NISAとは? 初心者が知っておきたい、基本の仕組みと注意点 2024年からの新NISA制度も紹介

資産形成の制度として注目を高めているNISA(ニーサ)。少額からの投資が可能で、利益の受け取りに税金がかからないため、貯蓄目的で始める人も多い。一方では「興味はあるけれど、詳しくは分からない」「実際に運用できるかが不安」という人や、「いまさら始めても遅いのでは」と考える人も多いだろう。実は2024年1月からは“新しいNISA”へ移行するため、これからNISAを開始する人もまだまだ非課税のメリットを受けることができるのだ。ここでは、これだけは押さえておきたいNISAの基本や、安心して始めるために知っておきたい注意点を紹介する。
【目次】
■NISAとは?
■NISAの基本の仕組み
 3つのNISAの特徴を比較、2024年からの新制度も紹介
 一般NISAとつみたてNISAのちがい? 非課税対象の上限額と期間
 一般NISAとつみたてNISAのちがい? 対象商品と購入方法
 一般NISAは「短期向き」、つみたてNISAは「中長期向き」
■一般NISAとつみたてNISAの注意点
 注意点? 一般NISAとつみたてNISA、併用できない
 注意点? “非課税投資枠”は、翌年に繰り越せない
 注意点? 「損益通算」ができない
 注意点? つみたてNISAでは、スポット購入ができない
■非課税期間の終了後は、3つ選択肢
■NISAの特徴を知って、自分にあった制度を選ぼう

NISAとは?

NISA(ニーサ)とは、「少額投資非課税制度」のことで個人の資産運用を応援する制度。この制度の大きな特長は、上限金額内(非課税枠内)の投資で得た利益(売却利益、配当・分配金)を、一定の期間、非課税で受け取れるということだ。また、確定申告も不要で、資産運用が初めてという人でも始めやすい。

ちなみに通常の投資では、配当金や分配金、売却益(株価の値上がりによって売却時に得られる利益)には所得税15.315%、住民税5%の合計20.315%の税金がかかる。

2022年6月現在、NISAには20歳以上を対象にした一般NISAつみたてNISA、そして20歳未満を対象にしたジュニアNISAの3種類がある。ただしジュニアNISAは、新規口座の開設は2023年までとなっている。

“NISAは1人1口座が原則”のため、一般NISAとつみたてNISAを併用することはできず、口座開設時に一方を選び、1年ごとに変更することはできる。

各NISAは、非課税の期間、年間非課税枠のほかに、運用の仕方も異なる部分があるので、基本的な仕組みを理解して、自分に合った制度を選ぼう。
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NISAの基本の仕組み

3つのNISAを比較、2024年からの新制度も紹介

2022年7月現在、NISA制度の基本的な特徴は次の表の通り。
3つのNISA(2022年7月現在)

(※1) 金融機関により、取り扱い商品が異なる。
(※2)(※3) 2023年1月以降、成人年齢の変更に伴い18歳以上となる。
(※4) 2023年1月以降、成人年齢の変更に伴い17歳以下となる。
(※5) 現行の制度での投資期間は、2023年12月末まで。2024年1月以降は“新しいNISA”として開始。
(※6) 2024年以降、18歳になる前でも払い出し可能になる。
また、2023年12月末で一般NISAの新規投資枠が終了し、2024年以降は“新しいNISA”が実施される。一般NISAを新しいNISAに移行することも可能なので、これから始める人も知っておくと安心だ。
 
新NISAは、「積み立て・分散」投資をさらに推奨する制度になっている。大きく変わるのは、新NISAでは、「2階建て」になるということ。一見、複雑に見えるが、1階は「つみたてNISA」と、2階は現在の一般NISAと基本的に同じ仕組みだ。
2024年1月以降の新しいNISA

新NISA

つみたてNISA

対象者

18歳以上の日本国内居住者

18歳以上の日本国内居住者

年間の投資上限額(非課税枠)

2階 102万円
1階 20万円

40万円

非課税期間

投資した年から5年間 (1階部分のみ終了後つみたてNISAに移管可能)

投資した年から20年間

口座開設可能期間

2014年〜2028年

2018年〜2042年

投資できる金融商品

2階 上場株式・公募株式投資信託等(※1)
1階 つみたてNISAと同じ商品

一定の条件を満たし、金融庁に届け出のあった投資信託とETF(上場投資信託)

