為替予約とは?仕組みやメリットを図解でわかりやすく解説
本記事では、為替の基本的な仕組みから、為替予約の目的や仕組み、メリット・デメリットをわかりやすく解説します。
また円安の状況で注目される為替予約の活用方法を知ることで、適切なリスク管理の方法が理解できます。初心者の方にも分かりやすく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
そもそも為替とは?
異なる通貨間の交換比率は需要と供給のバランスによって決まり、日々変動しています。詳しく見ていきましょう。
内国為替と外国為替がある
内国為替
個人や企業は安全かつ迅速に送金や支払いを行えます。銀行振込や口座振替による公共料金の支払いは、内国為替取引の一種です。
外国為替
内国為替との大きな違いは「通貨の交換」を伴う点です。例えば、日本企業がアメリカから商品を輸入する場合、円をドルに交換する必要があります。この通貨の交換は外国為替市場で行われ、その交換比率を為替レートと呼びます。
為替レートはどう決まる?
為替レートの変動にはさまざまな要因が影響を与えていて、主に以下があります。
・物価の変動
・経済指標の発表
・中央銀行の政策
・政府要人の発言
・国際情勢の変化
これらの貿易や投資、物価などの経済状況は、長期的な為替の動向に大きく作用すると考えられています。
為替予約とは?目的と仕組み
為替リスクを回避する方法として、為替予約は多くの企業や投資家が利用しています。以下で詳しく見ていきましょう。
為替予約は為替リスクを回避するための手段
例えば、アメリカから10万ドルの商品を輸入し、45日後に決済する場合を考えてみましょう。
輸入時のレートが1ドル=135円だった場合、買掛金は1,350万円となります。しかし、45日後の決済時に円安が進行して1ドル=150円になっていた場合、支払額は1,500万円に膨らみ、150万円の為替差損が出てしまいます。
為替予約の仕組みを図解で説明
例えば、ある企業が45日後に1ドル=135円のレートで10万ドルを購入する契約を銀行と結んだ場合、45日後にはその日の為替レートに関係なく、予約したレートで取引を行えます。
これにより、為替変動による損失を回避し、事前に採算を確定させることが可能です。
銀行の事前審査と与信管理を受ける必要がある
そのため、銀行は為替予約を与信行為とみなし、慎重な審査を行います。
先渡為替レートの計算方法
現在の直物レートが1ドル=130円で、日本の金利が1%、米国の金利が3%、期間を1年間とした場合、次のように計算します。
また1ドルを3%で一年運用すると、1.03ドルです。
すなわち、一年後は131円30銭の価値は1.03ドルと同じになり、先物為替レートとなります。
この 場合、先渡為替レートは1ドル=127円48銭となり、直物レートよりも円高ドル安となります。これは金利の高い通貨(この場合はドル)の先渡レートが直物レートより安くなる「先物ディスカウント」と呼ばれる現象です。
為替予約のメリット
具体的にどのような利点があるのか、見ていきましょう。
為替変動リスクを回避できる
例えば10,000ドルの取引を行う場合、予約レート150円で取引ができれば150万円です。仮に為替予約をせずに円高が進行したレート170円で決済すると170万円となり、20万円もの為替差損が発生します。
為替予約を活用することで、このような予期せぬ損失を防ぐことができるのです。
利益を早く確定できるので、運用計画を立てやすい
また経理業務の効率化も図れます。通常、為替レートの変動がある場合はその都度利益を再計算する必要がありますが、為替予約を利用すれば追加作業は不要です。業務負担を軽減しながらより正確な財務管理が可能になるでしょう。
為替予約のデメリット
円高のときに得られたはずの利益を逃す
10,000ドルの取引であれば予約レート150円での取引額は150万円となります。一方、予約をせずに取引時のレート100円で決済できれば100万円で済むため、為替予約により50万円の機会損失が発生したことになります。
このように、為替相場が有利な方向に動いた場合はその恩恵を受けることができません。将来的に円高が予想される場合は、為替予約を利用しない選択肢も検討しましょう。
契約不履行時は違約金やキャンセル料がかかる
仮に事業計画の変更などにより為替予約が不要になった場合でも予約した金額は期間内に必ず使い切り、使い切れない場合でも契約は履行しなければなりません。キャンセルが金融機関から認められた場合は高額な違約金や手数料を支払う必要があります。
特にキャンセル時の手数料は、本来得られるはずだった為替差益分の保証という性質を持つため、非常に高額になる傾向です。
円高になって為替差損が発生している状況下では、高額な手数料のせいでキャンセルもできないという事態に陥る可能性もあります。このため、為替予約を行う際は契約期間中の資金需要を慎重に見極めましょう。
円安で為替予約を申し込む企業が増えている
2022年の事例を見ると、主要な銀行での為替予約の取引件数は、4月から9月の半年間で前年同期と比較して約2割も増加しました。三菱UFJ銀行では、取引金額ベースでは約3割の伸びを記録しています。
この背景には、わずか半年強 で1ドル=121円台後半から151円台まで急激に円安が進行したという市場環境があります。 多くの企業がこの急激な為替変動から身を守るため、為替予約という選択肢を積極的に活用し始めているのです。
特に輸入企業にとっては円安の進行は大きな経営リスクとなるため、為替予約を通じて将来の為替レートを固定する動きが活発化しています。
例えば「1カ月後に1ドル=150円で1万ドル購入する」といった具体的な契約を銀行と結ぶことで、1ドル=160円まで円安が進んだとしても、予約したレートでの取引が可能です。
しかし、市場関係者からは慎重な意見も出ています。為替予約は一度契約すると基本的にキャンセルができないため、安易な予約は逆効果になりかねません。実際、6月頃までにドルを売り切って(ドルを円に交換すること)しまい、その後の円安局面での収益機会を逃してしまった企業の例も報告されています。
為替予約の仕組みを理解して、適切なリスク管理を
活用の際は、事業計画や資金需要を見極めた上で、他のリスク管理も含めた総合的な検討が必要です。適切な為替予約の活用は、安定的な事業運営の重要な基盤となるでしょう。
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