外貨預金のメリット・デメリットとは?リスク対策や始め方を解説

近年、世界ではインフレが進み、インフレ抑制策として各国の中央銀行は相次いで利上げを表明。それに伴い、外貨定期預金の金利が上昇傾向にあるとともに、円の価値が下がり円安が続いている状況です。

こうした状況下で注目したいのが外貨預金です。この記事では、外貨預金とは何か?メリットとデメリット・リスクとあわせて解説します。また最後に外貨預金の顧客満足度ランキングも紹介しています。

外貨預金は考えているけれど、あまり詳しくないので始めて良いか悩んでいる人や、良い運用先を探している人は、ぜひ最後までお読みください。
CFP(R) 金子賢司

監修者 CFP(R) 金子賢司

ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。

外貨預金とは

外貨預金とは日本円を米ドルやユーロといった海外の通貨に交換して、預け入れる預金のことです。外貨は日本円よりも金利が高い傾向があるため、円で預金しておくよりも高い利息が期待できます

また外貨預金は預入時に定められた為替レートで円から外貨に交換しますが、満期を迎えて外貨を円に戻して受け取る際、円安になっていれば利息以外にも利益が得られ、円高になっていると損失が生じる場合がある点には注意が必要です。

例えば手元に100万円あり、為替レートが1ドル100円のときに米ドルに交換すると1万ドルを外貨預金に預けることになります※1。

外貨預金の種類

外貨預金には主に普通預金定期預金2種類があります。

外貨普通預金
いつでも預けたり、引き出したりできる預金のことで、預入期間に定めがありません一般的に変動金利のため、預入期間中に金利が変動することがあります。

また「外貨積立サービス」がある外貨普通預金であれば、自動で毎日・毎週・毎月など定期的に円で外貨を買い付け、積み立てていくことも可能です。

外貨定期預金
1ヶ月、3ヶ月、1年などあらかじめ預入期間(満期)が決まっており、満期までは原則解約ができない預金のことです。そのため一般的に外貨普通預金に比べて金利が高い傾向にあります。

外貨預金はどこがおすすめ?通貨ごとの特徴

外貨預金はどこがおすすめ?通貨ごとの特徴

金融機関によって取り扱っている通貨は異なります。ここでは5種類の主要な通貨の特徴について解説します。

米ドル

世界の基軸通貨であり、世界で最も取引量が多い通貨です。

米ドルの重要な経済指標は、日本の新聞やテレビでも取り上げられます。情報が入手しやすいため、初めて外貨預金をする方におすすめです。

米ドルの為替レートに最も大きな影響を与えるのは、アメリカの政策金利です。FOMC(米国連邦公開市場委員会)で、アメリカの政策金利が引き上げられれば、米ドルの人気が高まり円安ドル高、逆に引き下げとなれば円高ドル安に向かう傾向があります。

ユーロ

ユーロとはEU加盟国と非加盟国で使用される通貨で、米ドルに次ぐ取引量を誇る通貨です。ユーロを導入している国で形成される経済圏のことを「ユーロ圏」といい、2023年1月現在20ヶ国あります。

ユーロはECB(欧州中央銀行)が金融政策を担っており、一般的にはECBが政策金利を引き上げれば円安ユーロ高、逆に引き下げれば円高ユーロ安になります

またユーロ圏のうち、経済規模が大きいドイツやフランスの経済指標も注視が必要です。

豪ドル

豪ドルはオーストラリアの通貨です。オーストラリアは石炭、石油、天然ガスなどの天然資源に恵まれています。そのため豪ドルは「資源国通貨」とも言われ、エネルギー価格や資源価格が上昇すると、円安豪ドル高、逆に下落すると円高豪ドル安になる傾向があります。

また輸出・輸入ともに中国への依存度が高く、中国の景気や経済指標に影響を受けやすい通貨です。

オーストラリアの中央銀行にあたるRBAの金融政策も確認しておきましょう。

NZドル

ニュージーランドで使用される通貨で、キーウィと呼ばれることもあります。オーストラリアの隣国のため、地理的・気候的に似ている部分が多く、為替レートが変動する要因は豪ドルに似ています