投資方法

2階 金額・タイミングは自由。積み立てでの購入も選択可能
1階 定期・定額での積み立て購入

定期・定額での積み立て購入

資金の払い出し

いつでも非課税で払い出し可能

いつでも非課税で払い出し可能

(※1) レバレッジを効かせている投資信託、上場株式のうち整理銘柄・管理銘柄は対象外となる。
原則として2階部分を利用するためには、1階部分での積立投資を行う必要がある(上限額まで買い付ける必要はない)。ただし、現行の一般NISAを使っていたなど、投資経験者については2階部分から始めることができる制度になっている。

一般NISAとつみたてNISAの違い? 非課税対象の上限額と期間

20歳以上が選べるNISAには、一般NISAとつみたてNISAの2つがある。大きな違いは、「投資上限額」「投資可能期間」だ。

例えば、一般NISAの非課税期間は、初めての投資から最長5年間で、非課税枠は年間120万円。2018年に始め、年間120万円の投資を2022年までの5年続けると、最大120万円×5年分=600万円の投資で得られた利益が無制限に非課税となる。
 
投資対象期間が最長で2061年まで、非課税枠は年間40万円のつみたてNISAでは、今年始めた場合、非課税期間いっぱいの20年間分が対象となり、最大40万円×20年分=800万円の投資で得られた利益が非課税となる。

一般NISAとつみたてNISAの違い? 対象商品と購入方法

さらに、異なる点として「投資対象」「購入方法」も挙げられる。

つみたてNISAの投資対象は、金融庁の設定する条件を満たした投資信託とETF(上場投資信託)のみで、限られた本数の中から選択する必要がある。また、株式を購入することはできない。

これに対して、一般NISAでは、株式投資信託、ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)、に加えて株式など、より幅広い商品を購入することができる。

購入方法についても、つみたてNISAではその名の通り、積み立て購入のみであるのに対して、一般NISAは積み立てで買う必要がなく(積み立てでも購入可能)、相場を見ながら「下がったから買いたい」といったことにも対応できる。
投資信託とは?
投資家たちが投資したお金をまとめて資金とし、専門家がいろいろな商品に分散して投資・運用し、その利益を投資家に分配する仕組みの金融商品のこと。

一般NISAは「短期向き」、つみたてNISAは「中長期向き」

●ご利用の際のご注意事項(必ずお読みください)(外部リンク)
一般NISAはつみたてNISAよりも非課税期間が短いため、売買益や配当金を受け取って「短期間で非課税のメリットを得たい」という人は、一般NISAが向いていると考えられる。

一方で、つみたてNISAは、株を購入するよりも、投資信託を少しずつ長い期間で積み立てていき、「中長期で分散投資をしたい」という人向きだ。非課税期間は20年間と長いので、老後資金や子どもの大学資金など目的とした資産形成に向いている。 

つみたてNISAは、一定の条件を満たし、金融庁に届け出のあった投資信託とETF(上場投資信託)から選ぶことになり、その本数は限られている。また、株の売買はできない。「投資信託といっても、どれを選べばいいのか分からない」という投資初心者にとっては、比較的選びやすいという点で、より始めやすい制度といえる。

一般NISAとつみたてNISAの注意点

初心者でも比較的利用しやすいNISAだが、安心して始めるためにも、いくつか注意点を押さえておこう。

注意点? 一般NISAとつみたてNISAは併用できない

NISAは1人1口座が原則なので、同じ年に一般NISAとつみたてNISAの両方から買い付けすることはできない。つまり、ある年に一般NISAを利用しているとすると、その年はつみたてNISAを利用できないのだ。逆に、翌年つみたてNISAを利用し始めたら、その年は一般NISAで新しく株などを購入することができないので、どちらで始めるかは注意しよう。

ただし年1回、手続きによって切り替えが可能だ。切り替え前に購入した投資商品については、引き続き保有できる。

注意点? “非課税投資枠”は翌年に繰り越せない

一般NISAでは年間120万円、つみたてNISAでは年間40万円の非課税投資枠が設けられている。例えば、今年は一般NISAで100万円分この枠を使ったという場合でも、未使用の20万円分が翌年に繰り越されることはなく、非課税枠は120万円となる。その年にどれだけ非課税枠を使ったかは、翌年の非課税枠の額面に影響しない。

注意点? 損失を出したときに「損益通算」ができない

NISAでは、ほかに運用口座(一般口座や特定口座)を持っていたとしても、損益通算ができないので注意が必要だ。

損益通算とは、赤字の所得(損失)をそのほかの所得(利益)から差し引くことで、税金を少なくできる制度だ。損益通算を行うことで、複数の口座の利益と損失を相殺し、トータルの利益に対してのみ税金がかかる。

