注文住宅とは?メリットとデメリットや建売との違いを解説
本記事では、注文住宅の基本的な特徴から建売住宅との決定的な違い、そして5つの大きなメリットと3つのデメリットまで徹底解説します。
土地選びの自由度や間取り設計の柔軟性といった魅力を理解し、あなたに最適な住まい選びの判断材料としてください。
合わせて後悔のない家づくりのためのポイントもご紹介します。

監修者トータルマネーコンサルタント/新井 智美
マネーコンサルタントとしての個人向け相談、NISA・iDeCoをはじめとした運用にまつわるセミナー講師のほか、金融メディアへの執筆および監修に携わっている。
目次
注文住宅とは
住宅購入の選択肢として、既に完成している建売住宅や中古住宅、マンションとは異なり、自分好みの住まいを一から作り上げられる点が大きな特徴です。
注文住宅を建てる場合は、土地の選定から始まり、ハウスメーカーや工務店の選択、間取りの検討、外観や内装デザインの決定、そして実際の建築工事と進んでいきます。
一般的に準備から完成までは約1年前後の期間を要しますが、その分だけ理想の住まいに近づける可能性が高まります。
日本の住宅市場において注文住宅は、「一生に一度の買い物」として多くの方が憧れる住宅形態です。
特に自分らしさを住まいに反映させたい方や、家族構成やライフスタイルに合わせた機能性を重視する方に選ばれています。
建売住宅のように即入居できる手軽さはありませんが、住む人の想いが詰まった唯一無二の住まいを実現できる選択肢として人気があります。
それでは、注文住宅についてさらに詳しく見ていきましょう。
まずは基本的な定義と特徴から、そして注文住宅の種類や建売住宅との違いについて解説します。
注文住宅の定義と基本的な特徴
最大の特徴は、住む人の要望に合わせて自由度の高いプランニングができる点です。
家族構成やライフスタイルに合わせた間取りの設計や、好みの外観デザイン、こだわりの建材選びなど、細部にわたって希望を反映できます。
注文住宅を建てる過程では、基礎工事から完成まで建築現場を確認できるため、安心感も得られます。
フルオーダー住宅とセミオーダー住宅の違い
フルオーダー住宅は、家の外観や内装、間取り、設備や構造など全ての仕様を自由に組み立てていくスタイルです。
一方、セミオーダー住宅は、建設会社があらかじめ用意した複数パターンの仕様・スペックの中から、お好みの間取りや必要な設備、気に入ったデザインを選んでいく形式になります。
フルオーダー住宅は、細部までこだわって決めたい方や特別な要望をお持ちの方、特殊な形状の土地に家を建てたい方に適しています。
一方、セミオーダー住宅は家のデザインや間取りに対するこだわりが少ない方や、安定した品質の家を短い工期で建てたい方、建設予定の土地の形状が一般的な方に向いています。
住宅タイプ | メリット | デメリット |
フルオーダー住宅 | ・間取りや外観を含めた全てを自由に決められる | ・打ち合わせなどに多くの時間がかかる |
セミオーダー住宅 | ・決めることが少なく打ち合わせ期間が短い | ・規格外の要望には対応困難 |
建売住宅(分譲住宅)との根本的な違い
完成した状態で購入するケースや、建設中・建設前の段階で購入するケースもあります。
注文住宅との最大の違いは、注文住宅が「自分の好みに合わせて作る住宅」であるのに対し、建売住宅は「すでに仕様が決まった住宅を購入する」点です。
そのため自由度と時間の使い方、コストの面が大きく異なります。
項目 | 注文住宅 | 建売住宅(分譲住宅) |
基本的な定義 | 土地から間取り、建築材や設備まで希望に沿って計画・建築する一戸建て | 土地と建物がセットで販売されている住宅 |
土地選び | 自分で好きな土地を選べる | 物件に付属する土地しか選べない |
ハウスメーカー | 自由に選択可能 | 選べない(物件と一体) |
間取り | 自由に設計できる | 既に決まっている |
デザイン・建築仕様 | 外観・内装とも希望通りに決められる | 基本的に変更不可 |
建築現場の確認 | 基礎工事から全工程の確認が可能 | 完成済みの場合は不可 |
入居までの期間 | 1年前後 | 約1〜3か月程度 |
完成イメージ | シミュレーションが必要 | 完成物件なら実際に見ることができる |
コスト | 同等規模なら割高傾向 | 同等規模なら割安傾向 |
生活スタイル | 家を生活に合わせられる | 生活を家に合わせる必要がある |
注文住宅ならではの5つの大きなメリット
土地選びからハウスメーカーの選択、間取りのデザイン、外観や内装の細部に至るまで、あなたの希望を反映させることが可能です。
