NISA口座と特定口座の違いとは?使い分けと併用のポイントを解説

NISA口座と特定口座の違いとは?使い分けと併用のポイントを解説

NISA口座と特定口座は、どちらも投資信託や株式などを購入できる証券口座です。証券口座には、NISA口座と特定口座のほかに一般口座もあり、特定口座はさらに「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の2種類に分かれるため、どのように使い分ければいいのかわからない人も少なくないのではないでしょうか。

本記事では、NISA口座と特定口座の主な違いや、証券口座の種類と特徴、使い分け・併用のポイントのほか、併用時の注意点などについて解説します。

NISAについては、下記の記事をご覧ください。
新NISAはいつから?2024年からの変更ポイントと注意点を解説

NISA口座と特定口座の主な違い

NISA口座と特定口座の主な違いは、利益や配当に税金がかかるか否かという点です。

通常、投資して利益が出たら、税金がかかります。例えば、1万円で買った投資信託が1万2,000円に値上がりしたタイミングで売却した場合、値上がりによって得られた利益2,000円に20.315%の税金が課税されます。しかし、NISA口座での取引であれば税金がかかりません。

証券口座の種類と税務手続きに関する特徴

証券口座の種類と税務手続きに関する特徴

証券口座には4つの種類があり、それぞれ税務手続きは異なります。

■証券口座の種類と特徴

種類

税金

利益の確定申告

年間取引報告書

損益通算・繰越控除

NISA口座

非課税

不要

作成不要

不可

特定口座
(源泉徴収あり)

課税

不要

金融機関が作成

特定口座
(源泉徴収なし)

課税

必要

金融機関が作成

一般口座

課税

必要

自分で作成

※表は横にスクロールできます。
証券口座の特徴に応じて、投資目的や方針に合った口座を利用しましょう。

NISA口座

NISA口座は、2014年に始まった投資利益の非課税制度である、NISAで取引を行うための口座です。NISA口座には、それ以外の口座とは異なる4点の特徴があります。

売却益や配当金にかかる税金が非課税

NISA口座の投資で得られた売却益や配当金には、税金がかかりません。そのため、確定申告も不要です。一方、NISA口座以外の証券口座との損益通算ができないという難点もあります。

開設できるのは1人1口座のみ

NISA口座は、1人1口座しか開設できません。そのため、NISA口座の開設申込みをする際は、「ほかの金融機関でNISA口座を開設していないか」といった点が税務署で審査されます。
申し込んだ金融機関以外の金融機関でNISA口座を保有している場合は、一度口座を閉じるか、金融機関の変更手続きをしなければなりません。

つみたて投資枠と成長投資枠の2つの枠が設定されており、投資上限額が設定されている

NISAには、つみたて投資枠と成長投資枠の2つの枠が設定されており、それぞれ投資上限額が設定されています。
つみたて投資枠は、一定の条件を満たす投資信託などを積立形式で購入できる投資枠で、年間120万円まで投資が可能です

一方、成長投資枠は株式やETFなど幅広い金融商品に投資でき、投資枠の上限は年間240万円です。

非課税保有限度額が設けられている

NISA口座では保有限度額も設定されていて、2つの枠の合計で1,800万円まで、かつそのうち成長投資枠は1,200万円までしか保有できません。

NISA口座の保有商品が1,800万円に達した時点で、NISA口座では運用できなくなります。ただし、保有商品の一部を売却すれば、その分の枠が翌年に復活するため、再度NISA口座で投資することが可能です。

源泉徴収ありの特定口座

源泉徴収ありの特定口座は、利益や配当金にかかる税金があらかじめ源泉徴収される証券口座です。そのため、基本的には自分で確定申告をする必要はありません。
ただし、複数の証券会社で口座を持っていて損益通算をしたい場合や、損失を3年間繰り越せる繰越控除を利用したい場合は、確定申告が必要です。

源泉徴収ありの特定口座は、確定申告の手間をかけずに投資をしたい人にとって便利です。一方、投資利益が20万円以下だった場合、払わなくてもいい税金を引かれてしまう可能性があるというデメリットもあります。このデメリットに気をつけなければならないのは、下記の2点の両方に該当する人です。
<投資利益が20万円以下だった場合に注意しなければならない人>
・年収2,000万円以下の給与所得者で、医療費控除などの申告がない
・給与所得以外の所得が年間20万円以下
これらの条件を満たす人は確定申告が免除され、給与所得以外の所得に対する税金がかかりません。
しかし、源泉徴収ありの特定口座での取引では、利益にかかる税金が自動的に源泉徴収されます。この税金は、確定申告をしても還付されないため、注意が必要です。

