NISAは確定申告が原則不要!その理由や例外となるケースを解説

NISAは確定申告が原則不要!その理由や例外となるケースを解説

NISAを始めようと思っている人やすでに始めている人の中には、利益が出た場合に所得税の確定申告が必要になるのか気になっている人も多いのではないでしょうか。結論からお伝えすると、NISAは原則として確定申告は不要です。ただし、場合によっては確定申告が必要になることもあるため注意しておく必要があります。

今回は、NISAでは確定申告が必要ない理由や、例外として確定申告をしなければいけないケースについて解説します。NISAでの確定申告のポイントや、NISA以外の投資に関する確定申告についてもポイントをご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
AFP/2級FP技能士 吉田祐基

監修者 AFP/2級FP技能士 吉田祐基

ライター・編集者。お客様向けの会報誌や、記事、Webサイト、PDF資料といった各種コンテンツ制作のディレクション業務ほか、Webメディアの運営を担当。

mokuji目次

  1. NISAではなぜ確定申告が原則不要なのか
  2. NISAで確定申告が必要なケース
    1. 配当金等の受取方式が、株式数比例配分方式以外になっている
    2. 旧NISAの非課税期間が終了した
  3. NISAにおける確定申告のポイント
    1. 損益通算や繰越控除ができない
    2. 運用益が扶養控除に影響しない
  4. NISA以外の投資の場合、口座の種類によって確定申告が必要
    1. 特定口座(源泉徴収あり):原則不要
    2. 特定口座(源泉徴収なし):原則必要
    3. 一般口座:必要
  5. NISAは原則として確定申告が不要だが、必要になるケースもある

NISAではなぜ確定申告が原則不要なのか

そもそも、なぜNISAは所得税の確定申告が原則不要であるのか、まずはその理由を解説します。
投資信託や株式投資といった一般的な投資の場合、投資によって得た利益に対して税金が課されます。具体的には、年間の利益が20万円を超えると、利益に対して20.315%の税金がかかるというルールです。

一方、NISAは「少額投資非課税制度」であるため、定められた非課税投資枠内であれば、投資信託や上場株式から得られる配当金や値上がり益に対して課税されません。税金がかからないため、所得税の確定申告も原則不要になるというわけです。
非課税投資枠の範囲内なら利益に対して課税されない点は、2023年までの制度(旧NISA)も、2024年から始まった新制度(新NISA)も共通しています。

旧NISAと新NISAの違いについては、下記の記事をご覧ください。

NISAで確定申告が必要なケース

NISAで確定申告が必要なケース

前述のとおり、NISAは所得税の確定申告が原則不要ですが、場合によっては課税対象となり、確定申告が必要になることもあります。ここでは、確定申告が必要となるケースについて解説します。

配当金等の受取方式が、株式数比例配分方式以外になっている

確定申告が必要となるケースのひとつは、配当金等の受取方式が「株式数比例分配方式」以外に設定されている場合です。NISAは投資信託や株式投資に対して非課税投資枠を設ける制度のため、配当金等の受取方式は証券口座のルールに則ります。証券口座における配当金等の主な受取方式は、下記の3種類です。
証券口座での配当金等の受取方法

株式数比例配分方式
保有株式の数量などに応じ、配当金や分配金を証券会社の取引口座で受け取る方法

登録配当金受領口座方式
あらかじめ指定した銀行の取引口座で受け取る方法

配当金領収証方式
ゆうちょ銀行や郵便局の窓口で、配当金領収証と引き換えに現金で受け取る方法
これらの中で、配当金等が非課税となるのは証券会社の取引口座で受け取る株式数比例配分方式のみです。指定の銀行口座に振り込んでもらう、郵便局で現金で受け取るといったケースでは、課税対象となることを理解しておきましょう。

登録配当金受領口座方式、もしくは配当金領収証方式を選択した場合、権利確定日を迎えると一般的な課税口座と同様、利益に対して課税されます。ただし、実際に受け取るのは、納めるべき税金分が源泉徴収された後の金額のため、必ずしも確定申告を行う必要はありません。
確定申告が必要となるのは、損益通算や繰越控除を適用したい場合です。損益通算と繰越控除については後述します。

配当金等の受取方式の違いによる確定申告の要否
※非課税投資枠の範囲内で投資をした場合
受取方式 配当金等への課税の有無 確定申告の要否
株式数比例配分方式 非課税(※) 不要
登録配当金受領口座方式 課税 損益通算や繰越控除を希望する場合は必要
配当金領収証方式 課税

