退職金がない!必要な老後資金と準備する方法を解説
今回は、老後に必要となる生活費と、退職金がない場合、どのように老後資金を準備すべきかについて解説します。

監修者 AFP/2級FP技能士 吉田祐基
ライター・編集者。お客様向けの会報誌や、記事、Webサイト、PDF資料といった各種コンテンツ制作のディレクション業務ほか、Webメディアの運営を担当。
目次
そもそも退職金とは?
厚生労働省が発表した「令和5年就労条件総合調査」によると、退職金制度のある企業は全体の74.9%でした。約25%の企業では退職金制度がないことになります。
企業規模が小さいほど実施しない割合が高く、1,000人以上の企業では90.1%が退職金を支給するのに対し、30〜99人の企業では70.1%にとどまっています。
また、業種によっても違いがあり、最も割合の高い「鉱業、採石業、砂利採取業」では97.6%の企業で退職金制度がありますが、最も低い「宿泊業、飲食サービス業」では42.2%でした。
退職金制度がないと「違法なのではないか」と考える人もいますが、退職金の支給は福利厚生の一種のため、なくても問題はありません。
退職金制度があっても、就業規則に勤務年数や雇用形態などの支給条件があれば、それに合わない場合は支給されないこともあります。
退職金制度がなかったり、制度があっても雇用形態によっては支給されなかったりして、老後資金に不安がある人もいるでしょう。
そういった場合は、自身で老後資金を準備する必要があります。
老後の生活費はいくら必要?
平均的な老後の生活費
夫婦のみでどちらも65歳以上の世帯の実収入の平均は24万4,580円のため、月に6,379円の不足、単身世帯の実収入の平均は12万6,905円のため、月に1万8,525円の不足ということになります。
厚生労働省「令和4年簡易生命表」では、65歳男性の平均余命は19.44年、65歳女性では24.30年です。
仮に、単身世帯で考えた場合、老後資金として男性なら約432万円、女性なら約540万円が不足することになるでしょう。
退職金の支給平均は、前述の「令和5年就労条件総合調査」によると、勤続20年以上で45歳以上の定年退職者で、大卒・大学院卒は1,896万円、高校卒(管理・事務・技術職)は1,682万円、高校卒(現業職)は1,183万円でした。
退職金があれば不足する老後資金をまかなえますが、支給されない場合、自分で用意しなければなりません。
ゆとりある老後の生活費
また、消費支出の金額は、生活費のみで計算されており、旅行やレジャー、趣味、介護、葬儀などの費用は含まれていません。
生命保険文化センターが発表した「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」によると、ゆとりある老後生活を送るための夫婦2人の老後生活費について全国の18〜79歳の男女に尋ねたところ、回答者の平均は月額37万9,000円でした。
65歳以上の無職夫婦のみの世帯の実収入の平均が24万4,580円であることを考えると、月に13万4,420円不足しています。
例えば、女性の平均余命で見ると、老後資金として約3,920万円を用意しなければならないことになります。
どのような暮らしを送りたいかによって、必要な老後資金の金額は変わります。
支給される社会保障額も人によって変わるため、まずは自分の老後にどれだけのお金を受け取れるかを調べてみてください。
その上で、自分が理想とする暮らしを考え、いくら不足があるのかを考えてみましょう。
老後資金はどうやって作る?
その場合、老後に必要な資金ですから、できるだけリスクがない方法を選ぶ必要があります。
ここでは、低リスクで老後資金を貯める方法について見ていきましょう。
預貯金を行う
必要なときは自由に引き出しが可能なため、急に入用になった場合でも臨機応変に対応ができます。
生活費の余った分を貯金するという考えではなかなか貯められませんから、貯金額をあらかじめ決めて「先取り貯金」を行い、余った分で生活することが重要です。
定期預金など、簡単に引き出しにくい方法をとるのも手段でしょう。
ただし、2024年7月現在、日本では低金利時代が続いており、預貯金ではほとんど利息がつかず、資産を「増やす」のは難しくなっています。
そのため、老後に必要な資金額を決めたら、目標に向けて毎月一定額を着実に貯める必要があります。
iDeCoを利用する
国民年金被保険者が加入でき(国民年金の保険料納付免除や納付猶予を受けている、農業者年金に加入している人を除く)、20歳から原則65歳まで積立ができます。
証券会社が用意するiDeCo用の金融商品の中から自分で商品を選び、毎月一定額を積立することで、原則60歳以降に年金を受け取ることが可能です。
受取額は、積立した金額と運用損益の合計額であり、運用の成果で変動します。
iDeCoは月額5,000円以上、1,000円単位で掛金額を決められますが、国民年金の加入資格によって月の上限額は異なります。
例えば、企業型確定拠出年金に加入していない会社員(第2号被保険者)の場合は、月額2万3,000円が上限です。