源泉徴収なしの特定口座

源泉徴収なしの特定口座とは、投資利益にかかる税金が源泉徴収されず、確定申告が必要になる特定口座です。特定口座の取引については、証券会社から年間取引報告書が発行されるため、それをもとに確定申告を行いましょう。

ただし、年収2,000万円以下の給与所得者で確定申告をする必要がない人は、投資利益を含むそのほかの所得が年間20万円までなら、確定申告と納税は不要です。また、損益通算や繰越控除も可能です。

一般口座

一般口座は、証券会社から年間取引報告書が発行されない証券口座です。そのため、投資で利益が生じた場合、自分で譲渡損益の計算を行って確定申告をしなければなりません。損益通算や繰越控除も可能です。

年間取引報告書が発行されない一般口座は、通常はあまり利用されることのない証券口座です。ただし、非上場の未公開株などは特定口座での取引ができないため、一般口座が必要になります。

NISA口座と特定口座は併用もできる

NISA口座と特定口座は併用もできる

NISA口座と特定口座は、併用できます。NISA口座と同時に特定口座を開設することも、何ら問題ありません。NISA口座の取引は、年間の投資限度額と非課税保有限度額が決められているため、限度額を超える投資をしたい場合は特定口座を併用しましょう。
口座の併用は、源泉徴収ありの特定口座でも源泉徴収なしの特定口座でも可能で、後から源泉徴収の有無を変更することもできます。

なお、NISA口座は1つの証券会社でしか開設できませんが、特定口座や一般口座は複数の証券会社で保有できます。それぞれの証券会社の強みを活かして投資をしたい場合も、NISA口座や複数の証券口座を使い分けることが可能です。

とはいえ、無理に併用する必要はありません。例えば、月数万円の投資信託の長期積立のみを行う予定の人などは、NISA口座だけを使うことで利益の全額が非課税になります。口座の併用は、投資方針や投資先に応じて検討してください。

NISA口座と特定口座の使い分け・併用のポイント

NISA口座と特定口座を併用するにあたって、どのように使い分ければいいか悩むこともあるのではないでしょうか。使い分け方を考える際には、下記の3つのポイントを念頭に置いて判断するのがおすすめです。

投資したい商品が対象に含まれるか

NISA口座では、購入できる商品とできない商品があります。例えば、個人向け国債や社債、毎月分配金を受け取れる投資信託などはNISA口座では購入できません。このような金融商品を買いたい場合は、特定口座で取引をすることになります。

また、NISA口座はそのほかの証券口座と損益通算ができないため、「損失が生じるリスクが高い投資商品は特定口座で投資する」といった形で使い分ける方法も考えられます。
投資商品にはさまざまな種類があり、それぞれ投資先やリスクなどが異なります。まずは、希望に合致する商品がNISA口座で買えるかどうか確認してみましょう。

購入頻度が多いかどうか

NISA口座は、年間の投資限度額が決まっています。つみたて投資枠の120万円、成長投資枠の240万円の枠は、たとえ保有商品を売却しても復活しません。

短期売買を繰り返していると、すぐに枠が埋まってしまって、それ以上の投資ができなくなってしまいます。そのため、購入頻度が多くなりそうな投資を行う場合は、NISAには適していません。
NISA口座は、長期的な保有を前提とした投資商品の購入に活用するのがおすすめです。

株式を購入したい場合に非課税枠に収まるか

株式の中には、NISAの年間投資枠に収まらない高額な銘柄もあります。そのような株に投資をする場合は、特定口座で取引をしなければいけません。

日本株は、通常100株単位で取引します。1株が3万円の株式なら、基本的には、一度の取引で最低300万円必要です。一方、NISAで株式を購入できる成長投資枠の年間投資枠は240万円であるため、枠を超えてしまいます。

100株の単位に満たない株式を購入する方法もありますが、購入できる銘柄が限定されていて、議決権や株主優待を受ける権利もありません。そのため、株主優待などを目的に高額な株式を購入する場合は、NISA口座ではなく、特定口座を使う必要があります。