ただNZは酪農品がさかんな国で、乳製品などの農産物価格も為替レートに影響を与えます

またNZドルは中国とオーストラリアとの輸出・輸入依存度が高く、両国の景気や経済指標の影響を受けやすい通貨です。

英ポンド

イギリスの通貨で、米ドル、ユーロ、円に次いで取引量が多い通貨です。EU(欧州連合)に隣接しており、経済的・歴史的にも結びつきが強いことから、為替レートの変動要因はユーロに類似しています

ただし取引量が米ドルやユーロよりも少ないことから、為替レートの変動幅が大きい傾向がある通貨です。

またイギリスの中央銀行にあたるBOE(イングランド銀行)の金融政策が為替に大きな影響を与えるため、年8回行われる政策金利発表に毎回注目が集まります

外貨預金のメリット

外貨預金のメリット

外貨預金のメリットは主に以下の4点です。

@ 円預金よりも高金利
A 為替差益を得られる
B 初心者でもはじめやすい
C 通貨分散によってリスクヘッジ

以下、外貨預金の各メリットについて詳しく紹介します。

外貨預金のメリット@円預金よりも高金利

外貨預金は高い金利で預入できるため、日本の普通預金や定期預金よりも高い利息が受け取れる場合があります。日本円で1年ものの定期預金に預け入れた場合の金利は高いところで0.1〜0.3%程度となっています。一方、米ドル1年ものの定期預金なら5.0%程度の金利もめずらしくありません

仮に100万円を1年間預けたとしたら、日本円の定期預金なら受け取れる利息は高くても1,000〜3,000円ほどですが、米ドルの定期預金なら5万円の金利が受け取れます※1

海外では物価が上昇しており、物価上昇を抑えるために利上げが続いていました。これに伴い定期の外貨預金の金利も上昇しており、低金利が続いている日本の定期預金よりもさらに金利のメリットが拡大しています。

外貨預金のメリットA為替差益が得られる

外貨預金のように海外の通貨で運用する商品は、為替レートの値動きによっては利益を得られる場合があります。為替レートの値動きによって得られる利益のことを、為替差益と言います。

例えば100万円を1ドル100円のときにドルに交換すると1万ドルになります。その後、円安となり、1ドル101円のときに1万ドルを円に交換すると、101万円が受け取れます。

このように外貨預金は金利だけではなく、円に交換するときの為替レートによっても利益が出る可能性があるのです。

外貨預金のメリットB初心者でもはじめやすい

外貨預金は金融機関に口座開設をするだけで始められます。どの外貨で始めるかを選ぶ必要はありますが、株式投資や投資信託ほど選択肢が多くありません。そのため外貨預金は初心者でもはじめやすい運用方法と言えるでしょう。

外貨預金のメリットC通貨分散によってリスクヘッジ

ヘッジとは「回避」という意味があります通貨分散をすることで、為替レートの変動による資産価値の減少を回避することが可能です。

具体的な事例を見てみましょう。

例えば1ドル100円のとき、300ドルの輸入品を購入するのに必要な金額は3万円ですが、円安で1ドル150円になると4万5,000円を用意しなければ購入できなくなります。これは円安によって「円の価値が低下した」ことを表しています。

円安による円の価値低下を回避するには、円だけでなくドル資産も併せ持つ方法が有効です

円だけでなく米ドルも保有していれば、円の価値が低下しても、円安で米ドル資産の価値が上がるため、全体として自身の保有している資産価値の低下を抑えられます

外貨預金のデメリット

外貨預金のデメリット

外貨預金には主に以下のようなデメリットやリスクもあります。

@ 為替手数料が発生する
A 元本割れのリスク
B ペイオフの対象とならない
C 条件によっては確定申告が必要になり手間が増える

以下、それぞれのデメリット・リスクについて詳しく紹介していきます。

外貨預金のデメリット@為替手数料が発生する

外貨預金は円を外貨に交換して預入しますが、交換する際に為替手数料が発生します。また外貨から円に戻すときにも同様の為替手数料がかかります。為替手数料は金融機関ごと、通貨ごとに異なりますが、米ドルで店頭取引の場合、片道1ドルあたり1円程度が相場です。

