火災保険マンションでもいる?いらない?地震保険との違いや選ぶポイントを解説

火災保険マンションでもいる?いらない?地震保険との違いや選ぶポイントを解説

住宅ローンを組んでマンションを購入する場合、火災保険の加入は必須です。しかし、補償内容についてよくわからない人も多いのではないでしょうか。分譲マンションの火災保険選びには、マンション特有のリスクを理解する必要があります。

この記事では、分譲マンションの火災保険の必要性や選び方のポイント、保険料を抑える方法などについて解説します。これからマンションを購入する人や、火災保険の見直しを検討している人は参考にしてください。
 CFP(R)/DCアドバイザー/証券外務員2種 松田聡子

監修者 CFP(R)/DCアドバイザー/証券外務員2種 松田聡子

明治大学法学部卒。金融系ソフトウェア開発、国内生保を経て独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在はFP業務に加え、金融ライターとしても活動中。

mokuji目次

  1. 火災保険がマンションで必要な理由
    1. 火災を起こしてしまったときの損害をカバーできる
    2. 近隣の部屋から出火した場合の対策になる
    3. 自然災害や日常のリスクにも備えられる
  2. マンション住まいの人が火災保険を選ぶポイント
    1. 火災保険の補償対象を確認する
    2. 上の階からの水漏れリスクに備える
    3. 万が一の仮住まい費用を比較する
    4. マンション住まいにおすすめの特約を確認する
    5. もしものときのサポート体制を確認する
    6. 水害に備える
  3. マンションの火災保険は地震保険とセットにする?
    1. 地震保険は火災保険とセットでないと加入できない
    2. 地震保険の補償内容は?
    3. 地震保険に加入するメリット
  4. マンションの火災保険の相場は?安くするコツも
    1. マンションの火災保険の相場
    2. 火災保険の保険料が決まる仕組み
    3. 保険料を抑えるにはどうする?
  5. 火災保険はマンションでも加入が必要!

火災保険がマンションで必要な理由

火災保険がマンションで必要な理由

分譲マンションの場合、火災保険への加入が法律で義務付けられているわけではありません。ただし、住宅ローンを利用する場合は、金融機関から加入を求められるのが一般的です。

マンションでなぜ火災保険が必要なのか、3つの重要なポイントについて解説していきます。

なお、分譲マンションの火災保険で補償されるのは、専有部分(室内や内装、家財など)に限られます。共用部分(建物の構造部分やエレベーターなど)については、管理組合が一括して火災保険に加入するため、個人で加入する必要はありません。

火災を起こしてしまったときの損害をカバーできる

火災保険に加入していると、自分が火元になって他の住戸へ損害を与えてしまったときの賠償責任をカバーできます。

マンションで火災が発生した場合、「失火責任法」という法律が適用されます。この法律により、故意でない火災の場合、原則として火元となった人に損害賠償責任は発生しません。

しかし、アルコールを飲んでタバコを投げ捨てたといった、重大な過失があったと裁判所が判断した場合は、賠償責任を負う可能性があります

火災保険への加入で、予期せぬ損害や賠償責任に備える必要があるのです。

近隣の部屋から出火した場合の対策になる

近隣からのもらい火による被害に備えるには、火災保険が欠かせません。マンションでは上下左右に住戸が隣接しているため、他の部屋からの延焼被害を受けるリスクがあります。

近隣住戸からの出火で被害を受けた場合でも、先述した失火責任法により、火元となった人に対して損害賠償を請求できないのが一般的です。つまり、自分がどんなに注意していても、他人の火災による被害は自己負担しなければならない可能性があるのです。

火災保険に加入していれば、このような予期せぬ延焼被害による損害も補償されます。自身の注意だけでは防ぎきれないもらい火への対策として、火災保険への加入が必要です。

自然災害や日常のリスクにも備えられる

火災保険は火災による損害だけでなく、さまざまなリスクから大切な財産を守ります。台風による窓ガラスの破損や、大雪による建物の損壊といった自然災害による被害も補償の対象となっています

特にマンションでは上階からの水漏れや給排水管のトラブルといった、建物特有の水まわりのリスクも心配です。

また、空き巣被害や誤って家財を破損させてしまった場合なども補償されるため、日常生活における予期せぬトラブルへの備えとしても活用できます。

火災以外にも数多くのリスクに対応できる火災保険は、マンション住まいの強い味方となるでしょう。

マンション住まいの人が火災保険を選ぶポイント

マンション住まいの人が火災保険を選ぶポイント

ここからは、分譲マンションの火災保険を選ぶ際にチェックすべきポイントを紹介します。

火災保険の補償対象を確認する

分譲マンションの火災保険を選ぶ際には、必要な補償対象を確認します。火災保険では建物のみ、家財のみ、または両方を組み合わせた補償を選択できます。

建物の補償対象には、主に以下のものが含まれます。
・専有部分の壁や天井、床
・システムキッチンやユニットバス
・エアコンなどの固定設備
・備え付けの収納や建具
家財の補償対象には、主に以下のものが含まれます。
・家具や電化製品
・衣類や装飾品
・寝具類
・食器や調理器具
・書籍やCD・DVD
自身の生活スタイルや資産状況に応じて、必要な補償範囲の見極めが大切です。特に家財は想像以上に高額になるため、補償の必要性をよく検討しましょう。

