火災保険は年末調整の控除対象?申告方法と地震保険の扱いを解説

火災保険は年末調整の控除対象?申告方法と地震保険の扱いを解説

火災や地震などの自然災害による建物・家財への損害リスクに備える保険として、「火災保険」と「地震保険」が挙げられます。

加入するには保険料を支払う必要がありますが、年末調整や確定申告を行うことで、保険料の控除を受けることはできるのでしょうか?

火災保険や地震保険の所得控除に関する疑問について、解説していきます。
金子 賢司

監修者金子 賢司

東証一部上場企業(現在は東証スタンダード)で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。

mokuji目次

  1. 火災保険は原則として年末調整の控除対象外
    1. 2006年の税制改正で損害保険料控除は廃止
    2. 地震保険とセット加入なら地震保険料控除の対象
    3. 例外的に控除対象となる「旧長期損害保険」
  2. 地震保険料控除の対象と控除額の計算方法
    1. 持ち家・賃貸問わず居住用なら対象になる
    2. 所得税・住民税それぞれの控除額の上限
    3. 旧長期損害保険と地震保険の併用時の計算
  3. 年末調整での火災保険(地震保険)申告手続きの流れ
    1. 保険会社から届く「控除証明書」の準備
    2. 「給与所得者の保険料控除申告書」の記入
    3. 電子データでの提出やマイナポータル連携
  4. 確定申告が必要なケースと手続き方法
    1. 自営業や年末調整を忘れた会社員は確定申告
    2. 確定申告書の記載箇所と提出書類
  5. 火災保険と年末調整に関するよくある質問
    1. 長期一括払いの保険料は毎年控除できる?
    2. 年末調整で火災保険の控除を忘れたらどうする?
  6. 年末調整の前に、火災保険や地震保険の契約を確認しよう

火災保険は原則として年末調整の控除対象外

火災保険は原則として年末調整の控除対象外

火災保険の保険料は、年末調整や確定申告で所得控除を受けることができません。2006年の税制改正により損害保険料控除が廃止され、現在は控除の対象外となっているためです。

ただし、火災保険とセットで加入した地震保険の保険料は「地震保険料控除」として控除の対象になります。また、一定の条件を満たす旧長期損害保険についても、経過措置により引き続き控除を受けられる場合があります。

2006年の税制改正で損害保険料控除は廃止

かつて、損害保険の保険料は「損害保険料控除」という制度によって所得控除の対象となっていました。この制度のもとでは、火災保険や傷害保険の保険料を年末調整や確定申告で申請し、一定額の控除を受けることができたのです。

しかし、2006年(平成18年)の税制改正によって損害保険料控除は廃止されました。これに伴い、2007年(平成19年)1月以降、火災保険の保険料は原則として所得控除の対象外となっています。

この改正の背景には、地震保険の普及を促進するという国の方針がありました。損害保険料控除に代わって「地震保険料控除」が新設され、所得控除の枠が従来よりも拡大された形で地震保険に特化した制度に再編されたのです。

そのため、「火災保険 年末調整 対象外」と検索して情報を探している方は、現在の制度では火災保険料単体での控除は受けられない点を押さえておきましょう。ただし、後述するように、火災保険にセットで加入した地震保険部分の保険料は控除の対象になります。

地震保険とセット加入なら地震保険料控除の対象

火災保険の保険料は控除の対象外ですが、火災保険とセットで加入する地震保険の保険料については「地震保険料控除」の対象です。年末調整や確定申告で手続きをすれば、支払った地震保険料に応じた金額が所得から控除されます。

地震保険は単独で加入することができず、火災保険に付帯して契約する仕組みになっています。そのため、「火災保険」と「地震保険」をセットで契約している方は多いでしょう。

