犬の椎間板ヘルニアとは?症状や原因・治療法を詳しく解説

犬の椎間板ヘルニアとは?症状や原因・治療法を詳しく解説

犬の椎間板ヘルニアは、脊髄が圧迫されることで歩行障害や痛みを引き起こす病気です。特にダックスフンドやコーギーなど、特定の犬種は発症リスクが高いとされています。初期症状を見逃さず、適切な治療を受けることが愛犬の健康を守るうえで重要です。

本記事では、犬の椎間板ヘルニア仕組み症状の進行度主な原因について詳しく解説します。また、内科療法や手術などの治療方法リハビリの必要性、発症を予防するためのポイントについても紹介します。

愛犬の健康を守るために、椎間板ヘルニアについて正しい知識を身につけ、早期発見・早期治療を心がけましょう。
まさの森・動物病院 院長 安田賢

監修者 まさの森・動物病院 院長 安田賢

日本獣医生命科学大学卒業。
幼少期より動物に興味を持ち、さまざまな動物の飼育経験を持つ。
2012年11月、石川県金沢市にまさの森・動物病院を開業。

※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。

mokuji目次

  1. 犬の椎間板ヘルニアとは
    1. 脊髄を圧迫する椎間板ヘルニアの仕組み
    2. 初期症状と進行度による変化
  2. 犬の椎間板ヘルニアの主な原因
    1. 年齢や遺伝による発症リスク
    2. 注意が必要な犬種と特徴
  3. 犬の椎間板ヘルニアの治療方法
    1. 内科療法と手術の適応
    2. リハビリテーションと経過観察
  4. 犬の椎間板ヘルニアの予防のポイント
  5. 椎間板ヘルニアは早期に治療して愛犬の健康を守ろう

犬の椎間板ヘルニアとは

犬の椎間板ヘルニアとは

犬の椎間板ヘルニアは、脊椎を構成する骨と骨の間にあるクッションの役割をする椎間板が突出し、脊髄を圧迫することで神経症状を引き起こす疾患です。

椎間板は外側の固い組織である「繊維輪」と、内側にあるゼリー状の「髄核」から構成されており、加齢や遺伝的要因によって変性すると椎間板ヘルニアが発生します。

この疾患は軽度から重度まで幅広い症状を引き起こします。また首から腰までどこでも発症する場合がありますが、他の神経疾患と異なり、適切な治療によって改善が期待できる点が特徴的です。

脊髄を圧迫する椎間板ヘルニアの仕組み

脊髄を圧迫する椎間板ヘルニアの仕組み

正常な状態では、椎間板は脊椎にかかる圧力を分散する重要な役割を担っています。

外側の「繊維輪」は強靭な組織で内側の「髄核」を保護し、衝撃を吸収しています。椎間板ヘルニアを発症すると、繊維輪が変性・亀裂を起こし、内部のゼリー状の髄核が突出します。

この突出した椎間板が背骨の上にある脊髄を圧迫することで、痛みや麻痺などの神経症状が現れます。圧迫の程度によって症状の重さも変わってくることになります。

初期症状と進行度による変化

椎間板ヘルニア進行度は、5つのグレードに分かれており、それによって大きく変化します。初期段階では軽微な症状から始まりますが、徐々に重症化していくことが特徴です。
椎間板ヘルニアの進行度

進行度

主な症状

軽度
(グレード1)

背中に触れると痛がる、ソファなどに飛び乗らなくなる、運動量の減少 など

中度
(グレード2)

足元のふらつき、足を引きずるような歩き方、腰を丸めて歩く など

重度
(グレード3〜5)

四肢の麻痺、立ち上がれない、排泄のコントロールができない など

病状が進むにつれて日常生活に支障をきたす症状が現れるため、早期発見・早期治療が重要となります。

歩行の異常や痛みのサイン

初期症状として最も見逃しやすいのが、愛犬の歩き方の微妙な変化です。階段の上り下りを嫌がったり、いつもより運動量が減ったりするなどの行動変化が見られます。また、背中や首を触ると痛がる、抱き上げた時に悲鳴をあげるといった痛みのサインも重要です。

