火災保険マンションでもいる?いらない?地震保険との違いや選ぶポイントを解説
この記事では、分譲マンションの火災保険の必要性や選び方のポイント、保険料を抑える方法などについて解説します。これからマンションを購入する人や、火災保険の見直しを検討している人は参考にしてください。

監修者 CFP(R)/DCアドバイザー/証券外務員2種 松田聡子
明治大学法学部卒。金融系ソフトウェア開発、国内生保を経て独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在はFP業務に加え、金融ライターとしても活動中。
目次
火災保険がマンションで必要な理由
マンションでなぜ火災保険が必要なのか、3つの重要なポイントについて解説していきます。
なお、分譲マンションの火災保険で補償されるのは、専有部分(室内や内装、家財など)に限られます。共用部分(建物の構造部分やエレベーターなど)については、管理組合が一括して火災保険に加入するため、個人で加入する必要はありません。
火災を起こしてしまったときの損害をカバーできる
マンションで火災が発生した場合、「失火責任法」という法律が適用されます。この法律により、故意でない火災の場合、原則として火元となった人に損害賠償責任は発生しません。
しかし、アルコールを飲んでタバコを投げ捨てたといった、重大な過失があったと裁判所が判断した場合は、賠償責任を負う可能性があります。
近隣の部屋から出火した場合の対策になる
近隣住戸からの出火で被害を受けた場合でも、先述した失火責任法により、火元となった人に対して損害賠償を請求できないのが一般的です。つまり、自分がどんなに注意していても、他人の火災による被害は自己負担しなければならない可能性があるのです。
火災保険に加入していれば、このような予期せぬ延焼被害による損害も補償されます。自身の注意だけでは防ぎきれないもらい火への対策として、火災保険への加入が必要です。
自然災害や日常のリスクにも備えられる
特にマンションでは上階からの水漏れや給排水管のトラブルといった、建物特有の水まわりのリスクも心配です。
また、空き巣被害や誤って家財を破損させてしまった場合なども補償されるため、日常生活における予期せぬトラブルへの備えとしても活用できます。
火災以外にも数多くのリスクに対応できる火災保険は、マンション住まいの強い味方となるでしょう。
マンション住まいの人が火災保険を選ぶポイント
火災保険の補償対象を確認する
建物の補償対象には、主に以下のものが含まれます。
・システムキッチンやユニットバス
・エアコンなどの固定設備
・備え付けの収納や建具
・衣類や装飾品
・寝具類
・食器や調理器具
・書籍やCD・DVD
上の階からの水漏れリスクに備える
水漏れは家具や電化製品に重大な被害を及ぼすだけでなく、壁や天井にカビが発生するといった、深刻な事態に発展するおそれがあります。そのため、最上階以外に住む人は、建物と家財に水漏れ補償の付帯をおすすめします。
火災保険の水漏れ補償があれば、上階からの水漏れによって被害を受けた天井や壁の修理費用、水濡れによって使えなくなった家財の買い替え費用などが補償されます。水濡れの補償内容や条件は保険会社ごとに異なるため、内容をよく確認しましょう。
万が一の仮住まい費用を比較する
このような場合に備えて、火災保険には仮住まい費用をカバーできる補償を付帯すると安心です。仮住まい費用をカバーするには、仮住まい費用補償特約や臨時費用保険金という補償があります。
仮住まい費用補償特約 は火災や災害で自宅に住めなくなった場合に、仮住まいの家賃や引越し費用などを一定期間、一定額まで補償するものです。一方、臨時費用保険金 は損害保険金とは別に、臨時の出費に充てるための保険金が支払われるものです。
これらの補償内容は保険会社によって異なり、補償される金額や期間、対象となる費用が異なります。
マンション住まいにおすすめの特約を確認する
特約名 | 補償内容 |
個人賠償責任特約 | 水漏れによる階下への損害や、日常生活での事故による損害賠償を補償 |
バルコニー等修繕費用特約 | 専用使用権のあるバルコニーや窓ガラスなど共用部分の修理費用を補償 |
類焼損害特約 | 自室からの出火で近隣の住戸が被害を受けた場合の修繕費用を補償 |
臨時費用特約 | 事故時の予期せぬ出費に使える追加の保険金 |
水濡れ原因調査費用特約 | 水漏れ事故の原因を特定するための調査費用を補償 |
もしものときのサポート体制を確認する
インターネットでの加入は保険料が安く抑えられる利点がありますが、事故発生時の手続きは自身でする必要があります。
一方、保険代理店での加入は保険料が若干高めになるものの、事故発生時の保険金請求手続きから解決までをサポートしてもらえる安心感があります。
水害に備える
一般的に水災補償が適用される基準は、地盤面から45cmを超える浸水 であるためです。
また、マンションが山やがけの近くにある場合は、土砂崩れのリスクも考慮する必要があります。土砂災害も水災補償の対象となるため、立地条件に応じた補償内容の選択が大切です。
マンションの火災保険は地震保険とセットにする?
