物損事故“高額賠償”4つの判例 事故によっては「億」単位も!

  • 【イメージ画像】立ち往生するトラック

 事故当事者にケガが発生する人身事故はもちろん、物損事故においても、賠償金額がかなり高額となるケースがあります。壊してしまったものや事故の相手によっては、なんと億単位になることも……。具体的にどのような事故が高額賠償となるのか、過去実際に起きた高額賠償判決例を紹介します。
【発生日】 2001年3月28日深夜

【事故内容】
 宮城県内の東北自動車道上り線を走行していた大型トラックが、降りる予定のインターチェンジを通過してしまい、路肩に停車。バックで戻ろうとしたものの、後続車が来ることから諦め、再び前進したところへ、避けそこねた別のトラックが追突した。

【判決】
 大型トラックの運転者には、「駐停車が禁止されている高速道路の本線車道にまたがって停車していた」、「停車そのものにやむを得ない理由がない」、「高速道路で車両を後退させた」などの重大な過失がいくつかあった。

 ただし、このトラックは路肩に停車していたため、後続のトラックは追い越し車線から追い越すことも可能だった。実際、複数の車両が大型トラックを避けて通過できていたことから、追突したトラックには「前方不注視及び回避措置不適切の過失」があると認められ、過失割合は、停車した大型トラック側が60%・追突したトラック側が40%と認定されている。

 大型トラックの損害賠償金額は、1531万8193円。内訳には、車両修理費用、相手車のトラックが使えないことによる休車損害、相手車の積荷損害、道路損傷費用等が含まれている。
※2002年12月25日東京地裁判決
【発生日】 1992年5月9日夜

【事故内容】
 神奈川県横浜市瀬谷区内の県道を走行していた乗用車が、左カーブを曲がりきれず、センターラインを超えて美容室の入っていた建物に突っ込み、美容室部分が全壊した。

【判決】
 事故時は夜間で視界が悪く、現場付近は見通しの悪い左カーブの下り坂。また、雨が降った後で路面が滑りやすくなっていた。そのような状況であれば、ドライバーはスピードや左右の状況を注視して運転すべきという“注意義務”を負うが、本件では運転者がその義務を怠った過失があったと認められた。

 損害賠償金額は、1651万7492円。内訳は、建物修理代約1340万円、美容室の什器備品損害約240万円、営業損害(休業補償)3ヶ月分約42万円、精神的苦痛に対する慰謝料30万円となっている。
※1994年5月24日横浜地裁判決
【発生日】 1991年12月25日未明

【事故内容】
 静岡県内の東名高速道路上り線を走行していた大型トラックから、左後輪(車体左側面の最も後ろの車輪)の内側と外側のタイヤがハブごと脱落。反対車線に飛び出し、走行していた別の大型トラックのフロントパネルに衝突したほか、タイヤを避けようと急停止した後続車両にその後続車両が追突。タイヤに乗り上げて破損するなど、複数の車両が巻き込まれた。

【判決】
 裁判の結果、事故の原因となったのは、タイヤが脱落した大型トラックを担当した整備士が規定通りの方法で整備を行っていなかったこととなった。この事例は、保険金を支払った保険会社が、その整備会社を提訴したもので、損害賠償金額は3002万8797円となっている。
※2011年9月27日横浜地裁判決
【発生日】 1992年9月14日

【事故内容】
 千葉県のJR成田線大菅踏切で、ダンプカーの側面に列車が衝突。原因はダンプカーの過積載運行で、最大積載量の4倍という大量の山砂を積載していたため、現場付近の下り坂でブレーキが効かなくなり、停止できず踏切に突っ込んだ。列車の運転士1名が亡くなり、乗客67名が重軽傷を負ってしまった。

【判決】
 事故を受け、JR東日本は、ダンプカーの運転手などを相手に物損に関する民事訴訟を起こした。その結果、運転手や山砂の運搬を依頼した荷主、山砂を積み込んだ砕石会社などに損害賠償金1億1347万6892円の支払いが命じられた。内訳は、列車車両廃車費用約3400万円、列車車両修繕費用約3770万円、線路・通信設備修繕費用約1710万円、事故に関する人件費約1660万円、乗客の代行輸送費用270万円等となっている。
※1998年10月26日千葉地裁判決
 

 事例1・2のように、事故によって営業車や店舗に損害を与えてしまった場合は、修理費の支払いといった賠償のほか、休業損害の賠償義務も発生します。ところが、強制保険の自賠責保険は、物損事故時には適用されません。いざというときのために、手厚い任意保険への加入を検討しておいてはいかがでしょうか。

法律監修/
新橋IT法律事務所 弁護士・谷川徹三氏

制作協力/

株式会社マイト
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