この自由度は、家族一人ひとりのライフスタイルに最適な住環境を生み出し、長期的な満足度の高さにつながります。
また、建築過程を実際に確認できる透明性も大きな安心感をもたらします。
これらのメリットは、仕様が既に決まった建売住宅では得られない注文住宅ならではの価値と言えるでしょう。
それでは、注文住宅を選ぶことで得られる5つの主要なメリットについて、詳しく見ていきましょう。
理想の立地から選べる土地選びの自由度
通勤や通学を考慮して幹線道路近くや主要駅周辺の土地を選んだり、落ち着いた住環境を求めて閑静な住宅街や自然豊かな郊外を選んだりすることが可能です。
子育て世代なら、支援サービスが充実した自治体の土地を選ぶという選択肢もあるでしょう。
「実際に暮らす状況」をイメージしながら土地を選ぶことで、住みやすさは格段に向上します。
一方、建売住宅は土地と建物がセットになっているため、主要駅からの距離や地域の治安の良さなど、限られた条件の中から物件を探す必要があります。
自分に合ったハウスメーカー・工務店を選択できる利点
全国展開している大手建設会社から、建築家が営む設計事務所、地域に根差した工務店まで、さまざまな選択肢があります。
各ハウスメーカーで耐震性や断熱性能、気密性の基準が異なるため、基本性能を比較しながら相見積もりを取り、自分たちの要望を叶えてくれる会社を選ぶことが大切です。
また、家づくりのパートナーとなるハウスメーカー担当者との相性も重要なチェックポイントになります。
建売住宅の場合は物件の立地を優先して選ぶケースが多く、ハウスメーカーを選ぶ自由度は限られます。
家族のライフスタイルに最適化された間取り設計の実現
料理好きな方は広いキッチンを、読書が趣味なら書斎や書庫を、音楽や映画を楽しみたい方は防音性に優れた地下室を取り入れるなど、家族それぞれの趣味に合わせた設計が可能です。
また、日々の家事をスムーズに行える動線設計も実現できるのが魅力です。
対して建売住宅は、あらかじめ間取りが決まっているため、「家に生活スタイルを合わせる」ことになります。
家具や家電を工夫して配置することで住み心地を向上させる必要があるでしょう。
外観・内装デザインや建材まで希望通りにできる魅力
「ヨーロッパ風のレンガづくりの家」「絵本に出てくるようなメルヘンな家」「カフェのようなおしゃれな内装」「ホテルのような雰囲気」など、夢に描いていた住まいを現実にすることができます。
一方、建売住宅は外観や内装、建築材などがあらかじめ決まっているため、変更が難しいケースが多いです。
ただし、建築前・建築中の物件では、外壁の色や壁紙など構造に関わらない部分については、要望に応じてくれるハウスメーカーもあるので確認してみると良いでしょう。
建築過程を確認できる安心感と品質保証
実際に自分の目で確認し、疑問点を現場スタッフに質問できるため、納得のいく住まいになりやすい点が大きなメリットです。
特に重要なのは「基礎工事」「断熱加工」「気密測定」の3つのポイントです。
基礎工事では鉄筋の間隔やコンクリートのひび割れをチェックし、断熱加工では断熱材の隙間がないか確認し、気密測定では住まいの隙間を表す「C値」を確認することが大切です。
建売住宅では完成済みの場合、これらの確認が難しいことが多いのが現状です。
知っておくべき注文住宅の3つのデメリット
これらのデメリットを事前に認識しておくことで、注文住宅を建てる心構えができ、対策を講じられます。
特に建売住宅と比較した場合では、「時間」「完成イメージ」「コスト」の3つの面で注意が必要です。
自由度の高さと引き換えに、長い準備期間や予算管理の難しさが伴うことを理解しておきましょう。
しかし、これらのデメリットは適切な計画や信頼できるハウスメーカー選びによって最小限に抑えることができます。
以下で注文住宅を検討する際に知っておくべき3つの主要なデメリットについて詳しく見ていきましょう。
計画から入居までの期間と時間的コスト
建売住宅と比較すると自由度が高い分、家づくりに費やす期間も長くなり、一般的には約11ヵ月〜1年2ヵ月ほどかかります。
この期間の内訳としては、土地探しからハウスメーカー選びに約3〜4ヵ月、間取りや外観・内装のデザイン決めなどに約8〜10ヵ月が必要となるケースが多いようです。
より細かい部分までこだわれば、さらに時間を要することもあるでしょう。
一方、建売住宅は完成済み物件であれば住宅ローンの手続きなどを含めても最短1ヵ月半ほどで入居できるため、急いで住まいを確保したい場合には大きな差が生じます。
完成するまで仕上がりがわからないリスク
