犬の気管虚脱とは?原因や症状、治療法を解説

犬の気管虚脱とは?原因や症状、治療法を解説

犬の気管虚脱とは、気管の一部が変形してつぶれ、気道が狭くなる疾患です。空気の通り道である気管が狭くなるため、咳や異常な呼吸音といった症状があり、進行すると呼吸困難や窒息を引き起こすこともあります。

一度気管虚脱で気道がつぶれてしまうと、自然に治ることはありません。そのため、予防することと、愛犬の異変にいち早く気づいて治療を開始することが重要です。今回は、犬の気管虚脱の原因や症状、治療法などについて解説します。
ガイア動物病院 院長 松田唯

監修者 ガイア動物病院 院長 松田唯

北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。2019年7月、ガイア動物病院開設、院長となる。

※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。

mokuji目次

  1. 犬の気管の一部が狭くなる気管虚脱
  2. 犬の気管虚脱の症状
  3. 犬の気管虚脱の原因
  4. 犬が気管虚脱になってしまったときの治療法
  5. 犬の気管虚脱の予防法
    1. 肥満を予防する
    2. ハーネス(胴輪)を使用する
    3. 興奮させすぎない
    4. 犬にとっての快適な温度を保つ
    5. 定期的な健康チェックを行う
  6. 犬の気管虚脱は進行させないことが重要!

犬の気管の一部が狭くなる気管虚脱

犬がかかる気管虚脱は、気道の一部がつぶれて呼吸がしにくくなる病気のことです。
気管は酸素を取り込んで肺に送り、二酸化炭素を排出するための空気の通り道です。通常の気管は軟骨に守られて丸い筒状をしていますが、何らかの理由で軟骨が形を保てなくなると、その部分がひしゃげてしまいます。ひしゃげた部分は空気が通りにくくなるため、咳が出やすくなったり、異常な呼吸音がしたりといった症状が出るのです。

小型犬でよく発症が見られますが、中型犬や大型犬で起こらないわけではなく、全犬種で注意が必要といえるでしょう。また、中年期以降の犬で発症が多いですが、若年齢でも発症することはあります。

犬の気管虚脱の症状

気管虚脱になると、初期は繰り返す乾いた咳や、水を飲むときにむせることなどが特徴です。犬が興奮したり運動したりするときに症状が出やすく、進行すると「ゼーゼー」という荒い呼吸や、「ガーガー」という喉が鳴るような呼吸音が聞かれるようになります。呼吸がしにくいことで食べることがおっくうになり、食欲不振になる犬もいるようです。

また、犬は体温が上昇したとき、口を大きく開けた浅く早い呼吸で体温を下げようとする「パンティング」をしますが、気管虚脱ではパンティングがしにくくなり、いつまで経っても体温が下がりません。そのため、運動してしばらく経ってもパンティングが収まらないことも、気管虚脱の症状といえるでしょう
さらに悪化すると呼吸困難やチアノーゼを起こし、失神や窒息するおそれもあります。

なお、気管虚脱は症状の進行度合いによって、下記の4つのグレードで表されます。

<犬の気管虚脱の進行度合い>
・グレード1:気管の直径の減少率25%程度
・グレード2:気管の直径の減少率50%程度
・グレード3:気管の直径の減少率75%程度
・グレード4:気管の直径の減少率90%程度

気管虚脱は、咳や呼吸音などの症状や触診である程度の診断が可能ですが、進行度合いを測るには、レントゲン撮影が必要です。

犬の気管虚脱の原因

犬の気管虚脱の原因

気管虚脱の原因はよくわかっていないことも多いですが、要因のひとつとして遺伝が疑われています。シーズーやチワワ、トイプードル、ヨークシャーテリアなど、短頭種や小型犬で発症が多いため、これらの犬種が遺伝的に要因を持っている可能性もあるでしょう。
ただし、柴犬やラブラドールレトリバーといった、中型犬・大型犬で発症することがあり、油断はできません。

遺伝以外としては、首輪の締め付け、吠えすぎ、肥満といった頸部への負担、飼い主のたばこなども、発症や悪化の原因と疑われています。過度なパンティングも気管に負担をかけるため、気管虚脱との関連が否めません。
また、気管虚脱の犬の半数近くが歯周病を発症しているとされるため、歯周病との関連も疑われています。