さらに、ソファやベッドへの飛び乗りを避けるようになる、散歩の距離が短くなるなど、日常生活での変化も見逃せません。

これらの変化は徐々に現れるため、飼い主が「なんとなく元気がない」と感じる程度のことが多いのが特徴です。

重症化した場合の危険な症状

椎間板ヘルニア重症化すると、後ろ足が動かなくなったり、引きずったりする明らかな麻痺症状が現れます。

特に注意すべきは、自分で排尿・排便のコントロールができなくなることです。これは脊髄の圧迫が深刻化している証拠で、緊急の治療が必要なサインとなります。また、突然立ち上がれなくなったり、四肢全体に麻痺が及ぶケースもあります。

こうした症状が24時間以内に急激に悪化した場合は、外科的処置が必要な緊急事態と判断し、速やかに動物病院を受診することが重要です。

犬の椎間板ヘルニアの主な原因

犬の椎間板ヘルニアの主な原因

椎間板ヘルニアは突然発症するように見えることもありますが、実際には複数の要因が重なって引き起こされる疾患です。

主に加齢による自然な変性と遺伝的な要素が大きく関わっており、これらのリスク要因を理解することで、愛犬の健康管理に役立てることができます。また、日常生活での外傷や激しい運動も発症の引き金になることがあります。

年齢や遺伝による発症リスク

椎間板ヘルニアの発症には年齢と遺伝が深く関わっています。それぞれ異なる影響を与えるため、愛犬の状態に合わせた注意が必要です。
椎間板ヘルニアの発症リスク要因

リスク要因

特徴

注意点

年齢

加齢により繊維輪が変性して亀裂が入りやすくなる

高齢犬ほど椎間板の弾力性が低下するため、7歳以上の犬は特に注意が必要

遺伝

軟骨異栄養症の遺伝子を持つ犬種は生まれつき髄核が固くなりやすい

若い年齢でも発症することがあり、複数箇所で同時に症状が出ることもある

どの犬種でも加齢による椎間板ヘルニアのリスクはありますが、遺伝的な要素を持つ場合はさらに発症率が高くなることを理解しておきましょう。

注意が必要な犬種と特徴

椎間板ヘルニア特定の犬種で発症リスクが高いことが知られています。特に以下の犬種は注意が必要です。

<特に注意が必要な犬種>
●ミニチュア・ダックスフンド
ウェルシュ・コーギー・ペンブローク
●シーズー
●ビーグル
●フレンチ・ブルドッグ
●ペキニーズ
これらの犬種は「軟骨異栄養犬種」と呼ばれ、遺伝性の要因で手足が極端に短い体型をしています。こうした犬種は椎間板の早期変性を起こしやすく、一般的には高齢で発生する椎間板ヘルニアを、若いうちから発症することがあります。

特にミニチュア・ダックスフンドその中でも他の犬種に比べて発症率が高いと言われているため、特別な予防的ケアが大切です。

犬の椎間板ヘルニアの治療方法

犬の椎間板ヘルニアの治療方法

椎間板ヘルニアの治療は症状の程度によって大きく異なります。軽度の場合は内科的な治療でも改善が見込めますが、重度の麻痺が生じている場合には外科手術が必要になることもあります。

治療法の選択にあたっては、愛犬の年齢や全身状態、症状の進行度合いなど、さまざまな要素を総合的に判断することが重要です。

内科療法と手術の適応

椎間板ヘルニアの治療法は症状の重症度によって、内科療法と手術適応のいずれかもしくはその両方が選択されます。

軽度の場合は、鎮痛剤や抗炎症薬などの投薬治療が主体となります。これらの薬物療法は痛みを緩和し、炎症を抑える効果があり、安静と併用することで症状の改善が期待できます。