ただし、控除の対象となるのはあくまで地震保険料に該当する部分のみで、火災保険料の部分は含まれません。

例外的に控除対象となる「旧長期損害保険」

2007年以降、火災保険は原則として所得控除の対象外となりましたが、経過措置として一定の条件を満たす「旧長期損害保険」は、引き続き控除を受けることができます。
次の3つの要件をすべて満たす契約が対象
・2006年(平成18年)12月31日までに契約を締結していること(保険期間の始期が2007年1月1日以後のものは除く)
・満期返戻金(満期時に戻ってくるお金)などがあり、保険期間が10年以上の契約であること
・2007年1月1日以後に契約内容の変更をしていないこと
これらの要件に該当する場合は、地震保険料控除の枠組みのなかで「旧長期損害保険料」として申告し、所得控除を受けることが可能です。積立型の火災保険や傷害保険などが該当するケースがあるため、古い契約をお持ちの方は保険証券を確認してみましょう。

地震保険料控除の対象と控除額の計算方法

地震保険料控除の対象と控除額の計算方法

地震保険料控除を活用するにあたり、控除の対象範囲や控除額の計算方法を正しく理解しておくことが重要です。

ここでは、持ち家・賃貸を問わず対象になる条件や、所得税・住民税それぞれの控除額の上限、旧長期損害保険との併用時の計算について解説します。

持ち家・賃貸問わず居住用なら対象になる

地震保険料控除は、持ち家に限らず賃貸住宅にお住まいの方でも利用できます。賃貸住宅で家財を対象とする火災保険に加入し、地震保険を付帯している場合、その地震保険料は控除の対象になります。

控除の対象となる要件は、契約者本人もしくは生計を一にする配偶者・その他の親族が所有する居住用の建物や生活用動産(家財)を保険の対象としていることです。

たとえば、妻が契約者になっている地震保険であっても、夫が保険料を負担しており、かつ生計を一にしている場合は控除の対象となり得ます。

一方、別荘や空き家など、常時住居として使用していない建物は、原則、地震保険料控除の対象外となるため注意が必要です。

所得税・住民税それぞれの控除額の上限

地震保険料控除の金額は、所得税と住民税で計算方法が異なります。

以下の表にまとめましたので、ご自身の保険料に当てはめて確認してみてください。
区分 年間支払保険料 控除額
所得税 50,000円以下 支払金額の全額
50,000円超 一律50,000円
住民税 50,000円以下 支払金額の全額
50,000円超 一律25,000円

参考:一般社団法人日本損害保険協会|B保険料と税金の関係

なお、火災保険(地震保険)の年末調整でいくら戻ってくるのかと、気になる方もいるでしょう。注意しておきたいのは、控除額がそのまま還付額(手元に戻ってくる金額)になるわけではないという点です。

控除額はあくまで所得から差し引かれる金額であり、実際の還付額は「控除額×所得税率」で算出されます。所得税率は課税所得の金額によって異なるため、同じ保険料を支払っていても、所得に応じて還付額は変動します。

旧長期損害保険と地震保険の併用時の計算

地震保険料と旧長期損害保険料の両方を支払っている場合、控除額の計算には注意が必要です。

まず、1つの契約のなかで地震保険料と旧長期損害保険料の両方が発生している場合は、いずれか一方を選んで控除を申告する形になります。双方を合わせて申告することはできません。

地震保険料控除は上限が所得税5万円であるのに対し、旧長期損害保険料控除の上限は1万5,000円のため、一般的には地震保険料控除を選ぶほうが有利になりやすいでしょう。

一方、別々の契約でそれぞれ地震保険料と旧長期損害保険料を支払っているケースでは、各控除額を合わせて申告が可能です。ただし、所得税の控除額は合計で最高5万円、住民税は最高2万5,000円が上限となっており、この上限は地震保険料のみの場合と変わりません。

たとえば、地震保険料から算出した控除額が4万円、旧長期損害保険料から算出した控除額が1万5,000円であれば、合計は5万5,000円になるものの、所得税の控除額は上限の5万円が適用されることになります。

