なぜ駐車場で事故は起こる?自動車事故の事例を解説

なぜ駐車場で事故は起こる? 自動車事故の事例を解説

駐車場は自動車事故が発生しやすい場所の一つです。また、高額な賠償金額が請求される物損事故、さらには痛ましい死傷事故に繋がりやすい場所でもあります。このような事故はなぜ起こってしまうのでしょうか。今回は、駐車場事故での事例8件について事故の内容や裁判での判決、事故が起こった要因を解説します。

駐車場での事故8事例 高額の賠償金請求も

駐車場で発生した自動車事故の多くは、周囲への安全確認を怠った不注意や、ちょっとした気の緩みからの運転操作ミスが原因であるケースが多くあります。ここでは、実際に駐車場で発生した事故事例を8件紹介します。

事例1. 残り1枠の駐車スペースに同時進入、焦りから発生した衝突事故

【発生日】 2012年2月29日午前

【事故内容】
熊本県宇城市の銀行駐車場で、乗用車2台が同じ駐車枠に同時に進入したことで衝突事故が発生した。

【判決】
前進で進入したAが原告、バックで進入したBが被告となったが、実際はBが先に入ってきていたため、裁判ではAに「漫然と進行した過失がある」と指摘。一方、Bも「後方確認を十分にしなかった」として、過失割合はAが6割、Bが4割と認定された。

事故当時、身体障がい者用の駐車枠以外で空いていたのは、事故のあったこの駐車枠のみ。「順番待ちはしたくない」という想いから起きたトラブルといえるでしょう。譲り合いの精神があれば、避けられた事故で、その後の裁判などに多くの時間を費やすこともなかったはずです。
※2013年5月14日熊本簡裁判決

事例2. 車の転落で園児2名が死傷 アクセルとブレーキの踏み間違いが原因

【発生日】 2002年9月18日夕方

【事故内容】
愛知県名古屋市で、孫が通う保育園にワンボックス車で向かった男性(当時75歳)が、屋上に設けられた駐車場に車を進入させた際、運転を誤り柵に衝突。一度バックしたものの、慌ててアクセルとブレーキを間違えるなどして再び前進し、柵を突き破って約3.6メートル下の園庭に転落した。迎えを待つなどしていた園児が下敷きとなり、3歳の女の子が死亡、さらにもう1人が重傷を負った。

【判決】
ドライバーは、業務上過失致死傷罪で罰金50万円の略式命令を受けた。また、女の子の両親が損害賠償を求めた裁判では、ドライバーのほかに保育園を運営する社会福祉法人と代表理事、園長の個人的責任も認められ、4者に対し、計約3600万円の賠償が命じられた。

事故の直接の原因は「男性が運転を誤ったこと」ですが、そのほかに「駐車場の柵を強化するなどの事故防止措置が不十分だった」といった要因もありました。こうした痛ましい事故が起きないよう、未然防止に努めることが大切といえるでしょう。
※2006年2月15日名古屋高裁判決

事例3. 駐車場設備の故障でも、運転者に「後方確認」の過失認定

【発生日】 2002年9月18日夕方

【事故内容】
東京都世田谷区のコインパーキングに乗用車がバックで入庫しようとした際、故障で上がったままのフラップ板(ロック板)に接触。駐車場の管理会社を相手取り、約16万円の損害賠償を求めた。

【判決】
その結果、管理者には「すみやかに補修・事故防止措置を講じる責任があった」として、6万円の支払いが命じられた。また、「後方をよく確認せずにバックした運転者にも落ち度はあった」として、ドライバーにも3割の過失が認定された。

暗い場所や雨が降っているときなど、周りが見えづらいことはたびたびあり、特に駐車中においては困難なものです。そんな時こそ特に注意を払い、安全に運転しましょう。
※2011年8月10日東京地裁判決

事例4. 立体駐車場で物損、約1600万円を請求する裁判に

【発生日】 2010年6月20日夜、12月4日午後

【事故内容】
2010年6月20日夜に、東京都江戸川区の機械式立体駐車場で、マイカーを保管していたドライバーの妹が、ドアミラーを折りたたまずに入庫し、機器を損傷させた。さらに、12月4日午後にも、今度はドライバーの知人が同様のトラブルを起こしたため、管理会社は「故障によって他の契約者が車を出せなかった際、交通費を立て替えた」「契約者が全員解約したため、建物を解体するしかなくなった」などとして、ドライバーを相手どり約1600万円を請求する裁判を起こした。

【判決】
裁判では、「駐車場の性質上、操作盤の操作方法や安全に関する様々な注意事項があることは明らか」と判断。運転者が契約者ではなくても「それらを十分確認してから注意事項に従った利用をすべき注意義務がある」として、妹と知人には事故を起こした過失、ドライバーには事故を生じさせた責任があるとした。

その一方で、「管理会社側の言い分は信用できない点が多い」としてほとんどの請求を認めず、実際の修理代6万3000円の支払いを命ずるにとどまった。

機械式の立体駐車場は、利用方法を誤ると、同乗者や子どもが転落したり、機器に巻き込まれたり、重大な事故につながることもあります。今回の事例では修理代のみで済んでいますが、請求内容のような高額賠償を命じられる可能性もなくはありません。利用の際は安全に十分配慮し、万が一に備えてあらかじめ補償をつけておくことが大切だといえるでしょう。
※2014年7月22日東京地裁判決

