猫も風邪をひく?猫の風邪症状・原因・治療法を解説
一般的に「猫風邪」と呼ばれるこの病気は、ウイルスや細菌が原因で引き起こされる呼吸器の感染症です。
特に子猫や免疫力が低下している猫に多く見られ、放置すると症状が悪化したり、合併症を引き起こしたりすることもあるため、早めの対応が重要です。
本記事では、猫風邪の主な症状や原因について詳しく解説し、適切な治療方法や家庭でできるケアについてもご紹介します。また、猫風邪を予防するための方法や注意点についても触れ、愛猫の健康を守るための知識をわかりやすくお伝えします。

監修者まさの森・動物病院 院長 安田賢
日本獣医生命科学大学卒業。
幼少期より動物に興味を持ち、さまざまな動物の飼育経験を持つ。
2012年11月、石川県金沢市にまさの森・動物病院を開業。
※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。
目次
猫風邪とはどんな病気?
猫風邪は、ヘルペスウイルスやカリシウイルス、クラミジアなどの病原体による上部気道感染症の総称で、適切な治療をしないと重症化するリスクがあります。
猫風邪の主な症状は、鼻水やくしゃみ、発熱、食欲低下といった人の風邪に似た症状に加えて、目やに、涙、結膜炎、角膜炎、よだれ(流涎)、口内潰瘍などが現れます。さらに、重症化すると肺炎を引き起こすことがあり、命に関わる事態に発展する可能性もあります。
特に注意が必要なのは、免疫力の低い子猫や高齢猫です。これらの猫は病気に対する抵抗力が弱いため、一気に症状が悪化することも珍しくありません。また、複数の病原体に同時に感染することもあり、その場合はより症状が深刻になりやすい傾向があります。
特にヘルペスウイルスが原因の場合、一度回復しても神経細胞などに潜伏するため、免疫力が低下した時などに再発することがあります
猫風邪の主な症状
そのため、以下のような症状が単独で、または複数組み合わさって現れます。
【猫風邪の主な症状】
●元気低下、食欲不振
●くしゃみ、せき
●鼻水(初期は透明、重症化すると黄色や緑色に)
●発熱
●目やに、涙が多い、結膜の充血や腫れ
●よだれ(流涎)が増える
●きつい口臭
●口内炎、口内潰瘍(特に猫カリシウイルスの場合)
●肺炎(重症化した場合)
●角膜炎(まれに発症)
症状の見分け方として、まず注目すべきは鼻や目の状態です。初期段階では透明な鼻水やわずかな目やにが見られますが、症状が進行すると鼻水や目やにの色が黄色や緑色に変化し、粘り気が強くなってきます。
発熱の有無も重要なチェックポイントです。猫の平熱は38〜39度程度ですので、それ以上の熱がある場合は要注意です。耳や鼻の頭を触ってみて、いつもより熱く感じる場合は体温計で確認しましょう。
また、食欲の変化にも気を配りましょう。口内炎による痛みのために、普段の食事量が減少することがあります。特に、これらの症状が数日間改善せず続く場合や、症状が徐々に悪化していく場合は、すぐに動物病院を受診することが大切です。
猫風邪の原因
●猫ヘルペスウイルス
●猫カリシウイルス
まれにクラミジアなどの細菌が原因となることもあります。これらの病原体は、感染した猫の鼻水やくしゃみなどの分泌物を介して感染が広がります。
人への感染については、ヘルペスウイルスやカリシウイルスは種が異なるため感染することはありませんが、クラミジアは人にも感染する可能性があるため、感染猫のケア時には手洗いなどの衛生管理を徹底することが重要です。
猫ヘルペスウイルス
感染すると、鼻水、くしゃみ、発熱などの症状に加え、目やにの増加や結膜炎、角膜炎などの目の症状が特徴的に現れます。さらに重症化すると肺炎を引き起こすこともあります。
感染経路は、感染した猫の鼻水や涙、よだれなどの分泌物との直接接触や、くしゃみによる飛沫感染が主です。多頭飼育の場合は、食器やトイレの共有、グルーミング行為を通じても感染が広がります。
猫カリシウイルス
まれに関節炎を引き起こし、足を引きずるような症状が出ることもあります。
猫風邪の治療
ここでは、病院での治療から家庭でのケアなどの具体的な対処法、治療費用の目安などについても解説します。
病院での治療|検査・薬・点滴など
治療の中心となるのは、インターフェロンなどの抗ウイルス薬の投与、そして二次感染を防ぐための抗生物質の処方です。
症状に応じて、点眼薬や点鼻薬も使用されます。特に脱水がある場合は点滴治療が必要になることもあります。また食欲が低下している場合は、食欲増進剤が処方されたり、痰を切る作用のある薬が使われたりすることもあります。
猫風邪の治療費用の目安
投薬のみの軽症例では1回の診療につき2,000〜3,000円程度ですが、点滴などの処置が必要な重症例では7,000〜10,000円ほどかかることもあります。
家庭でのケア|食事・水分・保温でサポート
室温は22〜25℃前後、子猫の場合は28〜30℃前後を目安に保ち、湿度は50〜60%程度を維持しましょう。これによりウイルスの活動を抑制し、猫の体調回復を助けることができます。
水分と栄養の補給も欠かせません。
食欲が低下している場合は、温かいものや匂いの強いフードを与えることで食欲を促すことができます。獣医師と相談の上で、強制給餌が必要になることもあります。
猫風邪の治療期間|自然治癒は難しい?