犬が気管虚脱になってしまったときの治療法

気管虚脱は、初期で軽度なら薬の内服で気管を拡張したり、咳を抑制したり、痰の排出を促したりといった対症療法を行います。関連が疑われる歯周病の治療や、肥満の場合は減量を行います。

気管虚脱は自然に治癒することはないため、症状が重くなった場合は手術を選択することになります。手術による治療では、気管を外側から補強する、内側から器具で広げるなどの方法があります。ただし、手術自体にもリスクがあり、症状や犬の体力、性格にもよるため、どの犬でも選択できるとは限らないことに注意が必要です。

また、手術で治療しても定期健診や投薬を続けなければならない場合があり、再発のおそれもゼロではありません。

犬の気管虚脱の予防法

犬の気管虚脱の予防法

犬の気管虚脱の原因ははっきりしておらず、遺伝的な要因も疑われています。しかし、そのほかの原因については、飼い主の注意によって防ぐことも可能です。
ここでは、犬の気管虚脱を予防するために飼い主ができることについてご紹介します。

肥満を予防する

犬は肥満になると脂肪で気管を圧迫し、気管虚脱になりやすいとされています。また、少々運動しただけでも息が上がりやすくなり、過度なパンティングが気管虚脱を引き起こす原因になることもあります。
愛犬が食べすぎや運動不足にならないよう、飼い主がしっかり管理してください。

ハーネス(胴輪)を使用する

サイズの合わないきつい首輪は犬の気道を圧迫し、気管虚脱の原因になるとされています。特に、散歩の際にぐいぐいリードを引っ張るタイプの犬は気道を圧迫してしまうため、できるだけハーネス(胴輪)を使うようにしましょう。胴体を固定するハーネスであれば、気管に負担がかかりにくいです。

興奮させすぎない

過度な運動や興奮、吠えなどは気管に負担をかけ、気管虚脱を引き起こしたり悪化させたりする可能性があります
散歩など適度な運動は必要ですが、気管虚脱の疑いがある場合はドッグランで走り回るなど、運動のさせすぎは避けるようにしましょう。また、犬が興奮しすぎているときは「オスワリ」や「フセ」などをさせて、すぐに落ち着けるように普段から訓練しておくことが重要です。

犬にとっての快適な温度を保つ

温度や湿度が高すぎると体温を下げようとして過度なパンティングにつながるため、適切な温度を保ってください。犬にとって快適な温度は20〜25℃程度、湿度は50〜60%程度とされていますが、犬の年齢や被毛の長さなどによっても違いがあります

犬が暑さを感じているときは、冷たいフローリングに寝そべっている、水をたくさん飲むなどの様子が見られます。特に、シーズーやパグ、フレンチブルドッグといった短頭種は暑さに弱いとされているため、少し低めの温度を保ちましょう。

定期的な健康チェックを行う

定期的な健康チェックで、気管虚脱につながりそうな兆候がないかを確認することも、予防には重要です。肥満や歯周病は気管虚脱につながる可能性があるため、注意してください。

ただし、飼い主が注意していても気管虚脱を発症してしまう犬はいます。早期に発見して進行を遅らせるためにも、普段から犬の様子をよく観察し、異常を感じたら早めに動物病院を受診しましょう。

犬の気管虚脱は進行させないことが重要!

犬の気管虚脱は、一度発症すると自然に治癒することはありません。気管がつぶれて空気が通りにくくなればさまざまな症状が出ますし、何より犬が苦しい思いをするでしょう。
発症の原因はわかっていないこともあるため、飼い主が気をつけていても気管虚脱になってしまうことはあります。発症したら進行しないように注意するとともに、症状をやわらげるため定期的な通院が必要です。

どのような検査や治療が必要かは、実際に動物病院に行ってみないとわかりません。診療費が不安な場合は、ペット保険に加入しておくことをおすすめします。
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ガイア動物病院 院長 松田唯

監修者 ガイア動物病院 院長 松田唯

埼玉県生まれ。北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。
2019年7月、ガイア動物病院(東京都杉並区)開設、院長となる。大学時代は医療の専門用語が苦手だったこともあり、治療法や薬について分かりやすく説明し、治療法のメリット・デメリットを理解して飼い主さまが選択できる診療を心掛けるようにしています。
ガイア動物病院(外部リンク)

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