せっかく希望を取り入れた住まいでも「仕上がりが想像と違う」「住んでみたら動線が悪く感じる」という失敗を避けるためには、ハウスメーカー選びが重要なポイントになります。
ハウスメーカーを選ぶ際には、施工事例をもとにイメージ画像を用意してくれたり、動線のシミュレーションを行ってくれる会社を選ぶと安心です。
また、ショールームでの体験や宿泊体験などで住み心地を事前に実感できるハウスメーカーもあります。
最終的には完成時の立会いチェックが可能な会社を選ぶことで、納得のいく住まいづくりをサポートしてくれるでしょう。
予算管理の難しさとコスト面での注意
これは、オーダーメイドの家づくりでは個別の打ち合わせが必要で工期も長くなるため人件費がかさむことや、建材や設備を個別に発注しなければならないことが理由です。
一方、建売住宅は同じような家を短期間・複数同時に建てるため効率が良く、建材や設備もまとめて仕入れられるため、コストを抑えられるのです。
ただし、注文住宅でも予算のコントロールは可能です。
たとえば、水回りを近い配置にまとめて配水管工事を簡素化したり、高価な床材・壁材は部分使いにするなど、メリハリをつけた素材選びをすることで、費用を抑えられます。
失敗しない注文住宅実現のための進め方
住まいは一生に一度の大きな買い物であり、後悔しないためにも十分な準備と情報収集が重要です。
まずは自分たちの希望や優先順位を明確にし、予算の範囲内で実現可能な計画を立てましょう。
無理のない資金計画を土台に、信頼できるハウスメーカーや工務店を選び、実際の生活をイメージした間取り設計を進めることが成功への近道です。
また、将来の家族構成の変化や住み方の変化も考慮し、長期的な視点で判断することも大切です。
注文住宅を失敗せずに実現するための具体的な進め方について、詳しく見ていきましょう。
理想のパートナー選び(ハウスメーカー・工務店・設計事務所)
主な選択肢は、「ハウスメーカー」「工務店」「設計事務所」の3つです。
全国展開している大手が多く、自社開発の設備や規格化された建築資材・工程で品質が安定している反面、自由度は低くコストも高めな傾向があります。
■工務店
間取りやデザイン、材質まで自由に決められ、コストも抑えられますが、職人の技術に差があったり、アフターサービスが不十分なこともあるでしょう。
■設計事務所
設計のみを行い、実際の工事は工務店が担当します。
パートナー選びの情報収集には、インターネットや住宅展示場の訪問が有効でしょう。
住まい方をシミュレーションした間取り計画
失敗を避けるためには、間取りを考える際に実際の住まい方をシミュレーションすることが重要です。
家族が日常的にどのように過ごし、動くかを具体的にイメージしながら間取りを検討しましょう。
また、置く予定の家具や家電を図面に書き込むと、実際の暮らしがイメージしやすくなります。
コンセントの位置や数の決定にも役立ちます。
住まいの間取りは、現在の生活スタイルだけでなく、将来の変化も考慮して計画することがポイントです。
家族構成の変化や老後の暮らしにも対応できる柔軟性を持たせた設計が、長く快適に過ごせる住まいの条件と言えるでしょう。
プロと二人三脚で理想の住まいづくりを実現しよう
注文住宅は土地選びから間取り、デザイン、建材に至るまで自由度が高く、あなたのライフスタイルに最適化された住まいを実現できます。
一方で、時間やコストがかかることや完成イメージがつかみにくいというデメリットも存在します。
しかし、優先順位の明確化と信頼できるパートナー選び、そして実際の住まい方をシミュレーションすることで、これらの課題は克服可能です。
注文住宅は家族全員の希望を取り入れた「唯一無二の住まい」を創り上げる素晴らしい選択肢です。
最適なハウスメーカー選びには、オリコンが発表している「ハウスメーカー 注文住宅」ランキングも参考になるでしょう。
顧客満足度や技術力などの客観的評価を確認して、あなたに合ったパートナーを見つけてください。

監修者新井 智美
マネーコンサルタントとしての個人向け相談、NISA・iDeCoをはじめとした運用にまつわるセミナー講師のほか、金融メディアへの執筆および監修に携わっている。
現在年間200本以上の執筆・監修をこなしており、これまでの執筆・監修実績は3,000本を超える。
(保有資格)
・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
・CFP®
・DC(確定拠出年金)プランナー
・住宅ローンアドバイザー
・証券外務員
公式サイト:https://marron-financial.com/