軽症の場合は1〜2週間程度で回復することもありますが、重症化すると治療期間が長引くことがあります。
健康で体力のある若い猫であれば自然治癒する可能性もありますが、子猫や老猫の場合は重症化のリスクが高いため、自然治癒を期待して様子を見ることは危険です。
猫風邪が治らない・再発する場合は?
また、カリシウイルスは症状が治まった後も長期間ウイルスを排出し続けることがあります。
再発を防ぐには、ストレス管理や生活環境の整備が重要です。室温や湿度の管理、清潔な環境の維持、十分な栄養補給を心がけ、定期的な健康チェックを行うことで、再発のリスクを軽減することができます。
猫風邪の予防方法
そのため予防対策が非常に重要になります。
定期的なワクチン接種や適切な環境管理など、できる限りの予防措置を講じることで、愛猫を猫風邪から守ることができます。
ワクチン接種|子猫のうちに予防接種を!
このワクチンには、猫ヘルペスウイルスと猫カリシウイルス、そして猫汎白血球減少症に対する予防効果が含まれています。感染を完全に防ぐことはできませんが、もし感染した場合でも、症状を軽減し、症期間を短縮する効果があります。
かかりつけの獣医師と相談しながら、猫の年齢や環境に応じた最適なワクチンスケジュールを組み立てることが大切です。
衛生管理|清潔な環境でウイルスから守る
効果的な消毒には次亜塩素酸を使用する必要があります。感染猫が使用したシーツなどは、次亜塩素酸で消毒してから洗濯するのが望ましいでしょう。
室内の温度は22〜25℃前後、湿度は50〜60%程度に保つことで、ウイルスの活性を抑制することができます。温湿度計を設置して定期的にチェックし、必要に応じてエアコンや加湿器を使用しましょう。
ストレス軽減|猫風邪を悪化させないために
引っ越しや家族構成の変化、生活環境の急激な変化などがストレス要因となります。また、室温の変化や騒音、トイレの汚れなども、ストレスの原因になりえます。
適切な温度管理や清潔な環境の維持に加えて、猫が落ち着いて過ごせる空間を確保することが大切です。飼い主の過度な関わりもストレスになることがあるため、適度な距離感を保つよう心がけましょう。
多頭飼いの場合は感染猫との隔離対策も!
感染が確認された猫は、可能な限り別室で隔離して治療することが推奨されます。
また、感染猫のケア後は手指を十分に消毒し、他の猫との接触前には服を着替えるなどの配慮も必要です。
猫風邪の対策をして愛猫の健康を守ろう
なお、猫風邪の治療費は症状の程度によって大きく変わり、入院が必要になる場合もあります。万が一の高額な治療費に備えて、ペット保険への加入を検討するのもよいでしょう。
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監修者まさの森・動物病院 院長 安田賢
日本獣医生命科学大学卒業。
幼少期より動物に興味を持ち、さまざまな動物の飼育経験を持つ。
2012年11月、石川県金沢市にまさの森・動物病院を開業。
・獣医がん学会
・日本エキゾチックペット学会
・鳥類臨床研究会(鳥類臨床研究会認定医)
・爬虫類・両生類の臨床と病理のための研究会
●まさの森・動物病院(外部リンク)
※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。