猫の脱水症状の見分け方は?治し方や水を飲まないときの対処法を解説
特に子猫や老猫は脱水症状が重症化しやすく、早期発見と適切な対処が重要です。
本記事では、猫の脱水症状を見分ける方法やその原因、水を飲まないときの対処法について詳しく解説します。また、日頃から気をつけるべき予防方法についても紹介しますので、大切な愛猫の健康管理にぜひお役立てください。

監修者 まさの森・動物病院 院長 安田賢
日本獣医生命科学大学卒業。
幼少期より動物に興味を持ち、さまざまな動物の飼育経験を持つ。
2012年11月、石川県金沢市にまさの森・動物病院を開業。
※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。
目次
猫の脱水症状を見分ける方法
飼い主が日頃から以下のような変化に気を配り、早期発見することが大切です。
●呼吸が普段より荒くなる
●いつもの食事を残すようになる
●普段の元気な様子が見られない
●目が窪んで見える
●被毛の艶が失われパサついている
●肉球や鼻の色が普段と異なる
●排尿の回数が減少する
●皮膚の弾力が低下する
●歯茎や舌が乾燥している
●よだれの量が変化する
健康な状態であれば皮膚はすぐに元の位置に戻りますが、脱水状態では2秒以上かかることがあります。皮膚の戻りが遅いほど脱水が進行している可能性が高いため、獣医師への相談が必要です。
テストを行う際は、愛猫の通常の状態を知っておく必要があります。年齢や体格によって個体差があるため、普段から健康な時の皮膚の戻り具合を確認しておくと、異常の早期発見につながります。
猫が脱水症状になる原因
猫の場合、単に水分摂取が不足しているケースもあれば、さまざまな疾患が背景にある場合もあります。状況に応じた適切な対処が必要となるため、原因を理解することが重要です。
十分な水分摂取ができていない
水飲み場の設置場所が騒がしかったり、水飲み皿の高さが合わなかったりすると、猫は十分な水分を摂取できません。また、水が古くなって新鮮さを失っていたり、温度が冷たすぎたりする場合も、飲水を避ける原因となります。
口内環境の問題も飲水量に影響を与えます。
口内炎や歯周病などによって痛みを感じている場合、水を飲むことを躊躇してしまいます。このような場合は、獣医師による口腔内の検査と治療が必要です。
病気が原因で水分を失っている
消化器系の不調による直接的な水分損失から代謝異常による体内の水分バランスの崩れまで、その機序は疾患によって異なります。病気が原因の場合、単なる水分補給だけでは改善せず、原因となる疾患の治療が必要になります。
以下に、脱水を引き起こす主な疾患について説明します。
下痢や嘔吐
また、肝疾患や膵炎などの内臓疾患でも、食欲不振や消化器症状を通じて脱水状態に陥ることがあります。
糖尿病
その結果、多飲多尿の状態となり、適切な治療を行わないと重度の脱水に進行する可能性があります。
腎臓病
特に高齢猫は慢性腎不全を発症するリスクが高く、継続的な管理が必要です。
熱中症
夏場だけでなく、こたつなどの暖房器具の使用時期も注意が必要です。
利尿剤の影響
ただし、これは治療上必要な処置であるため、自己判断で投薬を中止してはいけません。水分摂取量の調整など、獣医師の指示に従った適切な管理が重要です。
子猫と老猫の脱水症状は特に注意が必要
それぞれの年齢における脱水症状の特徴と注意点について解説します。
子猫の脱水症状
これらの症状は急速に体内の水分を失わせ、短時間のうちに重度の脱水状態へと進行する可能性があります。特に食事内容や量の変更によって起こる消化器系のトラブルは、子猫にとって深刻な脱水のリスクとなります。
普段から子猫の食欲や排泄状態を注意深く観察し、下痢や嘔吐が見られた場合は、すぐに適切な水分補給を行いましょう。症状が続く場合は、電解質のバランスを整えるために、猫用の経口補液を与えることが有効です。ただし、症状が改善しない場合は、速やかに獣医師の診察を受けてください。
老猫の脱水症状
特に注意が必要なのは慢性腎臓病で、老猫の代表的な疾患の一つとして知られています。腎機能が低下すると、体内の水分バランスを適切に保つことが難しくなり、持続的な脱水状態に陥りやすくなるのです。
腎臓病が進行すると、多尿となって体内の水分が過剰に失われていきます。この状態は完治が難しく、徐々に症状は悪化していくため、定期的な通院による点滴治療や、自宅での継続的な水分管理が必要となります。