地震保険は火災保険とセットでないと加入できない
ただし、地震・噴火・津波による被害は火災保険では補償されないため、これらのリスクに備えるには地震保険への加入が不可欠です。
地震保険の保険料は火災保険に追加して発生するため、保険料は増加することになります。マンションの耐震性や立地などを考慮し、地震保険への加入を検討しましょう。
地震保険の補償内容は?
具体的には、以下のような損害が補償対象となります。
・地震の揺れで建物が倒壊した場合
・地震による津波で建物が流された場合
・地震による土砂崩れで建物が埋没した場合
・噴火による溶岩や噴石で建物が損壊した場合
地震保険では損害の程度 に応じて、「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の4区分で保険金が支払われます。支払われる割合は、全損の場合は保険金額の100%、大半損で60%、小半損で30%、一部損で5%です。
なお、地震保険は実際の修理費用ではなく、損害の程度に応じて定額で保険金が支払われる仕組みです。
地震保険に加入するメリット
・比較検討の必要がない
・災害時に速やかに現金が手に入る
また、地震保険は火災保険と異なり、どの保険会社で加入しても補償内容や保険料が同じため、比較検討の手間がかかりません。
さらに、地震による被害が発生した際には迅速な保険金の支払いが受けられるため、修繕や生活再建のための資金を速やかに確保できます。
マンションの火災保険の相場は?安くするコツも
マンションの火災保険の相場
(免責なし、オプションなし)
・地震保険:建物500万円、家財500万円
・物件所在地:東京都杉並区
・契約期間:5年(年払い)
・建物の条件:免震
地震保険あり | 地震保険なし | |
全補償あり | 26,427円 | 12,627円 |
水災なし | 23,070円 | 9,270円 |
水災、破損汚損なし | 17,927円 | 4,127円 |
火災保険の保険料が決まる仕組み
また、火災や水災、盗難など、どの補償内容を選択するかによっても保険料は大きく変わります。
保険期間は通常1年から5年まで選べ、長期の契約ほど保険料が割安になる仕組みです。支払方法も一括払いにすると分割払いより保険料が抑えられます。
さらに、保険会社ごとに用意されている、各種割引も適用される可能性があります。
保険料を抑えるにはどうする?
・必要がない補償を外す
・できるだけ長期契約にする
・支払方法を一括払いまたは年払いにする
・免責額を設定する
・インターネットで契約する
・保険会社ごとの割引制度を比較する
自身の状況やリスクを考慮しながら、バランスの取れた保険プランを選びましょう。
火災保険はマンションでも加入が必要!
近年、自然災害の増加で火災保険の保険料が上昇傾向にあります。加入にあたってはなるべく長期で契約すると良いでしょう。
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※本記事では一般的な例をもとに情報をまとめています。各社の商品やプランによっては当てはまらないケースもあります。また、情報は公開日現在のものです。各種状況や法令情報等につきましては、公的機関等で最新情報をご確認ください。

監修者 CFP(R)/DCアドバイザー/証券外務員2種 松田聡子
明治大学法学部卒。金融系ソフトウェア開発、国内生保を経て独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在はFP業務に加え、金融ライターとしても活動中。