NISA口座と特定口座を併用する際の注意点

NISA口座と特定口座を併用する際の注意点

NISA口座と特定口座は併用が可能ですが、特定口座を複数保有している場合とは異なる注意点があります。NISA口座と特定口座を併用する際は、下記の2点に注意してください。

特定口座からNISA口座への移管はできない

特定口座で購入した投資商品は、NISA口座に移すことはできません。反対に、NISA口座で購入した投資商品を特定口座に移すことは可能です。

例えば、特定口座で投資信託Aを購入し、NISA口座で投資信託Bを購入した人が、「特定口座の投資信託AもNISA口座で運用したい」と思っても、移管することはできません。特定口座のまま運用を続けるか、売却するかどちらかを選択することになります。
NISA口座で購入した投資信託を特定口座に移した場合は、税金の計算で下記のような処理が必要になることも押さえておかなければなりません。

NISA口座から特定口座に移した場合の保有限度額と税金

NISA口座で購入した投資信託を特定口座に移した場合、NISA口座の非課税保有限度額が増えます。また、特定口座で生じた利益の税金の計算では、投資信託の購入価額は、特定口座に移管したときの金額となります。

例えば、NISA口座で投資信託Cを10万円で購入し、15万円に値上がりしたタイミングで特定口座に移管した場合、投資信託を移管したことで、NISA口座の非課税保有限度額が10万円分増えます。

また、特定口座に移管した投資信託は15万円で購入したものとみなされるため、その後さらに17万円に値上がりしたタイミングで売却した場合、所得税の課税対象となる利益は17万円−15万円=2万円です。

含み損がある状態で移管した際の税金

NISA口座から特定口座への移管をする際、含み損がある状態で移管してしまうと、その後に値上がりして利益が出たときに、本来よりも多くの税金がかかる点に注意が必要です。

例えば、NISA口座で投資信託Dを20万円で購入し、17万円になったときに特定口座に移管し、その後23万円に値上がりした際に売却したというケースで考えてみましょう。この場合、購入した金額と売却した金額の差は3万円ですが、所得税は23万円−17万円=6万円に対してかかることになり、実態よりも多くの税金がかかってしまいます。

NISA口座から特定口座への移管は可能ですが、タイミングには注意してください。

NISA口座の損失は損益通算できない

NISA口座とそのほかの証券口座(特定口座、一般口座)の利益と損失は、損益通算ができません。

損益通算とは、異なる証券口座の投資利益と損失を合算して税金の計算をすることです。例えば、ある年に証券会社Eで開設した証券口座eの利益が50万円、証券会社Fで開設した証券口座fの損失が10万円だった場合、税金は50万円−10万円=40万円に対して課せられます。

ところが、NISA口座は利益に税金がかからない反面、損失をそのほかの証券口座の利益から差し引くこともできません。そのため、ある年に証券会社Eで開設した証券口座eの利益が50万円、NISA口座の損失が15万円だった場合、50万円の利益から15万円を差し引くことはできず、50万円全額に対して税金がかかります。

また、上記とは反対に、証券口座eの損失が15万円、NISA口座の利益が50万円だった場合も、損益通算はできません。NISA口座はそもそも利益が非課税なので、損失を差し引く対象がないのです。このケースでは、確定申告をすることで繰越控除が可能です。翌年以降、3年以内にNISA口座以外の証券口座で利益が出たら、15万円の損失を繰り越して利益から差し引けます。

NISA口座で保有している商品は、損失が発生している状態で売却しても損益通算や繰越控除ができません。とはいえ、保有したままでは損失が拡大すると予想される場合や、手元資金が不足した場合など、売却せざるをえないこともあります。
できるだけNISA口座で損失を抱えるリスクを軽減したい場合は、ハイリスクな商品をNISA口座で購入しないようにするのがおすすめです。

NISA口座から特定口座への移管については、下記の記事をご覧ください。
特定口座や一般口座からNISA口座に移管は可能?検討すべきタイミング

NISA口座と特定口座を上手に使い分けよう

NISA口座と特定口座には、それぞれ異なる特徴があります。投資初心者の人が少額で積立投資をするだけであれば、NISA口座だけを使う形で問題ありませんが、投資の幅を広げていきたい場合は、どの口座で取引をするのが最も適しているかを判断しなければなりません。投資商品の性質や投資の目的などに応じて、上手に使い分けましょう。
また、投資する際は口座の種類だけでなく、口座を開設する金融機関ごとの特徴を踏まえて、開設先を検討することが必要です。

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