犬の椎間板ヘルニアとは?症状や原因・治療法を詳しく解説
本記事では、犬の椎間板ヘルニアの仕組みや症状の進行度、主な原因について詳しく解説します。また、内科療法や手術などの治療方法、リハビリの必要性、発症を予防するためのポイントについても紹介します。
愛犬の健康を守るために、椎間板ヘルニアについて正しい知識を身につけ、早期発見・早期治療を心がけましょう。

監修者 まさの森・動物病院 院長 安田賢
日本獣医生命科学大学卒業。
幼少期より動物に興味を持ち、さまざまな動物の飼育経験を持つ。
2012年11月、石川県金沢市にまさの森・動物病院を開業。
※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。
目次
犬の椎間板ヘルニアとは
椎間板は外側の固い組織である「繊維輪」と、内側にあるゼリー状の「髄核」から構成されており、加齢や遺伝的要因によって変性すると椎間板ヘルニアが発生します。
この疾患は軽度から重度まで幅広い症状を引き起こします。また首から腰までどこでも発症する場合がありますが、他の神経疾患と異なり、適切な治療によって改善が期待できる点が特徴的です。
脊髄を圧迫する椎間板ヘルニアの仕組み
外側の「繊維輪」は強靭な組織で内側の「髄核」を保護し、衝撃を吸収しています。椎間板ヘルニアを発症すると、繊維輪が変性・亀裂を起こし、内部のゼリー状の髄核が突出します。
この突出した椎間板が背骨の上にある脊髄を圧迫することで、痛みや麻痺などの神経症状が現れます。圧迫の程度によって症状の重さも変わってくることになります。
初期症状と進行度による変化
進行度 | 主な症状 |
軽度 | 背中に触れると痛がる、ソファなどに飛び乗らなくなる、運動量の減少 など |
中度 | 足元のふらつき、足を引きずるような歩き方、腰を丸めて歩く など |
重度 | 四肢の麻痺、立ち上がれない、排泄のコントロールができない など |
歩行の異常や痛みのサイン
さらに、ソファやベッドへの飛び乗りを避けるようになる、散歩の距離が短くなるなど、日常生活での変化も見逃せません。
これらの変化は徐々に現れるため、飼い主が「なんとなく元気がない」と感じる程度のことが多いのが特徴です。
重症化した場合の危険な症状
特に注意すべきは、自分で排尿・排便のコントロールができなくなることです。これは脊髄の圧迫が深刻化している証拠で、緊急の治療が必要なサインとなります。また、突然立ち上がれなくなったり、四肢全体に麻痺が及ぶケースもあります。
こうした症状が24時間以内に急激に悪化した場合は、外科的処置が必要な緊急事態と判断し、速やかに動物病院を受診することが重要です。
犬の椎間板ヘルニアの主な原因
主に加齢による自然な変性と遺伝的な要素が大きく関わっており、これらのリスク要因を理解することで、愛犬の健康管理に役立てることができます。また、日常生活での外傷や激しい運動も発症の引き金になることがあります。
年齢や遺伝による発症リスク
リスク要因 | 特徴 | 注意点 |
年齢 | 加齢により繊維輪が変性して亀裂が入りやすくなる | 高齢犬ほど椎間板の弾力性が低下するため、7歳以上の犬は特に注意が必要 |
遺伝 | 軟骨異栄養症の遺伝子を持つ犬種は生まれつき髄核が固くなりやすい | 若い年齢でも発症することがあり、複数箇所で同時に症状が出ることもある |
注意が必要な犬種と特徴
●ミニチュア・ダックスフンド
●ウェルシュ・コーギー・ペンブローク
●シーズー
●ビーグル
●フレンチ・ブルドッグ
●ペキニーズ
特にミニチュア・ダックスフンドはその中でも他の犬種に比べて発症率が高いと言われているため、特別な予防的ケアが大切です。
犬の椎間板ヘルニアの治療方法
治療法の選択にあたっては、愛犬の年齢や全身状態、症状の進行度合いなど、さまざまな要素を総合的に判断することが重要です。
内科療法と手術の適応