上の階からの水漏れリスクに備える

マンション特有の事故のひとつが上階からの水漏れです。洗濯機のホースの外れや浴室の排水管の詰まりといった、予期せぬトラブルで天井から水が漏れてくる場合があります。

水漏れは家具や電化製品に重大な被害を及ぼすだけでなく、壁や天井にカビが発生するといった、深刻な事態に発展するおそれがあります。そのため、最上階以外に住む人は、建物と家財に水漏れ補償の付帯をおすすめします。

火災保険の水漏れ補償があれば、上階からの水漏れによって被害を受けた天井や壁の修理費用、水濡れによって使えなくなった家財の買い替え費用などが補償されます。水濡れの補償内容や条件は保険会社ごとに異なるため、内容をよく確認しましょう。

万が一の仮住まい費用を比較する

火災やその他の事故でマンションが居住不能になった場合、修繕が完了するまで仮住まいを余儀なくされます。その間の家賃や引越し費用などは、思いがけない大きな出費です。

このような場合に備えて、火災保険には仮住まい費用をカバーできる補償を付帯すると安心です。仮住まい費用をカバーするには、仮住まい費用補償特約臨時費用保険金という補償があります。

仮住まい費用補償特約 は火災や災害で自宅に住めなくなった場合に、仮住まいの家賃や引越し費用などを一定期間、一定額まで補償するものです。一方、臨時費用保険金 は損害保険金とは別に、臨時の出費に充てるための保険金が支払われるものです。

これらの補償内容は保険会社によって異なり、補償される金額や期間、対象となる費用が異なります。

仮住まい費用補償特約や臨時費用保険金は保険会社によって補償期間や金額が異なるため、自身の生活スタイルに合わせて比較検討すると良いでしょう。

マンション住まいにおすすめの特約を確認する

火災保険には基本的な補償に加えて、さまざまな特約を付帯できます。マンション住まいの人にとって特に役立つ特約をいくつか紹介します。

特約名

補償内容

個人賠償責任特約

水漏れによる階下への損害や、日常生活での事故による損害賠償を補償

バルコニー等修繕費用特約

専用使用権のあるバルコニーや窓ガラスなど共用部分の修理費用を補償

類焼損害特約

自室からの出火で近隣の住戸が被害を受けた場合の修繕費用を補償

臨時費用特約

事故時の予期せぬ出費に使える追加の保険金

水濡れ原因調査費用特約

水漏れ事故の原因を特定するための調査費用を補償

これらの特約は、マンションでの生活で起こりうるさまざまなリスクに対応するために役立ちます。自身のライフスタイルやニーズに合わせて、必要な特約を検討しましょう。

もしものときのサポート体制を確認する

火災保険はいざというときにスムーズに保険金を受け取れるよう、サポート体制も重要です。火災保険の加入方法は、インターネットと保険代理店のふたつが一般的です。

インターネットでの加入は保険料が安く抑えられる利点がありますが、事故発生時の手続きは自身でする必要があります。

一方、保険代理店での加入は保険料が若干高めになるものの、事故発生時の保険金請求手続きから解決までをサポートしてもらえる安心感があります。

どちらも一長一短あるため、自身の状況に合わせて選択しましょう。

水害に備える

マンションでも水害対策が必要な場合があります。特に住戸が1階で、居住地域のハザードマップで予想浸水深が50cm以上の場合、水災補償つきの火災保険への加入をおすすめします。

一般的に水災補償が適用される基準は、地盤面から45cmを超える浸水 であるためです。

また、マンションが山やがけの近くにある場合は、土砂崩れのリスクも考慮する必要があります。土砂災害も水災補償の対象となるため、立地条件に応じた補償内容の選択が大切です。

マンションの火災保険は地震保険とセットにする?

マンションの火災保険は地震保険とセットにする?

マンションの住宅ローンを組む場合、火災保険の加入は必須とされますが、地震保険までは求められません。地震保険はどのようなものかを理解し、必要性を判断しましょう。

地震保険は火災保険とセットでないと加入できない

地震保険は火災保険とセットでの加入が必要で、単独での契約はできません。住宅ローンを組む際に火災保険への加入は金融機関から求められますが、地震保険は任意加入となっています。

ただし、地震・噴火・津波による被害は火災保険では補償されないため、これらのリスクに備えるには地震保険への加入が不可欠です。

地震保険の保険料は火災保険に追加して発生するため、保険料は増加することになります。マンションの耐震性や立地などを考慮し、地震保険への加入を検討しましょう

地震保険の補償内容は?