積立しているあいだは年末調整で支払った金額が全額所得控除されるほか、通常は20.315%の税金が課される利息や運用益が非課税というメリットがあり、一時金か年金か、受け取り方を選ぶこともできます。
なお、iDeCoは元本保証されたものではないため、運用の成果によって元本割れのリスクはあり、加入から受け取りが終了するまで、一定の手数料がかかります。
また、途中解約ができず、原則60歳まで引き出せないという制約もあります。
ただし、解約ができないことで、貯金が苦手な人でも着実に老後資金を準備していける方法といえるでしょう。
限度額の範囲内で掛金額を変更したり、途中で支払いを止めて運用のみを行ったりすることも可能です。
個人年金保険を利用する
保険とはいえ契約時に健康状態の告知や医師の審査が不要な場合が多く、健康状態に不安があっても申込み可能なタイプが多いです。
個人型年金には、下記の3種類があります。
確定年金
契約時に定めた年数分だけ年金が受け取れる。被保険者が死亡した場合は、遺族に年金または一時金が支払われる。
有期年金
契約時に定めた年数分だけ年金が受け取れるが、年金受け取り開始後に被保険者がなくなった場合は遺族への支払いはない。ただし、保証期間付きの商品の場合は遺族が受け取り可能。
終身年金
被保険者が生存している限り年金が受け取れるが、年金受け取り開始後に被保険者がなくなった場合は遺族への支払いはない。ただし、保証期間付きの商品の場合は遺族が受け取り可能。
定額個人年金保険
運用の成果にかかわらず、契約時に定めた予定利率で受け取れる年金額が決まっている。
変額個人年金保険
運用の成果によって受け取れる年金額が変わる。増える可能性があるが、元本割れのリスクもある。
また、iDeCoは原則として途中解約ができませんが、個人年金保険は可能です。
「投資先を選ぶのが面倒」「万が一の際に解約できるほうが安心」といった場合、個人年金保険が向いているでしょう。
NISAを利用する
2024年には制度改正で、より老後資金の準備に活用できる制度となりました。
老後資金の準備でNISAを利用するなら、長期的な積立投資をおすすめします。
新NISAには「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の2つの枠があり、併用可能です。
投資可能商品が違うため、成長投資枠では株式を積み立て、つみたて投資枠では投資信託を積み立てといった使い方もできます。
成長投資枠では積立投資だけでなく一括投資も利用できますが、リスクが大きいため投資初心者には不向きです。老後資金の準備のためなら避けたほうが無難でしょう。
成長投資枠では年間240万円まで、つみたて投資枠では年間120万円まで投資が可能で、非課税で保有できる限度額は1,800万円です(うち、成長投資枠は1,200万円まで)。
保有している投資商品が限度額に達しても、売却すれば翌年以降に再利用ができます。いつでも売却できるため、万が一のときは老後資金以外での利用も可能です。
ただし、売却には手数料がかかることがあり、頻繁な売却は損になる可能性があります。
複利効果も薄くなってしまうため、できるだけ長期に運用することをおすすめします。
外貨預金を利用する
日本円の預貯金と仕組みが似ているため、資産運用の初心者でも取り組みやすいといえます。
日本では低金利が続いていますが、外国では比較的高金利の国も多く、預金でも資産を増やせる可能性があるでしょう。引き出す際は為替レートの変動によって、為替差益が期待できます。
通貨はたくさんあるため、1つの外貨に絞らず複数の通貨で預金すれば、リスクを分散することにつながります。外貨で老後資金を準備することで、インフレリスクにも備えられる点もメリットです。
ただし、外貨預金は日本円の預貯金とは違い、為替レートによっては元本割れする可能性があることは知っておきましょう。
また、預けるときは日本円を外貨に、引き出すときは外貨を日本円に交換するための手数料がかかります。
引き出しは自由ですが、老後資金の準備のためには頻繁に出し入れせず、積立預金で定期的に入金し、目標額まで長期的に運用することがおすすめです。
老後資金の貯め方については、こちらの記事をご覧ください。
老後資金の貯め方は?必要な資金額や年代別におすすめの方法を解説
退職金がなくても、自分で老後資金は準備できる
いくら必要なのかは老後の人生設計によっても変わるため、老後資金の準備を考えたら、自分の理想とする生活についても考えてみてください。目標額が決まったら自分に合った方法を探し、着実に老後資金を貯めていきましょう。
着実に老後資金を準備するためには、証券会社選びも大切なポイントです。取引手数料や取引のしやすさなど、証券会社ごとの特徴を押さえながら、比較検討しましょう。
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監修者 AFP/2級FP技能士 吉田祐基
ライター・編集者。編集プロダクションで、Web・紙媒体問わず主に金融系コンテンツの制作を担当後、HRテック企業に制作ディレクターとして入社。お客様向けの会報誌や、記事、Webサイト、PDF資料といった各種コンテンツ制作のディレクション業務ほか、Webメディアの運営を担当。