年末調整での火災保険(地震保険)申告手続きの流れ

年末調整での火災保険(地震保険)申告手続きの流れ

年末調整で地震保険料控除を受けるためには、いくつかの手続きを順番に進める必要があります。

まず保険会社から届く控除証明書を準備し、次に勤務先から配布される「給与所得者の保険料控除申告書」に必要事項を記入して提出するのが基本的な流れです。

また、近年では控除証明書を電子データで取得し、マイナポータル連携を活用して申告書に自動入力する方法も利用できるようになりました。ここでは、それぞれの手続きについて詳しく解説していきます。

保険会社から届く「控除証明書」の準備

年末調整で地震保険料控除を受けるには、保険会社から届く「地震保険料控除証明書」が必要です。

この証明書は、通常10月頃に保険会社からはがきで届きます。契約初年度の場合は保険証券に添付されていることが多いため、手元に届いていないと感じたら保険証券を確認してみましょう。

もし控除証明書を紛失してしまった場合でも、保険会社に連絡すれば再発行が可能です。再発行には数日から数週間かかることがあるため、年末調整の期限に間に合うよう早めに手続きを進めることをおすすめします。

また、後述するように電子データとして控除証明書を取得できる保険会社も増えているため、紙の書類を紛失するリスクを避けたい方は電子発行の利用を検討するとよいでしょう。

「給与所得者の保険料控除申告書」の記入

控除証明書が手元に届いたら、勤務先から配布される「給与所得者の保険料控除申告書」に必要事項を記入します。地震保険料控除の記入欄は、申告書の右下にある「地震保険料控除」の欄です。

記入する項目としては、保険会社名や保険の種類(地震保険料または旧長期損害保険料)、保険期間、契約者名、保険の対象となる建物や家財を利用している方の氏名、そしてその年に支払った保険料の金額があります。

控除証明書に記載されている内容をそのまま転記する形になるため、証明書を手元に用意して記入を進めましょう。

記入時に注意したいのが、「地震保険料」と「旧長期損害保険料」の区分です。どちらに該当するかは控除証明書に明記されていますので、区分を間違えないよう確認してから記入してください。区分を誤ると、控除額の計算結果が変わってしまう場合があります。

電子データでの提出やマイナポータル連携

近年、保険料控除証明書の電子化が進んでおり、紙のはがきに代えて電子データで控除証明書を取得・提出する方法も利用できるようになりました。

国税庁が提供する「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)」を利用すれば、電子データの控除証明書を取り込み、申告書に自動入力させることが可能です。

また、政府が運営するオンラインサービス「マイナポータル」と連携することで、各保険会社から届く控除証明書を一括で取得し、申告書への自動入力や自動計算ができるようになっています。

マイナポータル連携を利用するにはマイナンバーカードの取得やe-私書箱(行政機関や民間企業からの通知をオンラインで受け取れるサービス)との連携設定といった事前準備が必要です。

なお、一度設定を済ませれば翌年以降も自動で控除証明書が届く保険会社もあります。入力の手間や計算ミスを防げるメリットがあるため、勤務先が電子提出に対応している場合は活用を検討してみましょう。

確定申告が必要なケースと手続き方法

確定申告が必要なケースと手続き方法

年末調整で地震保険料控除を申請できなかった場合でも、確定申告で控除を受けることが可能です。確定申告が必要になるケースや、確定申告書への具体的な記載方法について見ていきましょう。

自営業や年末調整を忘れた会社員は確定申告

個人事業主やフリーランスなど、勤務先の年末調整を受けない方は、確定申告で地震保険料控除を申請する必要があります。確定申告の期間は原則として毎年2月16日から3月15日までで、住所地を管轄する税務署に申告書を提出します。

また、会社員であっても年末調整の際に地震保険料控除の申請を忘れてしまった場合は、確定申告(還付申告)によって控除を受けることが可能です。還付申告は、確定申告の期間に限らず、その年の翌年1月1日から5年間にわたって提出できます。