旧NISAの非課税期間が終了した

2023年までの旧制度(旧NISA)では、非課税期間が5年または20年と決められていました。利益に対して課税されないのはこの非課税期間中に限られることから、5年または20年を過ぎると課税対象となり、確定申告が必要になるケースがあります。

非課税期間が終了した旧NISA口座の資産は、課税口座に払い出されます。この時点で保有資産は課税対象となるため、一般的な課税口座と同様、利益に対して20.315%の税金を課せられるというわけです。

なお、2024年から始まった新制度(新NISA)においては、非課税保有期間は無期限となっています。したがって、旧NISAのように一定期間が経過すると課税口座へ払い出されるといったことはありません。保有年数にかかわらず非課税となることから、確定申告は原則不要です。

NISAにおける確定申告のポイント

NISAにおける確定申告のポイント

NISAで得た利益に関して確定申告を行う際、注意しておきたいポイントがあります。一般的な課税口座とは異なる注意点もあるため、投資経験がある人もあらためて確認しておくことが大切です。

損益通算や繰越控除ができない

NISA口座では「損益通算」や「繰越控除」ができません。NISA口座内での所得は非課税となることから、税務上、合算すべき利益や損失はないとみなされるからです。

損益通算とは、確定申告をすることで適用できる制度で、取引によって生じた利益と損失を相殺することを指します。例えば、課税口座Aで20万円の利益が出た年に課税口座Bで5万円の損失が生じた場合、損益通算により年間の利益を20万円−5万円=15万円として申告することが可能です。課税所得が少なくなる分、納税額を減らせます。

繰越控除とは、確定申告によってその年に控除しきれなかった損失を、翌年以降3年間にわたり利益と通算できる制度のことです。損失を繰り越せるため、利益が出た年の税負担を軽減できるというメリットがあります。なお、損失を3年間繰り越すためには、取引がなかった年も確定申告をしなければなりません。

損益通算と繰越控除は、いずれも課税口座で利用できる制度です。NISA口座は非課税口座のため、ほかの課税口座で損失が出ていたとしても、NISA口座の利益とは相殺できない点に注意してください。

ただし、上場株式の配当金等が課税対象であった場合には、ほかの口座との損益通算が可能です。前述の登録配当金受領口座方式や配当金領収証方式にて配当金等を受け取る場合には課税対象となることから、確定申告を行うことで損益通算を適用できます。

運用益が扶養控除に影響しない

NISAによって得た利益は非課税のため、所得とみなされません。したがって、扶養控除にも影響を与えないという点が大きなポイントです。

扶養控除とは、生計を共にする親族がいる人に対して、所得から一定額が差し引かれることで、税金の負担が軽減される制度のことです。扶養控除の対象となるには、被扶養者(扶養される側の人)は扶養控除の基準を超えることがないよう、年間の所得を抑える必要があります。いわゆる「扶養の範囲内」で働く主な理由は、扶養家族が納税する際に扶養控除が適用されることで、世帯全体の税負担が軽減されるからです。

一般的な投資で利益を得た場合、所得が増えることにつながるため扶養控除の対象外となることが懸念されます。労働によって得る給与額を扶養の範囲内に抑えていても、投資によって得た利益との合計額が扶養の範囲を超えてしまうと、扶養控除が適用されなくなるからです。
一方、NISAであれば利益が出たとしても所得には加算されません。年間所得額が扶養の範囲を超えるかどうかを心配することなく投資に取り組めることは、NISAを活用する大きなメリットといえます。

NISA以外の投資の場合、口座の種類によって確定申告が必要

NISA以外の投資の場合、口座の種類によって確定申告が必要

NISA口座とあわせて、課税口座でも投資を行う人もいるでしょう。NISA口座以外で投資を行った場合、口座の種類ごとに確定申告の要・不要が異なります。口座の種類によっては確定申告が必要になるため、どの口座が該当するのかを理解しておくことが大切です。証券口座には、大きく分けて下記の3種類があります。

<証券口座の種類>

  • 特定口座(源泉徴収あり)
  • 特定口座(源泉徴収なし)
  • 一般口座
上記のうち、確定申告が必要な口座・不要な口座を整理しておきましょう。

特定口座(源泉徴収あり):原則不要

特定口座のうち「源泉徴収あり」の口座の場合、原則として確定申告をする必要はありません。投資によって得た利益から証券会社があらかじめ納税額に相当する金額を差し引いており、口座名義本人による納税は不要となるからです。

