火災保険に水災補償はいらない?判断方法や加入の必要性を解説

火災保険に水災補償はいらない?判断方法や加入の必要性を解説

火災保険における「水災補償」は、大雨や台風などの自然災害による被害をカバーする重要な補償のひとつです。

しかし、全ての住宅や賃貸物件において水災補償が必要というわけではありません。住まいの立地や構造、必要な補償範囲によっては、水災補償を外す選択肢も考えられます。

本記事では、水災補償の内容や対象範囲、必要性を判断するポイント、加入する際の注意点について詳しく解説します。火災保険を選ぶ際に迷っている方は、ぜひ参考にしてください。

mokuji目次

  1. 火災保険の水災補償とは?
    1. 火災保険の水災補償の範囲
    2. 火災保険の水災補償の対象
  2. 賃貸なら水災補償はいらない?
  3. 水災補償の必要性は?加入者が増えている背景
    1. 火災保険の水災補償はいらない?加入者が増えている背景
    2. 近年、急増する水災リスク
    3. 水災などによる保険金支払額は増加傾向にある
  4. 火災保険で水災補償が必要か判断するコツ
    1. 住んでいる地域のハザードマップをチェックする
    2. 下水道の位置を把握する
  5. 火災保険で水災補償がいらないケースは?
  6. 火災保険に水災補償をつける際の注意点
    1. 「水」に関する被害でも範囲外の補償がある
    2. 必ずしも保険金が支払われるわけではない
  7. 水災補償の補償額について
    1. 実損払いの場合
    2. 比例填補の場合
    3. 免責金額を設定した場合
  8. 火災の水災補償を理解して、いらないかの判断を

火災保険の水災補償とは?

火災保険の水災補償とは?

近年、台風やゲリラ豪雨による水害が増加傾向にあるなか、火災保険の水災補償の必要性が注目されています。ここでは水災補償の基礎知識から、必要性の判断方法までを解説します。

火災保険の水災補償の範囲
火災保険の水災補償の対象

順番に見ていきましょう。

火災保険の水災補償の範囲

水災補償は、台風や暴風雨などの自然現象によって発生する水害による損害を補償する制度です。一般的な火災保険では、以下のような水災による被害が補償の範囲となります。

水災の種類

具体例

洪水・融雪洪水

台風や大雨による河川の氾濫、雪解け水による河川の増水

土砂災害

台風や豪雨による土砂崩れ、土石流

高潮

台風により海水が防波堤を超えて浸水

内水氾濫

下水道等の処理能力を超えた雨水による市街地の浸水

近年は都市部においても、短時間で大量の雨が降ることで排水が間に合わず、道路や建物が浸水する「都市型水害」が増加しています。

河川や沿岸部から離れた地域でも水災のリスクがあり、さらに水災補償の範囲となる可能性があることを理解しておきましょう。

火災保険の水災補償の対象

水災補償では、建物と家財のそれぞれについて補償対象を選択できます。具体的な補償対象は以下のとおりです。

区分

補償対象

建物

住宅本体、門・塀・垣、物置・車庫、玄関ドア・窓、冷暖房設備、庭木など

家財

家具、家電製品、衣類、自転車・排気量125cc以下の原動機付自転車など

水災補償に加入する際は、建物のみ家財のみまたはその両方を選択できます。

たとえば建物のみの補償を選択した場合、水災で家具や家電が被害を受けても補償対象外となります。そのため、加入時には建物と家財、それぞれの補償の必要性を検討することが重要です。

また、自己所有の建物に固定されている設備は建物の補償対象となりますが、賃貸物件の場合は家財として扱われる点にも注意が必要です。水災による被害を想定し、適切な補償範囲を選択することが大切です。

賃貸なら水災補償はいらない?

賃貸なら水災補償はいらない?

賃貸物件の場合、建物自体は家主が加入する火災保険でカバーされるため、一般的に借主は建物に対する水災補償は不要です。しかし、水災による被害は建物だけでなく、居住者の家財にも及ぶ可能性があります。

賃貸で水災補償を検討する際は、住まいの階数や立地条件が重要な判断材料となります。マンションの上層階にお住まいの場合、洪水や内水氾濫による被害リスクは低いため、水災補償を外すことも選択可能でしょう。

一方で、1階や2階の低層階に居住している場合は、水災補償の必要性は高くなります。豪雨による床上浸水が発生した場合、家財が水害によって損害を受ける可能性があり、買い替えや修理などで予想以上の費用負担が生じる可能性があるためです。

