火災保険の免責金額とは?なぜ必要?種類や設定時のポイントを徹底解説!

火災保険の免責金額とは?なぜ必要?種類や設定時のポイントを徹底解説!

火災保険の契約には、免責金額の設定が必要な場合があります。免責金額は保険金支払いの際に契約者が自己負担する金額ですが、設定方法がわからない方がほとんどではないでしょうか。

この記事では、火災保険の免責金額の基本的な考え方や設定する理由、設定する際のポイントなどを詳しく解説します。免責金額の設定方法がわかると、保険料を抑えて必要な補償を確保できるので、これから火災保険に加入する方は参考にしてください。

mokuji目次

  1. 火災保険の「免責金額」とは?
    1. そもそも火災保険とは
    2. 火災保険の免責金額とは加入者の自己負担額のこと
    3. 火災保険の免責金額は会社によって内容や設定方法が違う
  2. 免責金額を設定する理由
    1. 加入者の保険料負担を軽減
    2. 損害調査における保険会社側の負担を軽減
    3. モラルハザードを防止
  3. 火災保険における免責金額の設定方法は2種類
    1. エクセス方式とフランチャイズ方式
    2. 2つの方式の違いによる自己負担額・保険金の差
  4. 火災保険の免責金額を決める3つのポイントと設定例
    1. ポイント1|対象物件で起きやすい災害を考慮して決める
    2. ポイント2|家計の状況に合わせて決める
    3. ポイント3|補償の対象と被害額から決める
    4. 火災保険における免責金額の設定5例
  5. 免責金額と混同しがちな「免責事項」について補足
    1. 故意や重大な過失により生じた損害
    2. 異常危険により生じた損害
    3. 対象物件の経年劣化による損害など
  6. 火災保険の免責金額は住環境や家計を考慮した設定に

火災保険の「免責金額」とは?

火災保険の「免責金額」とは?

最初に火災保険の基礎知識と、免責金額について見ていきましょう。

そもそも火災保険とは

火災保険は、建物や家財に対する幅広い補償を提供する保険です。火災による損害はもちろん、落雷、破裂・爆発といった事故や、風災・雹災・雪災といった自然災害、さらには水漏れや盗難などによる損害も補償の対象となります。

火災保険の補償対象は建物や家財に発生した直接的な損害に加え、消火活動費用や災害時の臨時費用、焼け跡の後片付け費用なども含まれます。ただし、地震・噴火や地震による津波を原因とする損害については、別途地震保険への加入が必要です

火災保険の免責金額とは加入者の自己負担額のこと

火災保険の免責金額とは、保険金が支払われる際に契約者が支払う自己負担額です

例えば、免責金額を5万円に設定している場合に30万円の損害が発生したときは、損害額から免責金額を差し引いた25万円が保険金として支払われます。このケースで損害額が5万円以下のときには保険金は支払われず、契約者の全額自己負担となります。

火災保険の免責金額は会社によって内容や設定方法が違う

火災保険の免責金額は、保険会社や商品によって設定方法が異なります。一般的には0円から20万円くらいまでの範囲で、0円、5万円、10万円といった段階的な選択肢が用意されています。

免責金額を高く設定すると保険料を抑えられますが、その分事故の際の自己負担が大きくなるため、慎重な検討が必要です

保険会社や商品によっては、火災や水災のような補償内容ごとに免責金額を個別に設定できるものもあり、より細かなリスク管理が可能です。

このように免責金額は保険会社によって選択できる金額の幅や設定方法が異なるため、複数の保険商品の比較検討をおすすめします

免責金額を設定する理由

免責金額を設定する理由

火災保険にはなぜ免責金額を設定するのでしょうか。ここでは、免責金額を設定する3つの理由を解説します

加入者の保険料負担を軽減

火災保険に免責金額を設定する大きな理由のひとつに、加入者の保険料負担の軽減が挙げられます。火災保険は補償内容を充実させればさせるほど、保険料が高くなってしまいます。そこで、適切な免責金額の設定によって、保険料負担を軽減するのです

免責金額を設定すると小さな損害は自己負担し、大きな損害が生じた場合のみ保険金を受け取る選択が可能になります。

近年、火災保険料の値上がりが続いていますが、免責金額の上手な活用で保険料の負担を軽減できる可能性があります。

損害調査における保険会社側の負担を軽減

免責金額の設定は、保険会社側の損害調査の負担の軽減につながります。保険会社は保険金請求を受けると、損害の状況を調査し、保険金の支払額を算出しなければなりません。少額の損害の場合でも、調査や手続きには一定の手間がかかります。