地震保険は、地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする火災・損壊・埋没・流失による損害を補償する保険です。

具体的には、以下のような損害が補償対象となります。
・地震による火災(延焼を含む)で建物が焼失した場合
・地震の揺れで建物が倒壊した場合
・地震による津波で建物が流された場合
・地震による土砂崩れで建物が埋没した場合
・噴火による溶岩や噴石で建物が損壊した場合
これらの損害は、火災保険では補償されません

地震保険では損害の程度 に応じて、「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の4区分で保険金が支払われます。支払われる割合は、全損の場合は保険金額の100%、大半損で60%、小半損で30%、一部損で5%です。

なお、地震保険は実際の修理費用ではなく、損害の程度に応じて定額で保険金が支払われる仕組みです。

地震保険に加入するメリット

地震保険にはマンション居住者にとって、以下のようなメリットがあります。
・保険料の割引制度がある
・比較検討の必要がない
・災害時に速やかに現金が手に入る
マンションは耐震性能が高く評価されるため、建物の構造に応じた保険料の割引制度を活用できます。免震建築物の場合は50%、耐震等級に応じて10%から50%の割引が適用されます

また、地震保険は火災保険と異なり、どの保険会社で加入しても補償内容や保険料が同じため、比較検討の手間がかかりません

さらに、地震による被害が発生した際には迅速な保険金の支払いが受けられるため、修繕や生活再建のための資金を速やかに確保できます。

マンションの火災保険の相場は?安くするコツも

マンションの火災保険の相場は?安くするコツも

最後に、火災保険の保険料の相場や安くする方法を見ていきましょう。

マンションの火災保険の相場

マンションの火災保険料は後述するさまざまな要素で決まります。ここでは、一例としてある保険会社の保険料を紹介します。条件は以下のとおりです。
・保険金額:建物1,000万円、家財1,000万円
(免責なし、オプションなし)
・地震保険:建物500万円、家財500万円 
・物件所在地:東京都杉並区 
・契約期間:5年(年払い)
・建物の条件:免震

地震保険あり

地震保険なし

全補償あり

26,427円

12,627円

水災なし

23,070円

9,270円

水災、破損汚損なし

17,927円

4,127円

マンションの場合、建物の基本的な保険料はそれほど高くなく、大きく差がつくのは地震保険の有無によってです。立地による地震のリスクなどを考慮し、付帯するかどうかを判断しましょう

火災保険の保険料が決まる仕組み

火災保険の保険料は、複数の要素を組み合わせて算出されます。まず、建物の評価額が基準となり、マンションの所在地や構造、築年数によって保険料が変動する仕組みです。

また、火災や水災、盗難など、どの補償内容を選択するかによっても保険料は大きく変わります

保険期間は通常1年から5年まで選べ、長期の契約ほど保険料が割安になる仕組みです。支払方法も一括払いにすると分割払いより保険料が抑えられます

さらに、保険会社ごとに用意されている、各種割引も適用される可能性があります。

このように、保険料はさまざまな要素の組み合わせで決まるため、自身のニーズに合わせて最適な条件を選択しましょう。

保険料を抑えるにはどうする?

火災保険の保険料を抑えるには、以下のような方法があります。
・保険料が安い会社を選ぶ
・必要がない補償を外す
・できるだけ長期契約にする
・支払方法を一括払いまたは年払いにする
・免責額を設定する
・インターネットで契約する
・保険会社ごとの割引制度を比較する
上記の方法を参考に保険料を抑えつつ、必要な補償を確保できる火災保険を選びましょう。ただし、補償内容を削りすぎると、万が一の際に十分な補償が受けられない可能性があります

自身の状況やリスクを考慮しながら、バランスの取れた保険プランを選びましょう。

火災保険はマンションでも加入が必要!

分譲マンションの火災保険は住宅ローンを利用していない場合でも、もらい火や自然災害による損害に備えて加入しておきたい保険です。マンションの立地や自身のニーズによって必要な補償内容を検討し、過不足のないプランを選びましょう。

近年、自然災害の増加で火災保険の保険料が上昇傾向にあります。加入にあたってはなるべく長期で契約すると良いでしょう。

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※本記事では一般的な例をもとに情報をまとめています。各社の商品やプランによっては当てはまらないケースもあります。また、情報は公開日現在のものです。各種状況や法令情報等につきましては、公的機関等で最新情報をご確認ください。
CFP(R)/DCアドバイザー/証券外務員2種 松田聡子

監修者 CFP(R)/DCアドバイザー/証券外務員2種 松田聡子

明治大学法学部卒。金融系ソフトウェア開発、国内生保を経て独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在はFP業務に加え、金融ライターとしても活動中。

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