つまり円を1万ドルに交換し、さらに1万ドルを円に戻すとそれだけで2万円の為替手数料が発生することになります。

そのため外貨預金を始めてすぐに解約をすると、十分利息が増えていないことから、為替手数料をカバーできずに元本割れする可能性があります

ただしインターネットによる取引であれば、為替手数料が抑えられている場合があります

外貨預金のデメリットA元本割れのリスク

外貨預金は為替手数料で元本割れする可能性もありますが、外貨から円に戻すタイミングによっても元本割れする場合があります。

100万円を1ドル100円のときに1万ドルに交換、1年後仮に5.0%の利息が付き、1万500ドルになっていたとします。しかし仮に円に換金するときに円高で1ドル90円になっていた場合、利息が上乗せされているにもかかわらず受け取れる金額は94万5,000円と元本割れしています。

このように外貨預金を円に換金する際、為替レートの値動きによって生じる損失のことを為替差損と言います。

外貨預金は外貨で運用している間は利息で増えていたとしても、換金時の為替レート次第では為替差損が生じるリスクがあるため注意が必要です。

外貨預金のデメリットBペイオフの対象とならない

ペイオフとは「預金保険制度」のことで、お金を預け入れている金融機関が破綻しても、1金融機関あたり1,000万円とその利息分までは保護される制度です。

外貨預金はペイオフの対象外となっているため、仮に金融機関が破綻しても、保証されずに預け入れている外貨預金がそのまま損失になる可能性があります。

外貨預金のデメリットC条件によっては確定申告が必要になり手間が増える

外貨預金には利息と為替差益の2つの利益があり、そのうち利息に関する税金は自動的に差し引かれるため確定申告は不要ですが、為替差益は確定申告が必要になる場合があります

利息

為替差益

所得の種類

利子所得

雑所得

課税方式

源泉分離課税

総合課税

税率

20.315%

所得に応じた所得税率と住民税10%

確定申告

不要

原則必要

為替差益が出ても確定申告が不要なケースは以下の通りです。
●年収2,000万円以下の会社員で、給与所得を1か所から受けていて、かつそのすべてが源泉徴収の対象となる場合で、為替差益を含めた給与以外の所得の合計が20万円以下の場合

●自営業やフリーランス、無職で年間所得が基礎控除48万円以下の場合

また為替差損が出た場合は確定申告が不要ですが、他の雑所得で利益が出ているときなど、確定申告をしたほうが良い場合があります。

外貨預金のリスク対策

外貨預金は円預金よりも金利が高く、為替差益が狙える可能性がある反面、元本割れするリスクもあります。元本割れリスクをゼロにする方法はありませんが、リスクを抑えることは可能です。

外貨預金のリスクを避ける方法は以下の5つです。

【元本割れリスクへの対処法】
・通貨を分散する
・預入時期を分散する
・長期運用する
・情報収集をかかさない
・しばらく使わないお金(余裕資金)で運用する


各対処法について詳しく紹介します。

通貨を分散する

投資ではリスクを抑える方法として、1つの銘柄にまとまった金額を投資しない分散投資が有効と言われています。

外貨預金も為替レートが変動するため、1つの通貨だけで運用するのではなく、円預金と米ドル、ユーロ建ての外貨預金など、複数の通貨に分散させて預金をしておくと、為替変動によって元本割れするリスクを抑えられます。

通貨の分散がリスクを抑えるのに有効なのは、複数の通貨に分散させておくと、1つの通貨で為替差損が生じても、残りの通貨で為替差益が生じていれば、為替差損を一定程度カバーできることが期待できるためです。

預入時期を分散する

預入時期を分散させるドルコスト平均法もリスクを抑える効果があります。ドルコスト平均法という言葉だけを聞くと難しく感じますが、これは「一定期間ごとに決まった金額を運用する」運用手法です。具体的には、毎月1万円や2万円というように定期的に積み立てていく運用手法がドルコスト平均法です。