特に、河川が近くにある地域や過去に浸水被害が発生した場所では、その必要性はさらに高まるといえるでしょう。

賃貸物件であっても、入居階数や地域の浸水リスクを確認したうえで、家財に対する水災補償の要否を判断することが賢明です。

特に近年は都市部でもゲリラ豪雨による浸水被害が発生しているため、家財の水災補償は検討に値する選択肢といえます。

水災補償の必要性は?加入者が増えている背景

水災補償の必要性は?加入者が増えている背景

気候変動の影響により、日本各地で水災による被害が増加しています。これにともない水災補償への関心も高まっており、補償の必要性を検討する方が増えています。

ここでは水災補償の加入状況や、その背景にある水災リスクの実態について解説します。

火災保険の水災補償はいらない?加入者が増えている背景
近年、急増する水災リスク
水彩などによる保険金支払額は増加傾向にある

順番に見ていきましょう。

火災保険の水災補償はいらない?加入者が増えている背景

火災保険における水災補償の全国平均付帯率は約65%です。これは火災保険に加入している世帯のうち、およそ3分の2が水災補償を付帯していることを示しています。

特に台風の影響を受けやすい和歌山県や長崎県、徳島県では水災補償の付帯率が70%を超えており、地域特性に応じて水災補償の必要性が認識されている結果といえるでしょう。

一方で、水災補償に加入していない世帯は約35%存在しているということになります。水災補償はすべての世帯にとって必要というわけではなく、水害リスクが低い地域やマンションの高層階居住者など、立地条件によってその必要性は異なってきます。

近年、急増する水災リスク

地球温暖化の影響により、日本の気候は大きく変化しています。日本の年平均気温は上昇傾向にあり、直近30年間では、ゲリラ豪雨等、1時間あたりの降水量が50mmを超える降雨の発生頻度が1.3倍に増加しています。

また、東京における台風の接近数は、1980年から2019年までの40年間のうち、前半の20年と比べて後半の20年は約1.5倍に増加しました。こうした気象変動により、これまで水害が少なかった地域でも新たな被害が発生するリスクが高まっています

水災などによる保険金支払額は増加傾向にある

水災の増加に伴い、保険金の支払額も増加傾向にあります。特に2018年から2019年にかけては、大型台風の襲来により業界全体でかなりの規模の保険金支払いが2年連続で発生しました。

具体的な例として、2018年の台風21号では約9,363億円2019年の台風19号では約4,855億円の保険金が支払われています。このような大規模な保険金支払いの増加は、水災リスクが現実のものとなっていることを示しています。

また、このような状況を受けて、2024年10月からは水災リスクに応じた保険料率の見直しが実施され、地域ごとにきめ細かな料率設定が導入されることになりました。

火災保険で水災補償が必要か判断するコツ

火災保険で水災補償が必要か判断するコツ

水災補償の必要性は、居住地域や建物の立地条件によって大きく異なります。一概に「必要」「不要」と判断することはできませんが、自宅周辺の水災リスクを正しく把握することで、適切な判断が可能になります。

ここでは、水災補償が必要か判断する2つのコツを紹介します。

・住んでいる地域のハザードマップをチェックする
・下水道の位置を把握する

詳しく見ていきましょう。

住んでいる地域のハザードマップをチェックする

水災補償の必要性を判断するうえで最も重要なのが、ハザードマップの確認です。国土交通省が運営する「ハザードマップポータルサイト」では、「重ねるハザードマップ」と「わがまちハザードマップ」の2種類を閲覧できます。

重ねるハザードマップ」は、洪水や土砂災害、高潮などのリスク情報を地図や写真に重ねて表示できる機能を備えており、広域的な災害リスクを確認したい場合に適しています。

一方「わがまちハザードマップ」では、市区町村が作成した詳細な防災情報が確認可能です。

ハザードマップでは、住居の浸水想定区域や避難場所、避難経路なども確認できるため、水災補償の検討だけでなく、日頃の防災対策にも役立ちます。地域の水災リスクを把握することで、より適切な補償内容を選択することが可能になるでしょう。

下水道の位置を把握する

都市部では、豪雨時に下水道の処理能力を超えた雨水が溢れ出す内水氾濫のリスクがあります。そのため、市区町村などが公開している「内水浸水想定区域図」で、下水道の位置や浸水予想区域を確認することが重要です。

河川から離れた地域であっても、マンホールや側溝から雨水が溢れて浸水被害が発生する可能性があります。特に、豪雨時に雨水が集中しやすい地形や下水道の整備状況によっては、予期せぬ浸水被害に見舞われる状況も想定されます。

下水道の位置と自宅との関係を確認し、内水氾濫のリスクを評価することで、水災補償の要否をより的確に判断できるようになるでしょう。

火災保険で水災補償がいらないケースは?

火災保険で水災補償がいらないケースは?