免責金額を設定すると、少額の保険金請求を抑制し、保険会社側の損害調査や保険金支払い処理の負担を軽減できるのです。結果的に保険会社の業務効率化につながり、保険料の抑制も期待できます。

このように、免責金額の設定は、契約者と保険会社の双方にとって合理的な仕組みといえます

モラルハザードを防止

免責金額の設定は、モラルハザードを防止する効果も期待できます。モラルハザードとは、保険に加入していることで事故に対する注意が疎かになる状態です

免責金額を設定すると、万が一損害が発生した場合、契約者にも自己負担が発生します。そのため、契約者は損害の発生を避けようとする意識を持ち続けると考えられます。

例えば、台風が近づいている際の雨戸の点検や、火の元の確認といった、日常的な備えや予防措置への意識が高まるのです。

このように、免責金額の設定には保険本来の目的である「万が一の備え」という性質を損なわずに、契約者の適切な危機管理意識を維持する効果があります。

火災保険における免責金額の設定方法は2種類

火災保険における免責金額の設定方法は2種類

火災保険の免責金額の設定方法には「エクセス方式」と「フランチャイズ方式」の2種類があります。ここでは、それぞれの免責金額の設定の方法を解説します。

エクセス方式とフランチャイズ方式

火災保険の免責金額にはエクセス方式フランチャイズ方式の2種類があります。

このうち、現在主流となっているのは、エクセス方式です。エクセス方式では、損害額からあらかじめ設定した免責金額を差し引いた額が保険金として支払われます。

例えば、損害額が100万円、免責金額が5万円の場合、保険会社から支払われる保険金は95万円で、残りの5万円は自己負担です。

一方、フランチャイズ方式では、損害額が設定された免責金額を下回る場合は全額自己負担となります。しかし、損害額が免責金額以上になると、損害額の全額が保険金として支払われる仕組みです。

フランチャイズ方式では、一般的に20万円などの比較的高額な免責金額が設定されています

2つの方式の違いによる自己負担額・保険金の差

エクセス方式とフランチャイズ方式それぞれの自己負担額と保険金を以下の表にまとめました。ここでは、エクセス方式の免責金額を5万円、フランチャイズ方式の免責金額を20万円としています
損害額 エクセス方式 フランチャイズ方式
免責金額5万円 免責金額20万円
自己負担額 保険金 自己負担額 保険金
1万円 1万円 0円 1万円 0円
3万円 5万円 0円 3万円 0円
15万円 5万円 10万円 15万円 0円
20万円 5万円 15万円 0円 20万円
30万円 5万円 25万円 0円 30万円
エクセス方式では、損害額にかかわらず必ず自己負担が発生します。一方、フランチャイズ方式では損害額が免責金額(20万円)以上の場合は自己負担が発生せず、損害額の全額が保険金として支払われます。

火災保険の免責金額を決める3つのポイントと設定例

火災保険の免責金額を決める3つのポイントと設定例

実際の火災保険の契約においては免責金額をいくらにすべきかの判断は難しいかもしれません。ここでは、免責金額の決め方の3つのポイントと設定例を紹介します

ポイント1|対象物件で起きやすい災害を考慮して決める

火災保険の免責金額を決める際は、対象となる物件でどのような災害が起きやすいかの考慮が重要です。住んでいる地域によって、火災、風水害、雪災など、発生しやすい災害は異なります。

そのため、それぞれの災害リスクに応じて、免責金額を個別に設定する必要があるのです

例えば、河川や海が近く、浸水リスクが高いエリアに住んでいる場合は、水災補償の免責金額を低く設定しておくと安心です。また、豪雪地帯に住んでいる場合は、雪災による被害に備えて、雪災補償の免責金額を低めに設定しておくことをおすすめします。

自分の住んでいる地域の災害リスクを把握するためには国土交通省のハザードマップポータルサイトや、都道府県・市町村が発行しているハザードマップなどを確認しましょう

ポイント2|家計の状況に合わせて決める

免責金額の設定は、家計の状況を慎重に考慮する必要があります。免責金額を高く設定すれば月々の保険料を抑えられますが、災害時の自己負担額が大きくなるため、適切な貯蓄がないと生活再建に支障をきたす可能性があります。

理想的な免責金額は、貯蓄からいつでも支払える金額に設定することです。貯蓄が少ない場合は、保険料が高くなっても免責金額を低くしたほうが良いでしょう。

免責金額は保険料と自己負担のバランスを考えながら、家計状況に合った設定を心がけましょう。

ポイント3|補償の対象と被害額から決める

火災保険の免責金額は、補償の対象と想定される被害額も考慮しましょう。火災や爆発のような大規模な損害は発生頻度が低いものの、発生すると被害額が高額になるため、これらの補償に対する免責金額は低めに設定するほうが得策といえます。