事例5. 駐車枠から突然バックし、走行中の車に衝突

【発生日】 2011年7月9日夕方

【事故内容】
愛知県海部郡にあるスーパーで、駐車枠からバックした軽乗用車が、通路を走行していたワンボックス車に衝突。両者の車両が損傷した。

【判決】
ワンボックス車側は、軽乗用車側に過失があるとして、約17万円の支払いを求めて訴えを起こした。ところが軽乗用車側は、「停止していた自分の車にワンボックス車が衝突した」と主張し、約9万円の支払いを求める訴えを起こした。
判決では、「ワンボックス車が軽乗用車の後方を通過していたところ、軽乗用車が突然バックしてきたために発生した」と認定。注意義務を怠り、漫然と車をバックさせたとして、軽乗用車側の100%過失を認めた。軽乗用車側は控訴したが棄却され、約9万円の支払いを命じられた。

最近では、バックモニターを装備した車も増えていますが、車をバックさせる際は【ミラー】と【目視】による安全確認が基本です。十分に周囲を確認し、事故は未然に防ぐようにしましょう。

※2014年8月28日名古屋高裁判決

事例6. 混雑した駐車場でバック 被害側が頭痛やめまいを発症

【発生日】 2010年7月19日午前

【事故内容】
京都府京都市内にあるスーパーの駐車場で、混雑によりワンボックス車の後ろに軽乗用車が停止していた。すると、空きスペースを見つけたワンボックス車が突然バック。右後部が軽乗用車の左前部に衝突し、軽乗用車のドライバーは頭痛や両手のしびれ、めまい等を発症した。

【判決】
軽乗用車側は、約460万円の損害賠償を求めて訴えを起こした。判決では、「ワンボックス車が後方をよく注意せず、後続車に合図なく車をバックさせたことが原因であり、軽乗用車に違反は認められない」と、ワンボックス車側に100%過失があるとした。
ただし、軽乗用車のドライバーは「合理的な説明ができない治療方法をとった」とされ、治療費については認められず、損害賠償額は約54万円となった。

これは、空いた駐車スペースに気を取られてしまい、後続車に意識が向かなかった事例です。前方はもちろん、後方にも気を配ることの大切さがわかります。

※2014年1月14日京都地裁判決

事例7. 高齢者の乗る自転車に衝突 約1600万円の賠償金支払い命令

【発生日】 2007年12月30日午前

【事故内容】 
大阪府泉佐野市のスーパーの駐車場で、ワンボックス車を運転していたAが微速で駐車枠へ車をバックさせたところ、自転車に接触。乗車していたB(当時88歳)は転倒し、後頭部を打撲して脳挫傷及びくも膜下出血等で救急搬送されて入院。その後意識障害に陥り、回復しないまま約8ヶ月後に肺炎で死亡した。

【判決】
裁判では、Bの自転車に痕跡が見当たらなかったことなどから、衝突は軽微だったと判断。Bが頭部を強打したのは、自転車走行や体の平衡感覚が不安定だったことが原因としたが、Bが肺炎を起こして死亡したのは事故による負傷での寝たきり状態に原因があるとして、Aに約1600万円の支払いを命じた。

Aは車をバックさせる際、ルームミラーとサイドミラーは見ていたものの、目視での確認をしていませんでした。駐車場では、道路以上に危険を予測した運転が求められるといえるでしょう。

※2011年11月25日大阪地裁判決

事例8. 駐車場警備員に気づかず急加速、刑事裁判で有罪判決

【発生日】 2007年6月18日夕方

【事故内容】
愛知県名古屋市のスーパーの駐車場で、ステーションワゴンを運転していたドライバーが急いで車道に出ようとしていた。駐車場の出口付近で交通誘導をしていた警備員に気づかず、急加速して警備員を跳ね、車体の下に巻き込み死亡させた。

【判決】
裁判では、「警備員が停止の合図をしていたのに、ドライバーは衝突の直前まで気づかず車を急加速させて死亡させた」ことなどから、ドライバーの過失を100%と認めた。また、ドライバーが遺族に不誠実な対応をしたことなども考慮し、近親者固有の慰謝料を含む約4390万円の賠償を命じた。なお、刑事裁判では、禁錮2年6ヶ月(執行猶予4年)の有罪判決を言い渡されている。

ドライバーは、駐車場から右折して出場しようとしましたが、左方から車が近づいてきていました。そのことに気をとられて警備員に気づかず、取り返しのつかない事態を招いてしまった事例です。

※2012年12月21日名古屋地裁判決

駐車場で事故が発生しやすい理由

駐車場では、基本的に徐行運転のためスピードは出ていないはずです。にもかかわらず事故が発生しやすい理由の一つには、駐車場では狭いスペースで車をバックさせたり、切り返したりと、道路上とは異なる運転をする必要があることが挙げられます。

その上、一瞬の気の緩みや焦りから安全確認が不十分になったり、些細な運転操作のミスが発生すると、周囲には駐車中の車両や駐車場設備などのモノがあり、さらにすぐ近くを人が歩いているという状況のため、物損事故や人身事故に繋がりやすいのです。
事故のリスクを抑えるためには、とにかく“周囲の確認”を怠らないようにしましょう。

事故リスクをゼロにするのは難しい…自動車保険は事故対応の評判も確認しよう

とはいえ相手側の不注意、あるいはほんの一瞬の気の緩みは起こり得るため事故のリスクをゼロにすることは難しいでしょう。

自動車事故は訴訟に発展するケースもあり、高額な賠償金額の支払いを負う可能性があります。ですので、頻繁に運転しない人も自動車保険に入っておくべきでしょう。自動車保険は、自賠責保険の上限を超える対人補償をカバーし、対物損害も補償してくれます。また、示談については、現場で交渉すると後々トラブルになることもあるため、保険会社に任せるのが得策です。

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