また、高齢猫は喉の渇きに対する感覚が鈍くなっていることもあり、十分な水分を自発的に摂取できない場合があります。
そのため、食事形態の工夫や、水分補給の方法を複数用意するなど、きめ細かなケアが求められます。健康診断を定期的に受けることで、脱水につながる疾患を早期に発見し、適切な治療を開始することが重要です。
猫が脱水症状を起こしているときの対処法
ただし、猫が自発的に水を飲まない、または飲めない状態の場合は、スポイトを使用して少量ずつ与えるとよいでしょう。この際、猫用の経口補水液を使用すると、失われた水分と電解質を同時に補うことができます。
水分補給の方法として、フードの工夫も有効です。通常の食事をお湯でふやかすことで、食事からの水分摂取量を増やすことができます。下痢や嘔吐などの症状がある場合は、無理に食事や水を与えることは避け、速やかに動物病院を受診しましょう。
症状の原因が腎臓病や糖尿病などの基礎疾患にある場合、自宅での水分補給だけでは改善が難しく、点滴による治療が必要になることがあります。慢性的な症状の場合、獣医師から点滴セットの提供を受けて自宅で継続的なケアを行うこともあります。
重要なのは、脱水症状を発見したらできるだけ早く獣医師に相談することです。症状が軽いうちに適切な治療を始めることができれば、重症化を防ぎ、愛猫の早期回復につながります。
猫の脱水症状を予防するための日頃のケア
猫は水分を自発的に摂取する習慣が少なく、のどの渇きにも鈍感な動物です。そのため、飼い主による適切な環境整備と日常的なケアが欠かせません。
以下に、効果的な予防法と継続的なケアの方法について説明します。
フードの種類と水分量に注意する
ドライフードには約10%の水分しか含まれていないのに対し、ウェットフードには70%前後の水分が含まれています。水分摂取が少ない猫には、ウェットフードを取り入れることで、食事からの水分補給を促すことができます。
フードを与える際は、電子レンジで軽く温めることで香りが強くなり、食欲を刺激する効果も期待できます。また、ドライフードを使用する場合は、お湯でふやかして与えることで水分量を増やすことができます。
新鮮な水をいつでも飲めるようにする
自動給水器の利用も効果的です。常に新鮮な水が循環し、水温も一定に保たれるため、猫が飲水しやすい環境を作ることができます。また複数の場所に水飲み場を設置すると、猫が好む場所で水を飲めるようになります。
室温管理を徹底する
特に暑い季節は、猫が涼しい場所を選べるよう、複数の休息スペースを用意することが大切です。また、直射日光が当たる場所を避け、適度な換気を心がけましょう。
定期的な健康診断を受ける
血液検査では腎機能や血糖値をチェックし、尿検査では尿の濃縮具合を確認します。これらの検査結果から、脱水のリスクとなる健康状態の変化を早期に把握することができます。異常が見つかった場合は、獣医師の指導のもと、適切な予防措置を講じることが可能です。
愛猫の健康を守って脱水症状を防ごう
水分摂取量の管理、快適な環境作り、定期的な健康診断など、飼い主ができる予防策を確実に実践することで、多くの場合、脱水症状は防ぐことができます。しかし、予期せぬ病気や事故による脱水症状に備えて、経済的な準備も重要です。
検査や治療の費用は症状や原因によって大きく異なります。特に点滴治療や入院が必要になった場合などは、高額な医療費になることが多いため、愛猫の健康と飼い主の経済的な負担を考慮すると、ペット保険への加入を検討することをお勧めします。
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※本記事では一般的な例をもとに情報をまとめています。各社商品やプランによっては当てはまらないケースもあります。また、情報は公開日現在のものです。各種状況や法令情報等につきましては、公的機関等で最新情報をご確認ください。

監修者 まさの森・動物病院 院長 安田賢
日本獣医生命科学大学卒業。
幼少期より動物に興味を持ち、さまざまな動物の飼育経験を持つ。
2012年11月、石川県金沢市にまさの森・動物病院を開業。
・獣医がん学会
・日本エキゾチックペット学会
・鳥類臨床研究会(鳥類臨床研究会認定医)
・爬虫類・両生類の臨床と病理のための研究会
●まさの森・動物病院(外部リンク)
※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。