「年末調整と確定申告のどちらで申告した方が得か」という疑問を持つ方もいるかもしれませんが、控除額自体はどちらの方法でも変わりません。年末調整で手続きを済ませるほうが手間は少ないため、会社員の方はできるだけ年末調整で申請するのがおすすめです。

確定申告書の記載箇所と提出書類

確定申告で地震保険料控除を受ける場合は、確定申告書の第一表と第二表にそれぞれ記載が必要です。└以下画像を含める。

第一表
第一表の「所得から差し引かれる金額」の欄にある「地震保険料控除」の項目に、計算した控除額を記入します。

第一表

第二表
第二表の「地震保険料控除」の欄には、「地震保険料」と「旧長期損害保険料」の区分ごとに、その年に支払った保険料の金額を記入します。控除証明書の内容をもとに正確に転記してください。

第二表

出典:国税庁|A1-1 申告書・申告書付表と税額計算書等 一覧(申告所得税)申告書第一表・第二表を加工

提出時には、地震保険料控除証明書の原本を申告書に添付する必要があります。郵送で提出する場合は証明書を同封し、税務署の窓口で提出する場合は証明書を持参しましょう。

なお、e-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用してオンラインで確定申告を行う場合は、控除証明書の添付を省略できるメリットがあります。

ただし、添付を省略した場合でも、控除証明書は法定申告期限から5年間保存する必要があるため、原本は手元に保管しておきましょう。自宅から24時間手続きが可能で、税務署への来署や郵送の手間も省けます。

火災保険と年末調整に関するよくある質問

火災保険と年末調整に関するよくある質問

火災保険や地震保険の年末調整に関する、よくある質問と回答をまとめました。

長期一括払いの保険料は毎年控除できる?

地震保険料を複数年分まとめて一括で支払った場合でも、毎年控除を受けることが可能です。

一括払いの場合、1年あたりの控除対象保険料は「一括払込保険料÷保険期間(年数)」で計算します。たとえば、5年契約で地震保険料を10万円一括払いした場合、毎年の控除対象保険料は2万円(10万円÷5年)となり、これが5年間にわたって毎年控除の対象になるのです。

複数年分の保険料を一括で支払った場合でも、保険会社が1年あたりの金額に換算した控除証明書を発行してくれます。初年度は保険証券に添付されており、2年目以降は毎年10月頃にはがきで届くのが一般的です。届かない場合は保険会社に確認するとよいでしょう。

年末調整で火災保険の控除を忘れたらどうする?

年末調整で地震保険料控除の申請を忘れてしまった場合でも、控除をあきらめる必要はありません。対処法は主に2つあります。

1つ目は、勤務先の再年末調整(年末調整のやり直し)に間に合わせる方法です。年末調整は、源泉徴収票を発行する前かつ翌年1月末までであれば再調整が可能とされています。年末調整が終わった直後に控除の申請漏れに気づいた場合は、早めに勤務先の担当部署に相談しましょう。

2つ目は、確定申告(還付申告)を行う方法です。還付申告は、対象となる年の翌年1月1日から5年間提出でき、確定申告の期間(2月16日〜3月15日)に限定されません。再年末調整に間に合わなかった場合でも、5年以内であれば控除を受けて税金の還付を受けられます。

年末調整の前に、火災保険や地震保険の契約を確認しよう

自身の加入している保険の所得控除について、年末調整の時期しか意識しないという人も多いでしょう。この機会にご自身の保険契約を見直すとともに、地震保険料控除の対象となっているかどうか、しっかり確認しておくことをおすすめします。

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金子 賢司

監修者金子 賢司

東証一部上場企業(現在は東証スタンダード)で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。
以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。
・CFP®資格(資格番号:90260739)
・日本FP(ファイナンシャルプランナー協会)幹事

ホームページ:https://fp-kane.com/

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