険料の支払い額で最も回答が多かったのは【25万〜30万円未満】の13.5%でした。戸建ては木造のことが多く、マンションに比べると燃えやすい上、補償対象となる面積も広いため、保険料は高くなる傾向があります

この相場観は、あくまで本調査での結果であり、補償内容や築年数、建物の所在地などの条件によって金額は変わってきます。
※2 過去3年以内に火災保険に加入し(賃貸居住者は対象外)、かつ火災保険へ加入する際に選定に関与した25〜84歳のサービス利用者が対象。ここでは、保険料の設問に対して回答のあった計466人のデータを掲載。なお、調査期間は2023年9月25日〜10月4日。
次に、マンションを見ていきましょう。
【地震保険あり・マンション・5年一括払いの場合】※3

地震保険あり・マンション・5年一括払いの場合

マンション居住者で、地震保険に加入し、支払い方法が5年一括払いである人の保険料の支払い額で最も回答が多かったのは【5万〜10万円未満】で40.7%。次いで、【10万〜15万円未満】の21.6%が続く結果となりました。戸建てに比べると傾向がはっきり出ており、全体の約4割に当たる人が5万円〜10万円未満の保険料を支払っていることがわかります

この相場観は、あくまで本調査での結果であり、補償内容や築年数、建物の所在地などの条件によって金額は変わってきます。
※3 過去3年以内に火災保険に加入し(賃貸居住者は対象外)、かつ火災保険へ加入する際に選定に関与した25〜84歳のサービス利用者が対象。ここでは、保険料の設問に対して回答のあった計162人のデータを掲載。なお、調査期間は2023年9月25日〜10月4日。

火災保険料の仕組み

火災保険料はどうやって決まる?

火災保険料は、建物の所在地、構造、契約期間など、さまざまな条件によって決まります。条件について解説する前に、保険料が「純保険料」と「付加保険料」の2つから成り立っていることをお話しします。「純保険料」とは、火災などが起きたときに受取人に支払う保険金の原資になる部分です。「付加保険料」とは、保険会社が事業運営に用いる必要経費や利益、保険代理店に支払う手数料などに充てる部分です。

支払う保険金の原資となる「純保険料」は、業界団体が膨大な過去のデータを分析して算出した数字をもとに、各社が決めています。本来、保険とは、大勢の人がお金を出し合って助け合う相互扶助の考えによるものですから、保険会社が預かった純保険料と支払う保険金は等しくなければならない、と考えられています。そのため、純保険料の総額と支払う保険金の総額は等しくなるように設計されています。ですが、それでは保険会社の手元にお金が残りません。そこで、保険会社を経営するのに必要な経費や利益を「付加保険料」として上乗せします。付加保険料は各保険会社が独自に決めていますので、この部分が保険料の違いの大きな要因になっています

火災保険料は何で左右される?

建物によって火災の起きやすさや、火災が起きたときの損害の大きさが違うため、火災保険料は対象となる建物によって異なります。保険料に影響する条件は主に下記のものになります。

・建物の種類(共同住宅/戸建て)
・建物の構造(マンション構造/耐火構造/その他の構造)
・建物の所在地
・築年数
・専有面積/延べ床面積
・補償内容
・保険の期間、支払い方法

それぞれについて解説します。

建物の種類(共同住宅/戸建て)
共同住宅(マンション)の場合、保険の対象は専有部分のみになります。それに対して、戸建ては建物全体が対象となりますので、戸建ての方が保険料は高額になります

建物の構造(マンション構造/耐火構造/その他の構造)
燃えにくい構造の建物の方が、火災保険料は安くなります。構造は下記の3種類に分けられます。保険料は、マンション構造(M構造)の建物がもっとも安く、その他の構造(H構造)の建物がもっとも高くなります。

・マンション構造(M構造) コンクリート造や耐火建築物などのマンション
・耐火構造(T構造) コンクリート造、鉄骨造、耐火建築物などの戸建て
・その他の構造(H構造) 木造の戸建てなど

建物の所在地
災害にあうリスクは場所によって異なるため、建物の所在地が保険料に影響します。建物の密集エリアは、他の建物で起きた火災が延焼するリスクが高いため、保険料が高くなります。海や川の近くにあって水害のリスクが高い場所では保険料が高くなります

築年数
建ってから年数が経過している建物の方が保険料は高くなります。年数が経つほど、電気設備の老朽化による火災のリスク、台風による損壊リスク、水漏れリスクなどが高まるためです。

専有面積、延べ床面積
マンションの場合は専有面積、戸建ての場合は各階の床面積を足し合わせた延べ床面積によって、保険料が変わります。広ければ、それだけ補償される範囲が広がるので、保険料が高くなります