源泉徴収とは、給与や報酬、利子・配当などの支払者が、所得税や法人税といった各種税金相当額をあらかじめ差し引いた状態で支払う仕組みのことを指します。源泉預かりと呼ばれることもあるとおり、その年の所得にかかる税金に相当する金額を支払者が預かっておき、申告・納税の際には支払者が代わりに納めるという仕組みです。

源泉徴収ありの特定口座では、投資によって得た利益の支払者は証券会社となります。したがって、口座名義人自身は投資によって生じた所得分の納税をあらためて行う必要がないため、確定申告についても不要です。

ただし、投資において損失が出ているようなケースでは、確定申告をすることで還付を受けられることもあります。複数の口座で運用していた資産のうち、一部の口座で損失が出た際には、確定申告によってほかの口座で得た利益と相殺する損益通算を適用できるからです。

例えば、口座Aでは年間30万円の利益が出たものの、別の口座Bで年間35万円の損失を被ったとすれば、口座Aと口座Bを損益通算することで年間5万円の損失となります。つまり、トータルではマイナスとなっているため、課税される利益は発生していません。この場合、確定申告をすることで口座Aに課された税金が還付されます。

特定口座(源泉徴収なし):原則必要

特定口座のうち「源泉徴収なし」の口座の場合、原則として確定申告を行う必要があります。証券会社によっては「簡易申告口座」といった名称の場合もありますが、これは源泉徴収されない特定口座のことです。

源泉徴収なしの特定口座の場合、証券会社が源泉徴収をしないため、口座名義人自身が確定申告を行い、年間の合計所得額と納めるべき所得税額・住民税額を確定させなくてはなりませ

確定申告の際には、証券会社から発行される「年間取引報告書」にもとづいて確定申告書を作成します。年間取引報告書とは、1年間に行われた取引の内訳がまとめられた書類のことです。年間取引報告書に記載されている金額には経費も加味されているため、口座名義人が自分で年間の所得額を計算する必要がありません。

なお、源泉徴収されない特定口座で投資をしていたとしても、勤務先で年末調整が行われた会社員などの場合、給与以外の所得が年間20万円以下であれば確定申告は不要です
例えば、年末調整が行われており、投資による利益など給与以外の年間所得額が15万円だった人の場合、確定申告を行う必要はありません。

一般口座:必要

一般口座とは、損益通算の計算および納税を口座名義人が自分で行う必要がある口座のことです。そのため、確定申告が必要になります。
申告の際は「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」を作成した上で、これをもとに確定申告書を作成します。株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書に記入する主な事項は、下記のとおりです。

<株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書に記入する主な事項>

  • 投資商品による収入金額
  • 取引先(金融機関)名
  • 投資商品の取得費
  • 投資商品の手数料
複数の一般口座を保有している場合、すべての口座について計算明細書に記入しなくてはなりません。したがって、特定口座と比べると多くの手間がかかります。

特定口座の制度が始まった2003年以前は、投資を行う際にはすべて一般口座を開設することになっていました。現在では特定口座を利用できることから、自分で利益を計算したい場合を除き、一般口座を選ぶメリットはほとんどないといえます。特別な事情がなければ、特定口座を開設するほうが得策です。

なお、一般口座であっても勤務先で年末調整が行われており、かつ給与以外の所得が年間20万円以下であれば確定申告をする必要はありません。年末調整されていない分の所得額が年間20万円を超えた際に確定申告が必要になる点は、特定口座(源泉徴収なし)の場合と同様です。

NISAは原則として確定申告が不要だが、必要になるケースもある

NISAは少額投資非課税制度であり、NISA口座で得た利益には税金がかかりません。そのため、確定申告に関しても原則不要です。一方で、条件によっては確定申告が必要になるケースもあります。どのような場合に確定申告が必要になるのか、事前に確認しておくことが大切です。

配当金等を非課税にするために証券会社を検討する際には、ネット証券もおすすめです。ネット証券には多くの種類があり、どのネット証券を選ぶかによって手数料も異なることから、しっかりと比較検討してからNISA口座を開設しましょう。

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AFP/2級FP技能士 吉田祐基

監修者 AFP/2級FP技能士 吉田祐基

ライター・編集者。編集プロダクションで、Web・紙媒体問わず主に金融系コンテンツの制作を担当後、HRテック企業に制作ディレクターとして入社。お客様向けの会報誌や、記事、Webサイト、PDF資料といった各種コンテンツ制作のディレクション業務ほか、Webメディアの運営を担当。

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