一方で、台風による窓ガラスの破損や小規模な漏水事故といった、比較的頻繁に発生する可能性のある損害については、補償内容ごとに細かく免責金額を設定できる保険商品を選択すると便利です。

例えば、破損・汚損のような日常的なリスクに対しては、修理費用の相場を考慮して免責金額を設定すると良いでしょう。

自分の住居の特徴やライフスタイルなどを考慮し、どのような損害が発生しやすいかを予測すると、適切な免責金額を設定できます。

火災保険における免責金額の設定5例

ここでは、火災保険の免責金額の具体例を紹介します。
1.過去に床下浸水の被害を受けた地域のため、再発を懸念し水災補償を「免責なし」に設定

2.水害リスクが低い立地のため、水災補償の免責金額を10万円に設定

3.貯蓄に余裕があり出費の予定もないため、期間を1年とし免責金額を20万円に設定

4.引っ越しの予定があり貯金額が減りそうなので、免責金額を1万円に設定

5.現在は家計に余裕があるが、長期契約を結ぶにあたり念のため免責金額を3万円に設定
上記の例1と2は、水災リスクへの対応例です。ハザードマップなどで水災のリスクを確認し、リスクが高めであれば免責金額を低く(または免責なし)設定します。

例3と4は、家計状況に応じた設定の例です。貯蓄に余裕がある場合は免責金額を高めに設定しますが、大きな支出が予定されている場合は免責金額を抑えて、突発的な損害に備えます。

例5は長期契約での設定例です。現在は余裕があっても将来の状況はわからない場合、無理なく負担できそうな免責金額を設定して、保険料の負担と損害リスクのバランスを取ります。

このように、地域特性、家計状況、契約期間などを総合的に判断して、自分の状況に最適な免責金額を設定するようにしましょう

免責金額と混同しがちな「免責事項」について補足

免責金額と混同しがちな「免責事項」について補足

火災保険で免責金額と混同しやすい用語に、「免責事項」があります。免責金額は補償の対象となる損害が発生した際に、契約者が自己負担する金額です。一方、免責事項は保険会社が保険金支払いの責任を負わない特定の事項を指します

最後に、どのような場合に火災保険の保険金が支払われないかを確認しておきましょう。

故意や重大な過失により生じた損害

火災保険では、契約者の故意や重大な過失によって生じた損害は保険金の支払い対象外となります。重大な過失とは、わずかな注意さえ払えば防げたはずの事故を漫然と見過ごしてしまうような、ほとんど故意に近い状態です。

具体的には、以下のような事例が重大な過失とされています。
・火をつけたままの石油ストーブに給油する
・天ぷら油を加熱したまま長時間その場を離れる
・火災の危険性を認識しながら寝たばこを繰り返す

火災保険に加入しているからと安心せず、災害や事故の予防の基本的な注意を常に心がけましょう。

異常危険により生じた損害

火災保険では社会全体に甚大な被害をもたらす異常危険による損害は、補償の対象外となります。具体的には以下のような損害が該当します。
・自然災害のうち地震・津波・噴火による損害
・戦争や外国の武力行使を原因とする損害
・核燃料物質または汚染物の放射能による事故
地震・津波・噴火による損害に備えるには、別途地震保険への加入が必要です。一方、戦争、外国の武力行使による損害や放射能汚染による損害は、その規模や影響範囲が極めて大きいため、保険による補償の対象外となります。

対象物件の経年劣化による損害など

火災保険の免責事項には故意や重大な過失、異常危険による損害以外にも、いくつかの項目があります。

そのひとつが、対象物件の経年劣化による損害です。例えば、屋根の腐食や雨漏り、壁のひび割れなどが挙げられます。これらの損害は、経年劣化による自然な消耗とみなされるため、火災保険では補償されません

その他、以下のような損害は免責事項にあたり、保険金は支払われません。
・災害時の混乱に乗じた盗難被害
・建物の構造上の欠陥による損害
・虫食いやねずみによる被害
・開口部からの雨漏りによる損害

火災保険の免責金額は住環境や家計を考慮した設定に

火災保険の免責金額を適切に設定すると、必要な補償を確保しつつ、保険料負担を軽減できます。特に近年は火災保険料の上昇が続いているため、免責金額の設定を有効に活用しましょう。

免責金額は、加入者それぞれの状況に応じて柔軟に設定する必要があります。住んでいる地域の災害リスク、建物の特性、自分の家計状況を総合的に判断して決めましょう。

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