補償内容
火災保険ですので火災を対象とするのは必須ですが、風災、水災、盗難、地震などを補償対象とするかどうかで、保険料が変わってきます。幅広いリスクに備えようとすれば、それだけ保険料も高額になります

保険の期間・支払い方法
毎年契約を更新して1年ごとに支払うよりも、長期契約を結んで保険料を一括で支払う方が、割引が適用されて安くなります。以前は35年の長期契約が可能でしたが、現在では最長で5年までとなっています。

火災保険料を安く抑える方法

火災保険料を安くするポイントを紹介

保険料を決める要因である構造、広さ、所在地などは変えようがありませんが、それ以外で保険料を安くする方法があります。

・複数の保険会社の見積もりを比較する
・補償や特約を外す
・長期契約を結び一括で支払う
・各種割引を利用する
・免責額を大きく設定する

それぞれどのようなものかみていきましょう。

複数の保険会社の見積もりを比較する
火災保険の会社はいくつもあり、同じ条件でも保険料は異なります。保険料を安く抑えるには、見積もりを取って比較することが大切です。「CMで見たことがある」とか「聞いたことがある社名だ」といった理由だけで保険会社を決めるのは避けた方がよいでしょう。

補償や特約を外す
火災への補償の他に、風災、水災、水濡れ、破損、盗難などへの補償を付けられますが、必要性の低いものを外すことは、保険料を安く抑えるのに有効です。たとえば、洪水のリスクが低いエリアや、マンションの2階以上であれば、水災の補償を外すことを考えてよいかもしれません。リスクの度合いを知るには、行政が提供するハザードマップが参考になります。また、火災保険には様々な「特約」を付けることができます。建物を再建築するのに必要な額を補償する「新価保険特約」、日常生活で他人に損害を与えたときに賠償金を補償する「個人賠償責任特約」、弁護士に相談や依頼するときの費用を補償する「弁護士費用等補償特約」などがあります。補償範囲を広げれば安心できますが、その分、保険料も上がりますので、必要性をしっかり検討するようにしましょう。

長期契約を結び一括で支払う
1年ごとに契約を更新するよりも、長期で契約して、一括で支払った方が、割引が適用されて安くなります。ただし、契約できるのは最長で5年までです。契約途中で特約を追加するといった契約内容の変更は可能です。また、解約すれば、全額ではありませんが、保険料の一部が戻ってきます。

各種割引を利用する
新築物件の保険料が安くなる「新築割引」や、築10年未満の建物に適用される「築浅割引」などがあります。申込時に忘れず申請しましょう。その他に、独特の割引を提供している保険会社もあります。ガスを使わず、すべての設備を電気でまかなう住宅に適用される「オール電化割引」。居住者全員が非喫煙者なら「ノンスモーカー割引」。書類を電子データで受け取る「ペーパーレス割引」。窓口で申し込むよりも、WEBからの申し込みが安くなる「WEB申込割引」。セコムのホームセキュリティの常時監視システムを導入していれば受けられる「ホームセキュリティ割引」。同じ保険会社の自動車保険や医療保険に入っていると受けられる割引もあります。

免責額を大きく設定する
「免責額」とは、保険金を受け取るような損害が生じたときに、契約者が自己負担する金額のことです。たとえば、免責額が3万円なら、10万円の損害が生じたときに支払われる保険金は7万円(10万円から免責額3万円を引いたもの)になります。3万円以下の損害なら保険金は支払われません。免責額を大きくすると、保険料は安くなります。「小さな損害は自分で対処し、大きな損害にだけ保険で備える」という考えで、免責額を大きく設定するのもひとつの方法です。

まとめ

火災保険の保険料の相場について解説しました。保険料は、建物の所在地や構造などによって異なりますし、どれだけの補償を付けるかによっても大きく違ってきます。ご自身に必要な補償がなにかを検討し、できるだけ安い保険料で必要な補償を付けられるよう、複数の保険会社から見積もりを取るようにしましょう。

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ファイナンシャルプランナー/経済ジャーナリスト 酒井富士子

監修者 ファイナンシャルプランナー/経済ジャーナリスト 酒井富士子

金融メディア専門の編集プロダクション・株式会社回遊舎 代表取締役。
日経ホーム出版社(現日経BP社)にて「日経ウーマン」「日経マネー」副編集長を歴任。
リクルートの「赤すぐ」副編集長を経て、2003年から現職。「お金のことを誰よりもわかりやすく発信」をモットーに、暮らしに役立つ最新情報を解説する。

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