軽度の場合は、鎮痛剤や抗炎症薬などの投薬治療が主体となります。これらの薬物療法は痛みを緩和し、炎症を抑える効果があり、安静と併用することで症状の改善が期待できます。
一方、四肢の麻痺や排泄障害など重度の症状を呈する場合は、外科手術の適応となることが多いです。手術では突出した椎間板を摘出して脊髄の圧迫を解除します。
重症度に応じた内科的治療と外科的治療の例について、以下の表にまとめました。
重症度 | 内科的治療 | 外科的治療 |
軽度 | ・安静と運動制限を徹底し、NSAIDsなどの鎮痛薬で痛みと炎症を抑える | 初期段階では、主に内科的治療が推奨されるが、痛みが強い場合や改善が見られない場合は外科的治療も検討する。 |
中度 | ・鎮痛薬による治療を継続しながら、神経回復を促進するオメガ3脂肪酸などのサプリメントなどを併用 | 麻痺の兆候が見られるため、外科手術の適応となる。片側椎弓切除術や小範囲片側椎弓切除術により脊髄圧迫を解消し、リハビリを併用する。 |
重度 | ・ステロイド剤などを含む包括的な内科療法を実施 | 手術の遅れが回復率に影響するため、早急な外科的介入が必須。直ちに手術を実施し、神経へのさらなるダメージを防止する。 |
リハビリテーションと経過観察
初期のリハビリでは、温熱療法やマッサージなどから始め、状態の改善に合わせて歩行訓練などのリハビリへと移行していくことが一般的です。
回復期の経過は、歩行状態や排泄機能の変化、痛みの有無などを注意深く観察することが大切です。
症状が安定したように見えても、急に通常の生活に戻すと再発のリスクが高まるため、獣医師の指示に従った段階的なリハビリプログラムを守りましょう。特に術後数週間は重要な時期であり、ケージレストなどの安静を確保する必要があります。
犬の椎間板ヘルニアの予防のポイント
特に軟骨異栄養犬種や高齢犬の場合は、日常生活での予防的な取り組みが大切です。肥満は椎間板に過度な負担をかけるため、適切な体重管理が最も重要な予防策となります。バランスの良い食事と適度な運動で健康的な体重を維持しましょう。
ただし、ソファやベッドへの飛び乗りや階段の昇り降りなど、脊椎に負担がかかる動きは制限する必要があります。
滑りやすいフローリングにはカーペットやマットを敷き、足腰への負担を軽減しましょう。また、愛犬の足裏の毛は定期的にカットして、滑り止めの効果を高めることも大切です。
首への負担を減らすために、散歩の際は首輪ではなくハーネスを使用するのもおすすめです。二本足で立たせたり、仰向けに抱いたりするなど、無理な姿勢をとらせないよう注意することも予防につながります。
特に高リスク犬種では、予防的な獣医師の診察を年に1〜2回受けることも検討すると良いでしょう。
椎間板ヘルニアは早期に治療して愛犬の健康を守ろう
その治療は、内科療法から外科手術まで状態によりさまざまな選択肢がありますが、外科的治療が必要となった場合は、治療費が高額になることも少なくありません。
そのような不測の事態に備えて、ペット保険への加入を検討されることをおすすめします。ペット保険に加入しておくことで、突然の高額な治療費に対する経済的な負担を軽減できるだけでなく、愛犬に最適な治療を選択できる可能性が広がります。
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監修者 まさの森・動物病院 院長 安田賢
日本獣医生命科学大学卒業。
幼少期より動物に興味を持ち、さまざまな動物の飼育経験を持つ。
2012年11月、石川県金沢市にまさの森・動物病院を開業。
・獣医がん学会
・日本エキゾチックペット学会
・鳥類臨床研究会(鳥類臨床研究会認定医)
・爬虫類・両生類の臨床と病理のための研究会
●まさの森・動物病院
※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。