ところが、NISAで損失が出て、ほかの口座では儲けが出た場合は、NISAのマイナス分を差し引くことができない。

また、株式や投資信託で損失が出た場合には、確定申告によって損失を3年間繰り越して、翌年以降の利益と相殺できる「繰越控除」という制度(「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」という)もあるが、これもNISAでは利用ができない。

つまり、NISA口座では“プラスが出ればお得だが、マイナスが出たときの救済措置が使えない”と覚えておこう。マイナス面については、すでにほかに運用口座を持っている人は特に注意する必要がある。

注意点? つみたてNISAではスポット購入ができない

投資信託等を好きなタイミングで、好きな金額だけ買い付けることをスポット購入という。これが、つみたてNISAではできない。

仮に「相場がものすごく下がっているから、今がチャンス! たくさん買いたい」と思っても、つみたてNISAは定期・定額の“積み立てのみ”での利用のため、スポット購入はできない。あくまでも“積み立て”だということを頭に入れておこう。

非課税期間の終了後の選択肢は?

一般NISAとつみたてNISAの非課税期間が終了した後には、保有する株や投資信託など金融商品を売却するだけではなく、課税口座に移管することもできる。さらに一般NISAの場合は、再び非課税枠に移す「ロールオーバー」をすることができるので、運用期間や目標とする利益に達しているかなど、状況に応じて選択しよう。

? 売却【一般NISA ○/つみたてNISA ○】

保有中ならいつでも売却はできるが、非課税枠にロールオーバーするケースを除いて、非課税で受け取れる最後のタイミングとなる。ただし、損失が出ている場合には損益通算ができないので注意しよう。

? 課税口座へ移管【一般NISA ○/つみたてNISA ○】

NISAの口座ではなく、通常の課税口座(特定口座や一般口座)に移管できる。課税口座へ移すことによって利益は非課税ではなくなるが、メリットとして損益通算ができるようになる。

ただし、課税口座に移管する際には、そのときの時価が取得価格と見なされるので注意が必要。もし買い付けたときよりも値下がりしたタイミングで移管し、その後値上がりすると、実際には損失が出ているにもかかわらず、利益があったと見なされ課税されてしまう。

NISA口座から課税口座への移管はいつでも行うことができるので、値上がりしたタイミングで移管しておくのがベストだ。

? 一般NISAへロールオーバー【一般NISA ○/つみたてNISA ×】

同じ金融機関であれば、商品(投資対象)を次の5年間分の非課税枠に持ち越せる「ロールオーバー」という制度を利用できる。ロールオーバーとは「乗り換え」を意味する用語で、保有する金融商品を、翌年の非課税投資枠に移管することを意味する。

手続きが必要だが、ロールオーバーによって非課税期間が最長10年間まで延びるので、長く運用したい人にとってはぴったりの制度だろう。

さらに、時価が一般NISAの年間非課税枠120万円を上回っていたとしても、非課税枠として移すことができるのも大きな特長の一つ。

一般NISAの投資可能期間は2023年12月末で終了するので、2024年1月以降にロールオーバーをする際には、新NISAの制度に合わせることとなる。

なお、つみたてNISAはロールオーバーできないので注意が必要だ。
非課税期間終了後の選択肢

一般NISA

つみたてNISA

売却

課税口座への移管

一般NISA口座へのロールオーバー

×

NISAの特徴を知って、自分に合った制度を選ぼう

成人向けのNISA制度である「一般NISA」と「つみたてNISA」では、非課税期間や非課税額のほか、対象となる金融商品などがさまざまな点で異なっている。

一般NISAは「短期間で非課税のメリットを得たい」人向き、つみたてNISAは「中長期で投資をしたい」人向きなど、特徴を理解して、自分の投資方針に合った制度を選ぶことが大事だ。

また各証券会社のNISA口座は、「コスパよく投資したい人」向け、「少額から始めたい人」向けなど、それぞれの特徴がある。また取り扱い商品も異なる。各社のサイトで実際にサービスや取り扱い商品を見比べてみるのもいいだろう。

この記事の監修者

市川雄一郎
生活者目線の自由なトークが持ち味。物腰やわらかで明快な講義は、全国に多数のファンがいる。
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP(R)。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。1969年生まれ。グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、金融機関の職員や顧客に対する講義や講演も行う。「日本経済新聞」「日経ヴェリタス」「朝日新聞」「東洋経済」「週刊ダイヤモンド」などへの原稿執筆・コメント提供のほか、ラジオ日経などのメディア出演も多数。主な著書に『投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え』(日本経済新聞出版)がある。
グローバルファイナンシャルスクール(GFS)公式サイト(外部リンク)
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