一方、四肢の麻痺や排泄障害など重度の症状を呈する場合は、外科手術の適応となることが多いです。手術では突出した椎間板を摘出して脊髄の圧迫を解除します。

重症度に応じた内科的治療と外科的治療の例について、以下の表にまとめました。
重症度に応じた内科的治療と外科的治療の例

重症度

内科的治療

外科的治療

軽度

・安静と運動制限を徹底し、NSAIDsなどの鎮痛薬で痛みと炎症を抑える
・症状悪化を防ぐため、必要に応じてケージレストも行う

初期段階では、主に内科的治療が推奨されるが、痛みが強い場合や改善が見られない場合は外科的治療も検討する。

中度

・鎮痛薬による治療を継続しながら、神経回復を促進するオメガ3脂肪酸などのサプリメントなどを併用
・柔軟性と筋力回復のためのリハビリテーションも導入する

麻痺の兆候が見られるため、外科手術の適応となる。片側椎弓切除術や小範囲片側椎弓切除術により脊髄圧迫を解消し、リハビリを併用する。

重度

・ステロイド剤などを含む包括的な内科療法を実施
・通常治療で効果が見られない場合は、神経細胞再生を目指す幹細胞治療などの先進的アプローチも検討する

手術の遅れが回復率に影響するため、早急な外科的介入が必須。直ちに手術を実施し、神経へのさらなるダメージを防止する。

※表中の治療内容はあくまでも例となります。実際の治療内容は、各動物病院の方針により異なります。
治療費用の目安としては、内科療法で数万円程度手術を含む入院治療では30万円以上かかるケースもあります。

リハビリテーションと経過観察

治療後の回復過程では適切なリハビリテーションが重要な役割を果たします。手術直後は厳重な安静が必要ですが、獣医師の指示に従いながら徐々に活動量を増やしていきます。

初期のリハビリでは、温熱療法やマッサージなどから始め、状態の改善に合わせて歩行訓練などのリハビリへと移行していくことが一般的です。

回復期の経過は、歩行状態や排泄機能の変化、痛みの有無などを注意深く観察することが大切です。

症状が安定したように見えても、急に通常の生活に戻すと再発のリスクが高まるため、獣医師の指示に従った段階的なリハビリプログラムを守りましょう。特に術後数週間は重要な時期であり、ケージレストなどの安静を確保する必要があります。

犬の椎間板ヘルニアの予防のポイント

犬の椎間板ヘルニアの予防のポイント

椎間板ヘルニアは完全に予防することは難しいですが、リスクを軽減するための対策はいくつかあります。

特に軟骨異栄養犬種高齢犬の場合は、日常生活での予防的な取り組みが大切です。肥満は椎間板に過度な負担をかけるため、適切な体重管理が最も重要な予防策となります。バランスの良い食事と適度な運動で健康的な体重を維持しましょう。

ただし、ソファやベッドへの飛び乗りや階段の昇り降りなど、脊椎に負担がかかる動きは制限する必要があります。

生活環境の整備も効果的な予防法です。

滑りやすいフローリングにはカーペットやマットを敷き、足腰への負担を軽減しましょう。また、愛犬の足裏の毛は定期的にカットして、滑り止めの効果を高めることも大切です。

首への負担を減らすために、散歩の際は首輪ではなくハーネスを使用するのもおすすめです。二本足で立たせたり、仰向けに抱いたりするなど、無理な姿勢をとらせないよう注意することも予防につながります。
定期的な健康チェックとして、愛犬の歩き方や姿勢に変化がないか観察し、少しでも異変を感じたら早めに獣医師に相談しましょう。

特に高リスク犬種では、予防的な獣医師の診察を年に1〜2回受けることも検討すると良いでしょう。

椎間板ヘルニアは早期に治療して愛犬の健康を守ろう

椎間板ヘルニア犬の代表的な神経疾患であり、適切な治療を行わないと愛犬の生活の質が著しく低下する恐れがあります。症状に気づいたら、できるだけ早く獣医師に相談し、適切な治療を開始することが大切です。

その治療は、内科療法から外科手術まで状態によりさまざまな選択肢がありますが、外科的治療が必要となった場合は、治療費が高額になることも少なくありません。

そのような不測の事態に備えて、ペット保険への加入を検討されることをおすすめします。ペット保険に加入しておくことで、突然の高額な治療費に対する経済的な負担を軽減できるだけでなく、愛犬に最適な治療を選択できる可能性が広がります。

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まさの森・動物病院 院長 安田賢

監修者 まさの森・動物病院 院長 安田賢

日本獣医生命科学大学卒業。
幼少期より動物に興味を持ち、さまざまな動物の飼育経験を持つ。
2012年11月、石川県金沢市にまさの森・動物病院を開業。
・獣医がん学会
・日本エキゾチックペット学会
・鳥類臨床研究会(鳥類臨床研究会認定医)
・爬虫類・両生類の臨床と病理のための研究会
 ●まさの森・動物病院

※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。

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