ドルコスト平均法を活用して外貨預金に毎月積み立てていくと、円安のときは預けられるドルは少なくなりますが、その反面、円高のときは多くのドルを預けられます。

これを長期間継続することで、円でドルを交換(購入)するときの平均購入単価が下がり、為替レートの変動によるリスクを抑えることができるのです。

長期運用する

外貨預金のように値動きをする商品は、長期運用をする程多くの利息が得られ、ドルコスト平均法の効果が高まる傾向があるため、長期運用をする程リスクを抑えやすくなります

外貨定期預金の預入期間は1ヶ月、3か月、6か月、1年のものが一般的ですが、満期後も再度、外貨定期預金を継続することで長期運用は可能です。

情報収集をかかさない

為替差益や為替損益が生じる要因となる為替レートは、さまざまな経済指標や、要人発言で大きく変動する場合があります。

経済指標とは、各国の政府などが発表するその国のGDPや雇用に関する統計といったその国の経済状況を表す統計のことです。

また要人発言とは、国の経済政策や金融政策を担っている重要な人物の発言のことを指します。

こうした経済指標の発表や要人発言が行われるスケジュールは、新聞やニュース、金融機関のサイトなどで確認できることがあるため、知っておくと良いでしょう。

大きく為替レートが変動する可能性があるときは、運用方針を見直すことで損失が少なくなることもあります。

余裕資金で運用する

外貨預金で運用するときは、余裕資金を使うようにしましょう。余裕資金とは、手取収入から「生活費や光熱費、家賃など日常的に使うお金」と、教育費や車の購入費など、「近いうちに使い道が決まっているお金」を差し引いて残った金額のことを指します。

外貨預金の始め方

外貨預金を始めるためには、まず普通預金口座を開設しなければなりません普通預金や外貨預金の口座開設は銀行窓口の他、インターネットからでも手続きが可能です

また金融機関によって異なりますが、外貨預金口座の開設時には一般的に以下のものが必要です。
●本人確認書類(運転免許証・健康保険証など)
●マイナンバーが確認できる書類(個人番号カードなど)
●印鑑(銀行窓口で手続きをする場合)

外貨預金に関するよくある質問

外貨預金に関するよくある質問についてまとめました。実際に始める前にぜひご確認ください。

Q1. 外貨預金を下ろすタイミングは?

次のような場合、外貨預金の引き出しを検討しましょう

●預入時よりも円安になった
●その外貨を自国通貨としている国に景気悪化や地政学リスクの懸念がある
●自身の運用方針が変わった

例えばアメリカが他国と軍事的な対立を迎えると、他の通貨に対してドル安になる可能性があります。

また年金受け取りが近づくに伴い、外貨預金の元本割リスクを抑えたいなど、運用方針が変わったときも外貨預金を下ろすタイミングです。

Q2. 外貨預金は手数料がかかりますか?

外貨預金は預け入れ、払い戻しいずれも手数料がかかります。手数料は通貨や金融機関によって異なるため、事前に確認をしましょう。

なお米ドルで店頭取引の場合、片道1米ドルあたり1円程度が相場です。

Q3. 外貨定期預金が満期になったらどのような選択肢がありますか?

外貨定期預金が満期になったら、解約して円に換金して受け取る。改めて外貨普通預金や外貨定期預金に預けて運用を継続する。海外旅行や出張で外貨のまま使うといった方法があります。

Q4. 外貨預金はどこがおすすめ?

為替レートの値動きの大きさや、金利は通貨ごとに異なるため、おすすめの外貨預金は人によって異なります。以下のサイトのランキングを外貨預金選びにご活用ください。

【最新】外貨預金 オリコン顧客満足度ランキング|クチコミ比較

まとめ

円を外貨に交換する預金のことを外貨預金と言います。外貨預金は金利が高く、場合によっては為替差益が狙える反面、為替手数料がかかるデメリットや為替差損により元本割れリスクがある点には注意が必要です。

外貨預金は金融機関によって、預入期間や運用可能な通貨が異なるため、自身の運用ニーズにあった選択をしましょう。また外貨預金のリスクを抑えるため、本記事で紹介した「外貨預金のリスク対策」を活用した運用をおすすめします。

最後にオリコンでは外貨預金の顧客満足度ランキングを発表しています。ぜひ記事の内容と併せて参考にしてください。
外貨預金 顧客満足度ランキングはこちら
※1 本記事の事例では、内容を分かりやすくするために、通貨を円からドル、あるいはドルから円に交換するときの手数料や、税金は考慮していません
CFP(R) 金子賢司

監修者 CFP(R) 金子賢司

東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。
以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はジャザサイズ。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。

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