マンションの上層階にお住まいの方は、洪水や内水氾濫による直接的な浸水被害を受けるリスクが低いため、水災補償が不要となる可能性があります。

同様に、高台に立地する住宅の場合も、洪水による浸水被害のリスクは比較的低くなります。河川から十分な距離があり、かつ周辺に土砂災害の危険性が低い地域であれば、水災補償を外すことも選択肢のひとつです。

しかし、こうした立地条件であっても水災リスクが完全にゼロになるわけではありません。マンションの高層階でもベランダの排水能力を超える豪雨の場合、室内に雨水が流れ込む可能性があります。

実際に、高台の住宅であってもこれまで経験したことのないような豪雨により、予期せぬ形で水害が発生するケースも報告されています。

さらに、一見安全に見える造成地であっても、土石流の通り道となって被害が発生する可能性もあるかもしれません。周辺に山や河川がなくても、地形によっては水災のリスクが潜んでいることを考慮する必要があるといえます。

そのため、水災補償が不要と判断する場合でもハザードマップで水災リスクを十分に確認し、慎重に判断することをおすすめします

特に、近年の気象状況の変化を踏まえると、完全に水災リスクがないと断言するのは難しい状況といえるでしょう。

火災保険に水災補償をつける際の注意点

火災保険に水災補償をつける際の注意点

水災補償は重要な備えとなりますが、すべての水による被害が補償されるわけではありません。また、水災と認定される基準も設けられています。ここでは、水災補償に加入する際に知っておくべき2つの注意点について説明します。

「水」に関する被害でも範囲外の補償がある
必ずしも保険金が支払われるわけではない

順番に見ていきましょう。

「水」に関する被害でも範囲外の補償がある

水による被害であっても、火災保険の水災補償では対象とならないケースがあります。たとえば、地震による津波の被害は水災補償ではなく地震保険の対象となります。

同様に、地震が原因で発生した土砂崩れによる損害も地震保険でカバーされます。

また、マンションの上階からの水漏れや給排水設備の事故による水濡れ被害は、火災保険の水濡れ補償の対象となり、水災補償の対象には含まれません。

風や雹(ひょう)、雪による被害はそれぞれ風災・雹(ひょう)災・雪災として扱われ、これらが原因で雨が吹き込んで起きた被害も水災補償の対象外です。

必ずしも保険金が支払われるわけではない

水災補償には、保険金が支払われる条件として以下の3つの認定基準が設けられています。損害の程度がこれらの基準のいずれかに該当する必要があります。
・建物や家財の再調達価額の30%以上の損害が生じた場合
・床上浸水が発生した場合
・地盤面から45cmを超える浸水があった場合
たとえば、土砂災害や落石の被害の場合、再調達価額の30%以上の損害でなければ補償されません。また、住居の土間など床面以外の浸水や地盤面から45cm未満の床下浸水の場合は、たとえ建物の基礎に損害が生じても補償対象外となります。

さらに、建物のみを対象とした契約の場合、家財の被害は補償されないなど、契約内容によって補償される範囲が変わってくる点にも注意が必要です。

水災補償の補償額について

水災補償の補償額について

水災補償で支払われる保険金額は、契約内容によって大きく異なります。以下では、3つの支払い方式の特徴について解説します。

実損払いの場合
比例補填の場合
免責金額を設定した場合

それぞれの特徴を理解し、自身に適した補償内容を選択しましょう。

実損払いの場合

実損払い(実損填補)では、水災による損害額が補償の基準を満たしていれば、保険金額を上限として実際の損害額が支払われます。たとえば、建物や家財に被害が発生し、修理や買い替えが必要になった場合、その費用が保険金として支払われます。

ただし、あらかじめ設定された保険金額を上回る損害が発生した場合は、超過分が自己負担となります。そのため契約時には、想定される最大の損害額を考慮して、適切な保険金額を設定することが大切です。

比例填補の場合

比例填補方式では、契約時に定めた割合で保険金が支払われるため、損害額の全額が補償されることはありません。この方式は古い火災保険契約に多く見られ、支払われる保険金額が実際の損害額より少なくなる可能性があります。

保険契約を見直す際は、比例填補方式になっていないか確認しましょう。近年は実損払いが主流となっているため、古い契約のままでは十分な補償が受けられない可能性があります

免責金額を設定した場合

免責金額とは、保険金支払いの際に契約者が負担する自己負担額のことです。免責金額には「免責方式」と「フランチャイズ方式」の2種類があります。

免責方式では、損害額から免責金額を差し引いた金額が保険金として支払われます。たとえば、免責金額を10万円に設定し、50万円の損害が発生した場合、支払われる保険金は40万円です。

一方で、フランチャイズ方式では、損害額が設定した免責金額を超えた場合に、損害額全額が保険金として支払われます。

免責金額を高く設定すると保険料は安くなりますが、その分、損害にあった際の自己負担が増えることになります。現在は免責方式が主流となっており、0円、3万円、5万円など、複数の免責金額から選択できるのが一般的です。

火災の水災補償を理解して、いらないかの判断を

火災保険の水災補償は、近年の気候変動による水害リスクの高まりを考えると、重要な備えとなります。ただし、マンションの高層階居住者や高台の住宅など、立地条件によっては必要性が低いケースもあります。

補償の要否を判断する際は、ハザードマップで水害リスクを確認し、建物の立地状況や構造を考慮することが大切です。

また、支払基準や補償範囲にも注意が必要です。水災補償の付帯を検討する際は、自身の状況に応じて慎重に判断し、必要に応じて保険の専門家に相談することをおすすめします。

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